もんくえ津々浦々の初期と比べても流石のすんごい伸び率で驚愕すると共に……そうやって界隈が盛り上がるのは素晴らしい事だと嬉し涙を流す日々であります。ほろり。
ぱらじゃなくてくえの二次も増えろ(本音)
「さて、と……」
「…………」
ゴルド火山洞窟内。そこに足を踏み入れるドウェルガ出身組の一行は、順当と言えば順当ではある重たい沈黙に覆われていた。
彼らは麓に残ったあの二人組と分かれて以降一言も口を
当然だろう。いくら幼馴染とはいえ片方が片方を突き放し続けた結果は、二人の間に決して癒えきらない傷痕を残す結果となった。
耐え難いほどの気まずい雰囲気——ひしひしと感じながらも、この組み合わせを提案したのは他でもないマクニアである。
ここで今どうしても二人きりになりたかったからだ。こんな機会は、またとない。
「ねえ、アンタは一度ここに来たことあるでしょ」
言葉を選ぶのも慎重に、あくまでも何気ない会話として体裁を整える。
「単なる司祭長が就任ついでに四大精霊と契約して帰ってくるなんて話は
「特には変わらん。ただ……竜の気配を感じない」
「竜の?」
「”かがり火年”に起こっているのは竜族が大量発生する現象そのものじゃない。あくまで普通は表に出てこないような連中が活発に動くようになるだけだ」
ここからは推測になるが、と付け加えながら。
「総数は変わらないのに大半が外まで出てくるとすれば……逆にヤツらの本来の
「へえ……」
「…………」
語り聞かせるというよりは自分の考えを整理するためといった様子で一本調子に喋り終わった瞬間押し黙るエリックに対し——少女は単純にこう思った。
(隙が……隙が全然ない……!!)
必要な事を必要なだけ喋る。終わり。同行しなければならなくなった以上最低限の言葉は交わすが「ただそれだけだ」と言外に突き放しているつもり、といったところか。
まるでこちらに歩み寄る気のない温度感ゼロの受け答えには流石のマクニアといえど閉口した。”何気ない語りかけからどうにか会話を膨らませて事の真相を突き止めてやろう”という当初の目論見は改めないといけないらしい。
「……あのさぁ、もう止めにしない? 今更全部を隠そうなんて絶対無理だよ。アンタだって……辛いでしょ」
熱気の篭る暗い洞窟の中を歩き進み、その中で一歩分だけ前に出ながら半ば確信をもって問い掛ける。
自分を守るために突き放そうとしてくれているのは知っている。それでも彼の口から聞かなければいけないのだ。
いつか取り返しのつかない事になってしまう前に、何としてでも。
「確かに、今のアンタと姉さんがやってることは最低だよ。はるばる遠いところからやってきたあの二人を騙してこんな場所に連れてくるし……それを止めようとしたあたしをぶん殴って道端に捨ててったのなんて一生恨んでやるからね」
「…………」
「でもっ……それだけじゃない。たとえ取り返しのつかない事をしても、こんなになった今からでも私とアンタとの間にはまだ何か残っているものがあるはずだって。まだ少しも疑ってなんかいないから……性懲りもなくこんな所までついて来れたんだよ」
言いたくて、言いたくて、それでも面と向かって口にすることさえ敵わなかったこの想い。
「だから、さぁ……」
私を、見てよ。
「っ……」
最後の台詞を声に出す事はついに出来なかった。薄々勘付いている事ではあっても、それは今のエリックが自分の訴えを歯牙に掛けようともしていないという事実を認める最後の一線を越える事だからだ。
会話が、
地面から湧き出す溶岩の気配が奥に進む度に強まるのとはまるで対照的に、二人の間にある”何か”は確実に冷えていく。
「戻るぞ。ここは安全だ」
「……うん」
無駄なく。予定通りに。それは
何も変えられない。何も変わっていない。取るに足りない自分に出来る事など高が知れていると、分かっていた事を改めて突き付けられに来ただけか。
それなら、どうして、私は。
「サラマンダーは、オレに語りかけなくなった」
それが”身の上話”だと認識するまで、マクニアにはたっぷり十秒以上の時間が必要だった。
やおらに立ち止まったエリックの背中にぶつかりそうになりつつ、あまりに突然の告白に目を
「この……仕事を始めてからだ。今日はたった数秒だけ声が聞こえたような気もしたが、今になってみりゃ追い詰められたせいで頭に焼き付いた只の幻覚だったんじゃないかと思う」
「えっ……え?」
「お前も話したことがあるから知ってるだろ——アイツはいい奴だ。そんなサラマンダーが口も利かなくなるようなら、オレは、きっと間違った場所にいるんだろう」
滔々と、人が変わったように、堰が切れたかのように。語り続けるその顔は、今まで見た事がないほどに——
「だからマクニア、これはお前みたいなヤツが関わっていい話じゃ……」
「……ふざッ、けんな!!」
見たくはなかった。
彼の、そんなにも悲しそうな顔は。
「火の精霊は
「………………」
「分かるよ、周りの誰かが応えてくれないなら自分のやっている事は間違ってるんじゃないかって、そう不安になる気持ちは! 私が、一番!!」
唇をわななかせ、目に涙さえ浮かべながら——マクニアはやり場のない思いから男の胸倉に掴み掛かっていた。
「でも違う、違うんだ。裏で何をしていようが、何があっても、
それは根拠など全く伴わない、ある種の感情の発露でしかなかった。事実を知ってなお受け止められる保証なんてどこにもない。
だがそれを自覚しながら——それでも少女は迷いなく断言する事ができる。
そして、その上で。
「駄目なんだよ」
そっと、いとも柔らかい手付きでマクニアの腕を掴み返したエリックは名残惜しむような色すらを覗かせながら、己を掴む小さな指を一本ずつ丁寧にゆっくりと
「ここでお前に全部を話すのは簡単だが」
「…………」
「それは”逃げ”だ。この道を選んだオレたちの選択から目を逸らして、何もかもから逃げ出そうとするそれだけは、絶対に許しちゃいけない事だ」
だから、と続け。
「お願いだ……何も言わせないでくれ。これはお前を守る為じゃない。今までやってきた事を、他でもないオレが否定したくないからだ」
初めて、彼が
息が詰まる。胸が、張り裂けそうになる。
「なに。なんなの、それ。ほんっ、とに……ずるいよ、そんなの」
「分かってる」
「分かって、ないよ……」
「…………」
「こんなになっても、謝らないんだね……」
「……そうだ、謝らない」
「うん、……うん……」
片方は涙を流し、片方は口を固く結び。
見つめ合う二人は、やがてどちらからともなく洞窟の出口へと向かって再び歩き出す。
「……戻るぞ。ここは安全だ」
「うん……」
◼️◼️◼️
「うッぷ……もうやめっ、」
「ダハハハ!! まだいけるじゃろぉ〜、飲め飲めェ!!」
所変わって、ゴルド火山洞窟前。
突如現れた白髪の竜人に無理やり酒を押し付けられた”賢者”は
彼の名誉のため補足すると……当初、一応は全力での拒絶を試みてはいた。当然だ、何が入ってるかも分からない魔物の飲み物を敵地で差し出され、しかもそれを素直に頂戴する間抜けがどこにいるかという話。
それをニコニコ笑顔で簡単に組み伏せてはあれよあれよという間に隣に座らせて宴を始め出したこの魔物が悪いのであって、その朦朧とした頭をがっちり脇で固められながら理不尽に苛まれている哀れな”賢者”は特に何も悪くなかったりするのだった。
「んぐ、ぐっ……ぶはぁ〜〜。なるほどのぅ、人の身で魔法を身に付けるための修行、それで儂の山までやってきたとな! 殊勝、殊勝なことじゃあのう!」
「も、もうらめへくれあぇ……助けてくれぁ、ふろめすてぃん……」
何か意識がでろでろにぼやけている間にかなりの事を口走ってしまっている気がする、と一刻も早く状況を脱すべく助けを求めて辺りを見回した。首を回せる角度は極めて限られていたが、それでも必死にだ。
「うっ……!?」
そうして見つけたのは——うつ伏せになってぐったりと倒れて動かないプロメスティンの姿だった。
「な、なにを……てめえ、しやがった!? おい、大丈夫かぁ!!」
「……ん? 何ぞあれ……え、どうしたんじゃ? 知らん知らん」
「えっ」
わりと本気の困惑顔になった竜人はどうやら彼の視線を辿ってようやく人が倒れていることに気がついたらしい。
それじゃ一体どうして……と、抵抗するのも締め付けるのも忘れて二人はごくりと生唾を飲み込みながら暫しプロメスティンを黙って眺めた。すると……
「……◯×☆だって」
「「は……?」」
「なんだって貴女がこんな所にいるのか、ぜひ説明してもらおうか……」
起き上がると同時、ぽろりと眼鏡が地に落ちる。
赤ら顔に虚ろな目をしたプロメスティンは口調も常のそれではなく……というか、それと似たような状態は”賢者”の記憶にも新しかったのだが。
「い、いや……そもそもここ儂の山で、ってそれさっき言うたんじゃけど。なんぞ、めったに眠りこけて目が覚めないぐらいで人を死んだもの扱いか?」
「よ、酔っぱらってる。あいつ、まずい……あいつ今なんにもかんがえてないぞ……」
「えっ、なんで!? 儂あんな子どもに呑ませた記憶なんてないんじゃけど!? てか考えてないって何!?」
「極上の素材……手始めに皮膚片か、それとも体液か……ククク……」
「えーーっ!? なんか凄い怖いこと言うてこっち近寄ってきてない!? ねぇあれ大丈夫なのねぇ!!?」
「た、たぶん、
がくっ、と首から力が抜け落ちる。辛うじて意識を手放してはいないとはいえ彼もいよいよ限界らしかった。自業自得で意図せず孤軍奮闘を強いられることになった竜人は冷や汗をかきつつも——
「おっ、おうおうおう!」
ばすっ! と思い切り飛び掛かってくるプロメスティンを片手で抱きとめ、仰向けに倒れながらも遂にはすっぽり二人ともを両脇に抱え込んでしまった。
「……ぶはっ、ぶははは!! なんじゃなんじゃ、口にもせんで酒精に酔うたか! なんとも愉快で可愛らしいのう! 聞いておるかぁ、おいっ、豆っこ天使ちゃん〜!」
「#*♪※……」
「うっぷ……ちくしょ、なんなんだ……もう……」
たちの悪い酔っ払い三人、ここに極まれり。
意味のわからない呻き声がぐうぐうと響く中で、ただ乱入者の竜人だけはからからと笑いながらしばらく夕焼け空を見上げているのだった。
「いやぁ……今日はいい日じゃ。ほんとはぬしらみたいな絶好の獲物、一族みんなのためにも見逃すべきじゃないんじゃがのう……」
うぬぬと悩むようなそぶりを見せつつ、腕の中にてうごうご藻搔く二人をがっちり固めながらも一つ頷き——
「ようし分かった! 見事ここまで来られた縁じゃ。その修行が終わるまでみんなに手出しはさせんでゆっくりしてけい!! この儂が名に懸け、無事に最後まで見送ったるわい!!」
呵々大笑の響きと共に、こうして一行の安全を確約する旨の宣言が力強くなされたのだった。
「おっ……帰ってきたな、小僧っ子」
仰向けのまま。すやすやと眠り始めた二人を優しく撫でていた白の竜人は、驚愕の表情で立ち尽くすエリックをゆるりと起き上がりながら出迎えた。
「お前、は」
「てめ〜は殺すよ、文句はあるめぇ?」
そろそろエリック•ローレンス組が裏で何をやらかし散らかしてるのか推理できつつある人もぽつぽつ出てくるのではないでしょうか。