核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について   作:rikka

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005:スーパーミュータント①

 リビア衛星アレイ。

 目的地である、あの巨大なアンテナ施設の正式名称はそういうらしい。

 B・O・Sについては朝起きてから現地に行くまで一通りアストリンから詳しい説明を受けた。

 

 戦後――大規模核戦争を生き延びた合衆国陸軍が姿を変えた組織。

 

 テクノロジーの悪用による悲劇を繰り返さないために、テクノロジーの収集と管理を第一とする軍隊。

 

(いやぁな予感をさせる組織だなぁ。下手に腐敗が始まったら手に負えなくなるタイプの組織と見た)

 

 その組織の中で飛び切りの『上級射手(マークスマン)』だった主力歩兵。それがアストリンということだ。

 実際、昨日の対フェラル戦、そしてつい先ほどうろちょろ飛び回っていた虫を一発で仕留めた腕前は「スゲェ」の一言しか感想が出ない

 

 飛び方が非常にうざったい虫の変異体相手。正直、VATSなしではこの身体でも一発では当てられない自信がある。

 ニ、三発その方向に撃って、一発当たるかといった所だろう。

 面倒だし弾が無駄なのですぐにVATS射撃に切り替えるが。

 

 むしろ無駄弾を減らす意味でも普段からかなりVATSを多用しているな、俺。

 

「っと。アストリン」

 

 止まってくれと言葉を続ける前に、アストリンは自ら立ち止まってすぐにライフルを構えて、周囲を警戒してくれる。

 やっぱり場慣れしているから、こういう時助かる。

 

 ともあれ、だ。

 地面を出来るだけ荒らさないように、静かに四つん這いになって顔を地面に近づけ、視線を低くする。

 

「デカい足跡だ。五本指……人型でこのサイズってことは」

「スーパーミュータントね」

 

 ついに出やがったかあの緑ゴリラ。

 いやゴリラっていうより……ファンタジーに出てくるオークか。

 

 武器は斧とかじゃなくて銃か木の板――木の板はまだそれっぽいかもしれない。

 

「アストリン。わずかだがこう……焦げ臭さが残っている。ひょっとしたら、レーザー系の武装で撃たれてたかもしれない」

「……どちらかしら」

 

 誰に撃たれたのかという事だろう。

 味方か、あるいは襲ってきた敵か。

 

(ガンナーって可能性もあるか。あちこち歩き回ってる連中が、スーパーミュータントと遭遇戦を起こしたとしてもおかしくない)

 

 足跡からして目的地の方向だとは思うのだが、ちょうどよく落ち葉などが進行方向にあって続きの足跡が消えてしまっている。

 すくなくとも、見える範囲に人間の足跡――というか靴跡は見当たらない。

 

 耳を澄ませて昨日と同じ状態を再現する。

 もしそういった部隊とそれなりの数のスーパーミュータントが戦っているのならば、聴覚機能を最大限まで上げたら戦闘音ぐらいは聞こえるかもしれない。

 

 

――ドォォォォォォォォォォン!!!!!

 

 

 その途端、巨大なアンテナの一部で凄まじい爆発が起こった。

 轟音と爆炎が立ち上がり、同時にここからでも聞こえる銃声が鳴り響く。

 

「今のは……フュージョン・コアの爆発!? ロスト!!」

 

 

 

 

 

 

 

「――あああああああああああ耳が!! 耳がーーーーーーーー!!!!!!!!!」

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

「なにこれ、戦争でも始まってんの?」

 

 一度耳が死んだ俺だが、復活するのも早かった。人造人間ボディマジでやべぇ。

 

 そして走って急行した現場の様子もまたやべぇ。

 

 三つあるデカいアンテナ塔の内の一つ、その高層部に向けてスーパーミュータントの群れがレーザーやらパイプガンやらミサイルをやたらめったら撃ちまくっている。

 

 ザっと目に入る連中を脳内リコンセンサーと温度センサーの併用でマーキング。

 

 これでどこに敵がいるか勝手に追尾……見えてる分だけで八体!?

 高い所にいる敵しか見えてないんだぞ!?

 

 その隙を縫うように、高所から誰かがレーザーで応戦しているが、射線が全然安定していないしこれじゃあ焼石に水だ。

 

「ファリス!」

「B・O・Sの仲間か? ……っておい! 待てアストリン!!」

 

 持っていた双眼鏡で上を――つまり集中砲火を食らっている所を確認したアストリンはレーザーライフルを構えて走り出してしまった。

 おっま! ばっか!!

 

「ホントに軍人なんだろうなB・O・Sは!?」

 

 アストリンは上へと昇る一本道。そこに向かって真っすぐ走っていく。

 その道を塞いでいる――おそらく殴る系の得物しか持ってなかったためにたむろしていたのだろうスーパーミュータントの腕にレーザーの一撃を的確に叩き込んで、武器を落とさせた。

 

(VATS起動。同時に視覚センサー計測処理レベルを2.0から3.5に)

 

 上層階にいる人間をVATSを起動させた目視で確認。センサー感度も合わせてズームアップして姿を確認する。

 いた、男性兵士だ。アストリンのとは細部が違うが、似たような服を着ている。

 

(死角になってて見えないけど体勢がおかしい。やけに低い。座っているというよりは……下半身のどこかを負傷して立てない? 無駄弾が多いのは、それで射線が安定しないためと推測)

 

 アストリンが上に続く通路に突っ込もうとしているが、素手にこそなったがほぼ無傷のスーパーミュータントと……なんだあれ。緑色の毛無しマッチョ犬が食いかかろうとしている。

 

(VATSターゲット、ally02(男性兵士)からenemy10(マッチョ犬)へと変更。ターゲットの頭部への集中射撃を選択)

 

 ピン付けしたエネミーの位置と行動予測から、自分の存在がまだバレていないことが分かる。

 武器をライフルからサイレンサー付き10mmへと変更、物影からマガジン一つ分をすべて撃ち尽くす動作を選択、決定する。

 

 気の抜けた射撃音だが、威力には何一つ変わりがない。

 

 一発二発程度の弾丸では見た目通りのタフさで牽制にしかならないが、アストリンの腕に飛び掛かり噛り付く直前で弾丸によってその動きを押さえられる。

 

 続く連続射撃がさらに五発入った所でようやく骨にダメージが入り、続く二発が脳を貫通しターゲットを沈黙させる。

 

(射撃行動をキャンセル。マガジン残弾確認。残弾五発。VATSターゲットをenemy09(素手ゴリラ)に再設定。同時に視覚センサー及びターゲットシステムを最大レベルまで起動)

 

 ゴリラ犬は、当然緑のガチゴリラよりも体も頭も小さいが、それでも無茶苦茶固かった。

 となると残り五発を全弾頭に当ててもおそらく殺せない。

 

 いきなりお供の犬が死んだ事に、ガチゴリラは『ナンダァ????』と気味の悪いカタコトで驚いて足を止めた。

 

(……喋れたんだ、あのゴリラ)

 

 頭をフルで動かして無理やり超精密射撃を可能にする。

 …頭と身体の使い方に慣れた今なら二発はイケるかと思ってたけど、やっぱ一発が限界か。

 

 視線が犬の方を向いているが、すぐに脇を抜けて上へと走り去ったアストリンの方を向くだろう。

 

(VATSターゲット、enemy09頭部から左眼球部にセット。行動予測開始)

 

 素手ゴリラが振り返る時に、こちらの射線が敵の左眼球とその向こう側の右眼球に並ぶ瞬間がある。

 そこを狙って射撃。……今。

 

 

 

「グワアアアアアアアアアアアアアアア!!!! 目ガ……っ! 目ガアアアアア!!!」

 

 

 

 ――命中。

 

 最悪片目だけでも奪えばいいと思ってたが、ラッキーヒットもあって綺麗に両目潰せたみたいだ。

 ちょうどアストリンが昇って行った通路の入り口をふさぐ形で、でたらめに暴れている。

 

 視覚センサー、ターゲットシステムの感度をデフォルトに戻して再度VATS起動。

 ちょっとした嫌がらせにしかならないだろうけど、残り四発を両足にそれぞれ叩き込んでマガジンを交換。

 

(リコンセンサー再起動、地上部の敵の配置を追加、更新)

 

 アストリンは鉄骨やアンテナ塔自体を上手く使って射線を切っているが、このまま撃たれ続けたら不利だろう。

 特に他の塔の高所から撃っている重武装のスーパーミュータント。

 こいつらをどうにかしないとアストリンもあの兵士も嬲り殺しだ。

 

(アストリン……頼むから、もうちょっとどうにか持ちこたえてくれ)

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

(よしよし、まだ持ちこたえてるな!)

 

 射撃はさっきからずっとあのアンテナ塔に集中している。

 その隙にこっちは物影に隠れながら、目当ての場所までこっそり移動していた。

 

(一番不味いのは、射撃戦に有利な位置に重武装を持ってる奴らのほとんどが集まってしまってることだ)

 

 この緑のゴリラ共がどういう生き物かは知らないが、言語を使ってる以上やはり知恵はある。

 木材やらデカいハンマーといった近接武装持ちが地上に多いのは、高所にいる重武装持ちに近づけさせないためなのだろう。

 ……いやまぁ偶然かもしれないけど、少なくとも現状はそうなってしまっている。

 

 不幸中の幸いなのは、他の近接ゴリラズが注意だけアストリン達のアンテナ塔に向けてあんまり動いていないことだ。

 

 一番最悪だったのは、近接持ちが雪崩れ込んでアストリンが閉じ込められること。

 無駄に暴れるミュータントを足止めとして入口で置いてけぼりになるようにしたけど、それでもいざってときは自分がさらに乗り込んで近接勢をアストリンと俺で挟み込んで削る予定だった。

 

(さて、それじゃあ頂くか)

 

 10mm拳銃を構えながら、先ほどの超精密射撃で負荷のかかった機械脳がパフォーマンスを取り戻すまで息を整える。

 

 その銃口の先には、柱の向こう側に身を隠したまま出てこないアストリンを今か今かと待ち構える――

 

 

 ミサイルランチャーなんて物騒なものを持っている、ちょおっと頭の足りないゴリラがいる。

 

 

 

 

 

 おめーいいもん持ってんな。よこせよコルァ。

 

 

 

 

 




崩壊杯終了までは感想返しは控えておりますが、皆さまの感想キチンと読ませていただいております

主人公は実際、作中設定でのコーサーの強さを実際に再現したらこうだろうなぁ、というのを描いております

……装備が。
インスティチュート装備と111のパパ、ママ達の寄り道による超強化があかんねん……。


※書き溜めが尽きたため、次回より少し更新が伸びる可能性があります。
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