核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について   作:rikka

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009:祝福を授ける者

「不審なモノって言うか……動いている物もなにもないね」

「ですなぁ。……どういうこったこれ?」

 

 水の汚染トラブルというのは、たまにあることではあるらしい。

 以前バンカーヒルや他の居住地で起こった水関係のトラブルを一通り同僚のキャラバンワーカーや暇そうだったサヴォルディの息子とかに聞いて回ってみた。

 

 一番多かったのは、放射線の影響を受けすぎて放射能汚染を巻き散らすようになってしまったマイアラークが水源に移り住んできてしまったパターンだ。

 マイアラークはこれまで数体見てきた。

 その大体は色の濃さに違いはあれど緑色の殻に覆われていたが、中には、その緑色の殻や体が光っている個体がいるらしい。

 コイツが水源に入ると、当然そこの水は汚染される。

 ……ただ、浄水装置の負担が激増するレベルにまで汚染されるかというと首をかしげるレベルだそうだ。

 ならばそういった特殊個体が大量に住み着いた可能性があると見て警戒していたのだが、水場には特に何もなし。

 

 ある意味で奴らの特徴である大量の白い……まるで鶏卵みたいな卵も見当たらない。

 

「となると下水道内に住み着いたか、あるいは中で崩落か何かが起こったか……」

「崩落? どういうことだいガンマン?」

「ロストだ。ようするに、下水道の中に昔の老朽化した発電設備とかその補給品が落っこちまって水を汚染している可能性があるって事さ」

 

 ちょくちょくある事らしい。

 例えば古いトンネルとか街中の下水道の中に、その上層にあった発電機やイエローケーキ(ウラン粉末)をギッシリ詰め込んだバレルが落ちてとんでもなく汚染されていて、水に触っただけでヒデェ事になるとか。

 

 おまけにそういう所に限ってちょいと時間が経ってしまった結果、フェラルやらマイアラークやらの群れが住み着いてしまってる事が多々あるとかなんとか。

 

「もうちょっとしたら日が暮れだす。近くの建物の安全を確保して、簡単な拠点にしよう。いいか、パイパー?」

「とりあえず今日は一夜明かして、改めて調査しようって事? あぁ、構わないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 近隣のしっかりした建物を探して中を探ると、見事に空っぽのビルを見つけた。

 パイパーに手伝ってもらって小窓などを塞ぎフェラルや虫が忍び込んでくる可能性を潰した上で、適当な鉄板や廃材で焚火台を作って火を起こす。

 

「器用だねアンタ。ライター無しで火を起こすなんて」

「店で売っているライターも基本的にはジャンク品だ。いつ使えなくなってもおかしくないから出来るだけ温存していたいのさ」

 

 適当な形をしていた木材をいくつか見つけていたので、それと糸くずを使って火を起こす。

 もう慣れたものだ。

 キャラバンの連中、ライターあんま使わないというか、アイツらライターを煙草専用の発火器具と思ってるんじゃないかというくらいそれにしか使わない。

 

「しかしパイパー、本当に俺が先に寝てていいのか?」

 

 俺には驚異の人造人間ボディがあるから多少どころかかなり無茶が利くんだけど。

 

「聞いたらアンタ、大量のフェラルを片づけてすぐに大量のスーパーミュータントと戦争をして帰ってきたところにこれだろ? さすがにソイツは無茶じゃないかい?」

「……この前の行商の方がきつかったなぁ」

 

 デスクローの爪を文字通りミリ単位で躱しながら銃弾を叩き込んだら真後ろから突然ラッドスコーピオンが飛び出して毒針ぶっ刺そうとしてきて、それをなんとか避けたと思ったら二匹目のデスクローによる奇襲である。

 

 冗談抜きであの旅で俺が通った道はかなり危険度が下がったのではないだろうか。

 かなりの数のレイダーをちぎっては投げ、ミュータントをちぎっては投げ、光りし者を爆砕してきた。

 

「いいねぇ、アンタの事もぜひ記事にしたい。ねぇ、今度取材を受ける気はあるかい?」

「ん? あぁ、別に構わないよ。ちょうどダイヤモンドシティに行きたいと思ってたし」

「へぇ、そうかい。なら力になれるさ。案内は任せて」

 

 頼みますわ。久々にナットにも会いたいし。

 

「ま、それも今回の取材――というか調査が無事に終わればだね。ほら、とりあえずお湯でも飲んだら?」

「あぁ、ありがとうパイパー。もらうよ」

 

 焚火台から取り出した炭を他の鉄板に移して、それで温めていた金属製のケトルの注ぎ口から湯気が上がっている。

 パイパーは、それをゆっくり木製のカップに注いで差し出してくれた。

 

(優しい所は妹のナットに似てるなぁ、やっぱ。あの子よりもかなり気が強いけど)

 

 とりあえず、お言葉に甘えて白湯で体を温めたら少し眠ろう。

 実際、脳も含めて身体機能を限界まで酷使したのは事実だ……し……?

 

(……おい)

 

 とりあえず二,三口飲んで、人造人間ボディがそれがなんなのか素早く解析して結果をブレインに叩き付けた。

 

(なんで睡眠薬が混ぜられてるんですかねぇ、こんにゃろう……)

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

「……よし、寝たね」

 

 ロスト。ダイヤモンドシティでも少しずつ噂が広まっている謎のガンマン。

 

(だけど、あのケスラーという女は言葉の端々に、彼が自分の味方であるかのように振舞っていた)

 

 無論、流れ者の彼を自分の所に引き込むための布石という可能性はあるだろう。むしろ高いとパイパーは考えていた。

 でも、本当に彼がバンカーヒルの人間で、彼が一人で自分に付けられたのは護衛と同時に監視している可能性も彼女は無視できなかった。

 

(バンカーヒルそのものに被害が出ているからその可能性は低いと思うけど、何か隠したいことがあって彼を付けている可能性だってなくはない)

 

 パイパー・ライトは真実を暴き、それを広める事を自分の使命だと信じている。

 たとえわずかだろうとも、その邪魔になりうる要素は――すなわち自分へのお目付け役の可能性があるあの男には一度黙ってもらう必要があった。

 

(そもそも、一人で調べる予定だったしね)

 

 使い慣れた10mm拳銃を構えながら、下水道の通路をゆっくり歩いていく。

 

(大丈夫、多分マイアラークやフェラル・グールはいない)

 

 とにかく固い事で面倒なマイアラークだが、その住処にはいくつかの特徴がある。

 まずは卵。奴らは大体土のある所に四~八個ほどを産み付ける。

 これがあちこちになるのがマイアラークの住処の特徴だ。

 

 これがこういう地下によくいるフェラルなら、道の途中に奴らの死体が。――耐えきれなかったグールの死体が少しは転がっているハズだ。

 

(……悪い奴じゃない。それは分かってるんだけどね)

 

 ロストは万が一の時にと、回復用のスティムパックとは別に決して安くはないRADーXとMED-Xを二本ずつ渡していた。

 それぞれ対放射能と対毒の薬品である。

 事前に打っておけば、そういうものを武器とする敵との戦闘を多少は有利に進めてくれる。

 

 それらをパイパーは一本ずつ打っておく。

 不意打ちを受けたとしても、逃げるくらいの体力は残るだろう。スティムパックもある。

 

(起きたらキチンと謝ったうえで、なにかお礼しないと割に合わないね)

 

 パイパーから見て、ロストという男は極めて善性の男だった。

 比較的大人しいダイヤモンドシティでも中々お目にかかれない善人だ。

 それも腕の立つ善人。

 

 仲良くしておけば(・・・・・・・・)役に立つ場面は多い(・・・・・・・・・)

 

 咄嗟にそう考えてしまう自分に嫌気がさしながら、パイパーはさらに足を進める。

 

(昼の間にロストが水の汚染度を測ってたけど、それほど汚染はされてなかった。となると、ロストが言うように中になにかあるのかも)

 

 昼間にロストが言っていたように、下水道の内部で何か起こってるというのが正しいのだろうと、ピストルを握る手に力が入る。

 ミュータントの気配を感じたら撤退。

 もし、ロストが言うように崩落による事故の痕跡を見つけても同じく。

 

 そう決めてパイパーは身を低くして、ジリジリと下水道の通路を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 時間にしておよそ三十分ほど。

 足音を立てないように慎重に慎重にパイパーは歩き続けている。

 

 だが、一定だったその足は、徐々にリズムが狂いだしていた。

 

(肌がピリピリする。汚染源が近い)

 

 いつもはパイパーも持ち歩いているガイガーカウンターは、今回はロストの枕元に置いてきた。

 放射線に反応すれば音がなる装置だ。

 いわゆる犯人がいるとして、それが放射能をまき散らす生物ならば警報装置代わりになるだろう。

 

 それにこんな所で下手に音を立てれば、いるかもしれない敵対存在の気を引いてしまう。

 

 ジリジリと、ジリジリと。

 少しずつ歩く女性記者。

 

 下水道の奥へと集中していたその意識は――

 

 

 突然走った後頭部への強い衝撃によって掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

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