進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~   作:Nera上等兵

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147話 回想9-6 後始末

フローラは、自分が死んでも知り合いが立ち止まらない様に色々と仕込んだ。

中央第一憲兵団、ウォール・シーナの領域を管轄する駐屯兵団第二師団。

城壁都市ユトピア区の守備隊などがロッド・レイスとヒストリア、エレンを守れるようにした。

 

 

「調査兵団を許すな!!」

「俺たちの故郷を破壊したばかりか、駐屯兵を虐殺した奴らを殺せ!!」

 

 

その結果、女型の巨人が暴れて半壊したストヘス区や同僚を殺されたトロスト区の兵が暴走した。

【ユトピア区最終決戦】と呼ばれる一連の戦闘で2千名以上の兵力を喪失し、同数が退役した。

それにも関わらず、今度は人類同士で殺し合う羽目になってしまった。

そのせいでフローラどころか王政すら想定していなかった内戦が勃発する事となった。

 

 

「報告!カラネス区の内門が完全に封鎖されています!壁上には兵士以外に民間人も居ました」

「…おのれ!!籠城する気か!!」

 

 

ストヘス区から出発した3個中隊は、同じ志を持つ民間人を編入し、2個連隊規模まで膨れ上がる。

それを感知した城壁都市カラネス区も徹底抗戦をする為に民間人を徴用した。

壁上には壁上固定砲の他に投石用の石、油樽、中には排泄物が入った樽まであった。

巨人の注意を惹く為に作られた城壁都市は、内戦では鉄壁な要塞都市となったのだ。

 

 

「まあいい、包囲すれば奴らは補給を受けられず悲惨な末路になるだろう…!」

 

 

巨人を想定した城壁都市と50mの壁は、ひとまず1000人規模の戦闘を回避させる事に成功した。

しかし、それで終わるのであれば内戦など発生しない。

駐屯兵団第一師団精鋭部隊を調査兵団に壊滅させられた事もあり、トロスト区からも援軍が来る。

最終的に3個連隊規模がカラネス区全体を包囲して兵糧攻めを行なう手筈であった。

 

 

「…と奴らは、思っているだろうな」

「郷土愛に囚われるのであれば、それを利用してやるまでだ」

「ああ、家族が死んだら奴らも戦闘どころじゃなくなるよな…!」

 

 

カラネス区に立て籠もる駐屯兵団第三師団も馬鹿ではないのでこっそり特殊部隊を派遣していた。

トロスト区やストヘス区に毒を散布して民間人を大量虐殺する事で包囲を解こうとした。

実際、2つの城壁都市に工作員が潜入し、毒を散布する寸前まで局面が進んでいた。

もはや、王政どころか総統局すら駐屯兵団を統制しきれずに悲惨な結末を…迎える事はなかった。

 

 

「大変です!ストヘス区から大量の黒煙が!!」

 

 

郷土愛や復讐心で突き動かされている以上、故郷に異変が発生すれば作戦は崩壊する。

ストヘス区から侵攻してきた部隊は、故郷の異変を知って慌てて引き返す羽目になる。

先遣隊として2個小隊規模の騎兵隊が帰投を急ぐ!

 

 

「号外!!リーブス会長が生きていた!真の黒幕は王政だった!!」

 

 

同時期にストヘス区にある新聞社が衝撃的なスクープを出した。

調査兵団に始末されたと思われたリーブス会長が生きていたと発表したのだ。

これにより、リーブス商会が拠点とするトロスト区は大混乱に陥った。

特にリーブス会長の死を建前に調査兵団を裁こうとした駐屯兵に動揺が広がった。

 

 

「これは王政に仕組まれた陰謀だ!」

「そうだ、俺も親父も全部、王政に脅されていたんだ!」

 

 

リーブス会長とそのご子息が王政の陰謀をアピールしたせいで建前を失ってしまった。

それどころか、リーブス商会が兵団に圧力をかけた為、援軍を派遣する事ができなくなった。

リーブス会長の死で大騒ぎをした以上、彼らは一度、戦略を見直す必要が出てきたのだ。

 

 

「ひとまず進軍を取りやめて情報を収集するべきです」

「おのれ!!調査兵団め!!またしても…!」

 

 

いくら駐屯兵団第一師団が調査兵団を殲滅したくても、民衆が望まなければ戦えなかった。

しかも、ストヘス区の新聞社が速報を壁社会全体に情報を拡散したのも大きい。

憎しみを抱く者は、歯痒い想いをしながらも、内戦の火種は徐々に鎮火される事となった。

これにより、カラネス区から派遣された特殊部隊も建前が消失したので撤退する事になる。

 

 

「さて諸君、そんなに銃器を持ち出してどこに行く気だったのか聞かせてもらえるか?」

 

 

急いで引き返して来た騎兵は、悉く馬が街に着く前に大暴れし、放置する事になった。

その影響で騎兵隊は後続の2個連隊と合流してストヘス区に帰投すると女将校が待ち受けていた。

 

 

「エルティアナ監査副長!?」

 

 

総統局でも権力がある監査部のNO.2の女将校が駐屯兵団の旅団長に質問を繰り出した。

それに対して反乱兵を率いていた旅団長は、すぐに返答ができなかった。

さすがに同じ人類を滅ぼす為に部隊を動かしたなど…口が裂けても言えなかった。

 

 

「どうした?同じ旅団長同士、仲良くしようではないか」

「その…」

 

 

憲兵団と駐屯兵団の旅団長は、同じ階級でも権限が大きく違う。

現実的な条件では無いとはいえ憲兵団の旅団長は、駐屯兵団の連隊長未満を裁く事ができる。

つまり同格である駐屯兵団の旅団長程度ならその場で処刑できる彼女に兵士たちは圧された。

 

 

「…まあ、貴公らの言い分も建前も分かるが、早計な行動は首を絞める事となるぞ?」

 

 

エルティアナ女史を演じるフローラは、彼らの行動を全否定はしなかった。

復讐心で動かされたのは、過去の自分も同じであり、否定したところで何も変わらない。

むしろ、誰かが復讐を否定しても、本人が納得しなければ止めようがないと分かってた。

 

 

「まずは、我々を納得させる証拠を提出し、議論を得た上で民意に問うべきではないのか?」

「しかし……」

「忘れたのか?このままでは諸君らの行動は、人類の平和を乱す大罪となるという事に…」

 

 

そこで内戦を主導した上層部にひとまず罪を問わない様にした。

調査兵団がどれだけ人類にとって害悪なのかという証拠を出させる事を彼らに促したのだ。

更にそれらの証拠を元に特別兵法会議を開催し、議論する事になった。

 

 

「調査兵団に復讐したいなら合法で済ませろ。さもないと正当性が失われるぞ?」

 

 

喧嘩を仲裁する時は、双方の話を聴く必要があるが、当人は納得できる訳がない。

ただし、自分の正当性が失われるくらいなら大人しくするというのが、人の心理だ。

そして時間をかければ、少しだけだが客観的に思考する事も出来るし、対策も打てる。

つまり、フローラは【復讐の先送り】という名の時間稼ぎをした。

 

 

「承知しました…」

「私も調査兵団の動きに困っていたのだ。協力してやるからひとまず武装を解除せよ」

 

 

もしここで命令に従わなかったらフローラは反乱部隊の指揮官を皆殺しにするつもりだった。

だが、彼らは頭を下げて従ったので都合の良い餌を与えて反乱兵の肩を持つ様に振舞う。

そうする事で、怒りを共有すると同時に敵意を下げて議論できる様に仕向けた。

さすがに自分より上の立場の人物が味方になったのに反故する愚か者など居なかった。

 

 

『はぁ……面倒だわ……』

 

 

フローラはストヘス区の守備隊がカラネス区に向かった報を聴いて追いかけるのを諦めた。

平地で無理やり交渉しようとすれば確実に話が拗れて戦闘が発生してしまう。

まさに調査兵団が辿った末路の二の舞になると彼女自身が分かっていた。

 

 

「まさか上手く行くとは思いませんでした…」

「まあ、分が悪い賭けだったからな。そう考えても私は否定できん」

 

 

そう考えたフローラは、大きな賭けに出た。

そして成功した。

 

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さすがに彼らの故郷では、軽はずみで戦闘は発生しないとフローラは賭けるしかなかった。

そこで、手勢を率いてストヘス区に到着した彼女は、すぐに行動に移した。

 

 

『馬糞やハーブを集めてどうする気だろう…』

『黒煙を出すなら信煙弾で充分では?』

『なにがしたいんだ…』

 

 

まず、大量の馬糞とこの辺りの馬の主食となるハーブを兵士たちに集めさせた。

そして角灯に使われる工業用アルコールを片っ端から回収する。

 

 

「よし、馬除けができたな」

「は?」

 

 

フローラが作ったのは、大規模な馬除けの煙である。

馬の体毛には虫が寄りやすい上に手入れをしっかりしないと更に面倒な事になる。

しかし、牧場はともかく1個中隊が乗る馬数にいちいち虫除けの煙を焚くのも面倒である。

そこで一カ所に大量の馬を集めて煙を焚いて虫を追い払う事で膨大な作業を簡略化させている。

 

 

「馬糞は消化しきれない繊維を多く含んでいるから虫除けにもなるのさ」

「それが何で馬除けになるのでしょうか?」

「この辺りのハーブはな…燃焼すると馬が嫌がる匂いを発するのだよ」

「……はぁ?」

 

 

馬糞は、未消化の繊維を多く含む為に肥料に向いているが、燃料には向いていない。

成分次第では虫除けにもなるが、これを好んで焼く者は居ない。

しかも、早急に集めさせたので乾燥しておらず、そもそも燃えにくい。

そんな物を無理やり燃やせば、当然、生物にとって害がある煙を発する。

 

 

「これで騎兵の機動力は削がれた。後はゆっくりと歩兵と共に到着するのを待とう」

「信煙弾で焼き払いを偽装しなくてもよろしいので?」

「そんな余力がどこにある?干し草と廃材となった木片を燃やすだけで充分だ」

 

 

狼煙については、瓦礫に含まれた木材と干し草を使った。

大勢に気付かせる黒煙を出すには、大量の信煙弾が必要だ。

だが、ほとんど用意できず、半壊したストヘス区にも存在しない。

だからフローラは、馬除けの煙の方に拘ったのだ。

 

 

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「ああ、やる事が多すぎる…」

 

 

なんとかストヘス区から飛び出した侵攻部隊を帰投させたフローラは溜息をつく。

今度はカラネス区の部隊が破壊工作しない様に策を打つ事にした。

あえて侵攻部隊を正門に待機させる事でカラネス区の斥候の視点を釘付けにさせた。

 

 

「総統局の旗を正門と内門に設置しなさい」

「…意味があるのですか?」

「ほう?貴公は、総統局がここを直接管理しているという重要性に気付かないのか?」

「し、失言致しました!申し訳ございません…」

 

 

総統局の旗があるのであれば、ストヘス区は上位組織である総統局が管轄している事になる。

もしも、そこに攻撃を仕掛ければ、正当防衛にならず、カラネス区に非ができる。

いくら正当な理由があっても、国王の旗を設置した場所を攻撃すれば反乱になると同じ理屈だ。

 

 

「報告申し上げます!!レイス領にて巨人が!しかも例を見ないサイズの巨人が出現しました!」

 

 

ストヘス区に到着して対策を打っていたら、あっという間に日が暮れてしまった。

そしてレイス領に巨人が出現したという知らせの時には、月が真上に存在していた。

もはや寝る時間だが、フローラに休む暇など無かった。

 

 

「なるほど、君たちが望む証拠を証明する良い機会となったか、なら話は早い!」

 

 

仮眠を取ったフローラは、反乱部隊を率いた将校や指揮官を連れてレイス領に向かった。

調査兵団を嵌める証拠集めという事もあり、彼らは喜んで同行する事となった。

幸いにも、エルティアナの部下は優秀であり、不在になる将校の代わりになった。

 

 

「私に続け!調査兵団の悪行を証明しようでないか!」

 

 

ついでに調査兵に恨みがある部隊も連れてウォール・ローゼの北東に向かって馬を走らせる。

エルヴィン団長が居るオルブド区に向かうと逆効果になるのでこうするしかなかった。

巨人の出現したとされる現場にフローラが辿り着くと、巨人はオルブド区に向かったと知る。

 

 

『やっぱり殺し合ったわね…』

 

 

既に最悪なシナリオを描いていたフローラは、それが当たったと理解する。

大規模な崩落を調査している兵士によって地下に向かった兵が帰還しなかったと報告を受けた。

表向きは崩落に巻き込まれたであろうが、実際は先行した調査兵と交戦したのだろう。

地下から負傷以上に血塗れの調査兵が這い出て来たという証言は大きかった。

 

 

「やはり調査兵団の仕業ではないか!」

「奴ら、またしても巨人の件で犯罪を有耶無耶にする気か!?」

「もしや、ユトピア区の件も奴らの仕業では!?」

 

 

礼拝堂地下に向かった兵が誰一人戻らなかったという件は、更に調査兵団を不利にさせた。

ただし、それを擦ってギャアギャア喚いている暇では無い事は誰でも分かる。

旅団長としての地位に就いている女将校を演じるフローラは成すべき事を示す。

 

 

「静粛に!まず巨人の討伐が先だ!!私の意見に賛同する者はついて来い!!」

 

 

オルブド区が巨人の侵攻で陥落すれば、次は王都ミットラスが狙われる。

その事実から不服ながらも、ストヘス区の部隊はエルティアナに従ってオルブド区に向かった。

翌日の夕方にオルブド区に到着したエルティアナ隊は、衝撃的な光景を目にした。

 

 

「これは酷い……」

 

 

寝不足になったフローラが到着した頃には、既にロッド・レイスの巨人体は討伐されていた。

しかし、残された痕跡から大惨事になったのは誰の目から見ても明らかだった。

 

 

「まずは、負傷者の手当てと復興を手伝え!!処罰はその後だ!!」

 

 

その為、フローラは率いて来た部隊に目的を与えてその場で解散させた。

先行で派遣したファルケンハイン班長がオルブド区を管理した事で混乱は少なかった。

おかげで、あっさりと駐屯兵団の第二師団長とフローラは接触する事ができた。

 

 

「まず私情を堪えて面会して頂いた事を感謝致します。マインシュタイン師団長殿」

 

 

エルティアナに化けるフローラは、彼の負の感情を受け止める羽目になった。

彼は、駐屯兵の返り血を浴びたと思われる調査兵の兵服を複数も押収していた。

調査兵団を無罪にする事は不可能であり、一族郎党まで罪に問うべきだ。

そう豪語する師団長にフローラは、彼の行動を感謝する事で溜飲を下げさせた。

 

 

「それと、わたくしの名を使って暴れ回らないでくださいませ」

「なっ!?」

 

 

あっさりとハンドリック・マンシュタイン師団長に正体を明かしたフローラは話を続ける。

 

 

「フローラ、お前生きていたのか…」

「むしろ、生きていると皆様に都合が悪い様なので正体を伏せさせて頂きましたわ」

 

 

フローラが死んだ途端、どの勢力も手のひらを返して彼女の存在を抹消した。

それを彼女と共闘した兵士ほど疑問に思っているからこそ納得できる返答となった。

面倒な事は、王政が仕組んだ奸計とか言っておけば勝手に納得するだろう。

現にオルブド区で中央憲兵たちの大半が投降したのもあり、話も合わせやすかった。

 

 

「それと本題に入りますが、師団長にしかできない事をお願いしたいのです」

「ほう?何かあるのか?」

「実は……」

 

 

さすがにフローラの死を利用した負い目もあり、師団長は振り上げた拳を降ろした。

師団長の決断となれば、彼の管轄する兵士たちは身動きが取れなくなる。

そもそも、王政や総統局の許可なしに駐屯兵団が動けたのは彼の影響が大きい。

だから、マンシュタイン師団長を味方にしたフローラは無理やり内戦の火種を消した。

 

 

「それとオルブド区の復興を急がねば、ユトピア区の復興にも支障が出ます」

「ああ、そうだな」

「幸いにも王政に作らせた補給拠点があります。当分は…」

 

 

2週間も経過していないのにユトピア区とその南部であるオルブド区に甚大な被害が出た。

さすがに情報が出回る頃には、人類同士で殺し合う必要が無いという考えが兵士たちに蔓延する。

自分が撒いた火種を消すフローラは、こっそり一部の商会にも自分が生存してると暗号を送った。

これにより、停戦命令に反抗する部隊の補給を妨害させて反乱を防ぐ事に成功した。

 

 

「はぁ……」

 

 

ようやく話し合いが終わって復興が始まる!…という訳にはいかない。

ケニー・アッカーマンの遺体など回収できる死体は回収したが、まだ山ほど死体が残っている。

()()()()()()()()()()()()()()()も考えたが、まずやるべき事をした。

ハンドリック・マンシュタイン師団長と共にフローラは今後について向き合った。

 

 

「これでは、従来の戦略を変えなくてはいけないな…」

 

 

フローラが頭を悩ましたのは、内戦の後処理だけではない。

兵士の死体や民家の崩落具合から兵団が定めた戦略の変更を強いられた。

それどころか、襲撃してきた巨人の分析までもが含まれていた。

だが、実際に交戦していないフローラは、自力で分析するのは不可能であった。

 

 

「カルステン団長、お会いできて光栄です」

「こちらこそ、お忙しい中に御越して深く感謝申し上げます」

 

 

必死にフローラが考えた結果、更に翌日の昼頃!

駐屯兵団第二師団の旅団長であるカルステンとフローラは現場検証をする事となった。

戦死した兵士の対応は決まっているが、むしろ戦死した原因の究明が急がれた。

部隊の責任者や証人を連れてフローラはここで何が起きたか分析をした。

 

 

「あり得ないほど大きい巨人から致死量の蒸気を発していたと?」

「はい、目視できないほどの蒸気が眼前を覆うほど発生しておりました」

 

 

巨人の襲来を防ぐ壁を築いた人類は、壁外への干渉を固く禁じた。

それと同時にカール・フリッツ王の思惑もあり、防衛の戦闘教義(ドクトリン)を採用した。

要するに城壁都市に暮らす住民に釣られて近寄った巨人のみを砲撃で討伐するというものだ。

 

 

「しかも、砲撃の射程範囲外から飛来物がここまで届いたのか?」

「間違いありません。しかも蒸気がここまで到達した時には…」

「そうか、この教訓を生かせねばならないな…」

 

 

これは、ウォール・マリアが陥落しても続いていた戦略であった。

壁上固定砲が50mの壁上に設置されたのも、その影響である。

だが、この戦略には欠点があり、巨人を限界まで壁まで近づけさせるという前提がある。

現にトロスト区防衛戦では、門が破られた際に巨人の侵入を阻止する事ができなかった。

 

 

『……つまり、壁に近づく前に巨人を殲滅する必要性があるのよね』

 

 

これは、壁や門に触れて動けない巨人を上から砲撃する経験しか積めなかったせいである。

王政の影響で兵器がほとんど改良されない上に戦略でこうする事しかできなかった。

動き回る巨人相手にブドウ弾すらまともに当てられず侵入を許したのが事の顛末だ。

 

 

『それも長距離に届く火力という無理難題を強いられる事になる…』

 

 

フローラは立体機動が得意ではなく…むしろ、大砲に関する成績がトップであった。

だから同期からは、砲兵科に進めと言われる事が多々あり、それを自覚していた。

そして砲撃の実技も首席であった彼女だからこそ、それが不可能だと理解した。

 

 

『今から兵器開発しても、間に合わないわ…』

 

 

大砲を改良しようにも、量産されて前線に届くまで4年以上はかかるだろう。

ましてや、内戦が勃発したというタイミングで砲兵にそれを任せたくなかった。

長遠距離から砲撃できるという事は、城壁都市の攻略戦にも転用できてしまう。

だから王政は、大砲の改良を抑えていたという訳だ。

 

 

「とにかく、死因を分析して悲劇を少しでも抑えようでは無いか!」

 

 

よって論点をズラして戦死者の死因を徹底的に解明する事となった。

エルティアナ女史を演じるフローラは、必死に現場と死体の検証を行なった。

原型を留めている死体が全体の1割未満しかないという現状が戦場の悲惨さを物語っている。

トロスト区に侵入した巨人に喰われて原型がほとんどない遺体の方がまだマシという状況だ。

 

 

「そうか……戦死者は英雄として表彰されないといけないな…勲章と記念碑を作るとしよう」

 

 

それでも分析しなければ、彼らの死が無駄に終わってしまう。

フローラと解析班は必死に分析を行なった。

 

 

「心臓を捧げて最期まで戦い抜いた彼らに敬意を!」

 

 

死因を調べると大半が高熱の蒸気で肺を焼かれたり全身が大火傷を負ったのが致命傷だった。

超大型巨人と実際に交戦したフローラは、巨人の体格が大きいほど体温が高いと実感している。

超大型巨人よりも大きいのであれば、もはや近づくだけで灼熱地獄だと察する事ができた。

 

 

『木が引火するなら最低でも400℃近い蒸気が漂っていた事になるわね…』

 

 

一応、訓練兵が習う【巨人学】で『2乗3乗の法則』という単語が出て来る。

これは、面積は2乗するのに対して体積は3乗するというものだ。

 

 

「高熱に立ち向かった彼らの奮闘のおかげでオルブド区は守られたのだからな…」

 

 

適当にそれらしい事をフローラは発言しながら記憶から知識を必死に引っ張り出した。

例えば、1mの人間を15倍の大きさにすると225倍の表面積に対して体重が3375倍まで増える。

訓練兵時代、この理屈を理解できないミーナにフローラは、サイコロで教えた事がある。

 

 

-----

 

 

訓練兵時代、フローラは同期である104期訓練兵たちを誘って勉強会を何度も開催した。

特にミーナは親友であったので必死に勉強会で彼女の成績を底上げできる様に尽力した。

 

 

「じゃあ、始めるわよ」

 

 

『2乗3乗の法則』が理解できないミーナの為にフローラは、サイコロを机の上に置く。

 

 

「ここに10mmのサイコロが1つあるわよね?」

「うん、あるね」

「6面サイコロは、基本的に立方体、つまりどの辺も同じ長さって事になるの」

「さすがにそこまで分かるよ…」

 

 

6面サイコロは立方体、つまりどの辺も同じ寸法となる。

ここまでならミーナも理解できる。

それを知ってフローラは更に応用する為に親友に質問をした。

 

 

「これが2倍の大きさになるとサイコロの1面の面積はどうなると思う?」

「2倍!!」

 

 

フローラに口頭で質問されたミーナは、元気よく答えを述べた。

返答を聴いて栗色の髪を掻いてフローラは、間違いを指摘した。

 

 

「残念、4倍よ」

「え?」

「それじゃあ、実物で見てみましょう」

 

 

10mmのサイコロを例にしてフローラは、そのサイコロの面積を2倍にする。

すなわち更にサイコロ3個、追加して面積を2倍にしてみせた。

 

 

「4個になった…」

「そう、サイコロが2倍の大きさになると面積は4倍になるのよ」

 

 

辺が10mmの平面を2倍の大きさにすると4倍の面積になる。

 

 

「…えーと」

「そもそも10mmのサイコロの1面の面積を求めた方がいい?」

「お願い!」

 

 

根本的に計算があやふやな12歳のミーナの為にフローラは近くにあった紙で計算を書いた。

紙に書くと以下の通りになる。

本来なら乗数は、^と表現しないといけないのだが、混乱を招くのであえて書かない事にした。

 

1⃣ = サイコロ

1⃣ 10mmの6面サイコロの1面の面積は、10mm×10mm=100mm²=100平方mm

 

 

縦10mmm×横10mmは、100平方mmの面積となるのは、計算すればすぐに分かる事だ。

そこから一面を2倍にしようとすれば、必然的に縦と横も2倍にしないといけない。

 

 

1⃣

縦と横を2倍にするとこうなる

1⃣1⃣

1⃣1⃣

 

 

20mm×20mm=400mm²=400平方mm

サイコロが4個並ぶと縦20mm×横20mmとなり、面積は400平方mmとなるのだ。

 

 

「意味が分からない…」

 

 

ここでもミーナは、首を傾げた。

それでもフローラはめげずに親友に理屈を教え続けた。

 

 

「2乗って分かる?」

「分かんない」

「同じ数同士を1回かける事を2乗と言うのよ」

 

 

6面サイコロはどの辺も同じ10mmの寸法なので一面の面積は、10×10=10²=100mm²となる。

その面の大きさを2倍にすると20×20=20²となり400となる。

だから元のサイコロの面を3倍にすると30×30=30²=900となる。

これが、2乗3乗の法則の2乗というものだ。

 

 

「ここまでが二次元の話となるわ!」

「二次元?」

「…そこから教えないといけなかったのね」

「ごめん…」

 

 

ここから3乗の話をしようとしたフローラだが、どうやら親友は二次元の意味が分かっていない。

そんな素振りを見せたのでまずは二次元の話を始めた。

 

 

「正方形には、縦と横の辺があるわよね?」

「あるね」

「つまり、縦と横があるのが二次元なの。親指と人差し指で作れるのが二次元の面積よ」

 

 

フローラは両手の親指と人差し指同士をくっつけて菱形を作った。

親指と人差し指の合計を4本にする事で辺を作り、二次元の面を表現した。

 

 

「次に三次元を説明するけど、二次元に高さを加えると三次元になるのよ」

 

 

親指と人差し指で菱形を表現したが、そこに中指を立てて机の上に置いた。

すると菱形だった物が菱形の椅子みたいになった。

 

 

「これが三次元?」

「そう、三方向に辺があると三次元になるの!」

「それで2乗3乗の法則と何の関係があるの?」

「3乗は、三次元を表しているのよ!」

 

 

さきほど面積は、辺と辺を掛けた数値が面積になるとフローラは発言した。

本当は【乗算】と発言したかったが、専門用語になるので必死に我慢したのは別の話。

ただし、それだけでは、10mmの立方体であるサイコロの体積を表現できない。

だってサイコロの面は、6個もあるのに1面の面積しか求めていないのだから。

 

 

『まあ、6面の話は無視しましょう』

 

 

ここで立方体の展開図を説明すると更にミーナが混乱しそうなのでフローラは説明を避けた。

その代わりに三次元の説明を簡潔に表現した。

 

 

「だから、さっき求めた面積に更に高さを掛けるとサイコロの体積になるのよ!」

 

 

面積が二次元、体積が三次元と表現すれば分かりやすい。

四角形の面積を計算したいなら2つの辺の寸法が分かれば良い。

だが、現実世界は三次元で構築されているので体積も計算する必要があるのだ。

 

10mm×10mm=100mm²が10mmの辺で作られたサイコロの1面の面積となる。

 

だから更に高さを加えるとサイコロの体積は、10mm×10mm×10mm=1000mm³となるのだ!

 

 

「つまり、10mmのサイコロの体積は、横と縦と高さを掛けるから1000立方mmになるわけね」

 

 

6面サイコロの1面の面積が10mm×10mmで100mm²

6面サイコロの体積が10mm×10mm×10mm=1000mm³

というのが、2乗3乗の法則の基本である。

何が言いたいかというと元の面積を2倍にしたいなら倍数を2乗して計算すれば良い。

 

 

2²=2×2=4

100mm²の4倍=400mm²=元のサイコロの2倍にした面積

 

 

ここでポイントなのは、【面積】と【体積】は違うという点だ。

10mmの立方体を展開図にすると6個の面ができる。

つまり、展開図の表面積は、1面100mm²×6個なので600mm²となる。

ここで面積と体積の違いを認識していないと後に出て来る疑問を抱く事となる。

 

 

「つまり元の数を2倍にすると面積は4倍となって体積は8倍になるわけね!」

「うーん?」

「だから巨人学では、巨人の肉体は自重で支えられないはずでは…って言ってるの!」

 

 

教本には、分かりやすい例も書かれていた。

1.5mの兵士を15m級の巨人にすると筋肉の断面積は100倍に対して元の体重の1000倍になる。

まあ、まさか訓練兵団を卒業した年に兵士が巨人になるのを目撃するとは思わなかったが…。

要するに人体をそのまま大きくした15m級の巨人は本来なら自重で潰れるという理屈があった。

だが、104期訓練兵時代のミーナは、その理屈が分からなかった。

 

 

「そんなのおかしいよ!!サイコロが2倍になると元のサイコロが4個分になるんでしょ!?」

「そうね」

「じゃあ、2倍にしたサイコロの重さはサイコロ4個分、元の4倍の重さとなるじゃない!!」

 

 

さきほどの例では、【断面積=二次元】と【体積=重量=三次元】と表現していた。

10倍にすると100倍の面積と1000倍の体積となるのは、2乗3乗の法則で示される。

しかし、サイコロを2倍にするとサイコロの重さが一致しないというミーナの指摘は鋭い。

要するに2を3乗にして計算するとサイコロ8個分の重さになっちゃうという疑問であった。

 

 

「そうね」

「そうでしょ!」

 

 

10gのサイコロならサイコロ4個集めれば40gとなる。

しかし、2乗3乗の法則だと重量を出すのに2を3乗をする必要があるので80gになる。

それが変だとミーナはフローラに答えを求めた。

 

 

「ミーナ」

「何?」

「なんで面積と体積を一緒にしたの?」

「え?」

 

 

ここでミーナは、親友が何を言っているのか良く分からなくなった。

だってサイコロの面積を求める為に倍数分をかけるって言っていたのだから。

 

 

「ふふふ、分かり難くてごめんなさい。あえて面積と体積の違いをしっかりと教えなかったの!」

「意味分からない…」

 

 

フローラはミーナにも分かりやすく説明した。

2乗3乗の法則は、基本数nに対して面積はn²、体積はn³として求める事ができる方式だ。

そしてミーナは、面積を2倍にするなら同じサイコロを4個も集める必要があると知った。

つまり、サイコロを4個集めるからその重量は、4個分のサイコロになると考えた。

しかし、それは結論から逆算したのであって2乗3乗の法則に当て填めて考えていなかったのだ。

 

 

「物体を2倍にすると面積が4倍になって体積が8倍になるって言ったわよね?」

「うん」

「じゃあ、体積が4倍なら…立方根で³√4になるから…………元の数値は、1.587くらいかしら?」

 

 

親友が何やら数字が含まれた怪しい暗号文のような書いたが、ミーナには分かる。

絶対に1.587がサイコロの倍数に適応されないという事くらいは!

 

 

「それじゃないよね?」

「もちろん、ミーナに間違いを認識してもらう為に言ったわ」

「何がおかしいの?」

 

 

フローラに揶揄われたと思ったミーナは、早く答えを教えてもらいたかった。

 

 

「面積は4倍だけど体積は8倍なのよ!だからサイコロが8個必要でしたのよ!」

「えぇ!!?」

 

 

フローラは面積の計算だけ教えて体積の計算をしっかりとやっていなかった。

面積を2倍にしたいのなら、辺と辺を2倍にする必要がある。

しかし、体積を2倍にするなら高さも2倍にする必要があるのだ!

 

 

1⃣1⃣

1⃣1⃣

更に高さ分を2倍にする=4個のサイコロを追加する

1⃣1⃣

1⃣1⃣

サイコロの大きさを2倍にすると体積はサイコロ8個分になるという訳だ。

そうしないと辺が全て等しい立方体にならないから。

 

 

計算式も20mm×20mm×20mm=8000mm³

10mmの6面サイコロの体積が1000mm³なので8000÷1000=8

サイコロの大きさを2倍にするには、8個分のサイコロが必要となる。

 

 

「分かった?これが2乗3乗の法則よ」

 

 

だからサイコロが8個無いと元のサイコロの2倍の大きさにならないとミーナに告げた。

現にフローラは、サイコロ8個を使ってサイコロの2倍の大きさを表現した。

それを見てミーナは少しだけ唸った後、フローラの顔を見た。

 

 

「騙したわね!?」

「騙してないわ。言ってなかっただけよ。でも、これで二度と忘れないでしょ?」

「それはそうだけど…」

 

 

こんなインパクトがある事をされては、二度と忘れる事は無いだろう。

こうやってフローラは、悩んでいるミーナを揶揄いながら勉強を教えていた。

 

 

「兵士になるうえで最低限の知識は、わたくしのやらかしで覚えてくださいませ!」

「でも、やり過ぎじゃない?」

「わたくしもそう思ってるわ」

 

 

そこにダズやコニーやらサシャを巻き込んで勉強会に参加させて色々と覚えさせたのだ。

だからコニーとサシャは、雑学や計算が苦手で赤点は取るが、0点は一切取らなかった。

ただ、こういった活動には、お邪魔虫が付き物である。

 

 

「おいフローラ!クリスタも参加させて良いよな?」

「ユミルが教えてあげればいいじゃない」

「良いよな?」

「……はい」

 

 

訓練兵団に入団直後のクリスタ・レンズと名乗る疫病神は、ほとんど対人関係が無かった。

そのせいで一時期は虐められていたのでユミルがフローラを利用して孤立させない様にした。

 

 

「これが友人…。いいな、私も誰かと一緒に居たい…」

 

 

孤独だったクリスタと名乗る女の子は、フローラが開催する集会に積極的に参加する事となった。

この影響でヒストリアは、フローラに懐いたが、フローラ自身は未だに嫌悪感があった。

無意識にフローラが恋したライナーは、いつだってクリスタを気にしていた。

自分に親友以上の関係になる気はないのに接点が無いあいつには、いつも性的視線を送っている。

顔には自信があるフローラは、乙女としてこれほど相手と比較されて苛立った事は無い。

 

 

『なんかムカつくわね』

 

 

104期訓練兵の大半と仲良くなったフローラだが、クリスタは好きになれなかった。

『ライナーの愛を向けられる彼女に嫉妬していた』と今なら分かる。

ただ、訓練兵団を卒業したら二度と逢いたくないと思ったのに…。

何故か調査兵団に加入し、いつの間にかヒストリアの父親と接触してしまった。

そのせいでフローラは、ずっとヒストリアの事を考える羽目になったのだ。

 

 

『でも、やっと解放されたわ!!』

 

 

しかし、ヒストリアは兵団政権に保護されたのでこれ以上、考える必要が無い。

ようやく【束縛】から解放されたフローラは歓喜し、ミーナの前で踊ってみせるほど嬉しかった。

だが、フローラは知らない。

またしても、ヒストリア関連で頭を悩ます事に…。

 

 

-----

 

 

話を戻すと『2乗3乗の法則』で巨人は自重は支えられないという理屈がある。

 

 

『まあ、実際は巨人に常識は通用しませんけど…』

 

 

実際には、そんな事はないので【巨人に関しては例外である】という説明文が記されていた。

もし、そうなれば巨人化できるエレンの説明ができなくなるので当然と言える。

薄れる記憶を必死に探っているフローラが着目したのは、次に書かれていた一文である。

 

 

『デカい巨人になるほど想像を絶する高温になるという事か…』

 

 

教本によると【巨人の温度に関しては適応される】と書いてある。

常に人体は放熱しているが、巨体になるほど体積に対して放熱する表面積が少なくなる。

要するに【図体がデカい巨人は、高熱になりやすいから気を付けろ】という解説をしていた。

 

 

「それに防熱装備の必要性が分かっただけでも彼らの犠牲は無駄にならないだろう」

 

 

耐熱装備程度では、おそらく即死するか、死ぬまでの時間を少し稼ぐ程度にしかならない。

下手すれば熱間鍛造クラスの高温だったと推測される惨状から装備を考える必要がある。

この時からフローラは砲兵に対して防熱装備やゴーグル、マスクについて考え始めた。

 

 

「巨人が撒き散らした副産物も何かに使えるかもしれないしな」

 

 

本来なら人間が巨人になった後に討伐しても何も残らない。

だが、あまりにも図体がデカすぎて何かしらの化学反応を起こしたのだろう。

ロッド・レイスの巨人体は、置き土産に『大きな赤熱結晶』と『巨人の大結晶』を残していった。

これは後に車力の巨人を襲い、ピーク・フィンガーの肛門と膀胱を焼き尽くした兵器に繋がる。

 

 

『まあ、赤熱結晶で耐熱試験をするのもいいかもしれません』

 

 

こうしてフローラは防熱装備の開発を主導したが、あくまでも砲兵が身に着けるものであった。

しかし、シガンシナ区の壁から超大型巨人の大群が出てきた時に役に立った。

 

 

『少しでも人体を守れるなら違いますし…』

 

 

これのおかげでフローラとリヴァイ兵士長は、超大型巨人と交戦しても軽い火傷だけで済んだ。

逆にペトラ・ラルは全身の6割に火傷を負って瀕死のオルオと一緒に死地へ向かってしまった。

残念ながら調査兵団の分まで揃えられなかったので渡す事ができなかった影響が大きい。

 

 

『きっと役に立つでしょう』

 

 

50mの壁から超大型巨人の出現を予想できなかったフローラは意外と対策は打てていた。

むしろ、内戦が起きなかったら獣の巨人によってシガンシナ区で全滅していただろう。

それほど残酷な世界の中でフローラは、死に物狂いで活動し続けた。

 

 

「まあ、寝るんですけどね」

 

 

さすがに活動限界になったフローラは、オルブド区の兵舎で寝る事となった。

幸いにもケニーの部下のおかげで自分を慕う中央憲兵の居場所が判明した。

再び殺し合いをしたくないフローラは、すぐに対策を打っていた。

既に自分のサインを書いた封筒を持たせた伝令を送ったので返り討ちに遭う事は無い。

ようやく快眠できると布団に入って瞼を閉じた。

 

 

「エルティアナ監査副長、ザックレー総統がお呼びです!!」

 

 

しかし、エルティアナの副官であるファルケンハイン班長に叩き起こされてしまった。

たった2時間しか寝れなかったフローラは、イライラしながら王都に向かう。

本当は無視したかったが、緊急事態なら仕方が無い。

早朝に起こされたフローラは、その日の夕方に王都に到着する事となった。

 

 

『寝れないのが辛い…』

 

 

フローラであったならライリーに騎乗したまま寝る事ができた。

しかし、エルティアナ女史として活動しているので一切、騎乗したまま寝る事ができなかった。

それどころか交流も兼ねるライリーのブラッシングをしている間にまたしても夜になった。

 

 

「もう知らん!私は寝る!最低でも5時間は入室も連絡も禁止だ!いいな!!」

 

 

無駄に頼って来る兵士に釘を刺してエルティアナ扮するフローラは寝る事にした。

 

 

「緊急報告!!ヒストリア王女を閣下の寝室で寝泊りさせろと…」

「お前ら、嫌がらせか!?さっさと送り返せ!!」

 

 

…と思ったら、今度はヒストリアの扱いに困った兵団政権が彼女を押し付けて来た。

本来、お世話するはずの中央憲兵は、ほぼ全員が捕縛されたので彼らには頼れない。

そして駐屯兵は殺し合ったせいで信用できず、憲兵団もまともな奴がいなかった。

そこで女将軍であれば、少なくとも【一夜の過ち】が起きないだろうという魂胆で保護を命じた。

 

 

「上層部の意向です!!」

「ふざけるな!!こっちは連日、各地に移動しているのだぞ!?面倒見切れるか!」

 

 

建前としては、忙しくて小娘の面倒が見切れないとエルティアナは配下に断言する。

それを演じるフローラの本音としては、本気でヒストリアの縁を切りたかった。

 

 

『また、貴女なの!?今度は何をする気!?』

 

 

フローラは、訓練兵時代からクリスタと名乗るヒストリアに振り回されてきた。

無自覚に恋をしていたライナーの恋敵以上に彼女との交流に疲弊していたのだ。

嫌いな女の子がやたらと自分に懐いてくる惨状はフローラを大いに苦しませた。

訓練兵団の生活の中で【フローラの天敵】と揶揄された()()は伊達ではない。

 

 

『前々からわたくしの邪魔ばっかりして!!何の恨みがあるのよ!?』

 

 

殿方であれば、ヒストリアと寝室で2人っきりという状況は、まず歓喜するだろう。

あわよくば、親交を深めて同衾できるまで持ち込むかもしれない。

だが、結果を重要視してその過程に導こうとする男と違ってフローラは女である。

過程と結果が出た後が重要であるので……むしろ、寝た後の対応に本気で悩んだ。

 

 

「既にこちらに連れて来ております」

「せめて書簡でこちらの同意を得てくれ!あまりにも対応が酷過ぎやしないか!?」

 

 

そして何故か、交渉する前に結果が前倒しになっていた。

既にエルティアナの寝室で寝泊りするのは確定しているのか兵士の傍にヒストリアが居る。

果たしてこいつに自分の正体をバラしたらどうなるだろう。

答えは決まっている。

やたらとお節介をして自分の行動を邪魔してくるはずだ。

 

 

「あ、あの……ごめんなさい」

 

 

ヒストリア・レイスもまた兵団政権の混乱に巻き込まれた被害者である。

それでもフローラは、さっさとこいつと縁を切りたかった。

 

 

『やっとヒストリア関連が終わったと思ったのにいいい!!』

 

 

思えば、フローラはずっとヒストリアに関して接点があり過ぎる生活を送っていた。

訓練兵時代は言わずもがな。

カラネス区で巨人討伐ショーをやった結果、ヒストリアの父親に目を付けられた。

彼が最初に接触したせいで重要な情報を調査兵団やザックレー総統と共有できなくなった。

鎧の巨人を絶対ぶっ殺すと思っていたのにまずヒストリア関連に手を焼く事となった。

ようやくそれも終わった矢先にヒストリアを押し付けられたフローラは…。

 

 

「まあ、仕方が無い。先に休んでいなさい」

「は、はい。分かりました」

 

 

フローラは、裕福な商人の令嬢時代の記憶を取り戻した事で色々図太くなった。

自分のせいで知り合いが殺し合っても「しょうがない」とあっさり受け入れた。

そしてヒストリアのお世話に関しても、一時的とはいえ受け入れる事にした。

 

 

「……全くどいつもこいつも」

 

 

もちろん、本意ではないが、どうしようもなかった。

幸いにも、数日間だけ彼女を保護するだけでいいのでその間、正体を隠せば良い。

 

 

「エルティアナ監査副長様!包帯を巻かせてください」

「却下、乙女の恥を見せたくない」

「…でも、私にできる事がしたいんです!」

「そんな暇があるなら儀式と作法でも勉強してなさい」

 

 

その数日間が辛かった。

ヒストリアに正体を明かしても良いが、まず先に総統に正体を明かしたかった。

それができない一番の要因が…。

 

 

「エルティアナ監査副長、先のユトピア区の件で話がある」

「再三に渡って報告をしたと思いましたが?」

「貴公の戦術が兵士たちを無駄死にさせたという証拠がー」

 

 

前政権が崩壊した事により駐屯兵団、憲兵団で権力闘争が発生した。

当然、お飾りの女王となるヒストリアを確保しているフローラは政敵に目を付けられた。

ユトピア区で発生した戦闘による犠牲者の数で無理やり失脚させようとする試みが見える。

 

 

「いつ巨人が襲撃しても可笑しくないのにこいつらは…」

 

 

ザックレー総統派の兵士や将校に犠牲者が多く出たせいでやたらと政敵が増えた。

フローラが調査兵団に正体を明かせなかったのは、政敵を牽制するのに精一杯だったからだ。

フローラ時代では、表向きは調査兵団の新兵だし…と甘く見られて周囲の反応は同じだった。

だが、エルティアナ女史となれば、そうもいかずに策と反撃を練る必要があった。

 

 

『さっさとクロルバ区に逃げた方がいいわね』

 

 

残念ながらエルティアナの仕事の引継ぎができていないフローラは不利である。

ここで失脚するくらいなら彼らの思惑通り、権力闘争で有利となる地位を捨てる他ない。

だからあっさりと彼らの思惑に乗ってフローラは左遷コースに向かっていった。

 

 

『というか、今やりたい事をまとめないと…』

 

 

旧政権が隠してきた闇や秘密が民衆に公式で発表される頃、フローラはメモを書いていた。

自分のやりたい事とやるべき事を明確化にしたのだ。

 

 

『まずは防具開発!』

 

 

高温の蒸気から身を守れる防具の開発を最優先にした。

少なくとも砲兵には、専用装備で少しでも生存する可能性を上げる事にした。

 

 

『次は、ヒストリアと縁を完全に切る事!!』

 

 

次に優先したのは、ヒストリア・レイスと縁を完全に切る事である。

彼女が自分の傍に居る限り、政敵が絡んでくる以上、放置するしかなかった。

 

 

『そして長距離にいる巨人をぶっ飛ばす兵器開発!』

 

 

立体機動装置や対人立体機動装置の開発に関わったフローラは1つ思った事がある。

根本的に兵士が巨人と真っ向勝負を挑むのは、不利過ぎて戦うべきではないと結論付けた。

 

 

『少なくとも携行できる爆発物の開発をするわ!!』

 

 

いくら新兵器を開発しても、使いこなすまでに時間がかかるなら本末転倒である。

そこで特定の訓練をすれば、誰でも扱える兵器を開発する事にした。

現在使用されている大砲は、持ち運びに不便であり、設置にも時間が掛かる。

しかし、ユトピア区防衛戦で迫撃砲という大砲の1種がある事が判明した。

 

 

『特に迫撃砲の開発を急がねばならないわね!!』

 

 

その為、フローラは防熱素材と迫撃砲の開発に力を入れた。

後にウォール・マリア奪還作戦に投入された防熱装備と81mm迫撃砲は、その集大成である。

 

 

『それと同時に薬品も必要ね』

 

 

ただ、いくら装備を整えても兵士がそれを上手く扱えなければ意味が無い。

なにより、死を具現化したような存在と揶揄される巨人と交戦しようとする者は少ない。

交戦しても、巨人に喰われそうになってトラウマになったミーナの様に精神を病む者も多かった。

そうした事も踏まえてフローラは、薬物の力で無理やり兵士を動かそうかと考えていた。

 

 

『まあ、無理でしょうけど』

 

 

精神に影響を与えるレベルは使用できないので…せいぜいドーピング剤が限度である。

それでも、少しでも兵士の生存率を上げる為にフローラは尽力するつもりだ。

 

 

「民衆が望んでいるなら兵団政権も動くでしょうね」

 

 

兵団政権は、新政権の樹立を民衆にアピールする為にどんな手も使った。

その内の1つが、アンケートであり、その結果から何をするべき割り出す事ができた。

 

 

「ウォール・マリア奪還作戦に…」

 

 

内戦やら政敵と抗争やらゴタゴタしているが、民衆が求める物はこれだった。

ウォール・マリアを奪還できれば、二度と自分たちの居住区に被害は出る事はない…はずだ。

だから民衆の8割以上がそれを兵団政権に求めていた。

 

 

「ねえ…さま!」

「あら、どうしたの?」

「ヒストリアのお相手に疲れちゃった…」

 

 

ミーナ・カロライナが扮するラナイがヒストリアのお世話をする事になった。

明らかに顔でバレるかと思ったが、意外と正体がバレなかった。

それでも彼女の疲れ具合から見ると相当酷い目に遭っているというのは分かる。

 

 

「ありがとうミーナ」

「もっと褒めて良いよ!!」

「どれくらい?」

「愛してくれるほどに!」

「うん?」

 

 

甘えて来る親友の頭を撫でたフローラは、次に来る命令を待っていた。

 

 

『おそらくわたくしにウォール・マリア奪還作戦を指揮しろって言って来るはず…』

 

 

エルティアナ女史は、4年前にウォール・マリア奪還作戦という名の人減らし作戦を実施した。

結果は散々だったが、それでも巨人との戦闘方法を確立し、兵士の生存率向上に繋がった。

だが、次に指定されるウォール・マリア奪還作戦は失敗が絶対に許されない。

だから兵団政権が自分に面倒事を押し付けてくるのをフローラは察した。

 

 

「おっ、ついに来たか」

 

 

ノック音がしてドア越しから兵士の声が聴こえて来た。

フローラはすぐにザックレー総統の元に行こうとするが…。

 

 

「報告申し上げます!レイス領の農家で兵士による反乱が発生しました」

「はあ?」

 

 

最初に聴いた時は聴き間違いかとフローラは思った。

兵団政権とそれに従う兵団が武器や弾薬、食料を抑えているのだ。

更に商会から兵団に圧力を与えたので反乱が起こるはずが無かった。

 

 

「どこの部隊だ!?」

「駐屯兵団第一師団精鋭部隊の構成員たちです!!人質が多数いると推測されます」

「ゲッ……」

 

 

キッツ隊長亡き後、精鋭部隊の構成員のほとんどが戦死したという事で廃止となった。

ところが、精鋭兵は未だに戦意が衰えておらず、調査兵団に敵意を残していた。

先日、兵団政権が調査兵団の処遇に対して保留との回答を出したのが大きかったのだろう。

 

 

「規模は?」

「2個班規模と見られます。既に1個小隊が説得に向かいましたが…」

「…返り討ちに遭ったか」

 

 

駐屯兵団第一師団精鋭部隊にフローラはこっそりと新型兵器を送っていた。

巨人捕獲網や撒きビシ、対人立体機動部隊が運用していた旧装備なども含まれる。

ただでさえ兵士に扮した仮想敵と交戦する事に前提を置いて訓練をしていた部隊だ。

1個小隊程度では瞬殺されて終わったとフローラは確信した。

 

 

「分かった。すぐに行く」

 

 

自分のせいでエレンを守るはずの部隊が暴走している。

そんな状況を見逃す事ができずにフローラは打って出る事にした。

 

 

「説得に耳を貸さないなら排除するまで…」

 

 

何度も精鋭部隊と共闘したからこそフローラは、敗残兵の暴挙を許さなかった。

民間人を人質にし、立て籠もった時点で既に彼らは被害者ではない。

それどころか、志半ばで散った犠牲者たちの顔に泥を塗るどころか死体蹴りになっていた。

 

 

「例え戦友だとしても…彼らの遺志を踏み躙るなら始末して差し上げましょう」

 

 

中央第一憲兵団を掌握したフローラは、最も敵に優しいが、交渉できないなら冷酷にもなれる。

先日まで仲良くしていた兵士を殺しまくった彼女は止まらない。

駐屯兵団第一師団精鋭部隊の名を汚す輩を粛清しに2個中隊を率いて現場に向かう事となる。

 

 

「こ、殺すんですか!?」

「投降しないばかりか、汚名だけ増やす輩にそれ以外に何を求めるというのだ」

「で、ですが……トロスト区、いえ人類の希望であった部隊ですよ!?」

「ならば、尚更に部隊の名を汚す前に始末する必要があるな」

 

 

既に人間を3桁も殺害した女兵士は、人殺しという手段を躊躇わなかった。

腐ったミカンが周囲のミカンを汚染するなら即座に排除する決断ができる。

大切な物を捨てられる者が何かを変えられるならフローラはその法則に当て嵌まった。

 

 

「反乱兵を殲滅(せんめつ)せよ。状況によっては人質ごと始末しろ!!」

「えぇ…!?」

 

 

なにより、この反乱が成功すれば、せっかく平和になった壁社会が崩壊しかねない。

人質を確保して抗議すれば、交渉できると知られれば、常識などすぐに崩れ去る。

王政の最高幹部たちを脅迫したフローラは人心掌握術と人の心理について詳しい。

 

 

「人質を確保すれば、交渉できる思う輩を死をもって現実を教えないといけないのだよ」

「ですが、人質救出が最優先で…」

「相手は、対人を想定した精鋭部隊だぞ!?正攻法で勝てる訳ないだろう!!」

 

 

駐屯兵団第一師団精鋭部隊は、巨人戦には慣れていないが、対人戦の経験は豊富だ。

それを一番、分かっているフローラは、2個中隊を率いて反乱を制圧する事となる。

 

 

「……人質を全員、救える手段があったのでは?」

「では、貴公がその手段を提案し、私宛に提出しろ。議会にも提案してやるさ」

 

 

結果として、フローラ率いる部隊は、ヒストリア・レイスの母方の実家で制圧戦を行なった。

人質9名が死ぬ大惨事となったが、精鋭兵5名とその配下の駐屯兵16名を始末した。

部下から苦言を言われたフローラは、部下に対案を要求して血塗れの死体の山を見る。

 

 

「ホークマンを筆頭に知り合いと殺し合うのは辛いな…」

 

 

トロスト区奪還作戦や東防衛線でお世話になったホークマンを筆頭に多くの兵士を殺した。

その成果が目の前に山となって築かれているのを見たフローラは思わず本音を吐いた。

 

 

「それでも、我々に戦死者が出なかったのは旅団長のおかげです」

「そう言ってくれると助かるよ…」

 

 

フローラは、率いて来た兵士の生存率を上げる為に人質奪還を諦めた。

精鋭兵によってトラップが仕掛けられた以上、新兵器で仕留めるしかなかったのだ。

それを分かっている兵士を中心にエルティアナ旅団長兼監査副長の作戦を高評価してくれた。

 

 

「緘口令を敷いた以上、この事件は混乱に紛れた山賊による大虐殺と公表しよう」

 

 

さすがに精鋭部隊が人質を取って駐屯兵団の部隊と交戦したとなると大問題になる。

保身ではなく彼らの名誉と秩序の為にフローラは、この事件を隠蔽する事にした。

 

 

「人質は可哀そうだったが、こうするしかなかったのだ。次回に活かせると良いが…」

 

 

ちなみに人質になっていたのは、幼少期のヒストリアに柵の外から投石した少年たちだ。

柵の中にいる化け物を面白がって投石していた少年たちが成長して青年になった頃。

まさか自分たちが柵の中に閉じ込められて駐屯兵団に見捨てられて見殺しにされるとは…。

運命とは不思議なものだとフローラはつくづく思う。

 

 

「活かせる機会を作らないのが我々の仕事という訳だ」

 

 

ここまでフローラが強硬な態度を取ったのは、人質作戦が有効だと認識させない為だ。

今回の敵は、対人に慣れた最精鋭部隊の兵士であった為、人質を見捨てるしかなかった。

だから次回があったとしても、ここまで人質を雑に扱う事はないはずだ。

そう思うしかない。

 

 

「そして本件の責任を取って私は、旅団長と監査副長の座を降りるとしよう」

 

 

ここでエルティアナが役職を辞任する事で兵団政権は忙しくなっていく。

このままでは、各地で反乱が起きるのではないかと考えたのか。

精鋭部隊を殲滅した翌日にエルティアナ扮するフローラは、ザックレー総統から召集を受けた。

 

 

「政権を打倒する前例を与えた以上、彼らもまた焦っているな…」

 

 

勝者は歴史を記し、敗者は歴史の闇に埋もれていくのみ。

この世は、弱肉強食である以上に勝者がかなり評価される。

裏を返せば、間違っていても勝てば官軍になれるのだ。

王政打倒を武力で行なった以上、兵団政権が倒れる時も武力によってなされるはずだ。

それを恐れる上層部は、エルティアナを召集したとフローラは分析した。

 

 

「閣下、エルティアナです!緊急召集の件で参りました!」

 

 

総統の執務室のドアにノックをしてフローラは思う。

 

 

『本当に壁外作戦をできる兵力なんて居るのかしらねー』

 

 

調査兵団が事実上、カラネス区の守備隊規模に落ち込んでいる。

そして調査兵団以外は、巨人の領域に行く事を考えていない部隊である。

 

 

『どうせわたくし任せでしょうが…』

 

 

ザックレー総統と向き合ったフローラは笑みを隠す。

既に負の感情を“声”として聴ける能力のおかげで内容はある程度、理解した。

だが、この日、フローラは想定外の話をザックレー総統から打ち明けられる事となった。

 

 

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