核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について   作:rikka

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感想欄が荒れまくることも覚悟していた前話ですが、ファリスへの擁護はあれどBOSってこんなんだよね! っていう意見が多くてすごく安心したw






008:新聞記者

「水の値段が上がってる? 気付かなかったな」

「アタシもジョーから聞くまで気付かなかったね。アタシらが出かけている間に水源の汚染がひどくなったってさ」

 

 カウンティー・クロッシングで一晩過ごして、俺はクリケットの姐さんと一緒にバンカーヒルへと戻る道を歩いていた。

 

(姐さん……まさかガードも連れずにこっち来てたとは思ってなかったよ)

 

 姐さん曰く、俺が通った後の道ならしばらくは絶対に安全だといって少しでも身軽でいたかったんだとか。

 

 姐さん……、今度時間が作れた時は俺も奢らせてもらうね?

 昨夜は貴重な度数高い酒をめちゃくちゃ奢ってくれたし。

 

「ちょうどアンタが出た後にウェザーズのキャラバンが出発しようとしてたんだけど、補給品の関係で滅茶苦茶揉めててね。それが気になってジョーに店で話を聞いたんだ」

「水の汚染はさすがに不味いな。確か、西側の水場から古い下水道を利用して引き込んでるんだっけか」

「ああ、そんな話を聞いたことがあるねぇ。……行くのかい?」

「しょうがないでしょ」

 

 揉めてるって事は調査隊を編成するほどの余裕がないって事だ。

 

 ケスラーの姉御め。レイダーに金払うよりも、気に食わないけど一応傭兵のガンナーとかと取引して確実な戦力を増強させた方がいいんじゃないか?

 

「水が汚染されていれば汚染されているほど浄化に必要になる水と時間、ついでに燃料か電気が必要になる。姐さん思い出してくれ。俺は銃を持つより厨房で肉切って鍋かき回してる方が多い人間だよ? そりゃあ気にするさ」

「安心しなロストボーイ! アンタが独立するまで厨房に立つ暇がないくらいアタシが引っ張り回してやるさ! 一緒に吹っ飛ばしたり吹っ飛ばされたりしようよ!」

 

 アンタはどんだけ俺を死地に追いやりたいんですか。

 ……おい、まさかと思うけどこの間の行商、わざと危険なルート選んだんじゃないだろうな?

 

 あと吹っ飛ばすのはともかく吹っ飛ばされるのはお断りです。

 

「まぁ、真面目に水にトラブル抱えたままだとヤバイし不味いんで何とかしますよ」

「……ロスト」

 

 はいはい?

 

「ケスラーに交渉吹っ掛けて、最低でも200キャップくらいは引き出しておきな」

「姉御に?」

 

 ケスラー。バンカーヒルのリーダー。女性ながら門番もやっている女傑。

 

「アンタが『バンカーヒル』のガンマンって噂を流しているのはあの女狐さ。アンタがバンカーヒルの人間だという印象を強めて既成事実にしようとしてるの」

「…………つまり、姉御は俺を手放すつもりはない?」

「安心しな! アタシがアンタはいつか独立して、新しいキャラバンなり居住地を起こす可能性が高いって噂を流しておいたの! ……あぁ、もちろんアタシの足が付かないようにね!? キャラバンワーカーもケスラーを良く思っていないのは多いから、上手く流れに乗ってくれたよ!」

 

 姐さん! クリケット姐さん!!

 アンタ本当の本当に最高だな!!

 

「まぁ、だからケスラーにはなるだけ対等の存在って感じで接してやりな。たとえは悪いけどレイダーやガンナーと一緒さ。ケスラーはアンタの力を利用しようとしている。だからアンタも奴を利用すればいい」

 

 姐さん、なんというか……。

 俺にとってはグローリーさんと並ぶ大恩人だなぁ。

 変人とか思っててマジでごめん。

 俺、貴女には足を向けて寝られないし貴女には正直嫌われたくないです。

 

「ねぇ、姐さん」

「なんだい?」

「……その、やってみるさ。ケスラーの姉御に仕事として請け負わないか、上手く仕掛ける」

 

 人造人間であることを告白しようかとも思ったけど、二度も同じ轍を踏むこともあるまい。

 ただ、あの二人。アストリンはともかくファリスが漏らす可能性はゼロじゃないからなぁ。

 

 ……いや、アストリンも上への報告は避けられないか?

 

 となると、どこかで先にカミングアウトする必要が……なに姐さん。人の顔覗き込んだりして。

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

――なんだって!? 水が汚染されているのに、この街は調査も碌にできていないのかい!?

 

 

 えっちらおっちら、道中でどこからか飛んできていた蟲を撃ち落としたり、クリケット姐さんとキャッキャしながらはぐれレイダーの頭をポップコーンみたいに弾きながらバンカーヒルまでたどり着くと、聞き覚えのない女性の声が響く。

 

「姐さん、聞き覚えある?」

「いいや、ないねぇ。まぁいいさ。中から女の罵声が響いて銃声が響いていないってのはアタシの嫌いな平和の証って奴だよ。いっそバンカーヒルの塔が突然爆発したりしないかね」

「それバンカーヒルの人間ほとんど死にますからね?」

 

 相変わらずこの人の頭の中は銃をぶっ放せるシチュエーションのことしかない。

 かと思えばたまに名札を付けた木の苗を植えたりするし、かと思えばそれを吹っ飛ばしたりしている。

 

 まぁ、姐さんだしな。

 

「外の人間だとすると、相手をしてるのはケスラーの姉御かな」

「ちょうどいいね。ほら、いい感じに恩を売ってきな」

「へいへい、出来るだけ高値で買ってもらうわ」

 

 不用心に開けっ放しになっているゲートをくぐり、パックバラモンを戻して来るという姐さんと別れて奥に行くと、そこにはケスラー相手にメモ帳片手に詰め寄っている、赤いコートを羽織った若い女がいた。

 頭には少しボロになってるハンチング帽を被っている。

 

(安全ピンで何か書いた布を帽子に付けているな……press……新聞記者? ……あっ)

 

「なぁ、失礼。そちらの――」

「あ、ああロスト! 戻ったのね!?」

 

 姉御、そんな助かったみたいな顔するなよ……。

 

「ロスト? あぁ、ひょっとして最近噂になってる流れの凄腕ガンマンかい?」

 

 ほら、この女も変に興味を持っちゃった。

 だが……うん、やっぱ姐さんのおかげか。

 バンカーヒルの人間じゃなくて流れの人間となっている。

 ……姉御に対するジャブにはちょうどいいか。

 

「自分はガンマンという意識はないんだが……あぁ、流れの人間だ。知人の紹介でしばらくここに身を寄せている」

 

 姉御の顔が少し歪んだな。

 まぁいい、この人が新聞記者って言うなら、上手くいけば流れ者のうわさが広まってくれるだろう。

 

「あぁ、話がそれたな。――なぁ、ひょっとしてナットのお姉さんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「驚いたな。わざわざ売れ残ってた新聞をたくさん買ってくれた上に印刷機の様子を見てくれた奇特な客がいることはナットから聞いてたけど、それが噂のガンマンだったなんて」

「いやいや、あれはナットの営業が上手かったのさ」

 

 ダイヤモンドシティに入ってすぐ左手にある小さな新聞社。

 その入り口で、小さな箱にピョンと飛び乗って、大きな声で新聞を売っていた女の子は、自分がダイヤモンドシティにいる間に色々と教えてくれた、俺にとって貴重な協力者だった。

 

 ……断じて人造人間絶対殺すウーマンのマーサの勢いに当てられて、素直で話しやすい子供に逃げた訳ではない。

 

 

――ハロー、ミスタ。見たことない顔ね、新聞はどう?

 

 

 

――ミスタ、貴方まるで狼の群れの中に紛れた羊みたいに何も知らないのね。新聞を読まないからだよ。

  ほら、どこの部分が分からないの? 私がくわしく教えてあげる。

 

 

 

――ミスタ、他にやることないの? もしパイパーが目当てなら、しばらくは帰ってこないよ。

 

 

 

――どうしよう、パイパーがいないのに印刷機が変な音立ててる……ミスタ、手先が器用なら直せる?

 

 

 

 

「……うん、ナットには世話になったな。世間知らずな所があった俺に、買った新聞の分からなかった所を色々教えてくれた」

「ナット、そんなことしてたのか。あぁ、印刷機の件は助かった。私はまだ大丈夫って思ってたんだけど、確かにすごく調子が良くなった」

「インク滓を落として、一部の部品を取り換えただけだ。まぁ、ナットへのお礼にな」

 

 いや、ホントにいい子だった。

 ダイヤモンドシティには補給や情報交換、現地トレーダーとの売買で三日ほどいたけど、その時はまだクリケット姐さんやキャラバンの面子とは関係の構築中だった。

 仕事がある時は皆と一緒に働いたり酒飲んでたりしたけど、暇な時はナットの所に顔を出していたな。

 

 怪しまれずに素直に色々教えてくれる人物というのが、都合がよかったって言うのもあったけど。

 

「しかし、噂のガンマンが護衛とは……私も偉くなったもんだ」

「おかげでこっちも250キャップの仕事と弾薬の補給を得られた。win-winだな」

 

 そして今、俺はナットのお姉さん――パイパー・ライトと共に水源の調査へと向かっている。

 ケスラーから彼女の護衛を受けたのだ。

 まぁ、厳密にいえば水質汚染の原因を排除しろという事だが、のらりくらりと交わして報酬を釣り上げた。

 

 やり取りを聞いていたのか、ゲート側にいた姐さんがウィンクしてくれて、サヴォルディの親父が酒の入った瓶をこっそり渡してくれた。

 姐さんやジョー・サヴォルディからしても満足いく結果だったのだろう。

 サヴォルディの親父は爺さんがミニッツメンという民兵組織に加わっていたらしく、俺がミュータントやレイダーたちを蹴散らしているという話を聞いてすごく喜んでくれていたようだ。

 

 ひょっとしたら、クリケットの姐さんに手を貸して噂を流したのは彼かもしれない。

 

「アンタ、いい性格してるね。気に入ったよ」

「そりゃどうも。そちらもいい度胸をしているな」

 

 水場のトラブルとなると、大体は虫かマイアラーク――蟹とか海老の怪物が関わっているのが相場だ。

 つまりはやっかいな荒事なのだが、パイパーは慣れた様子で10mm拳銃を構えて慎重に歩いている。

 

「記者は命を狙われて、初めて成功と言えるのさ」

「つまりアンタは?」

「大成功さ」

 

 ニヤリと笑うパイパーは、なるほど美人だ。

 あの時のナットの言葉からして、多分何度か言い寄られているんだろうな。

 で、適当にあしらっていると。

 

「しっかし……こりゃあなんだい?」

 

 大本の水源まではまだまだある。だがその道中の所々にレイダーやらガンナーが転がっている。

 数は多くないため、おそらく偵察としてウロウロしていた連中なのだろうが……。

 

「外傷らしい外傷が見当たらないなんて……」

「あぁ、他のレイダーやらなら撃たれた跡があるはずだし、ミュータント共なら噛まれるなり切られるなり……あるいは食われた跡があるものだけど」

 

 近寄って調べようとするパイパーを押さえてこちらで調べる。

 たまにだけど、死体のそばに地雷を仕掛けて、死体から使えそうなモノを剥ぎ取ろうとした奴を吹っ飛ばすという性質の悪い奴がある。

 

「……近寄らなくて正解だったな、パイパー」

「なんだい? ソイツらはなんで死んでるんだい?」

「強いRAD反応がある。こいつら、放射能を浴びすぎて死んだんだ」

 

 虫の中にRAD攻撃してくるタイプもいたけど、それは同時に虫の毒を食らうから肌が焼けただれていたり、あるいは防具の一部が溶けていたりするものだ。

 

(俺がまだ見たことない、放射能を吐くタイプのミュータントがいるのか?)

 

「パイパー、これをやった奴に心当たりはあるか?」

「いや……そんなに強い放射能を吐く奴なんて記憶にないね」

 

 となると……うわぁ、面倒なタイプの奴か?

 とりあえず水場まで行って何もなければ今日はそこでキャンプ。

 で、明日起きたら旧下水道の調査って所か。

 

(これが終わったら、ケスラーの姉御に次のキャラバンについてちょいと相談しよう)

 

 ちょいとダイヤモンドシティまで行って、姐さんの言っていたニックって探偵と話してきたい。

 前にナットから、会ったらびっくりする人間だとは聞いていたが……そういう事ならあの時に会っておくべきだったな。

 探偵ってことしか知らなかった。

 

(前よりは不審者感はなくなったはずだし、今度はゆっくりダイヤモンドシティを見て回るのもありかもしれないな)

 

 一度、じっくりその探偵には話を聞いてみたい。

 どうやって人からその存在を認められるようになったのか。

 

 

 

 

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