核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について 作:rikka
大量のフェラルが一枚のドアを大勢で代わる代わるバンバン叩きまくっていた。
祭りかよ。
いやまぁ、誰かが襲われている所だったんだけど一瞬そう思ってしまった。
それも死ぬ一歩手前だ。
部屋に籠っているならまだ生きてるだろうが、狭い閉鎖空間に大量のフェラルが流れ込むとか死亡確定事項なので、慌ててグレネードぶん投げて連中を吹っ飛ばして残ったのを片づけた。
で、声をかけながら扉を開けると、呆然とレーザーライフルを構えている美人さんがいた。
レーザーライフルを持っている事でガンナーかと思ったが、それにしては装備がおかしい。
なんか変わったオレンジ色の……なんていうんだ? ジャンプスーツ??
……あ、やっぱ何発かやられたな? 怪我してるわ。
俺の身体だとそこまで問題ないんだけど、普通の人間にはコイツらの一撃は辛いだろう。
RAD値が地味に上がっていくって言ってたなあ。
(それに、ビーオーエスってなんだったっけなぁ。バンカーヒルでちらっと聞いた覚えがある単語だけど)
とりあえず女性兵士――アストリンと一緒にフェラルの死体処理を終わらせ、弾が切れてるレーザーライフルの代わりにコンバットライフルを持たせてさらに施設の探索を続行。残ったフェラルを掃討。
あの光る奴が現れた時はちょっと焦ったけど、この女性兵士は射撃の達人だった。
フルオートのライフルで綺麗に光る奴の頭を撃ち抜いて足を止めた。
それでアイツが死ななかったのは正直ビビったが、奴がたたらを踏んだ瞬間に素早く足を撃ち抜いて完全に無力化していた。
そして完全に施設を制圧、とりあえず報告のためにカウンティー・クロッシングに戻りながら、話を聞くことにした。
「改めて名乗らせてもらうわ。私はアストリン。アルテミス偵察隊に所属するB・O・Sナイトよ」
「すまん、そのビーオーエスってのは?」
「あぁ……ええ。連邦じゃあ余り知られてないかもね。B・O・Sというのは、私が所属している組織で――」
話を聞くと、発達したテクノロジーの回収とその管理を目的とした軍隊。……という認識でいいのだろうか?
「で、ここにはまだ貴重なテクノロジーが大量に残っている可能性が高いからその調査に来たと」
「そういう事よ。……でも、到着した瞬間奇襲を受けて……」
「……他に生存者はいないのか?」
「パラディン・ブランディスと……スクライブ・ファリスはおそらく生きてる。いえ、生きていたわ。だけど、今はどこに行ったのか……」
「ちなみに、何に襲われたんだ?」
なにせ偵察部隊とは軍隊の一軍だ。
そう簡単に負けるとは思わんのだが……。
「……レイダー……だと思う」
…………。
嘘やろ?
「貴女の腕前だけでも、レイダー程度ならば切り抜けられると思うんだが……」
「数が多かったのよ。敵の数はこちらの五倍以上だった」
確か部隊は八人だったか。それで五倍以上……四十人を超えるレイダー集団?
そんな大勢の仲間だが部下を食わせられるほど活動的なレイダー集団なんていたっけか??
バンカーヒルでいくつかの大きなレイダー集団の話は聞いているが、一番デカい昔の車工場に籠ってる集団……あー、え~~と……ジャレドのグループか。
あそこでも二十人をちょっと超えるくらいだ。
レキシントンを完全に制圧すれば増えるかもしれないけど、今の所はそういう気配はない。
「武装は? 略奪かなにかで、たまたまいい装備を持ってたとか?」
「……服装は普通のウェイストランド人と変わらなかったわ」
普通か。ってことはガンナーでもないな。
「でも銃が……」
あぁ、やっぱいい装備を手に入れてたか。
マシンガンあたりでも手に入れてたか?
そう聞くと彼女は頷き、
「半分くらいはそう。マシンガンとかアサルトライフルを……でも、後の半分が変わった銃を使っていて」
「変わった?」
「レーザーライフルよ。私達が使っている物とは全然違うの。威力は低いけど速射性が高くて……」
……どこかで拾ったか?
念のためにそれもバンカーヒルに報告しておいた方がよさそうだな。
「それにレーザーの色だって変だったわ。赤じゃなくて青だなんて……」
それはマジで見たことないな。
レーザー装備を多用する連中ってなるとやっぱりガンナーだけど、アイツらは統率のために装備を全部軍製で統一しているって話だったし、実際クリケットの姐さんと一緒に頭吹き飛ばした連中は、アストリンと同じタイプの――つまりは赤いレーザーを発射する銃を使っていた。
「すまないが、こっちも仕事があるのでもう一か所行かなければいかない所がある。あれだったら、今から行く居住地で待っていてくれ」
今の稼ぎでも、一人や二人分くらいは養えるだろう。料理が出来る俺は重宝されているから食材は少しまけてもらえているし、宿代くらいならなんとかなるだろう。
そのためにも、今回の仕事をさっさと終えてまた次の仕事に取り掛からないと。
「いいえ、私も貴方の仕事を手伝うわ。合流の目途も立ってないし、助けてくれた恩を返す程度の人間らしさまで失いたくはないわ」
その言葉を待っていた。
いや、善意に付け込むようで申し訳ないんだけど、この人の腕はすごいわ。
後ろを守ってくれる人材としては最適すぎる。
幸い、ライフルを貸していてもこっちには拳銃があるし、自分にはVATSがある。
アーマーもあるし、仮にさっきの施設みたいに敵がいてもやり方次第ではいけるだろう。
「助かる。一度態勢を整えたら、あっちのデカいアンテナの調査に行く。……スーパーミュータントがそっちに向かったという話もある。警戒しておいてくれ」
「そういう話は得意よ。任せて頂戴」
そうして特に襲撃もなく、無事にカウンティー・クロッシングに到着。
だが、出迎えてくれたのはここに入植していた二人の男性だけではなく――
「ハァイロストボーイ! 聞いたわよフェラル共ちゃんと吹っ飛ばした? 銃に弾薬は足りてる!?」
クリケット姐さん! アンタホントに最高だな!!
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「随分とその……個性的なキャラバンね?」
「腕はいいんですよ。弾もこうして毎回毎回どこからかガッツリかき集めてくれるし、銃の改造の腕前もいい。自分の銃も、あの人が用意してくれたものですし」
うん、やっぱ最初は戸惑うよね。
自分も最初はこの人どうなんだと思ってたけど、付き合いが重なれば重なるほど細かい気遣いが見えてくる人だ。
「そうね。私としても、フュージョン・セルがある程度補充できたのはありがたい」
そういう彼女が手にしているのは、自前のレーザーライフルだ。
ただし、少し外見が変化している。
クリケットの姐さんがパーツを譲ってくれて、セットまで手伝ってくれたのだ。
念のためにとアストリンが試射をしていたが、感覚は全く変わらずに射程が伸びていたらしい。
マジでいい腕してんなぁ姐さん。
「とりあえず、明日に備えて寝ておきましょう。幸い、貴女が使ってた寝袋がそのまま使えるから、簡単なシェルターを作ればそのまま眠れる」
基本的にキャラバンは大体居住地で休むものなんだけど、たまに野営をする時なんかは自分がシェルター作りをやらされていた。
おかげでそこらに適当な材料さえ転がっていればその場で作れる。
今回は、居住地の人が補強に使おうとしていた資材をそのまま使わせてくれたからすぐに作れた。
「そうね。……ねぇ、Mr.ロスト」
「ミスタは付けなくてもいい。なんです?」
「ええ、じゃあロスト。貴方ってキャラバン隊の一人ってことでいいのかしら?」
「いや、どっちかというと雑用だな。三か月くらい前まで行く当てがなかったんだけど、ある人の紹介でバンカーヒルに預けられてそこで仕事をしているって所だ」
「そう……」
そういうアストリンさんは、少し残念そうだ。
「どうかしましたか?」
「こんなことを言うのは、正直恥ずかしいのだけど……人手が欲しいの」
あぁ、生き残りがいるかもしれないとしても、それでも半数以上を失ったのは間違いないからか。
「生き残っているかもしれない二人の捜索のため……ですか」
「ええ、それもある。同時に、生き残った以上本隊と連絡を取る必要があるの。それに、救援を待つ必要も」
あぁ、まぁそうだろうなぁ。
どこかに立て籠もるにしても滅茶苦茶信頼できる――それこそ完璧に生き残っているシェルターくらいじゃないと安全とは言い切れないし、当然ながら水や食料の調達は必須になる。
なにもかもが汚染されていて当然の世界では、とくに水の調達には居住地との取引がないと苦労するだろう。
「そっちも安心してほしい。いきなり放り捨てることはしない。約束する」
自分もグローリーさんがアレコレ手を回してくれてようやくある程度安定した生活送れるようになったしなぁ。
そんな自分がレイダーでもない人間を見捨てるのはまぁ……ちょっと寝覚めが悪すぎる。
だから養う事にはまったく異論はなかったのだが、なぜかアストリンは警戒している。
なぜだ。
「なんというか……貴方、ウェイストランド人らしくないわね」
「……まぁ、自覚はある」
稼げるときは出来るだけ稼げ、というのは分かる。
この世界ではどうあっても放射能の蓄積が避けられないので、薬品を取り扱う商人か医者との取り引きは必須と言っていいから、マジでキャップは生命線と言っていい。
ただ、相手を嵌めて蹴落とそうとかそういうのはどうも苦手だ。
機械の脳のおかげか、人を殺すことにはまったく忌避感はない。
グローリーさんの推測だけど、おそらく強いストレスを感じた時に機械脳がそれを一種のエラーとして勝手に処理してくれているんだと思う。
だから、もし自分が気の進まない汚い事をした時も、結局何も感じない可能性は高い。
ただ――
うん、少なくとも率先して見捨てる選択肢を選ぶのは無しだ。
「ごめんなさい。貴方の行動に裏がないだろうとは思っているの。ただ、こんな……良くも悪くも――より文明的な人間は珍しいから」
「それなりに俺もウェイストランダーだと思うんだけどなぁ」
法外な通行料要求してきたアホは血祭に上げたし、基本レイダーは片っ端から潰してるし……コソコソ戦法で。
「まぁ、とりあえず交代で寝よう。閉鎖されていた区域のフェラルも排除した上で再閉鎖したから大丈夫とは思うけど、どこかにフェラルがいる可能性はまだある」
虫と並んで奇襲が大好きなゾンビ連中だ。
……羽音がない分もっとやっかいかもしれんな。
「なら、悪いけど先に眠らせてもらうわ。疲労が溜まっているのは事実だし」
ライフルを側に置いたまま寝るのは、兵士としての本能なのか、あるいはこういう世界での女としての本能なのか。
(前途多難すぎる)
半壊している建物――何かに使おうとしておそらく使えなかったのだろうその壁に背中を預けて、周辺の気配を探る。
正確には音を探る。
そう意識した途端、聴覚感度が異常に高くなるのを感じる。
聞こえていた風の音、草のこすれる音、その他の音の出元を聴覚で把握し、その音を脳が自動的に解析していく。
(あぁ、やっぱマジで疲れていたんだな)
当然、すぐ近くにある音源も勝手に解析してしまう。
簡単な骨組みとブルーシートで作った即席のテントの中で寝袋に包まっている女性兵士の呼吸音なども。
呼吸のワンブレスの時間とその変化のなさが、彼女が熟睡状態に入ったことを示している。
それだけではなく。周囲への警戒という事で視界がVATS使用時と同じ状態になっている。
彼女の頭や四肢、胴体のそれぞれに今発砲したら何%の確率で弾が命中するかが表示される。
いらねぇ。
(……日に日に自分が人間じゃなくなったって実感が強くなるな。いや、日本人だった自分は死んだんだったな)
人造人間。
ウェイストランダーに紛れ込み、時に襲うとされる謎の存在。連邦のブギーマン。
(人造人間として生まれた連中は、自分という存在についてどう考えているんだろうな)
そういう物だと思っているのか。
あるいは、自我に疑問を持っているのか。
前者ならある意味ごく普通の人間らしく、後者ならばらしくない。
だが、どちらにせよ周囲からは異質なものと思われている。
ひょっとしたら、――いや、多分作り出した人間にも。
(ひ弱だな。この頑丈なだけの身体は……)