挿絵はめんだこさんに描いていただきました!
https://twitter.com/KaidoShin
浮遊城に新しい英雄がやって来た。
その人物はサキュバスでありながら冒険家に強い憧れ持ち、見事その夢を叶えるに至った。その者の名はユズ、ダンジョン王国に出向いていた女騎士が連れてきた。
2人はダンジョン王国にあるサキュバス村のサキュバス養成学校で出会う。
細かな事は省くが、そこでユズは偶然出会った女騎士と共に特級冒険家の試験を受けて見事合格、晴れて冒険家としての道を歩む事になった。
その様な経緯もあり、ユズは女騎士の事を『相棒』と呼び信頼している。
女騎士もそれに応えるようユズと共に雪山や映画の街、はたまた過去を遡ったりと様々な冒険してきた。
今や2人は言葉や形だけではない互いに背中を預け合う真の相棒となっていた。
そんな2人も冒険がない日はのんびりと過ごす。
場所はオープンカフェin浮遊城店、英雄達が日々の疲れを癒す憩いの空間、混雑しているカフェの中に女騎士とユズはいた。
ユズはパフェを、女騎士はケーキを注文していて少しの時間の後、注文したスイーツがテーブルに並ぶ。
「はい相棒、あーん」
ユズがパフェを一口、スプーンで掬い上げて女騎士の口元へと運ぶ。
女騎士はユズから差し出されたパフェを食べる。
「どう相棒、美味しい?」
美味しいよと言うように頷く女騎士。
「えへへー、じゃあ私も…あーん」
ニコニコとしながら口を開けるユズ。
女騎士はフォークで刺したケーキをユズの口に運ぶ。
「うーん、やっぱりここのケーキは美味しいね!相棒が食べさせてくれたからもっと美味しい!」
ユズは幸せそうに言い、女騎士もそんなユズを見て照れ臭そうに笑う。
「あーもう見てらんない!ちょっと、そこの脳筋と悪魔!公共の場でイチャイチャしないでくれる!」
カフェの客の1人、ティタン族のエンジニアのマリアンが声を張り上げる。
「イチャイチャって…私は相棒とスイーツのシェアをしていただけだよ?」
「そうね、確かに女子ってのはみんなで集まってお菓子を分け合う…それは隠キャな私も理解はしてるわ」
うんうんとマリアンは頷いた後2人を見る。
「でもね!毎回毎回ここにきてそれを見せつけられる側の気持ちになりなさい!貴方達は付き合いたてのカップルか何か!?ここのケーキ食べる前に客全員が胸焼けしちゃうわ!」
「ちょ…ちょっと!私と相棒はそんな関係じゃないって!ねえ相棒?」
マリアンの言葉に慌てているユズの問いかけに、女騎士は肯定する様に頷く。
「だよね!…あっ、相棒ちょっと待って」
ユズは女騎士の顔に手を近づけて、指で頬を撫でる。
「相棒、ほっぺにクリームついてたよ?」
ユズは指で拭ったクリームをペロリと舐める。
「それよそれ!それだって言ってんの!」
「「?」」
声を荒げるマリアン、2人は何でマリアンが荒れているのか分かってない様子だった。
「あーもう付き合いきれない!このカフェ、最初は良いところかもって通い始めたけどもうやめ!軌道エレベーターの資材置き場の方が誰もいないしそこに行こ!」
2人に呆れたのかマリアンはそのままカフェを出て行った。
「マリアンさん、どうしたんだろう?」
女騎士はマリアンにも色々あるんだよとユズに言う。
「そうなんだ、マリアンさんも大変なんだね」
心配そうにマリアンが出て行った扉の方を見るユズ。
しばらくすると何か思い出したのか女騎士の方へ顔を向き直した。
「相棒!また部屋に泊まりにいっていい?」
ユズはオフの日、大抵女騎士の部屋に遊びに行く、そしてそのまま泊まる事もある。
良いよと頷く女騎士。
「やった!そうだ相棒、この間ベッドで一緒に寝てた時、相棒の寝相が悪くてブランケット全部持ってかれちゃって寒かったんだから!」
実はこの2人、寝るときは別々のベッドではなく1つのベッドで一緒に寝ているのである。しかも毎回。
「今度同じ事したら相棒を抱いて(湯たんぽ代わりに)暖を取るからね!」
大勢の前でさらっとすごい発言をするユズ。
「おや…メイリル見て下さい、こんなところに綺麗な百合の花が」
オープンカフェのすぐ向かいにある花壇、豊穣神の使徒であるバリがそこに咲く花達を眺めながら呟く。
不意に聞こえたバリの言葉に何故か一部の客が反応をしたが、バリは花の話をしていただけであり、変な事は何一つ言っていない。
「あっ、もうこんな時間!この後は一緒に温泉だったよね、早く行こう!」
立ち上かったユズが女騎士の手を握り、繋いだままカフェを出る。ようやく甘ったるさから解放されると喜ぶ客と、もう少し見ていたかったと思う客が半々くらいの割合でいた。
再確認であるが、この2人の関係は相棒同士なだけで浮遊城にいる大半の英雄達が思っているような関係ではないのだ。多分。