進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~   作:Nera上等兵

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108話 内戦と反乱

「納得できません!」

「納得できないで飯は食っていけないぞ」

 

 

ストヘス区にあるベルク新聞社の本社で1人の男が声を荒らげた。

ピュレ・フェルナーという男は、新聞に書かれた物語に惹かれて入社した新人である。

そんな彼の発言に頭を痛めているのは、ベテラン記者にして上司であるロイ・エンゲルマンだ。

 

 

「やはり調査兵団が精鋭部隊と民衆、そして第二師団を虐殺できるわけがありません」

「だが、調査兵団が戦闘を行なったのは事実だ。それは否定できないだろ?」

「では何故、内戦と書かないんですか!?明らかに兵団同士が殺し合っています」

「このご時世にそんな事を記事に書けるわけないだろう」

 

 

ベルク社が発行しようとしている新聞の記事は以下のとおりである。

 

 

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ウォール・シーナの国道3号線にあるランベルツ旧市街で発生した虐殺事件は

調査兵団によって引き起こされたものだと兵団関係者の取材で判明した。

総統局のディルレヴァンガー報道官によると

調査兵団はランベルツ旧市街の住民を人質に取って駐屯兵団第一師団精鋭部隊と交渉を開始した。

 

勇敢で賢明なキッツ隊長は交渉しつつも人質奪還作戦を裏で開始しようとしたところ

ストヘス区の兵士を捕虜にした調査兵団の本隊が合流し、やむを得ずに停戦を余儀なくされた。

すぐさま調査兵団と交渉を行ない人質の解放の条件として精鋭部隊は武装解除を行なった。

 

これは調査兵団の罠であり、無抵抗の精鋭部隊を無情にも殲滅した調査兵団は、

証拠隠滅をする為に第二師団の捕虜と住民の人質を虐殺し、街に放火し蛮行を隠蔽した。

その現場は、巨人に襲撃されたトロスト区よりも酷く筆舌に尽くしがたい状態であった。

姿をくらました調査兵団はレイス領近郊に逃走したとされ現在、憲兵団が捜索中である。

 

ディルレヴァンガー報道官は拳を力強く握り締めて次のように語った。

「調査兵団は、リーブス商会の会長の殺害事件に組織的に関与したばかりか悪事を隠蔽する為なら民間人の虐殺を厭わない野盗集団に成り下がった!我々は全力を挙げて殲滅する所存である」

 

調査兵団の団長にして首謀者とされるエルヴィン団長が翌日、処刑されるが…。

果たして調査兵団はそれを看過するのだろうか。

処刑台が設置された王都ミットラスに殺戮の魔の手が及ばないのを願うばかりである。

 

 

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この記事を読むとツッコミどころが満載である。

まず犠牲者の数が伏せられていてどれだけ調査兵団が虐殺したのか不明になっている。

規模的には兵士だけでも犠牲者は数百人程度は居るはずなのだが、1つ疑問が生じる。

壊滅状態の調査兵団がこれだけの兵士とランベルツ旧市街の住民を虐殺できるかという点だ。

 

 

「なにより駐屯兵団第三師団が調査兵団に同行した件が書かれていません!」

 

 

ストヘス区の門衛に取材すると駐屯兵団第三師団も調査兵団に同行していたと判明した。

なのでピュレはその内容を記事に追加しようとすると上司に止められてしまった。

それどころか、エルミハ区の騒動も調査兵団の内輪揉めによる同士討ちとされた。

そしてすぐさま緘口令が敷かれて王政府の見解以外を口外する事を禁じられた。

 

 

「いいか、我々は判明した事件に脚色して作り上げた物語を民衆に伝えるのが仕事だ。間違っても不用意に民衆を扇動したり、過剰な危機感を煽る事をしてはならないのだ」

「私もその物語に惹かれて入社しましたが、これは明らかに裏があります!」

「じゃあなんだ?調査兵団が巨人化能力者の疑いがある住民と兵士を殺したとでも言うのか?」

「証人なら傍に居るじゃないですか…」

 

 

ピュレが目をやるとそこにはガタガタと震えるフレーゲル・リーブスが居る。

彼との遭遇は本当に偶然であった。

取材を終えてストヘス区に帰還する道中でリーブス商会の会長のご子息と遭遇。

たった1人で身を潜めているのを疑問に思ったベルク社が保護して今に至る。

 

 

「馬鹿、俺はヤバいもん見ちまったんだ。もし話したら殺されちまうよ…」

 

 

彼は、父親の行動に納得ができずにこっそりとエルミハ区まで尾行していたら…。

調査兵団の兵士を殺した変な装備をした連中が父親と手下を拉致する現場を目撃してしまった。

相手が憲兵団の特殊部隊と察した彼は、保護されてもなお、生きた心地がしなかった。

 

 

「だから私は、あの中央第一憲兵団が暗躍していると思っているんです」

「なるほど、中々面白い物語を書くじゃないか。チラシ裏にでも記録したらどうだ?」

「これは物語ではありません。事実です。そして我々はこれを伝える義務がある」

 

 

元から中央憲兵にはきな臭い噂話がいくらでも転がっていた。

だが、何故か誰もそれを公開しようとせず口合わせしたように黙り込んでいる。

だからこそ、都合が悪い事を権力と武力で全て隠蔽しているとピュレは睨んだのだ。

 

 

「ロイさん、あなただって気付いているでしょうに…」

「…理想より女房と娘が大切さ。いずれ君も挑戦より安泰を選ぶ事になるだろう」

「…怖いからですか?」

「ああ、そうだ。長く生きているとこの世界の世渡りを理解する。できない奴は死ぬだけだ」

 

 

ロイ・エンゲルマンも若き頃は、様々な謎を解き明かそうとする情熱的な記者であった。

しかし、ある程度記者を続けていくと先輩方や同業者から禁忌事項を通達される。

歴史の検証、憲兵団の腐敗の原因、長年に渡るウォール教と王政の癒着、壁外の情報。

何故こんな物が禁忌になっているのかと彼は思ったが、答えはすぐに分かった。

それに従わない者は憲兵団に連行されて誰一人として二度と顔を見合わせる事はなかった。

すなわち王政府の広報機関にならない者は始末されるしか道が無いと理解してしまったのだ。

 

 

「そこのニキビ坊主が言っている事は事実さ、この世界では想定外(イレギュラー)は消されるんだ」

「ロイさん、事実を告げるべきです!さもなければ惨劇が繰り返します!」

 

 

ピュレが危惧しているのは更なる内戦の発生である。

実はトロスト区とストヘス区を担当している駐屯兵団に怪しい動きがあるのだ。

銃器や野砲など防衛に必要ない物をやたらと調達しているが、明らかに巨人を想定していない。

では、それはどこに向けられるのだろうか。

答えは分かっている。

調査兵団の本拠地であり駐屯兵団第三師団が防衛しているカラネス区である。

カラネス区も異変を察知して北西にあるユトピア区に展開していた兵器群を集めている有様だ。

このままでは、駐屯兵団同士で戦争が勃発するというのに未だに王政府は情報を伏せている。

だから彼は、ここで声を挙げないといけないと上司を説得しているのだ。

 

 

「今こそ世間に訴えなければなりません!人類同士の争いは阻止するべきだと!」

「一体誰がそんな話を聴いて納得すると思ってるんだ!?」

「ディモ・リーブス会長のご子息なら少なくともトロスト区の暴走を止められるはずです!」

 

 

リーブス商会は、長きに渡りトロスト区の経済に携わって今でもその影響力は健在だ。

もし、会長のご子息が事実を告げて商会の総力が動けばトロスト区の情勢は変わる。

いくら調査兵団を憎んでいても民衆がそれを妨害すれば駐屯兵団第一師団は動けない。

トロスト区の兵力が動けなくなるならば、ストヘス区の兵力だけで戦争するのは不可能になる。

兵器を集めている段階であれば、戦闘を避ける為の猶予は充分残されている。

 

 

「我々の敵は巨人のはずです!間違っても人類同士が殺し合う未来など望んでおりません」

「王政府だって対策を打つはずだ、奴らが黙って見ているとは思えん!」

「ロイさん、王政は対策をするどころか、内戦を煽っています!」

「なんでそんな事が言えるんだ!?」

 

 

そもそも王政府は100年以上に渡って人類の平和を維持してきた。

それが間違いではないからこそ民衆は王とその政府に従っているのだ。

いつ巨人に滅ぼされてもおかしくないご時世で彼らはそうやって結束してきた。

なので内戦を王政府が発生されるわけがないとロイは告げるが、ピュレは反論をする!

 

 

「王政は、調査兵団に憎悪を駆り立てるように煽っているんですよ!?このままでは…」

「人類は王政府なしには滅びる!我々は彼らに従わなければ翌日の朝を超える事ができない」

「じゃあ、戦争が起こってもいいんですか!?」

「ダメに決まってるだろ!!」

 

 

ロイだって気付いていた。

王政府はとっくに人類を守る気が無い事に…。

内地で富と名声を築き上げるしか能が無い連中が貧困で苦しむ民衆の上に立つ状態を…。

フリッツ王に実権はなく側近である四大幹部が人類を支配している事に…。

だが、それを見て見ぬふりをしなければ、自分は家族を守れなかった。

それでもロイは人類同士の戦争を黙って見るほど腐りきってはいない。

 

 

『分かっている!分かっているさ!!』

 

 

もし、戦争になればロイの家族も戦禍に巻き込まれるのは明白だ。

だって50mの壁の外に突き出している正門の手前にある旧市街地に居住しているのだから!

ストヘス区の正門を攻略するにあたって旧市街地が戦場になるのは…。

ユトピア区防衛戦で、3つの兵団が旧市街地を最終防衛線にしたのを知っていれば分かる事だ。

 

 

「フレーゲルさん!協力してください!このままでは人類同士で殺し合いになってしまいます!」

 

 

ピュレに諭されてもフレーゲルは動く事ができなかった。

今まで堕落生活を送ってきた生活の証であるだらしがない腹が急速に痛み始めた。

数日前まで堕落した商人の息子がいきなり戦争の鍵を握る人物(キーパーソン)になったのだから当然といえる。

 

 

「できねぇよ…俺は親の七光りに縋るしかできないただの豚だ…」

 

 

柵に囲まれた場所で生まれた家畜の大半は外の世界に興味を示さない。

生まれた場所の影響を受けて決められた役割に順じてその役割を全うし、役目を終える。

家畜だけではなく人間も選べる道が違うだけで役割を演じて何かを残して死んでいく。

貴重な青春の大半を家で過ごしたフレーゲルにとってこの決断は荷が重すぎた。

 

 

「だから祈ってそのまま放置するんですか!?」

「おいピュレ…!」

「あんたに何が分かるんだ!?俺の親父は調査兵団に賭けて死んだんだぞ!?」

 

 

ディモ・リーブスは調査兵団に賭けた結果、王政府に消されてしまった。

いくら城塞都市全体に影響力がある商会の会長でも王政の機嫌を損ねれば殺されてしまう。

それを理解しているからこそフレーゲルは何もできないのだ。

 

 

「あなたはそれでいいんですか!?親父さんが殺されてヘラヘラして終わるんですか!?」

「そうだよ、祈ってそこの角でガタガタ震えてるしかできない哀れな豚だ!嗤えよ!」

 

 

自分はリーブス商会の跡継ぎになれる器ではない。

むしろ、妹の方が向いていると自嘲する彼は、ピュレと呼ばれる記者に開き直ってみせた。

 

 

「いや…本当にそれで……ああ、クソ!」

 

 

フレーゲル・リーブスはかつて婚約をしていた幼馴染の女の子と改めて結んだ約束を思い出した。

トロスト区にある菓子店で再会しようと約束をしたが……彼女は壁の外から戻って来なかった。

それを知ってフレーゲルは衝撃を受けたと共に壁外で活動させた調査兵団に恨みを抱いた。

だから親父を止めようと尾行したのだ。

 

 

『フローラは……』

 

 

恐怖のせいで今まで失っていた記憶が少しずつ鮮明に思い出される。

久しぶりにあった女の子はシガンシナ区の悲劇で完全に心が壊れていた。

少しでも過去を教えようとしただけで殺意剥き出しで刃を突き付けてくるほどに…。

 

 

『俺がやるべき事は…』

 

 

きっと彼女はその悲劇を繰り返さない様に活動してそのまま巨人に相手に戦い抜いた。

では、自分は何をするべきだろう。

分かっている事だ。

フローラと約束した場所を守らなければならない!

 

 

「フレーゲルさん!あなたの力が無いと…」

「……そうだな、ここで覚悟を決めないとあいつに笑われちまう」

 

 

フローラ・エリクシアは帰ってくる可能性は限りなく低いどころかゼロであろう。

それでもフレーゲルは約束した場所を守ると誓った。

自分の命の灯が消えるその瞬間まで彼は約束の地を守り抜いてみせると決めた!

 

 

「坊主いいのか?親父さんの二の舞だぞ!?」

「確かに俺だけじゃ消されちまう!でもよ、俺の親父は偉大なんだ!まだ俺には仲間が居る!」

「では…!」

「母ちゃんと妹にも協力してもらう!戦争なんかまっぴらごめんだからな!!」

 

 

フローラが人類を守る為に散ったのならば自分もそれに順じなければならない。

そうしないとあの世に逢った時に彼女に同情されるだけで終わってしまうから!

ロイの話を聴いても彼はもう、止まらない!

フレーゲル・リーブスは、幼馴染の女の為に王政と戦争を招く者たちに抗う覚悟を決めた!

 

 

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フレーゲル・リーブスが一大決心した頃、王都ミットラスでも重要な決断が迫られていた。

無駄に豪華なマットレスが敷かれた玉座の間は、人類の現状の縮図を思い浮かべさせてくれる。

 

 

「エルヴィン、最後に言い残した事はあるか?」

 

 

玉座で頬杖をして見下ろすフリッツ王の眼前には王政の四大幹部が集結して椅子に座っている。

そしてその先には、尋問によって顔が大きく腫れたエルヴィン元団長が座らされていた。

アウリール大臣の質問に彼はその返答をする。

 

 

「我々調査兵団を解体するという事は、人類は巨人に対する矛を失う事を意味します」

「迫りくる脅威から身を守るのは盾ではなく脅威を排除する矛です」

「ユトピア区防衛戦の件を思い出してみれば分かる事です。我々は壁の中で平和に暮らしたいだけなのに奴らは待ってくれません」

 

 

人類には様々なトラブルがあったものの100年以上、存続していた。

ところが5年前から壁外から巨人や巨人化能力者の介入が相次いでいた。

人類の大半が壁の外に介入しないというのに奴らはお構いなしであった。

その結果、人類はウォール・マリアの領土を失い、ウォール・ローゼまで危機が迫っている。

 

 

「もし、ウォール・ローゼが巨人に突破されれば何が起こるか理解されているはずです」

「再びローゼの住民をウォール・シーナ内に避難させる事になりますが…」

「先の騒動で消費した食料はどこにも存在しておりません」

「それが意味するのは、避難した住民は巨人とは別の生存競争を強いられる事になるのです」

 

 

ウォール・ローゼが突破された場合、避難民はウォール・シーナに避難する事になる。

だが、ウォール・シーナの領土で彼らを養うほどの食料を生産するどころか所持すらしていない。

5年前にウォール・マリアを喪失した時ですら住民を全員養えなかったのだ。

更に半分の領土が失うとなれば、ウォール・シーナの住民の食料すら賄えなくなってくる。

 

 

「つまり、ウォール・ローゼの壁が巨人に突破されれば、ウォール・ローゼとウォール・シーナに二分した人類の内戦が発生するのを意味します」

 

 

5年前に発生したウォール・マリアの難民は、少数派であった為、事実上切り捨てる事ができた。

しかし、それは多数派の意見でゴリ押したのもあるが、内地の住民が他人事だったのもある。

今まで巨人の脅威に晒されなかった住民たちが今度は切り捨てられる立場なのだ。

この場に居る高官たちは誰もが口を揃えてこう言うだろう。

 

 

『今度はうまくいかない』と…。

 

 

この5年間、必死に開墾してきたが、その大半がウォール・ローゼの領土だ。

しかも、ウォール・シーナは住民の食料を自給しきれないという致命的な欠点を抱えている。

 

 

「なるほど、君の主張は分かった。…が君らのせいで内戦が発生した責任はどう取るつもりだ?」

 

 

エルヴィンは時間を稼ぐ為に何かしらの説明するつもりだった。

だが、まさか駐屯兵団第一師団精鋭部隊と調査兵団で戦闘が勃発するとは思わなかった。

しかも、実際に調査兵が駐屯兵を殺害したので言い逃れができなくなり彼は窮地に追いやられた。

 

 

「それは…」

「出頭を拒み対話の代わりに刃を振るったという事になる。この壁の民の代弁者である私の意見を言わせてもらえば、これは壁の平和に対する挑戦ではないのかね?」

 

 

全ての商会を束ねるデレトフ会長が民衆の代表面してエルヴィンを嘲笑うように発言した。

 

 

「君の口とは違って彼らの刃は正直に語ってくれたよ。我々人類に対する敵対感情をな」

 

 

元より調査兵団の構成員を抹殺する気だったと隠さずに告げている。

いや、そもそもそのつもりだったのだが、ここまで長引いたのは想定外だったのだろう。

 

 

「ただ君は1つだけ良い仕事をしてくれた。あの女を誅殺してくれたのは褒めてやろう」

 

 

これを聴いたエルヴィンには心当たりがある。

王政府の最高幹部と交流関係をもっていたフローラである事はすぐに導き出させた。

偉そうにふんぞり返る彼らすら彼女を物理的に排除するのを諦めたのだ。

そもそも、内戦のきっかけも元を正せばあの女の交流関係が影響していた。

 

 

「全くあの娘には困ったものだ。ここまで調査兵団を存続させた罪は重すぎる…」

 

 

ゲラルド大総統にとってはあの女はトラウマ以外に何物でもなかった。

自分を引き摺り降ろす種をいくつも持って脅迫してきたのだから当然か。

 

 

「だが、味方を見殺しにする調査兵団のおかげで助かったものだ」

 

 

アウリール内務大臣もフローラに手を焼かされた者の1人だ。

彼女を排除しようと中央憲兵を派遣したら逆に掌握されかけたという本末転倒に陥ってしまった。

それどころか、中央憲兵が彼女と共謀して自分たちに内緒で補給拠点を作っている有様だった。

内戦の舞台になったランベルツ旧市街の補給拠点も騒動で初めて気付いたほどである。

 

 

「……何の話をしているのだ?」

 

 

唯一直接的な被害を受けていないローデリヒ枢機卿は同格たちの会話を聞いて首を傾げる。

だが、彼は知らない。

 

 

『『『あのままあいつを放置していたらお前が一番ヤバかったんだよな…』』』

 

 

フローラ・エリクシアという女は、唯一自分と接点がないローデリヒ枢機卿を敵視していた。

なので残りの三大幹部を脅迫して…なんと彼を謀殺する直前まで追い込んでいた。

幸いにも調査兵団によってフローラが無駄死にしたおかげで誅殺が決行されなかっただけである。

 

 

「どうした?話をすすめないか。無実を信じる被告人が判決を待っているではないか」

「ああ、そうだな…」

「全くだ…」

「ウォール教の信仰の賜物だな」

「…?」

 

 

妻と同僚に殺されかけていたと知らないローデリヒは、エルヴィンを断罪しろと暗に告げる。

それを聴いた彼らはようやく両肩の荷が落ちたように純粋に笑いながら大罪人を見下した。

なお、枢機卿は最後までその事実を知らずに人生を終える事になる。

 

 

「すまんな、貴公の顔を見て我々を散々に引っ掻き回した奴の顔を思い出してしまってな」

 

 

アウリール大臣は汚物を見る様にエルヴィンを見下しているが、瞳は揺らいでいた。

 

 

『『『『絶対あいつだな…』』』』

 

 

この場に居るピクシス司令を筆頭にフローラと面識がある人物の誰もがすぐその正体に気付いた。

というか、それ以外に該当する人物が思い浮かばなかった。

 

 

「ともかく内戦を引き起こす調査兵団を人類が容認する理由など存在しないだろう」

「さて、ピクシス。君とエルヴィンは前線で命を張る者同士、親密な関係を築いていたそうだが、もしやその志と野望まで共に築いてはあるまいな?」

 

 

ゲラルド大総統から質問されたピクシス司令はエルヴィンの顔を見る。

酷く腫れた顔には後悔の文字は見えなかった。

 

 

「あり得ませぬな、人同士の殺し合いなどもっての他、なにより巨人が壁を破って来た際に人類があまり残って居なかったら巨人に呆れられてしまいましょうぞ」

「フハ…ハハハハ!失礼な物言いであったなピクシス司令。それだけは避けたいものだ」

 

 

トロスト区防衛戦で兵士達に「ここで死ね」と告げたピクシス司令が裏切る訳が無い。

それで多くの兵士を死なせた代わりにウォール・ローゼを守った功績者まで貶める必要はない。

そう判断した大総統は笑いながら、大罪人に残酷な事実を告げる。

 

 

「さて、そこに跪いている君はどうも理解していないようだな」

「君が今ここに居るのは、壁内の未来を語る為でも内戦を起こしたせいでもない」

「人類憲章第6条『個々の利益を優先し人類の存続を脅かすべからず』を違反したからだ」

 

 

続いてローデリヒ枢機卿が罪の重さを語る為に口を開いた。

 

 

「君たちは、未知なる巨人を希望に例えて神聖な壁を工作しようと試みた」

「既にその時点で大罪ではあるのだが、更に民衆を偽り破壊工作を行なった」

「カラネス区の巨人襲撃も調査兵団が手招いたのだろう!?」

「さもなくば、再三に渡る我々の召集に応える他なかったはずだ」

 

 

ウォール教のトップであるローデリヒ枢機卿は調査兵団が巨人とグルと決めつけた。

第57回壁外調査で失敗した調査兵団はカラネス区に巨人が侵入するように手引き!

それをまんまと討伐して王政府に揺さぶりをかけて召集命令を有耶無耶にしたと告げた!

もちろん、虚言であるのだが、誰一人反論する事は許されなかった。

 

 

「そうだとも、この大罪人は自分の考えに固執し続けた。リーブス商会のリーブス会長を脅迫して誘拐を装いエレン・イェーガーを秘匿したのだ」

「しかも、ディモ・リーブスを口封じで始末するどころか、わざわざ数名の調査兵をエルミハ区で殺害して憲兵に殺されたと自作自演まで行なった。これは反逆どころか前代未聞の大罪人である」

 

 

デレトフ会長も枢機卿の発言に続いてわざとらしく戦死した調査兵すらも侮辱した。

もしハンジ・ゾエがこの場に居たら激高するほどの暴言すら誰も咎める事はしない。

 

 

「これで分かったであろう?今や君こそが人類の脅威となっているのだよ」

「謁見で何かが変わるとでも思ったか?処刑前に罪を認識してもらう為に機会を与えたのだよ」

 

 

そしてアウリール大臣が締めて王の謁見の機会は終わりを告げた。

フリッツ王はあまりにも失望したのか、大罪人を見つめたまま黙り込んでいる。

 

 

「よろしい、では協議に入る。陛下、よろしいですな?」

「……ッ」

 

 

大臣は今なお厳格な雰囲気を漂わせるフリッツ王に呼び掛けた。

この大罪人には、処罰が必要ではないかと…。

よっぽど呆れていたのだろう。

王は、無言をもってそれを肯定した。

 

 

「では、陛下の名の下に判決を言い渡す!エルヴィン・スミス!」

「人類憲章第6条に違反ありと認め死刑に処す!」

「これは即時執行されるものである。連れて行け」

 

 

大臣の判決を聴いた中央憲兵たちはエルヴィンの身体を掴んで無理やり立ち上がらせた。

 

 

『よく言うな……既に俺の処刑台を作り終えた癖に…』

 

 

死刑の判決を下されるとエルヴィンはそもそも知っていた。

あれほど分かりやすい処刑台を見れば、誰だって自分の未来は悟れる。

これは予定調和であり最初から王政府はエルヴィンを公開処刑する気満々だったのだ。

 

 

『やはり何か切り札があるようじゃのう…』

 

 

この場に集った兵団の高官たちはこの異常な光景を見ても黙って見送る事しかできなかった。

内戦に参加した各駐屯兵団の責任者が恩赦で無罪になっている時点で茶番にしか見えない。

だが、ピクシス司令は、王政府が人類を守れる手段であるならば、どうする事も出来ない。

実際に100年以上人類を存続させてきた実績がある王政府に異論を唱える事はできなかった。

 

 

『おいおい…本当に終わっちまうぞ。博打したんじゃなかったのか…?』

 

 

この謁見の前に会話したナイル・ドーク師団長はあまりにも同期が不利過ぎて違和感を覚えた。

奴なら絶対、どこかで博打をすると分かっているからこそ黙って見ている状態が妙に感じた。

 

 

『やはり、今のままではどうしようもないか』

 

 

はっきり言ってエルヴィンは詰んでいた。

どう足掻いても処刑される以外に道は無かった。

 

 

『あとは…彼らに任せられるかどうかだ…』

 

 

両腕を拘束されて跪いているエルヴィンはせめてもの抵抗と見上げて王の姿を見た。

玉座で頬杖をしているフリッツ王は微動だにせず…まるで人形の様に見える。

そして玉座の左右には大きな窓と赤色のカーテンがある。

そのカーテンの手前にそれぞれ槍を構えた中央憲兵が警護しており、彼らも微動だにしていない。

壇上から階段を三段降ると王政府の真の支配者である4人の高官が雑談をしていた。

この光景は何があっても変わる事は無いだろう。

もしかしたら、腐敗した彼らもいざとなったら人類を守るかもしれない。

エルヴィンは最後に笑ってこの場を去ろうとした。

 

 

「ん!?」

 

 

2名の中央憲兵が死刑囚を処刑台に向かわせようとすると謁見の間の扉が大きく開いた!

そこには、ピクシス司令の副官であるアンカ・ラインベルガーの姿が!

だが、彼女は明らかにここに招待された客人の気迫ではなかった。

 

 

「ウォール・ローゼが突破されました!!」

「はあ?」

 

 

彼女の一言を聴いても大臣は何が起こったか理解できなかった。

何事かと告げる前に彼女は衝撃的な事実を告げる!

 

 

「戦力が手薄になったカラネス区に鎧の巨人と超大型巨人、そして巨人の大群が襲撃し、二つとも扉が破壊されてしまいました!現在、東区から避難する住民が押し寄せています!」

「なっ!?」

 

 

カラネス区の防衛をしていた調査兵団と駐屯兵団第三師団は出払っているのが判明している。

何故なら彼らがランベルツ旧市街に居たと精鋭部隊の生き残りによって報告を受けていたからだ。

もし、それが巨人勢力にバレているとしたら絶好のチャンスでしかない。

 

 

『エルヴィン、まさかお前!!またしても巨人を利用したのか!?』

 

 

ドーク師団長は同期が笑っている顔を見て全てを理解した。

わざわざ自分の妻の話題を振ったのは、このせいだと!

ウォール・ローゼの土地に暮らしている妻と子を強く認識させる為だと!!

 

 

「避難経路を確保せよ!!」

「駐屯兵団の前線部隊は全兵力を東区に集結させ避難活動を支援する!!」

 

 

真っ先に動いたのは、南側領土最高責任者のドット・ピクシス司令である。

 

 

「我々も協力する!!オルブト区及びユトピア区の守備隊は巨人を誘導し、時間を稼げ!!」

 

 

北側領土最高責任者のジークフリート司令は、兵士を巨人と交戦させるつもりだ。

ユトピア区で部下を多く失っているからこそ民間人に悲劇を繰り返させないと誓った。

彼は最後まで前線で指揮を執って1人でも多く逃げられるように巨人に喰われて死ぬつもりだ。

どうせ老い先短いのだから最後くらい損な役を貫いてみせようとしていた。

 

 

「皆はそれぞれの持ち場に戻れ!!住民の避難が最優先じゃ!!」

 

 

ピクシス司令の号令によって兵団の高官たちが動こうとしたその時!

 

 

「ダメだ!!」

 

 

アウリール大臣は待ったをかけた。

これには将校や下士官たちは思わず彼の顔を見てしまうほどに動揺した。

 

 

「ウォール・シーナの扉を全て封鎖せよ!!避難民を何人たりとも入れてはならん!!」

 

 

もう一度、聴いたが彼は確かにウォール・ローゼの住民を死なせろと命令していた。

 

 

「そ、それは、人類の半分を見殺しにするとご判断でしょうか!?」

 

 

家族が見捨てられたと悟ったドーク師団長は改めて彼に質問する。

一時的な封鎖であり、巨人の侵入が確認されないなら開放するのを賭けたのだ。

 

 

「さきほど大罪人が語った通りだ、内戦をする為にわざわざ敵を増やす事はあるまい」

 

 

アウリールはそれどころではなかった。

すぐさま他の三人にこの一大事にどう対応するか相談するつもりだ。

ウォール・ローゼの住民など構っている暇など無い。

王に力が戻るまで時間を稼ぐ必要がある以上、こうするしかなかった。

 

 

「しかし、それは可能性の話ですが…」

「その可能性がある事態が問題なのだ!!我々は最上位の意思決定機関であるぞ!!」

「お待ちください、穴から侵入する巨人の経路をどうにかすれば…」

「何をしている!!さっさと動かぬか!!巨人と暴徒を王都に招くつもりか!!」

 

 

ドーク師団長は玉座に座る王に希望を見据えるが……王は相変わらず動く気配が無い。

何が起ころうとしても王は決して民の為に動かなかった。

目の前に居る真の支配者たちの操り人形なのだから当然である。

 

 

「ふむ…」

「はい…」

 

 

ピクシスはアンカに目配せすると彼女は急いで部屋から退室した。

 

 

「とにかく意思は下されたんだ!早く扉を封鎖しないと…」

「ま、まて。今なら巨人は少数のはずだ、すぐに穴を塞げば…」

「とにかく急いで扉を封鎖するんだ!!我々は人類を守る為にやらねばならん!!」

 

 

兵団の高官や兵士たちは動揺しつつも、扉を封鎖する事にした。

それが王政の判断である以上、兵士は従う事しかできないのだ。

 

 

「扉を封鎖するだと?」

「あぁ、それしかできない。今は―」

「俺はウォール・ローゼの人間だ!扉の封鎖は阻止させてもらう!」

「なっ!?」

 

 

憲兵団のトップ、ナイル・ドークはウォール・シーナの扉を封鎖する事を阻止するつもりだ。

愛する妻と子だけではない。

後輩の家族やお世話になった人々を彼は見捨てる事ができなかったのだ。

彼はエルヴィンが望む選択肢を一目散に選択してみせた。

王の眼前で王政の命令を否定した彼は死罪に匹敵する反逆行為であり、周囲の人々を驚愕させる!

 

 

「貴様、王に歯向かう気か!!」

「そうだ、俺は人類を守りたいんだ!!ここで刺し違えてでも阻止してやる!!」

「俺もだ!」

「私も師団長の選択を支持します!」

 

 

同期が熱血漢に戻ったような気がして横で聞いていたエルヴィンは彼の雄姿を忘れはしない。

やはり、彼にマリーを任せたのは正解であり、そしてその選択が大きく運命を変えた。

 

 

「私も加勢しよう」

 

 

謁見の間に繋がる扉は開かれたままだ。

そこから入ってきたのは、ザックレー総統とその配下である。

副官であるエルティアナ女史とライフル銃を構えた兵士たちが謁見の間に集る。

その異様な光景に威圧されたのか、誰もが彼らに道を譲った。

 

 

「彼らの返事は意外じゃったかの?」

「いいや?ちっとも」

 

 

ピクシス司令の問いに対してザックレーは即答をする。

王政府が人類ではなく自らの資産と命を優先するのは分かっていた。

嬉しい誤算なのは、憲兵団のトップとその配下も自分たちと同意見だという事だ。

 

 

「ザックレー、その兵力は何だ!?」

 

 

ゲラルド大総統は、自分の言いなりであるはずの駒がここに居るのに困惑していた。

そして巨人襲来の報で駆けつけた割にはライフル銃を構えた兵士を引き連れた姿に疑問を抱いた。

 

 

「さきほどの報告は誤報です。ご安心ください」

「なっ、何を言っている!?」

「今現在、巨人の襲撃は確認されておりませんとお伝えしたのです」

 

 

ザックレー総統はさきほどの報は嘘だと告げた。

すぐにそれが事実だと理解したアウリール大臣は彼を睨みつけた!

 

 

「貴様、何のつもりだ!!」

「首謀者ならわしじゃ」

「ピクシス!?」

 

 

まさかの首謀者に王政府の高官たちはピクシス司令を見る。

そこには、さきほど巨人襲来の報を告げた女兵士を携えている。

もはや疑わない方が難しいだろう。

ザックレー総統とピクシス司令は虚報で自分たちを嵌めたという事に…。

 

 

『彼らに尋ねてみましょう。彼らに人類の手綱を握らせるのに相応しいかと…』

 

 

エルヴィン・スミスは調査兵団に王政府に対してクーデタを起こすと手紙で告げていた。

しかし、本当にそれが人類の未来に繋がるか分からない。

だから彼は、どちらに転んでも良いようにピクシス司令に判定してもらう事にした。

 

 

『判断するのは“王政(彼ら)”です』

 

 

果たして王政府の支配者たちは人類を守ろうと判断をするのかと…。

賭けは当たり、王政府を支配している彼らは自供した。

人類憲章第6条『個々の利益を優先し人類の存続を脅かすべからず』を守る気はないと…。

 

 

「さきほど駐屯兵団と調査兵団と同調していないと申し上げましたが、一つだけ言い忘れてましたわい。あなた方にも同調していないと…」

「な、何の真似だ…!?」

 

 

あくまでピクシスが組んだのはザックレー総統とその一派である。

嘘は言っていないが、影響を受けているのは間違っていないだろう。

だからピクシスは自分の考えを愚かな支配者に告げる事した。

 

 

「わしら、一部の兵士はここで命を賭ける事にしたのじゃ」

「あなた方の意思次第では、ここに至る反逆行為を白状し、全員で首を差し出す覚悟じゃった」

「しかし、あなた方は人類の半数より自分たちを優先すると何度も発言された」

「これは人類憲章第6条『ここの利益を優先し人類の存続を脅かすべからず』に違反しておりますので、どうやらわしらは首を洗って待っている必要はありますまい」

 

 

おそらく彼らは、巨人や壁の歴史に詳しいのだろう。

わざわざ情報機関や教育機関、考古学にすら圧力をかけているのだから。

過去の歴史を検証するだけで大罪になる時点でこの壁の歴史に精通していると同意義だ。

もしかしたらこの現状を打開する方法も知っているかもしれない。

ただ、ピクシスはこの道を選んだのを後悔していない。

 

 

「我々が巨人の力や成り立ちに関して無知であろうとも、人類を生かす気が無いあなた方よりは我々の方が多くの命を救えましょう」

 

 

無知のせいで犠牲者を多く出す指導者か、人類を守る気が無く荘園で優雅に暮らす支配者か。

どちらを選ぶかと問われれば前者を選ぶ。

このまま人類が滅びてしまえば、心臓を捧げた兵士たちに申し訳が立たない。

特にトロスト区で訓練兵を多く死なせたピクシスは彼らの死を無駄にはしたくなかった。

若者を犠牲にしてその上に立つと自覚しているからこそ手を汚そうと決意した!

 

 

「何を馬鹿な事を!!我々を銃で脅迫したところで民衆が貴様ら兵士が従うと思っているのか!?民衆は長年の教育と風習によって王のみにかしずくのだぞ!?王都を武力で制圧したからなんだと言うのだ!?地方の貴族は黙って傍観すると思ったか!!それこそ貴様らが恐れる内戦が…」

「覚悟しております」

「な、なんだと…」

 

 

意訳すると自分たちに危害を与えると配下である貴族と憲兵団が反乱を起こすぞ!

長年の教育によって民衆は兵士より王を支持しているから兵団政権には従わない!

だから馬鹿な真似を止めろと告げようとしたアウリールはピクシスの返答で衝撃を受ける。

 

 

「対策は打っておきましたが、やはり血は流れるのは避けられますまい」

 

 

兵団関係者たちは既に内戦が発生すると予測していた。

トロスト区とストヘス区の居住する住民と兵士がせっせと戦争の準備をしていたせいである。

誰もがそれに気づいていたが、止める事ができなかった。

もし、介入すれば先の内戦みたいに巻き込まれるのだと畏怖して放置するしかなかったのだ。

 

 

「正気か貴様ら!?我々に盾突いてただで済むと思うなよ!?」

「まだご理解しておらぬようですな。これは脅しではない。クーデタじゃ!」

 

 

大臣は必死に抗弁して反乱を止めようとするが、ピクシスの意思は鉄よりも硬い。

 

 

「玉座の間以外の中央憲兵の制圧を完了いたしました」

 

 

ちょうどその時、ピクシスの副官である参謀のグスタフが現状を報告する。

もはや王政府の支配者の縄張りは、この玉座の間を残すのみとなった。

これでこの場に居る4名の中央憲兵を捕縛すれば【人類の敵】を守る盾は無くなる。

 

 

「そうか、それが貴様らの答えだな…!」

 

 

だが、追い詰められても王政府の支配者たちは抵抗する気である。

エルヴィン団長に下した判決で分かる様に死罪にされるせいであろう。

だが、何故か彼らは玉座がある壇上まで後退してもなお、兵士達を見下していた。

『何かあるのか?』とダリス・ザックレーは疑うが、それは正解であった。

 

 

「反逆者共を抹殺しろ!!」

 

 

玉座の傍に寄ったアルフォンス・ゲラルド大総統が負け惜しみの様な号令を下した!

すると玉座の傍にある赤色のカーテンから短剣型立体機動装置を身に着けた伏兵が飛び出す!

お飾りの王と四大幹部を守る様に2名の兵士がザックレー総統率いる反乱部隊に立ち塞がった!

 

 

「しまった!」

 

 

それと同時に隠し扉からケニーとは別配下の対人立体機動部隊が後方から挟撃してきた!

後方からの不意打ちを想定していない反乱軍は、散弾銃を装備した敵に背中を晒す事になる。

 

 

「撃て!」

 

 

前方の敵に気を取られた反乱兵の背中に向けて8つの銃口から発砲音と共に散弾が放たれた!

奇しくもフローラが鎧の巨人の装甲を砕く為に開発した散弾がお世話になった人々を襲撃する!

砕け散る人体と鮮血、小腸から飛び出した排泄物が生き残った将兵たちに降り掛かる。

斯くしてこの日、玉座の間は多くの血が流れる事になった。

 

 

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