核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について   作:rikka

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厳密にいうと主人公が使っているのはVATSではないです


人造人間であるロスト君の人口脳を利用したターゲットアシストシステムを、グローリーがVATSのようなものだと説明しているので本人もそのままVATSという言葉を使っている……という設定で書いています


……pip-boyというものを知っている人間はダイヤモンドシティにもグッドネイバーにもそこそこいるし、テクノロジーの専門家がいるレールロードならその機能を詳しく知っていてもおかしくないハズ……


007:The Synth

 ナイト・アストリンは、ナショナルガード訓練場からの出来事を思い返していた。

 

(ヒントはいくらでもあったのね……)

 

 常人をはるかに超えた精密射撃。

 グレネードの爆発範囲を正確に計測した上での正確な投擲。

 放射能汚染を引き起こしかねないフェラルの爪や歯による攻撃にまったく怯みもしなかった事。

 

 遠くでの爆発音に、まるで耳元で爆発を起こされたような反応をして少しの間動けなかったこと。

 戦闘時に微妙に変化する口調や人格。

 

 それらに違和感を覚えていたナイト・アストリンは、これまでそこに踏み込まなかった事に対して複雑な思いを抱いている。

 

(ええ、そうね。考えれば確かに彼は人間らしからぬ所が多かった)

 

「…………ロスト」

 

 迷子(ロスト)なんて変わった名を名乗るものだと思っていたけど、ひょっとしたらその名前は、まさしく彼の存在を表すのに適格な名だったのかもしれない。

 

「ナイト、そろそろ野営の準備に入ろう。そろそろ日が暮れる」

「えぇ……えぇ、そうね、スクライブ」

 

 未だに足は動かないが、あの助っ人が持ってきた車イスのおかげで足に負荷をかけずにスクライブは移動できる。

 

「それにしても、クソッ。俺としたことが……アボミネーションに助けられるとは情けないにもほどがある……」

「その話は止めて、ファリス」

 

 アストリンにとって、『彼』は最高の助っ人だった。

 自分達だけではどうしようもない事態を解決してくれて、はぐれた仲間と引き合わせてくれて、さらには死の運命を覆してその仲間を救ってくれた。

 

「ナイト、まさかまだ気にしているのか?」

「…………」

「奴は人造人間だ。テクノロジーの悪用によって産み出されたアボミネーション。我々B・O・Sの敵だ」

「でも我々の命の恩人よ。彼がいなければ、私も貴方も死んでいた!」

「……恩は感じている。だから見逃した。……そうじゃなきゃ、あの瞬き一つしない気味の悪い人形になってる時に頭を撃ち抜いている所だ」

「ファリス!」

「事実だろうナイト!?」

 

 言い返そうとするアストリンに、ファリスは叫ぶ。

 

「彼にはB・O・Sという物を教えていた。自分の身が危険になる事を知りながら、貴方の身を救ってくれたのよ」

「あぁ、そうだな。アボミネーションにしては……あぁ、ご立派だ」

 

 だから見逃がしてやったんだと再び息巻くファリスに、アストリンはうんざりした顔でため息を吐く。

 

(……出来る事ならば、彼の助力が――助けが欲しかった)

 

 アストリンとしては、ロストの助けを得ながら仲間と合流し、その間に人格に問題なければB・O・Sに迎え入れたかった。

 

 だが、ロストの告白。そしてファリスの手術を終えた後の『フリーズ』を見たら、彼女も信じざるを得なかった。

 

 そして目が覚めたファリスが、人形のように固まっている彼の姿を見て騒いだことによって……起きてから別れを切り出したロストを、彼女は止められなかった。

 

(ロスト……。バンカー・ヒルに戻ると言っていたけど、もうカウンティー・クロッシングにはたどり着いているかしら)

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

「アンタが酔っぱらうほど飲むなんて珍しいじゃないか。いつものアンタは滅茶苦茶酒に強いのに」

「う゛~~~あ゛ぁ~~。ごめんね姐さん。いや、うん、なんか今日は酔いたい気分で」

 

 やっぱダメだったかぁ。

 いや、アストリンはすっごい俺を庇ってくれたんだけど、あのファリスって男がすっっっごいキレてたんだよなぁ。

 

『人造人間が俺の身体に何をした!?』とか

 

 

『部隊の軍医に調べてもらって異変が一個でも見つかれば連邦中を焼野原にしてもお前を殺してやる!!』とか

 

 

『優秀な作り物の脳だな! 媚びを売ることを学習したのか!』とか

 

 

 実際、ひょっとしたら目こぼしをもらえるかもしれないという下心がなかったかとは言い切れないので、最後の奴はあながち間違っていないが……うーむ。

 

 想定以上に長時間フリーズしていて、固まっていた姿を見られたのはやっぱ致命的だったか。

 事前に説明できたアストリンはともかく、いきなり人形みたいに硬直している俺の姿を見たスクライブ・ファリスは……うん、まぁ、間が悪かったと切り替えていくしかない。

 

 にしても、アストリンから聞いていたB・O・Sの目的からしてこれはヤバいかもしれんと思ったが、思った以上だったわ。

 ……駄目だ、ピルスナーじゃあ足りないわ。酔えん。

 

「姐さん、ウイスキー……バーボンある?」

「アッハハハハ! いいねいいねぇ! まさかロストボーイの酔った顔を見れるなんて、バンカーヒルでもアタシくらいじゃないかい!?」

 

 焚火の火に照らされて笑うクリケットは、いつものように元気そうだ。

 ……この人、メイク変えればクッソ美人だと思うんだけどなぁ。

 

「しっかしまぁ、あのロストボーイがフられたかぁ」

「フられたって……」

「おんやぁ違うのかい? 一緒にいたあの嬢ちゃん、アンタを置いて行っちまったんだろ?」

「……本来の仲間と合流して、もう一人を探すために北に行くんだ。俺は仕事が終わったし、バンカーヒルに戻らなきゃいけない」

 

 ……おい姐さん、そのニヤニヤやめろ。

 マジでそういうのはなかったんだしそもそもクッソ真面目に面倒な事になってるんだから。

 

「アンタは腕が立つ割にマッチョじゃないからね。だからモテないのさ」

「筋肉つけてムキムキマッチョマンになれって?」

「そうじゃなくて! もっと男らしく傲慢になれって言ってんのさ」

「それ男らしさか?」

「ルーカスを見なよ。アイツが口数少ないのは自分の腹黒さと傲慢さを隠すためさ」

 

 散々な言われようだな薄らハゲ。

 確かにアイツは地味に腹黒いが。

 

「コベナントを知ってるかい?」

「噂だけは。入る前に変なカウンセリングを強制される街だろう? なに、ルーカスの奴何かやらかしたの?」

 

 あの薄らハゲ、仕事の依頼とかの暗躍はともかく商売には真面目だと思うんだけどな。

 

「違う違うコレさ」

 

 そういってクリケット姐さんは小指を立てる。

 

「……マジで?」

「どうもあそこに、遊び人の女がいるみたいでさ。酒をしこたま飲ませたときにポロっとアイツが吐いたのさ」

「うぅ……っわ。マジか。マジかぁ」

 

 うぅわぁ、あの薄らハゲ。……うっわぁ。

 この身体になってそういう欲求は薄めることが出来るようにはなったけど……うわぁ。

 うらやましい。死ね。

 

「ほら? 肉体的な話じゃなくてそういう傲慢なマッチョさってのは大事なのさ。じゃなきゃなんでアイツが女抱けるのさ」

「姐さん、言うねぇ」

「あの野郎、人の商売の邪魔をするからね」

 

 そう言って姐さんもビールを呷る。

 ……そうか、防具商人と武器商人か。

 

 場合や場所によっては小さい諍いとか起きたのかもねぇ。

 

「アレだったらアンタも顔を出してくるかい?」

「そういう気分じゃないのでパスします」

「あっはっはっはっは!!」

 

 この人ホントいつも楽しそうだなぁ……。

 カウンティ・クロッシングの人たち起きるよ?

 

「アンタもこういう酒を飲めたんだねぇ」

「こういう酒?」

「騒いで楽しむ酒さ。アンタはそういうのが苦手な男だと思ってた」

「俺普段どういう男だと思われているんですかね?」

「どういう男かって? あー、ほら! ほらほらアレだよ。アレ!」

 

 アレ?

 

「ダイヤモンドシティに住んでる人造人間みたいな感じさ!」

 

 

 

 

 

「……待って姐さん。なんて?」

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

「どうしたのニック? 急にバンカーヒルに関しての最近の資料なんて引っ張り出して」

「ああ、エリー。すまんな、大量の資料の整理なんてやらせて」

「構わないわニック、それでどうして?」

 

 電気というものが貴重なこの時代、室内を照らす照明も最低限のものだ。

 薄暗い部屋の中、椅子に座った一人の男のもとに、いくつものファイルを抱えた女性が近寄る。

 

「バンカーヒルでキャラバンワーカーとして働いている知り合いから、さきほど依頼の手紙が届いてな」

「あら、誰か行方不明でも出たのかしら?」

 

 男の肌は、人らしい肌の色からは程遠い汚れた灰色だった。

 人なら骨や肉は皮膚で覆われているハズで、そうでなければ血が出たり肉が腐ったりするものだ。

 

 だが、その男の顔は皮膚が所々破れていて、そこから青や赤のケーブル、さらには肉や骨の代わりの機械仕掛けが見えている。

 片手はまんま義手と言っても通じそうなギミックハンドが剥き出しだ。

 

「いやそういう事ではない。どうやら、少し前からあそこの水源にトラブルが起こっているようだ。急激に水質が悪くなったとな」

「水が? それは……他人事じゃないわね」

 

 綺麗な水は極めて貴重なものだ。

 汚染された水しか取れない所でも浄化自体は可能だが、目的の量の綺麗な水を作るためにおよそ三倍の汚れた水が必要になる。

 

 これはあくまで平均値での話で、水がさらに汚染されればさらに浄化に手間がかかることになってしまう。

 自分が住んでいるこのダイヤモンドシティでそんなことが起これば。

 そのもしもを想像して、女性は眉を顰める。

 

「あぁ、最近バンカーヒルには凄腕のガンマンが現れたという話題で盛り上がっていた所でコレだ」

「そのガンマンは動けないのかしら?」

「特に記述はないが、おそらく違う仕事を任せられたんだろう。暴力の可能性が高い所にこそ、バンカーヒルもそのガンマンを送り込みたいはず」

 

 果たして必要性があるのか、どう見ても機械の塊である男は煙草に火を付け、一服する。

 

「あぁ、でもなるほど。あの人がバンカーヒルに向かったのもそれが理由かもしれないわね」

「あの人? 誰だ?」

「彼女です。ほら、パブリック・オカレンシズの――」

 

 

 

 

 

「パイパー・ライトです」

 

 

 

 

 

 

 

 

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