狂雷と一緒!   作:霧ケ峰リョク

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久しぶりの更新です。
大分書き方変わってるなぁ…………次回は漸く主人公達が帰国します。


帝国領内

「――――おお、申し訳ない。不甲斐無い。貴方達を救えなかった我らを許してほしい」

「そう思うんなら最初から現れるな」

 

 グシャリと音を立てて天使の頭部を砕く音が響き渡る。

 

「生き残りは、いないな?」

 

 周囲を見渡し、敵が居ないことに安堵の息を漏らす。

 天使達との戦闘は結果だけで言うならば人間側の勝利で終わった。

 尤も勝利したからといって素直に喜べるような状況では無く、後味の悪い結果になってしまったが。

 

「あうぅ…………」

「は、れ…………はれはれはれはれるや」

 

 難民達の大半が天使と言う名の悪魔の手によって大凡平常とはいえない精神状態に変えられてしまった。

 中には人としての原型を保っていない者もおり、そういった者達は介錯されることになった。

 如何に技術が発展し、メシア教に脳味噌を弄られた者を治療する事が出来るようになったとしても、身体が異形のソレに変貌した者を元に戻す術は無かった。

 

「よし、全員注意して運べ! まだ過激派の残党が残っているかもしれないからな!」

 

 軽鎧を身に纏った男が大声を上げて発狂した難民を連れて行く。

 発狂していない難民達はそんな彼等の後ろをついていく。

 そして当初からの目的地である神星ローマ帝国、ガイア連合ギリシャ支部に向かうのであった。

 

   +++

 

 神星ローマ帝国に到着した瞬間、難民の彼等彼女等はまるでファンタジーの世界に来たような気持ちに包まれた。

 核ミサイルの雨が降り注いで放射能が散らばった、とても生物が住める環境ではない程に荒れ果てた同じ大地にあるとは到底思えないくらいに生命が溢れた空間だったからだ。

 大理石製と思われる水路には透き通った透明な水が流れており、大地には金色に輝く稲穂や果実を実らせた大樹が無数に生えている。周囲一面等という次元では無い、文字通り地平線の彼方までだ。

 そして生えている稲穂や果実を農家と思わしき人達が採取している。

 目の前に広がる光景に難民達は言葉を失った。

 

「ここ、前まで街じゃなかったか?」

 

 土地勘のあった難民の内の一人が呟く。

 無数の稲穂が生える前、この地は確かに人間が営む街があった。

 だがこの地にはかつて人間が暮らしていた生活感は欠片も存在しない。

 

「核によって焼かれた際、陛下が毒を取り除いて水路を作り、デメテル様が豊穣を齎したんだ」

「それに加えてここは異界になっているらしくてな。空間が拡張されているらしい」

 

 兵士二人が難民の疑問に答える。

 だがその答えはとてもではないが信じられないものだった。

 異能がこの地に存在し、悪魔が跋扈するようになったのだとしても、それはあまりにも荒唐無稽な話だったからだ。

 

「信じられないのも理解出来る。だが事実だ。陛下曰く『ガイア連合の実力者ならばこれぐらいは出来る』ということらしい」

「それが本当なら、この終末も止められそうですが」

 

 これ程まで人間とは思えないような非常識な力を行使出来るのなら、世界がこうなる前に止められたのではないか。

 そういった疑問が難民達に湧く中、兵士の一人が首を横に振って否定する。

 

「陛下も何とか止めようとしていたが無理だったらしい。世界がこうなるのは必定、定められた運命だった。だからこそ、その破滅を最低限の被害に抑える方にシフトしたらしい」

 

 最低限、最低限でなおこれである。

 分かっていたとしても納得できるものじゃないのだ。

 もしガイア連合が全力で対処に当たっていたならば世界はこのような悲惨な事態に陥っていなかったのではないだろうか。

 尤も、この場にもしガイア連合の転生者が居たならば間違いなくこう思うだろう。

 

――――終末のバーゲンセールなんて対応出来るか、と。

 

「それじゃあ早く城下エリアに向かうぞ」

 

 異界と化した畑を抜けた先にあったのは古代ローマ、あるいは神聖ローマ帝国を連想させるような神秘的な街だった。

 建物一つ一つが現代のそれとは違うものの、芸術性を感じさせるような外観をしている。

 今までの難民生活に比べれば天国に来たかのような思いを抱く程だ。

 

「今日は林檎が安いよ! デメテル様のお墨付きだ!」

「焼きたてのパンは如何ですかー? デメテル様印の小麦で出来てますよー」

 

 人々の喧騒が賑わう光景を見て、難民の内の一人が地に膝をつく。

 そしてその相貌から涙が流れた。

 ようやく、ようやく安全な場所に来れた安堵感。

 それが難民達の心に安心を齎した。

 

「天使の被害を受けた者達は支部の治療室に運べ。一人も死なせるな!」

 

 今までの心労から解放されたことで安心感に包まれた難民達を尻目に兵士達のリーダーである男が数人の兵士に告げ、ガイア連合ギリシャ支部にして皇帝の居城に視線を向ける。

 視線の先には変わった外観の、ファンタジーとサイエンスが織り交ぜたかのような巨大な建築物が存在した。

 

「あ、あれがガイア連合の…………」

「ああ。ギリシャ支部長にして神星ローマ帝国の皇帝の居城だ。尤も、今は留守にしているが」

 

 この地域一帯を統べる皇帝が暮らす居城。

 主人が居ないにも見る者全てに圧倒的な威圧感を覚えさせる。

 

「あの城はガイア連合の支部も兼ねている。城とは言ってもその実8割ぐらいが支部のようなものだ」

「武器や装備を購入したり、デモニカの販売や整備も行っている。それ以外にも病院としても機能しているな」

「…………本当に、ここは天国みたいな場所ですね」

 

 あの地獄のような場所に比べれば本当に天国だ。

 そう思う難民達のリーダーの言葉を聞いて、兵士のリーダーは何かを思い出すかのように空を見上げた。

 

「最初からこんな風な場所だったわけじゃねぇんだ。元々は同じ瓦礫の山と焼け野原だったしな」

 

 世界が終末を迎えたあの日、イタリアのこの地を核の炎と悪魔の群れが襲った。

 老若男女関係無く人が死んでいく。違いなんて遅いか早いか、焼死か圧死か餓死か、もしくは食われて死ぬかしか無かった。

 そんな状況を変えたのがこの支部の支部長にして皇帝陛下である沢田綱吉だった。

 たった一人で空から降り注ぐ核の雨を防ぎ、人を襲っている悪魔を倒した。

 そして傷を負い、放射能に蝕まれた者達も救っている。

 

「ここは陛下が一人で頑張って作り上げた場所だ。オレ達は陛下に守られて、今も生きているんだ」

 

 今は落ち着いたが毎日のようにやってくる天使と過激派の群れ。

 その全てをほぼ一人で片付けていた。

 皇帝陛下という肩書を背負っていたとしても、神の如き強さを持っていたとしても、子どもが背負うにはあまりにも重過ぎるものだ。

 

「だからこそオレ達が守らないといけないんだ。陛下が命をかけて守った、その事実に見合う為に」

 

 あの時命を救われた兵士の男は強く決意した。

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