狂雷と一緒!   作:霧ケ峰リョク

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今回は主人公の苦手なものです。
そろそろ日本に戻る予定。


メシア教過激派と穏健派

 半終末を迎えたこの地上で別の大陸に向かうには海路、即ち船が必要になる。

 貿易は勿論のこと、人の移動も船で移動する。空路に比べれば時間がかなり掛かってしまうがそれも仕方の無い話。空には無数の悪魔が跋扈しているのだから。

 いくら覚醒しようとも人間は基本的に地を這う生き物だ。

 相手が此方に近付いて来ない限り、同じ高さの場所に移動しない限りダメージを与える事は出来ない。ゲームとは違うのだ。

 

「うぎゃっ!!?」

「これで三百体目ぇ!!」

 

 大気を蹴って空を駆けながら、空を飛んでいる鬱陶しい天使を剣で斬り殺していく。

 人間頑張ればなんとか出来るものだ。

 まぁ、ショタオジも似たような事やってたし、一流の覚醒者は空を駆ける事も出来るのだろう。多分、ゲームの主人公もこうやって戦っていたに違いない。

 そう考えながらアンティクトンを放ち、他の天使達も一掃する。

 

「本当にしつこいなぁ…………ゴキブリのように湧き出てきやがって」

 

 まだゴキブリの方が可愛げがある。というかゴキブリの方が愛らしい。

 過激派のアジトを潰しまくってから暫くの時が流れた。

 拠点となる場所を失った過激派達はそれでも飽きる事無く、ギリシャ支部に襲撃を仕掛けて来た。

 とはいえ、しっかりとした戦力を整える場所を失った奴等は前程の勢いは失った。

 尤も、それが良かったかと聞かれればそういうわけではない。数と暴力でごり押ししてきたかつての過激派とは違い、今の過激派は限られた手でどうにかして此方の戦力を削る方法を選んできやがる。

 狂信者達に爆弾を持たせて突撃させ、確実に此方の兵力を削いでいく。

 本当に厄介だ。それに加えて大天使を召喚出来なくなったからか、天使達も手段を選ばなくなり上空から爆弾を持って急速降下してくる始末。

 まぁ、こんな奴等でもお金にはなるんだからまだマシか――――いや、全然マシじゃねぇクソが。

 

「あいつ等の何処が唯一神の僕なんだか」

 

 あそこまで無慙な姿を見せられると逆に憐れに思える。

 

「ゼウス。とどめさしちゃって」

「おう! マハジオバリオン!!」

 

 ゼウスにお願いして極大威力の雷属性の攻撃が天高く撃ちあげられる。

 放たれた雷は空に吸い込まれ、雷神の権能と合わさり雲の上に居た天使達が一瞬で感電した。

 持っていたであろう爆弾が爆発する音とともに黒焦げの天使たちが雨のように降って来る。

 

「神の為と謡っている癖に、その神を信じる人達を生け贄に捧げてちゃ意味が無いだろうに」

「――――おっしゃるとおりですねぇ」

 

 背後から男のものと思われる声が聞こえた。

 敵ではない。敵ではないのだが、出来る事ならあまり会話したくはない類の相手だ。

 オレは声がした方向に視線を向ける。

 

「何か用? マンセマット」

 

 大天使マンセマット。神の敵意という異名の大天使であり、このギリシャ支部における穏健派の実質的なトップだ。

 本当、何でこのペ天使がオレの所に居るんだろうか。こういうのはショタオジか霊視ニキが担当すべき事だろうに。

 今からでも梱包して送った方が良いだろうか。

 

「これはこれは、随分と不機嫌なんですね」

「不機嫌にもなるだろうよ。こんな事ばっかりされてたらさ」

 

 マンセマットに本音をぶつける。

 こいつ相手に嘘を言うのは得策じゃないし、そもそも隠す必要も無い。

 

「てか後ろに立つな。敵の大天使と勘違いして攻撃しそうになる」

「申し訳ない。ですが貴方の反応がね、面白くてつい」

 

 ニコニコと不快な笑みを浮かべるマンセマットに一歩引く。

 やっぱり、こいつ本当に苦手。今度絶対にショタオジか霊視ニキに押し付けてやる。

 

「それはそれとしてマンセマット。何度も聞くかもしれないけど、お前等穏健派って過激派に攻撃しても良いのかよ」

「ええ、彼等は主の意志に反する悪魔。我等は意志を代行する天使ですのでなんら問題はありません。人の世はあくまで人が動かすべきなのです。そこに我等が介入する道理はありません」

 

 オレの問いにきっぱりとそう言い切ったマンセマット。

 その言葉に嘘は無いのだろう。だけれど、やっぱり心の何処かで何かを嘲笑っているのだろうか、嫌な笑みを浮かべていた。

 これがオレの勝手な思い込みかどうかは分からないけど、どちらにしろ関係無いか。

 それよりも、だ。丁度良い機会だからもう一つ聞いた方が良いだろう。

 この世界がメガテンの世界だと知り、メシア教に穏健派があると気付いた時から何となく疑問に思っていたことを。

 

「…………単刀直入に聞くけどさ、お前等穏健派って――――」

 

 マンセマットにもう一つ質問をしようとして口を噤み、それでも好奇心の方が勝ってしまって問いを言う。

 

「サタンの配下なんじゃないのか?」

 

 その質問をした瞬間、世界が凍り付いた気がした。

 マンセマットもオレがした質問の意図が理解できないのか嫌な笑みを浮かべたまま固まっている。

 

――――サタン。

 

 それはあの明けの明星ルシファーと対を成す魔王であり、天使であり、神霊である。

 一番最初の天使である原天使であり、その権能は裁くことに特化している、創造主である四文字すら例外無く裁く神の裁き。

 試す者としての側面も持っているが根本的に他の天使達と一線を画す存在。

 他の天使達はどうか知らないが、間違いなくこいつだけは四文字の声が聞こえている筈だ。

 

「どうしてそう思ったのでしょうか?」

「何となく、って言っても納得してくれないだろうから本当の事を言うけど、日本の穏健派のトップである幸子さんを見た時から」

 

 当時、ガイア連合の幹部の一人として穏健派と会議を行った時、何度か顔を会わせる時があった。

 そしてこう思ったのだ。表情や態度に反して、随分と機械的な人だと。

 その時からだ。オレが他の皆とは違う意味で穏健派に対して警戒をしていたのは。もしかしたらオレと同じ意味で警戒しているのも居るかもしれないが、正直今はどうでも良い。

 オレの懸念が間違っていたら取り越し苦労で済む話。だけどオレの懸念が正しかったら――――。

 

「もしかしたら幸子さんがサタンなのかもしれない、オレはそう考えている」

「…………………………」

「まぁ、あくまでオレの勝手な推測。間違っているなら間違っているって言って良いから――――」

 

 最後まで言う前にマンセマットの顔を見て、何も言えなくなった。

 何故なら、マンセマットが笑っていたから。

 ニコニコ、ニコニコ、ニコニコニコニコニコニコと。他人を嘲笑っているような嫌な笑みではなく、心の底からオレの事を称賛するような笑みを浮かべて。

 

「失礼、貴方の事を軽んじていたこと、謝罪させてください。貴方は自分の強さに溺れている人間ではない。貴方はあらゆる可能性に目を向けている、皇帝に相応しい思慮深い人間だ」

「う、うん…………」

「ですが私からは何とも言えません。なので貴方の考察が当たっているか、外れているのか、答えないでおきます」

「…………そっか」

「沢田綱吉。私が貴方に上げたプレゼントには罠等といったものは仕掛けてはいません。大天使マンセマットの名において、これだけは保証します」

「…………」

「貴方に神の御加護があらん事を」

 

 そう言ってマンセマットは去っていった。

 音が何も聞こえなくなったような気がした。実際、気のせいだとは思う。

 だけど本当に音と言う概念が消えてなくなったような気がした。

 オレの考察が当たっていたかどうかは分からない。もしかしたら全部外れていた事だってありえる。

 ただ穏健派に対して抱いていた警戒は間違っていなかったのだと思い知らされた。

 

「綱吉、大丈夫か!?」

「なんて酷い顔色ですの!? あのペ天使に何を言われたんですの!?」

 

 姿を現したゼウスとデメテルの二人の声が耳に響く。

 この二人の声が今ではとても嬉しかった。

 

「大丈夫だよ。二人とも…………」

「そんな顔をして大丈夫なんて言われても説得力がありませんわ! 城に戻って休むべきですわ! 良い葉っぱが手に入りましたの、とってもハーベストですの!! そのお茶を飲んで休むべきですの!」

 

 半ば強引にデメテルに連れ戻され、執務室に座らせられる。

 

「…………ありがとう」

「気にしないでくださいませ! ほら、お茶ですの!」

 

 デメテルからお茶を受け取り一口飲む。

 とっても良い香りだ。心が落ち着く素晴らしい、まさにハーベストだ。

 

「にしてもあの野郎。保護してやったってのに、潰すか?」

「潰さなくて良いよ。むしろ、潰すわけにはいかなくなった」

 

 仮に潰す事になるとしてももっと後だ。

 出来る事ならそんな事が起こらなければ良いのだが。

 

「それに、丁度良い機会だし――――」

「あん、何だ?」

 

 本当はこんな物を使いたくは無かったのだけれど仕方が無い。

 オレはマンセマットから受け取ったある物を手に取り、覚悟を決める。

 

「ゼウス、デメテル。オレと契約を結び、仲魔になってほしい」

 

 マンセマットから貰った、この悪魔召喚プログラムを使う事を。

 

「そして三日後、日本に行く前にオリュンポス12神を一体解放する」

 

   +++

 

 そこは世に言うメシア教過激派が集う聖地。

 かつて様々な宗派が集まっていた其処は、今ではメシア教過激派で埋め尽くされていた。

 尤も、当人達の殆どは自分達の事を過激派なんて思ってなく、むしろ自分達こそが正義なのだと心の底から思っているのだろう。

 そして残った僅かな人間達は心の底から絶望していた。

 

――――どうしてこうなったのだろうか。

 

 本当の意味でまともな人間達は誰も彼もがそう思う。

 だがその答えが出る事は無かった。出るわけが無かった。

 出ていたならばこんな場所に今も居るわけが無いのだから。

 

「――――皆の者、集まったか?」

 

 大天使の言葉に誰も彼もが跪く。

 

「諸君、我等の救済を邪魔しているガイア連合。彼等についての知識を手に入れた」

「ガイア連合の盟主、極東の地において異教の教えを広めた罪深き者」

「我等の祝福を受けておきながら逃げ出し、愚かにも逆恨みし我等に敵対する者」

「北米の地にて邪神、魔王、そして我等を相手に立ち回る魔人を連れた狩人」

「かつての罪深き都を造り上げ、悪魔を神と祀った皇帝」

 

「他にも多数居るが――――全員、我等が戦わなければならない巨悪である」

 

 その言葉と共に歓声が鳴り響く。

 

「そして新たに我等の同胞に加わった彼に敬意を。彼はガイア連合に所属していたが我等の救いに共感し、神敵なるガイア連合の事を話してくれた彼に最大の感謝を――――!!」

「彼の名は上条――――否、それは捨てた名だったな。彼の名はモズグス! 我等と共に世界を救済し、千年王国を建国する者なり!!」

 

 この日、一人の転生者が神の戦士になっ(尊厳を踏み躙られ)た。




海外で活躍している転生者も居る。
なら海外でメシアンになった転生者だって居る筈なのです。

怒られないよね?
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