これがギリシャ支部の一日の流れとなります。
時刻は早朝の6時30分。
日本に居た頃ならばまだ夢の中に居る時間帯なのだが、不本意とはいえギリシャ支部の支部長になってしまった以上、何時までも眠り続けるわけにはいかない。
今すぐにでも二度寝したいという欲求に抗いながら顔を水で洗い、意識を覚醒させる。
「さて、と…………」
欠伸しながら窓の外に視線を向ける。
「うん、いつも通りの光景だ」
ギリシャ支部でもあり、現在のオレの家でもあるこの城から見える風景。
住み始めた当初はかなり違和感を感じていたが、住めば都と言えば良いのか、今ではすっかり慣れてしまった。
「いつも通り、過激派が進軍してるよ」
窓の外、このギリシャ支部から遠く離れた場所で天使と改造人間、洗脳された人間達が群れを成して此方に向かっていた。
群れを率いているのは大天使相当の悪魔で、その数は三体。天使、人間を含めれば総勢五百ぐらいだろうか。それだけの数の軍勢が東西南北から襲い掛かって来ている。
これがギリシャ支部を設立してから毎朝見る光景である。
本当、これが毎日あるのが普通になってしまった。最初の方こそ辟易していたけど、今では何とも思わない。
こんな惨状に慣れてしまった。その事実に物凄く悲しくなりながら、この間過激派の拠点を潰した時に手に入れた剣を持ち、窓から外に飛び出す。
「そういえば、あいつ等どうやって人手を確保してるんだ?」
毎日毎日飽きてしまうぐらい過激派を駆除しているのだけれど、過激派の数は一向に減る気配が無い。
死体だって蘇らないように燃やしているというのに。
まさか本当に畑から生えているわけじゃないだろうし、ヒャッハーなら実際湧いてそうだけど。
「まさか、クローン?」
メシア教ならやりかねん、というか実際やる。
亡骸でさえ蘇らせて、その上で脳みそを弄って自らの尖兵に変えるのだから。
「いや、関係無い。どちらにしろ…………皆殺しだ!!」
スマイルチャージ、コンセントレイトを重ね掛けしたアンティクトンをぶっ放す。
四回程同じことを繰り返し、それが開戦の合図となった。
「朝っぱらから騒々しい奴だなおい! なぁ、綱吉ぃ!!」
アンティクトンを放ち、北側から攻め込んでくる過激派を尻目にオレの隣に現れたゼウスに話しかける
「文句があるならあいつ等に言え。オレは北側を受け持つからゼウスは南側。全滅させ次第西側、東側の順に移るからそっちも終わったら東側をよろしく」
「相変わらず神使いが荒い奴だ。お前じゃなきゃぶん殴ってたぜ」
「やらなきゃこっちが死ぬからな。デメテル、居る?」
「居ますわよー。もしかして私の力が必要なんですのね?」
「悪いけどデメテルは待機。もし民に被害が出たら片っ端から回復よろしく」
「…………分かりましたわ、綱吉も気を付けてくださいですのー!」
ゼウスとデメテルの二人にそう告げ、オレは北側に向かって跳躍した。
ペルソナ使い程高速で移動は出来ないが、覚醒者になったオレの肉体強度は異常なまでに頑強だ。
凄まじい速度で城から離れ、領域から離れ、メシア教過激派の軍勢が居る所に到達する。
さっきのアンティクトンで先制ダメージを与える事が出来たけど、やっぱり距離が遠かったせいか倒せた数は少ない。
「先に言っておく、命が惜しい奴はとっとと帰れ」
剣を片手に携えて、敵地のど真ん中でそう言い放つ。
だが人間から返事が返って来ることは無い。人間の物とは思えない機械的な口調で「教敵発見、排除します」と繰り返すだけだった。
「罪深き者よ。悪魔と手を組み、その手を血で汚した悍ましき者よ。その罪、その命をもってして贖ってもら――――」
「お前等には聞いてないよ。どうせ皆殺しにするつもりだったから」
喋っていた天使の首を剣で刎ね、ついで他の天使達も斬り殺す。
「貴様! この期に及んでまだ罪を重ねるだけでなく、その聖剣デュランダルを我等の血で汚すのか!!」
「へー、この剣、デュランダルって言うのか」
メシア教過激派のアジトを強襲した時に手に入れて以来使ってたけど、まさかそんな代物だとは思わなかった。
やけに切れ味が良くて、雑に使っても頑丈で、ゼウスがこの剣を見て「ほぉ、オレ達の所に戻って来たか」とか意味深な事を言ってたから何かあるとは思ってたけど。
「まぁ、どうでも良いか」
武器なんて何を使っても変わらない。
壊れないのは美点だし、買い替える必要が無いからそれはそれで良い。
だけどそれだけだ。ガイア連合の皆はスコップや丸太、挙句の果てにはところてんマグナムで戦っている者も居るんだ。
要は倒せれば良い。
「じゃあ、死ね。冥界破」
デュランダルの斬撃を乗せた攻撃を全員に向けて放つ。
これがガイア連合ギリシャ支部の毎朝の日課である。
+++
毎朝の日課が終了し、シャワーで血を洗い流してから朝食の時間となる。
時刻は7時30分。書類に目を通しながらメイド達が持って来た食事を食べる。
「ん、このパン美味しい」
「そうでしょう! このパンを作る元になった小麦の実りはとっても凄かったんですの! 正にハーベストですわ!!」
朝食のパンの味に感心してるとデメテルが無い胸を張って誇らしそうにしていた。
流石は豊穣神。核で荒廃した大地を再生させ、ここまでの作物を実らせるとは。
ガイア連合お手製の小麦との相性も良かったのだろうが、やっぱり凄い。
「ありがとデメテル。本当に助かるよ」
「でしたら私を仲――――」
「そんじゃ、今日も一日頑張ろうと」
朝食を食べ終えて立ち上がり、部屋を後にする。
その際、デメテルが何故かプルプルと震えていたような気がしたが気のせいだろう。
「さて、と…………仕事するまでちょっと時間があるな」
朝食が終わったら昼食までの間、ガイア連合の支部長として書類仕事がある。
だけどレベルが上がり強くなったおかげか、今日は比較的早く掃討する事が出来た。
この僅かな暇をどのように過ごすか。
「よし、運営にメール送ろう」
日本に居た時は学生だったから人型シキガミは持たなかったけど、今ならば関係無い。
自分好みのシキガミを注文しよう。
後は他にデモニカとか、回復アイテムとかもだ。
「取り敢えずメール1万件ぐらい送るか」
――――この後、呪われたせいでトイレに篭りながら仕事をする羽目になった。
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ショタオジの呪いから解放され、なんとか昼食を終えると午後の過激派狩りの時間帯となった。
朝の時同様何処でこれだけの人数を集めているのか、その事に疑問を覚えながら殲滅していく。
時刻は午後3時。全滅させるのに思っていたよりも時間が掛かってしまった。
全ての過激派を倒し終えると、今度は会議の時間である。
会議室に集まったのはゼウスやデメテル、他には現地の覚醒者達のまとめ役数人にメシア教の穏健派だった。
「結論から話すけど、やっぱり人手が足りないか」
結局のところこの一言に尽きるのだろう。
半終末によって覚醒者の数そのものは増えている。が、目覚めたての覚醒者が束になった程度では何人居ても襲撃してくる過激派の群れを相手にすることは出来ない。
雑魚悪魔なら問題は無いし、そいつ等を倒してレベルアップすればある程度は使えるようになるが、それでも人手が足りない。
「デモニカが届くまでの間は今まで通りでやるしかない、か…………」
「そのデモニカってやつ。そんなに便利な代物なのか?」
「あれば少しはマシになる程度だよ」
ゼウスの問いにそう答える。正直な話、今はマンパワーが欲しい。
戦える人が多ければ多い程、こっちも力を大天使や強い天使の討伐に力を入れられるし、雑魚の相手を任せられる。
本当にデモニカ様々だ。最初の方欠陥兵器とか言ってごめんなさい。
「取り敢えず、届くまではいつものようにオレが頑張れば――――」
「報告します!! 街の中で潜伏していたと思われる過激派が大天使を召喚しました! 現場の兵が抑え込んでる為被害はまだ軽微ですが、それも時間の問題かと!!」
会議室に突撃してきた兵の言葉に頭を悩ませる。
本当に度し難い。会議の時間くらいさせてくれよ。
心の中でそう思いながら剣を片手に窓から飛び降りた。
この後、大天使と過激派を駆逐し、夕食を取った後、お風呂に入って身体を清めて残った仕事を片付ける。
仕事が終わるのは大体午後11時ぐらいで、身体に溜まった疲労感から泥のように眠りにつく。
――――以上、その日によって襲撃が増える事があるものの、これがガイア連合ギリシャ支部の日常である。
書いてて思ったこと、何だこの地獄。