進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~ 作:Nera上等兵
ケニー・アッカーマンは何故、自分たちの一族が迫害されるのか分からなかった。
偉大なるご先祖様が巨人を生み出したとかいう大罪だったらまだ分かる。
だが、アッカーマンの血が流れるだけで指名手配されるのはおかしかった。
脅迫した憲兵からも「上から指示された」の1点張りで何も手掛かりは掴めなかった。
「おい話せよ爺さん、憲兵を殺すのも飽き飽きしてきたんだが?」
「…また憲兵を殺したのか?」
「あぁ、今頃畑の肥やしとなって来年には大きな花を咲かすんじゃねぇかな」
だからケニーは一族の秘密を知る爺さんに逢いに行った。
危篤なのは分かっていたので少しでも話を訊こうとしたのだ。
「なあ、俺たちはかつて王家の武家だったそうじゃないか。なんでその末裔が追われるんだ?」
「知りたいか?」
「そりゃあ、そうだ。一体何をすればここまで恨まれるんだ?」
アッカーマン一族は既に両手で数えられるほどに一族を根絶やしにされた。
絶滅危惧種と噂される東洋系の血筋よりもやべぇんじゃないかと思うほどだ。
だからこそここまで恨まれる理由をケニーは知りたかった。
「アッカーマン家は王家から恨まれてはおらん…ただ恐れられている」
「そりゃあ、俺様みたいな突然変異種が憲兵を虐殺しまくるからな」
「違う、王がアッカーマン家を操る事ができなかったからだ」
可愛い孫を守る為に口を閉ざし続けたが、もう手遅れと感じたのか。
ようやくまともな話が聞けそうだとケニーは口角を釣り上げた。
「かつての王は、大多数の単一民族に全ての記憶を塗り替えて過去の歴史を根絶したのだ」
「そんな馬鹿な…」
「だから王政は、王政府が誕生する前の歴史を検証するのを禁止している」
考古学者は、巨人から逃げのびた人類がなんでここに避難できたのか疑問だった。
文献を漁っても、壁の建設時期が不明の上にどこに追い詰められたのかも不明だった。
建国の混乱期とはいえここまで情報が無ければ明らかに不自然と考える。
「じゃあ、なんだ?少数派の血族だったから俺らは命を狙われたのか!?」
「少し違うな、過去の歴史を根絶やしにするのを黙秘しなかったからだ」
「は?」
「王の理想は、過去の歴史を根絶し、一糸乱れぬ平和を実現する事だった」
アッカーマン家の長は語る。
王政府中枢を務める家々以外にあたる大半の人類は単一民族であると…。
そして王が持つ“力”は、その単一民族にしか発揮できない。
だから貴族や地位を見返りにして少数の血族は偽造された歴史を黙認した。
だが、過去を根絶やしにするという王の理想に異議を唱えて地位を捨てた家が2つあった。
「東洋の一族とアッカーマン家だ、もっとも…粛清を恐れて歴史を子に伝えなかったがな」
「ケッ、王の粛清から逃れられる訳がねぇっていうのによくやるな」
「あぁ、そうだな…」
結局、異議を唱えた2つの血族は大多数の血族によって弾圧されて滅亡に瀕した。
それに疑問を思う者も居ただろうが、王政を支配する奴らが体制を変える訳が無い。
脅威となる異端を排除し、本日に至るまでアッカーマン家の断絶を狙っていた。
「で?なんで記憶を消せるんだよ?洗脳でもしてるのか?」
「巨人の力だ」
「なんだって?」
「王は巨人の力を代々受け継いで保持している」
「んん…?」
「巨人の力は絶大で巨人から守る壁を築き上げ、人類は壁の外にある記憶を喪失したのだ」
ケニーからすれば理不尽にもほどがある。
平和と語っておきながら実際は、牧場の柵に放り込まれてむしゃむしゃ草を喰う羊のようだ。
頃合いになれば、捕食者たる巨人に毛を削がれてむしゃむしゃと喰われる末路になっちまう。
そんな人間牧場のような現状に反吐が出た。
「なるほど、良く分かった。信じるぜ」
「…何をする気だ」
「お天道様から俺の武勇伝を見守ってくれよ!!」
ケニーは一族の恨みと無念を晴らす為に王に抗う事を決意した。
このまま何も知らない憲兵を殺したところで補充されるだけの狗だ。
キャンキャン吼えるしかできない狗共の相手に疲れたケニーには好都合だったのだ。
「へへへ、ようやく白状してくれたな」
「いいか、うなじを確実に削げよ?分かったな?」
「分かってますよ旦那」
少数の血族が王政を支配しているのは分かってる。
ならば、王政の中枢にいるものの現状に不満が持つ者だっている。
限られた椅子に座るのは、いつだって決められた血族の跡継ぎだけだ。
だから虎視眈々とその椅子を奪おうとする伯爵家にケニーは真の王の居場所を教えられた。
「レイス辺境伯か、なるほど名声で辺境を治めてると思ったが厄介払いってわけか」
辺境伯は、王政中枢から離れた場所を治める伯爵以上の権限と名声を有する家柄だ。
表向きは王政に対する忠誠心の高さ故に王政の目が届きにくい辺境を治めている。
…つまり、王政に口を出せない様に厄介払いされたと考えればその地位も納得がいく。
こうやって暗殺依頼が出される時点で堕落しているのは分かっているのでケニーの足取りは軽い。
いつも通り、さくっとやって終わりにするつもりだった。
『この世に俺より強ぇ奴が居るなんて思いもしなかった…これが巨人って奴か』
ケニーは自分の強さに驕り高ぶっていた。
負け知らずで憲兵を100人以上仕留めた彼は、呑気に荷馬車の御者を務める男に襲い掛かった。
いつもの癖で日が暮れて視界が狭くなり油断しやすい時間帯を狙ったのだ。
『マジかよ…文字通り巨人の力だったのかよ…壁の中にいやがったのか…』
負傷した辺境伯はいきなり上半身が巨人となって右手でケニーの胴体を掴んだ。
あまりにもあっさりとした敗北にケニーはこれが現実の出来事は思えなかった。
常識的に考えて人間が桁違いの質量になって襲い掛かるなんて想像しなかった結果がこれだ。
「ウーリ!!そのまま捕まえておけ!!」
傍に居た兄のロッドは銃を構えて襲撃者に狙いをつけた。
ただの賊ではないと気付いた彼はすぐに脅威を抹殺しようとした。
「待てロッド、撃つな」
「なっ!?」
「どうやら我々の存在をもらした者が議会に居るようだ。それを明らかにしないといけない」
ロッドからすれば、そんなの分かってる。
「ならば、“力”を使ってこの刺客に喋らせろ」
「それが叶わないのだ。容姿を察するに彼はアッカーマン家ではないだろうか」
だからウーリが力を使えば、誰に指図されたか分かるからこそ始末を急いだのだ。
だが、どうやらアッカーマン家の刺客だと判明し、事実を追及するのは難しくなった。
復讐に燃えた一族をけしかけるなら誰だってできるからこそ殺すしかなかった。
「あぁぁ!?クソッ!!」
「ウーリ!?」
ケニーは右手で持っていた短剣を投げつけたが目の前の男は生身の左腕でガードした。
そのせいで文字通り打つ手が無くなったケニーは彼なりの命乞いをする。
「許してくれよぉ~慈悲深いホンモノの王様なんだろ~どこでもいるコソ泥を見逃してくれよ~。もう一度俺にチャンスをくれ!今度は寝込みを正々堂々と襲って命を盗みますから!!」
圧倒的な強者を前にしてケニーの心は折れた。
文字通り握り潰されるのは初めてだったし、暴力だけが全ての価値感が音を立てて崩壊した。
良く考えれば、王家に復讐したところでアッカーマン家の血が絶えるのは目に見えている。
全てのプライドを捨てた結果、みっともなく命乞いをするアホに成り下がってしまった。
「え?」
だが、ウーリと呼ばれた辺境伯は、あっさりと巨人の右手を開いてケニーを解放した。
あまりにもあり得ない光景にケニーはおろか兄のロッドも驚愕する。
「ウーリ!!相手はアッカーマンだぞ!?こいつの記憶は消せない!!殺すしかないんだ!!」
「わかってる」
「だったら何故!?」
ジャケットの裏にあるポケットから拳銃を取り出したケニーすらも相手の思惑が分からない。
「我々がアッカーマン一族にもたらした迫害の歴史を考えれば、君の恨みはもっともだ」
「あぁ、さっきまで思っていたが、もうどうでも良くなっちまった」
「だが、私は今、死ぬわけにはいかないんだ。どうか許してくれ」
「オイオイ!!強者が弱者に頭を垂らすんじゃねぇ!何やってんだお前!?」
銃口を互いに突きつける形の中で巨大な力を持つ者が頭を垂らして土下座した。
この光景を見たケニーは、弱肉強食の理が崩れた感じがして拳銃の引き金を引けなかった。
『下賤に頭を垂らしてやがる…慈悲深いにほどがあるだろ!?それになんだ?なんで同情をする!?』
自分が下賤だと自覚しているが、ここで攻撃を仕掛ければ人類失格の気がしたのだ。
そしてケニーはどうしてそんな強大な力を持っていながら謙虚に居られるのか興味を持った。
「先代の犯した罪は、今まで見逃してきた私にも責任がある。どうか、みんなを憎まないでくれ」
「別に俺様はいいけどよ、おまえらを憎んでいる奴がいるんだが…どうする?」
「あぁ、そうだな。なんとかしないといけないな」
「このみっともない下賤が力を貸すと言ったら信用してくれるか?」
「ああ、これ以上の負の連鎖を断ち切れるなら喜んで信用する」
ケニーは力を貸すと告げてウーリがそれを受け入れた。
それから早かった。
次の議会の席では、レイス家の情報をケニーに吐いた奴が消えた。
そいつに情報を吐かされたケニーが空いた席でふんぞり返っていた。
『どいつもこいつも同じか』
どうやらレイス辺境伯を殺めたかったのは議会上層部の総意らしい。
あくまで証拠を残した伯爵がスケープゴートされただけでレイス辺境伯に味方は居なかった。
『しゃあねぇな、チャンスをくれたウーリに尻尾を振る番犬でもすっか!』
アッカーマン一族の迫害を止めてもらう代わりにレイス家の狗になる。
力こそが全てと考えていたケニーからすれば、みっともない生き方をする羽目になった。
だが、そのおかげで面識が無い分家は、何も知らずに堂々と暮らせるようになるだろう。
それだけでも価値はあったし、自分も晴れて大空の下を歩けるようになれた気がした。
「クシェル?ああ、オランピアの事か」
「そうだ、あいつはどうしてる?」
「病気を貰ったらしく売りもんにならなくなっちまった。そういや最近、顔を見てねぇな」
「……これは礼だ。受け取っとけ」
「へへへ、まいどあり」
と決まれば、久しぶりに妹に逢いに行ったが娼館に居なかったので理由を訊いて項垂れた。
すぐさま娼館の管理人に5枚の鋼貨を渡してケニーは急いでクシェルが暮らす小屋に向かった。
「おい、おいおい。いつのまに何かと…ずいぶんと…痩せちまったな…」
ケニーの妹は、王都の真下にある地下街で娼婦として活動していた。
ずいぶん昔に生き別れて必死に探したケニーが最後に見たのは…。
客の子を孕んだクシェルが必死に堕ろすのを抵抗した姿だった。
「アホが…小銭欲しさに股を開きまくった結果がこれかよ…」
子持ちになった事で更に生活が圧迫した彼女は必死に金を稼ごうとした。
その結果、病気を貰って商売にならなくなり、餓死してしまった。
「死んでる…」
「お前は生きている方か?」
「もうすぐ死ぬ」
声がした方をケニーが見ると部屋の隅で三角座りをしている少年を発見した。
妹よりはマシだが、頬はこけて碌な物を喰ってないのか胸部に肋骨が浮き彫りになっていた。
おそらく立ち上がれば、腹は膨れているに違いない。
体内に必要な水分を貯め込んだタンクは数日のうちに下痢として排出されるだろう。
「名前は?」
「リヴァイ…。ただのリヴァイ…」
「……そうか、クシェル。名乗る価値もねぇよな…」
アッカーマンと姓を名乗れば弾圧されるのは目に見えている。
だからクシェルは息子に姓を教えなかった。
飢餓状態で死にかけているガキなら王政の狗共がわざわざ探しに来るわけないから。
壁に背をもたれたケニーはズルズルと自重と共に脚を開いて座り込んだ。
「俺はケニー…ただのケニーだ。おめぇの母ちゃんとは…知り合いだった。ついでによろしくな」
もし、力があったとしてもケニーは大切な妹は救えなかった。
力を追い求めた結果、残酷な事実を知った彼は、妹の息子だけでも生きてもらう事にした。
散々、人を殺した癖に餓死しかけた愛想のねぇクソガキを救うなんて滑稽なもんだった。
「ゆっくり喰えよ。吐いたらケツから出た奴と一緒に口に流し込んでやるから覚悟しておけ」
1週間かけてようやく固形物が喰えるようになったクソガキは何も語らない。
その代わりに口が悪いケニーが彼の代わりと言わんばかりにやたらと喋りまくった。
『俺は人の親になれねぇよ…』
妹の忘れ形見を見殺しにはできないが、親に代われるほどできた人間じゃないと自覚する。
それこそクシェルが「ただのリヴァイ」として育成した意味が無くなる。
だから彼は…。
「まずは短剣の握り方だ!これをマスターすればいい。難しい事は考えるな!これだけ覚えろ」
リヴァイに短剣の使い方を教えた。
力があっても大切な物は救えないが、力が無くて救えない事は防げる。
もしも、クシェルが…いや、リヴァイが自立できるなら彼女も本望だろう。
とにかくケニーは、自分の経験をリヴァイに全て叩き込んだ!
「おい何様だよ!!」
「ひいい!?」
「いいかリヴァイ!舐められちまった終わりだ!!とにかく舐め腐る奴を叩き潰せ!」
生きるのに必死な野盗どもを武力で徹底的に叩き潰した。
強姦魔や強盗殺人でも見て見ぬふりをする地下街ですら指名手配されたクズに手加減はいらない。
見せしめに全員を殺害する様子を彼は義理の息子っぽい何かに見せつけた。
「だが、気が合う奴とは仲良くなれ!困っていたら手を貸すのも1つの手だ!」
ただし、こいつと仲良くしたいと思ったら仲良くしろ。
利害が一致しただけの関係だとしても、縁が何かしら活きてくる。
もし助けてくれたならそいつの為に一回くらい全力を尽くせとも語った。
誰かと肩を並べて酒飲みしているケニーの教えを見たリヴァイは、コップに残った酒を飲んだ。
まずくて吐いたのが、後でケニーにバレてお仕置きを受ける事となった。
「短剣の振り方!これさえマスターしろ!少なくともこれで物事はどうにかなる」
「ホントか?」
「いや、あくまで緊急時だけだ。カタギに手を出すな、やったらおめぇを捌いて喰っちまうぞ!」
地下街の掟は、分かりやすい。
強い奴こそが正義で弱い奴は奪われる事しかできない。
だが、あまりにも武力で暴れ回れば危険視した周囲から棒で叩かれまくる。
そして部外者が自分たちの生きざまに口を出さないのは暗黙の了解。
それだけだ。
要するにケニーはリヴァイが独りで地下街で生き抜く術を教えた。
「なんだ逆手持ちなんてしちまって?誰かの首でも掻っ捌く気か?」
「この方が戦いやすい」
「それがお前の選択か?」
「そうだ」
「ならそれを突き通せ!選択はいつだって唐突だ!それを決めたならやり遂げろ」
ケニーはいつだってリヴァイに選択を迫らせた。
緊急時に即座に対応出来る様にしたかったのもあるが、自分の道は自分で決めて欲しかった。
誰かに頼ってウジウジ言っている奴など願い下げだった。
「またリヴァイが暴れていやがるぜ!!」
「ヒャッハー!!やれ!!やっちまえ!!」
ある日、リヴァイはこの地下街で一番強い奴に勝利した。
体格に勝る相手は拳銃と包丁を駆使したのにそれより刃渡りが短い短剣1本で圧倒したのだ。
「あーばよクソガキ」
喧嘩に夢中になっていたリヴァイは、観衆の隙間から出ようとするケニーの後ろ姿を見た。
すぐに喧嘩を切り上げて彼の後を追おうとしたが、どこにもおらず困惑した。
まだ訊きたい事がいくらでもあったし、なにより彼の背中をまだ追いかけたかったのだ
それを理解しているからこそケニーは、リヴァイの元を去った。
「私は長くない」
「見りゃ分かるよ。バケモンの癖に老いと病気に敵わねぇお前にがっかりだよ」
ウーリを守る狗として活動したケニーが自身の老いを実感する頃、主がもうじき死ぬと悟った。
あれだけの“力”を持っておきながら人間らしく死ぬというのだ。
しかも、自分より年下の癖にあっという間に老いの速度を加速させるというおまけ付きだ。
夕暮れがウーリの人生を示す様な感じがしたケニーは松葉杖を持つ友人に悪態をついた。
「少し違う」
「あ?」
少ない余生を送っているウーリは橙色に染まる泉を見ながらケニーの発言の一部を否定した。
「この力はロッドの子たちに引き継がれる。私はその子たちの記憶の中で生き続けるのだ」
ウーリの発言でケニーが気になったのは2つ。
まずロッドの娘たちに“力”が引き継がれる事。
そして“力”を継承した者の記憶でウーリが生き続けるという糞みたいな願望だ。
「なあ、この際に説明してくれねぇか。教えずにくたばったら俺様が何度も蘇生しちまうぞ」
「ははは、そうか。そうだな…」
珍しくケニーの顔が険しいのを見たウーリは隠してきた真実を教えた。
絶大な“力”は巨人になった次の継承者に自分が喰われる事で継承される事。
“力”と共に先代たちの記憶を少しだけはあるが、引き継ぐ事が可能である事。
先代たちが隠してきた事実を話すかは、次世代の継承者次第である事。
なにより、“力”は行使するのではく“力”を行使してもらうという事を話した。
「“力”だけじゃなくて記憶も継承するのか?それに何で他人任せなんだ?」
力を継承するのはケニーも察していた。
だが、記憶を継承する意味が分からない。
「ケニー…この世界は遠くない未来、必ず滅ぶ」
「そりゃあ、諸行無常って言うしな…現にお前さんも滅びを望んで待ってるじゃないか」
「その僅かな人類の黄昏に私は楽園を築きあげたいのだ」
「それはお前の本心か?それとも先人の記憶で塗り潰されたせいでそう言ったのか?」
ケニーの質問にウーリは口で答えなかったが、瞳が光ったのが答えだろう。
「ケニー、まだ暴力を信じているか?」
「当然だ、力が無ければ生きていけないからな」
「そうだ、この世の真実だろう…だが、滅ぼし合う我々を結びつけたのは何だ?」
「知らねぇが、少なくとも暴力じゃない事は確かだ」
そよ風が吹いて草木がゆっくりと揺れて水面には波紋ができていた。
この世に存在するならば何かしら意味があるなら友情も何かがあって誕生したものだ。
「何かがあってお前と俺は友人になった。なんでか知らんがな」
「ああ、避けがたい事実だな。ただ私はあの時の奇跡を…信じている」
「ケッ、せいぜいお前が信じている間は、楽園を保ってやるよ」
「せめてもう少しやってくれないか」
「…だったらお前が長生きすればいいだろうが」
結局、その日からケニーはウーリの姿を見かける事は無かった。
数日後、ウーリの力を継いだロッドの娘が礼拝堂で演説をしていた。
相変わらず平和だの人々の愛など反吐が出る台詞を繰り出した。
『あいつの言う通り、バケモンは受け継がれたみたいだな』
フリーダ・レイスは演説をする時、瞳が光っていた。
結局、今世代の継承者も平和を望むだけのアホになっちまった。
『なんでだ?』
ウーリはこの停滞した世界が破綻するのは分かっていた。
なのにその記憶を継いでいながらフリーダも停滞した世界を望んでいる。
愛とか平和とか生きる上では必要ではない戯言を何度も繰り返す余裕がある。
演説を聞いていてケニーは1つだけ野心が芽生えた。
『その力を手にすれば、誰でも同じなのか?こんな糞みたいな俺ですらも…』
人々の記憶を改竄し、50mの壁を築き上げるその力は誰にでも平等らしい。
ならば、その神に等しい力を自分が手にすれば、ウーリの気持ちを理解できるのだろうか。
記憶の中で生き続けると言った彼の瞳は光ってなかったからあれは本心だったはずだ。
『みんな慈悲深くなっちゃうのか?知りてぇな…どんな気持ちになれる?』
普通なら自分の記憶は自分しか存在しない。
だが、“力”を継ぐと先人たちの記憶まで継ぐらしい。
同じ光景を見ていても価値観や宗教、想いによって大きく感情や思考が変化する。
そんな常識ですら巨人の力は変える事ができると知って興味が湧いた。
『そこから一体どんな景色が見える?本当にお前と対等な景色が見る事ができるのか?』
最期までウーリの思考を理解できなかったケニーは更なる力を求めた。
何かを奪う為の力ではなく誰かに優しくできる力を…。
まさに世界の盤上がひっくり返る絶大の力とやらを渇望した。
「ケニー!ケニー」
「…ん?」
長い夢から覚めたケニーが最初に見たのは、黄昏だった。
ウーリと最初に出会った時や最後に目撃した時もこんな時間帯であった。
「…なんだよ、いつの…間にそんな、に仲良しに…なった?」
次に見たのは、カーフェンとリヴァイが自分を見つめていた。
半日前までは殺し合っていたくせにいつの間にか同じ目線でこっちを見ていた。
そんな摩訶不思議な光景を見たケニーは、ずるいと思った。
「お前ら、ずるいぞ。この、俺様を…除け者にするなん…て」
左目しか開かずに身体がほとんど動かず、目の前は暗かった。
自分の死が間近に迫っていると実感したケニーは自分を見つめる2人に嫉妬した。
あれだけ友人と同じ気持ちで景色を見たいという願望を叶えているのだから…。
「大火傷にその出血、あんたはもう助からない」
「…1つ聞いて良いか?」
「なんだ?」
「フローラちゃんの装備はまだあるか?」
ケニーの質問を見てリヴァイは改めて彼の姿を見る。
自分が発砲した傷痕から出血し、右半身が火傷で見るも無残に膨らんでいた。
だが、フローラが残した兵器は壊れてはいるが鞘も立体機動装置も残っていた。
「ああ、壊れているが、ばっちり残ってるぞ」
「…そりゃ、あ…良かった。返さないといけな…
リヴァイの返答を聴いたケニーは急速に身体が死にかけていると実感した。
視界が歪んでカーフェンやリヴァイの顔も碌に直視できなくなったからだ。
そして吐血し、身体が少しずつ冷えていくのだから否定しようがない。
「隊長、これを…」
カーフェンは事前に預かっていた箱の蓋を開けた。
そこには、分解された注射器と何かの液体が入った容器があった。
「お前、これは…」
「そうだ、これは巨人化になれる液体とそれを注入する注射器だ」
「なんでそれをお前が持っている!?」
「俺様がロッドの鞄から…くすねた…奴さ」
カーフェンの説明を聞いて驚いたリヴァイの問いにケニーは返答をした。
何かとロッドとは長い付き合いだったので彼の癖や習慣を知っていた。
だからヒストリアと会話している隙にこっそりと1個だけ盗んだのだ。
そして巨人を討伐する際にカーフェンに預けておいたというわけだ。
「これを打てば延命できます。巨人化能力者を捕らえて喰えば「もういいんだ」隊長!?」
「ちゃんと…お注射打たねぇと…あいつみたいな出来損ない…になっちまう」
「だから注射をすれば…「アッカーマンは巨人になれねぇって言ってたんだ」…話が違います」
カーフェンは、注射をすれば巨人になれる物を盗んだと言っていた。
だが、彼が巨人になれないなどと聴かされていなかった。
巨人になってエレンを喰って“力”を得るという計画が…できないと知って…。
「それがお前の言い訳か?あんたが座して死を待つわけがない…そうだろ?」
リヴァイは、ケニーがこのまま死ぬとは信じなかった。
まだ山ほど訊きたい事があるので死なれては困るのだ。
「あぁ…俺は…まだ死にたくねぇ…力も欲しかった…」
ケニーは死にたくなかった。
何かにしがみ付いてでも無様に生き残りたかった。
「でも、そうか。…お前らを見て…ウーリの…今なら奴のやった事、分かる気がする…」
「は?」
「え?」
いきなり話が飛んでリヴァイとカーフェンは顔を見合わせた。
それを見てケニーは再び笑う。
これほど純粋に笑ったのは…結構やっている気がする。
「俺が…見て来た奴ら……みんなそうだった」
ケニーは語る。
「酒だったり…」
悲しい事や辛い事、疲労していた連中がこぞって酒を飲んでいた光景を!
「女だったり…」
落ち込んでいたロッド・レイスが心配してくれた侍女に甘えたり!
「神さまだったりする」
ウォール教の司祭の元、人々は祈りを捧げて団結しようとした。
「一族、王様、夢、子供、力…」
誰もが何かに縋っていた。
「そして遺志…」
散々に引っ掻き回してくれたフローラ・エリクシアですらも…。
「みんな、何かに酔っ払ってねぇとやってらんなかったんだな…」
人は孤独では生きていけないが、どうしても孤独になる時がある。
それでも本能が生きようとするので何かに縋るのだ。
そうでもしないと生きていけないほど人は弱かったのだと、ようやくケニーは気付いた。
「みんな…何かの奴隷だった…あいつらでさえも…」
生きる為に縋ったのにそれが目的となり、いつの間にか無意識に利用されるのだ。
忘却、性欲、盲信、家族、忠誠、欲望、義務、暴力、願望によって人は容易に狂ってしまう。
死を間近にして糞みたいな肉体から解放されるからこそ理解した。
誰もが平等に何かの奴隷だったのだと…。
「ガハッ!!」
「ケニー!?」
「隊長!?」
「お、お前らは何だ!?え、英雄か!?」
兵士ならば誰もが英雄になりたがるはずだ。
そう考えたケニーだったが、吐血してしまい、最後まで理由を聴けそうになかった。
「ケニー!俺の姓もアッカーマンらしいな?」
「それを…今聞くか?」
「あんた…母さんの何だ?」
最後の最後まで超えられたなかったケニーにリヴァイは質問する。
ずっと聞きたかったのにここまで我慢し続けた質問であった。
「ハ!馬鹿が…ただの…兄貴だよ…ガハ…ハ…ハ…」
「おめぇの父ちゃんだと思ったか!?バーカ!」と彼なりのありがたい返答をもらった。
それでもリヴァイは納得できない事がある。
「あの時…何で…俺から去って行った?」
リヴァイは恩人にお礼を言えないまま去られた事にショックを受けていた。
「ありがとう」の一言だけも言いたかったのだ。
自分を救ってくれた恩人がその機会をくれなかった事に今でも憤りを感じている。
「俺…は…人の…親には……なれねぇよ…」
リヴァイの意図を察したケニーは礼は要らないと告げる。
人殺しに育てられて感謝されちまったとなれば、それこそ【切り裂きケニー】の名が泣く。
「カーフェン…」
「はい」
「リヴァイに…渡して、くれ……俺様を越えた…記念品…だ」
カーフェン副長は、森に迷い続けた自分たちを今日まで導いてくれた隊長の命令に従った。
すなわち、この注射器はリヴァイの物となったのだ。
「ありがとう、ケニー…」
「あーばよ…クソガキ」
最後に立派になったクソガキからのお礼を聴けたケニーは笑ったまま力尽きた。
リヴァイとカーフェンは最後まで夢に向かって足掻いた男の旅立ちを見守った。
「良いのかい?」
「こういう時は黙って見守るべきだ」
「団長が言うなら我慢するけどさ。やっぱりなにかした方が…」
「なにもしなくていい」
「了解」
あまりにも空気が重く感じるハンジ・ゾエは何かしようとしていた。
その度にエルヴィン団長に牽制されてしまい、また同じ事を繰り返しそうになっていた。
104期調査兵たちを含むリヴァイ班もリヴァイ兵長が立ち上がるまで敬礼をしている。
「やれやれ…ようやくキリが付いたな」
モブリットを殺した部隊の隊長の死を確認したハンジは、一足先にカラネス区に帰ろうとした。
「そこまでだ調査兵団!!」
だが、そうは問屋は下ろさない。
そう、調査兵団は未だに内戦を引き起こした罪で指名手配されたままだったのだ。
四方八方から500個以上の銃口が彼らを包囲していたのだ。
「あ、あれは…」
調査兵団第三分隊の所属していたオルオ・ボザドは目の前の将校に見覚えがあった。
「ハンドリック・マンシュタイン師団長!?」
調査兵団に敵意を見せるのは、駐屯兵団第ニ師団ハンドリック・マンシュタイン師団長。
巨大樹の森で女型の巨人と交戦して戦死したエリック・マンシュタイン第三分隊長の兄上である。
「貴公らには、内乱罪と巨人誘致罪、そして礼拝堂における大虐殺の罪が問われている!!」
内地に存在する4つの城塞都市とその近郊を担当するのは、駐屯兵団第二師団だ。
第一師団よりは兵力と練度が劣るが、迅速に戦場に駆け付ける最精鋭の騎兵隊を有している。
ウォール・ローゼ内に巨人が出現した際には、巨人を東防衛線に誘導する役割を果たしたほどだ。
その精鋭兵たちが殺意をもって調査兵団の兵士を見据えていた。
「内戦を起こして民衆に恐怖を与え、巨人を出現させてオルブド区に誘導した罪は重いぞ!!」
もっともらしい事を発言するハンドリック師団長だが、彼こそが騒動を悪化させた張本人だ。
「違う!!我々は…!!」
「では、この血塗れの兵服は何だ!?巨人だったら調査兵団の兵服に血が残るわけがなかろう!」
エルヴィン団長はなんとかして場を収めようとしたが、不可能な事態が発生した。
なんと!エレンを救おうとしたリヴァイ班が着用した血塗れの兵服を見せつけてきたのだ。
「礼拝堂で指揮をしていた新兵の憲兵を利用して大量殺人を隠蔽したのではないのかね!?」
師団長の後方には2名の若い憲兵が座り込んでおり、周りの兵士から銃口を突き付けられていた。
さすがに駐屯兵団の兵服と馬、兵器を用意したのがバレてしまい、尋問されてしまったのだ。
そして血塗れの調査兵団の兵服を確認したハンドリック師団長は確信した。
自分たちが詰んでいると自覚した調査兵団が巨人を生み出してオルブド区に向かわせた。
そしてその巨人をまんまと討伐して今までの悪行を有耶無耶にしようと推測してしまったのだ。
「ヒッチ、マルロ!!」
「すまん、ジャン…俺たちじゃどうしようもなかった…」
さすがに今期入団した憲兵だと、5年近く師団長をしていた人物では相手が悪過ぎた。
あっさりと見抜かれてヒッチに危害が加わると理解したマルロは騒動を白状してしまった。
そのせいで致命的な証拠を握られてしまい、調査兵団は窮地に立たされた。
ジャンの呼びかけに申し訳なく答えるマルロの顔は大きく腫れており、悔しさで泣いていた。
「オルブド区の守備隊及び民衆よ!目を覚ませ!!巨人をここまで誘導したのは調査兵団だ!!」
第二師団長の言葉を聞いてオルブド区を防衛していた第二師団の兵士たちに戦慄が走った。
せっかくのおめでたい気分が吹き飛んでざわざわと騒ぎながら顔を見合わせる事となった。
「やはり、フローラ・エリクシアは正しかった!レイス家を狙う勢力が確かにここに存在する!!私の弟を無駄死にさせたどころか悪行に気付いたフローラまで抹殺したお前らに明日はない!!」
駐屯兵団第二師団長のありがたいお言葉を聞いたリヴァイは、ケニーの言葉を理解した。
正義感に酔ってしまい、いつの間にかその正義感の奴隷になった哀れな連中が目の前に居ると…。
「我々は王政府に操られた兵団司令部に従わず確固とした証拠を元に戦う正義の執行部隊だ!!キッツ隊長もレイス辺境伯の提言をもっと聴くべきであったのだ!!そうすれば…!」
そして調子に乗った師団長の発言を聞いてリヴァイとエルヴィンは理解する!
『『こいつらが全ての元凶か!!』』
なんとか王政府にクーデタを成功させたザックレー総統だったが、とんでもない事態を知った。
なんと駐屯兵団の各師団が命令を無視して勝手に動き回っていたのだ。
しかも、王政府や中央第一憲兵団ですら彼らの暴走を止める事ができていなかった。
それどころか勝手に駐屯兵団同士が戦争を開始しようとしていた現状に誰もが驚愕した。
そのせいで総統局は、調査兵団の手配を撤回するより兵団の暴走を抑えるのを優先した。
『『どこまで負の連鎖を生み続けるんだ…』』
エルヴィンが一足先にオルブド区に来たのは、その異常を守備隊に伝える為だった。
ところが、そのオルブド区に巨人が迫っているという緊急事態で棚上げになった。
その結果、こうして最悪の形となって目の前に露見している。
『『ハンドリック・マンシュタイン!!』』
こうなった原因を辿っていくとレイス辺境伯に利用されたフローラが悪い。
だが、一番の元凶は、一介の新兵に共感した駐屯兵団第二師団の師団長である。
彼がちゃんと地位に準じた守るべき手順を守っていればここまで悪化しなかった。
『お願いできますでしょうか?』
『君の気持ちは良く分かった。弟の犠牲を無駄にしない為にも協力するぞ』
『ありがとうございます!』
ハンドリック師団長は、フローラと必要以上に仲良くなって兵力を派遣すると約束していた。
つまり、自分の地位を悪用して礼拝堂の地下に兵士を送り込んだ元凶だったのだ。
そのせいで調査兵団は生き残る為に派遣された駐屯兵を1人残らず殲滅する羽目になった。
いくらレイス辺境伯に利用されたとはいえ、彼が責務を守れば起こらなかった事件だったのだ。
「お待ちください!!」
「…オルブド区駐屯兵団カルステン団長、何の真似だ?貴公らの部隊も犠牲になってるのだぞ」
いざ、発砲となった時、オルブド区の守備隊長とその配下が調査兵団を守る様に前に出た。
当然、大悪党を庇う意図が分からない師団長は、責任者に理由を問う。
「私は、いえ我々は調査兵団と共闘し、彼らは本気で人類を守るという心意気を感じ取りました!これは何者かに仕組まれた策略です!一度、調査兵団と話し合うべきだと提言いたします!」
「カルステン貴様!!内戦を起こし、同胞たちを殺した大罪人を庇うというのか!!」
「まずは、証人を立てて双方が話し合うべきです!!」
調査兵団に敵意があったカルステン団長だが、明らかに師団長が怒りで狂っていると感じ取った。
なので一度、冷静になってもらいたくて提言した。
それが正義感に燃える師団長の逆鱗に触れる事となった。
「カルステンも調査兵団とグルだ!!オルブド区守備兵にも銃口を向けろ!!」
「ハンドリック師団長!?」
南のエルミハ区や西のヤルケル区から派遣された兵士たちは師団長の命令で銃を構えた。
同じ駐屯兵団第二師団が相手にも関わらず、怒りに燃えた彼らの目には迷いが無かった。
一方、巨人との戦闘で疲弊しきった彼らは予想外の出来事で反応が遅れてしまった。
これでまたしても血が流れる戦闘が…始まるはずだった。
「総統局だ!!」
総統局の局員が辛うじて戦闘が勃発する前に駆け付ける事ができた。
声を聴いた兵士たちはその方角に顔を向ける。
「今からこの場は我々が取り仕切る!!双方とも銃を下ろせ!!」
「同じくラナイ・マクロンよ!エルティアナ隊長に代わって命じる!武器を下ろしなさい!!」
総統局から派遣されたファルケンハイン班長の怒声によって臨戦態勢が崩れた。
ついでに無駄に馬を走らせたラナイによって兵士の集中力が途切れてしまった。
「な、何の真似だ!!我々は…」
「ここは我々総統局が取り仕切る!!これ以上反抗するならば反逆者と見なしても良いのか?」
総統局は3つの兵団より上位の組織である。
彼らの命令が聴けなければ、ハンドリック師団長率いる第二師団が反乱軍として扱われてしまう。
よっぽど悔しかったのか、拳をブルブルと震えさせている彼の仕草は誰もが忘れないだろう。
「ラナイ、貴公は調査兵団をカラネス区まで誘導せよ!その後、王都の本部に戻り指示を待て」
「了解しました!」
こうして総統局の活躍によって戦闘や内戦が辛うじて避けられた。
しかし、多大な犠牲者を出した挙句、調査兵団が失った信用は計り知れない。
短剣型立体機動装置を身に着けたラナイ・マクロンに誘導されながら調査兵は帰路に着いた。
「これからどうするんだい?」
「さあな、今は総統局を信じるしかない」
ハンジ・ゾエの質問を軽くあしらったエルヴィン・スミスは…そのまま黙り込んでしまった。
賭けには勝ったが、予想したより酷い状況であり…調査兵団の廃止も覚悟している。
斯くして巨人が残した爪痕もヒストリアの対応も総統局に投げた調査兵団は…。
第57回壁外調査から戻って来た時よりも落ち込みながらカラネス区に帰還する事になった。