進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~   作:Nera上等兵

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20話 調査兵団の目的

「おい糞ゴーグル!なんでこのガキがこんなところに居る!」

「初めての壁外任務に慣らしておきたいと思ってね!」

「面倒を見ろとは言ったが、こんな最前線まで連れて来るんじゃねぇ!!」

「うわー怖い!巨人より怖っ!!」

 

 

リヴァイ兵士長は、壁外任務で新兵を最前線まで連れてきたハンジに激怒した。

ウォール・マリア陥落の翌年では、初めての壁外任務における新兵の生還率は5割。

今は大分、環境が良くなったとはいえ、それで生還する確率は7割と低いのだ。

 

 

一方、フローラはシュツルムシリーズの実戦テストがうまくいってご満悦である。

普段使用している刃が巨人1、2体で使い物にならない感覚であった。

今回使用した『シュツルムメッサー』という刃は3体のうなじを斬っても刃が機能していたのだ。

もちろん、刃渡りが通常の6割ほどという事で巨人を欠損させるという意味では困難になったが。

 

 

「とにかく!トロスト区周辺をうろつく巨人を殲滅できたんだから良いでしょ!」

「それは結果論だ、新兵をほったらかしているこいつには何かしらの罰を与えんといけねぇな!」

「おいガキ、お前も何か言わねぇと、絶対に早死にするぞ!」

 

 

副官であるモブリットが居ないせいでいつもより暴走しているハンジ分隊長。

その分、ニファやケイジ、アーベルといった第4分隊が援護していた。

が、守られるべき新兵が巨人に喰われそうになった先輩を助けていたりと立場が逆転していた。

だからこそ、実戦慣れしているフローラを失いたくない為にリヴァイは、ハンジに激怒したのだ。

 

 

「新装備の実戦テストができたので満足です!」

「そうそう!この子いつの間にか新装備を持っているんだよ!!凄いよな!!」

「おまぇら似た者同士だな…」

「まだハンジさんの領域には達していませんわ!」

「誉めてねぇよ!」

 

 

今回の調査兵団の任務は、トロスト区の外壁の周囲にうろつく巨人の討伐であった。

巨人の好奇心を抑えられないハンジは、兵舎で寝ていたフローラを連行して壁外任務に巻き込んだ。

彼女自身は、シュツルムシリーズの実戦テストがしたかったとはいえ、壁外任務に投入されるとは思わなかった。

人類史上初めて、訓練兵が壁外任務に投入されて生還した例である。

当然、公にする事はできずに調査兵団の記録すら残される事はなかったが…。

 

 

「ただいまー!…お帰りなさいは!?」

「あいつの行動を見る度にこっちの寿命が縮むな…」

「それはつまり老化って奴だね!」

「しばいてやろうか糞ゴーグル!」

 

 

熟練夫婦のように慣れたやり取りをするリヴァイとハンジに誰も関わる気がないようである。

フローラはその2人の背後を追いながらシュツルムメッサーの刃の補給方法を考えていた。

さきほどの戦闘で、4本を消費してしまった為、残りの刃は6本。

小さな鞘のせいで、調査兵団や駐屯兵団の刃は扱えないのでどうしてもジリ貧になってしまう。

 

 

「少しいいか?」

「はい、なんでしょうか…!?」

 

 

呼び止められて停止すると、大男がいきなり首元の匂いを嗅いできて思考が停止した。

皆から自作の香水の香りを嗅がれたりしたが、ここまで露骨に嗅がれたことは無かった。

しかも巨人討伐の任務明けで、汗をかいており体臭が気になっている乙女の身としてはきついものがあった。

 

 

「ふっ…!」

「なんですか!その顔は!?」

「良い香りだ、何度でも嗅いでいられるな…もう一度…」

「ちょ、ちょっと!」

 

 

鼻で笑われて少し苛立ったフローラであったが、またしても首元の匂いを嗅がれて慌てた。

スンスンという音が何度も聞こえてきて、これが匂いフェチの変態だと思った。

今ならミカサやアニ、ミーナから言われた乙女としての危機感の無さの指摘が良く分かる。

顔を赤くして思わず股間を両手で抑えて恥じらってしまうほどに混乱していた。

 

 

「済まん、うちの分隊長が迷惑をかけた」

「ミケさん!いくらなんでもやり過ぎですよ!!」

 

 

ミケ・ザカリアスは部下たちの必死の制止を受けて残念そうに嗅ぐをやめた。

ここまで匂いを嗅いだのは、部下であるナナバ以来であった。

フルーティの香りがするナナバに対して彼女は心地いい花の匂いである。

一回嗅いだら癖になって何度も嗅ぎたくなる中毒性があった。

 

 

「彼は初対面で人の匂いを嗅いで鼻で笑う癖があるんだ」

「なんかおかしいと思うけど、分隊長に悪気がないから許してやってくれ」

「は、はい分かりました」

 

 

頭が混乱しているフローラであったが、ようやく解放されたことでとりあえず安心した。

 

 

「ついでにミケ分隊長は、嗅覚が凄くて巨人の姿を見る前に匂いで察知できるんだ」

「えっ…そんなに嗅覚が優れているんですか!?」

「それ以外にも調査兵団の中ではリヴァイ兵士長に次ぐ実力者だったりする!」

 

 

それを聴いてフローラはミケ分隊長と呼ばれた大男を見る。

さきほどまでは変態な大男に見えたが、改めて見るとかなり頼りがいのある男性に見えた。

 

 

「自己紹介が遅れた、俺の名はミケ・ザカリアスだ!第1分隊の分隊長を務めている」

「よ、よろしくお願いします!わたくしの名はフローラ・エリクシアと申します」

「フローラか、良い名だ」

「ありがとうございます!」

 

 

どんな口調が飛び出してくるかと身構えたが見た目通りに常識人であった。

おそらく嗅覚が優れているからこそ、それで人を判断しているかもしれない。

 

 

「私は、リーネ・ハウスドルフ、こいつはヘニング・ラインマイヤーだ」

「リーネ先輩、ヘニング先輩、よろしくお願いします」

 

 

茶髪なポニーテールの冷静で落ち着いたリーネ、緘黙で何事も動じなさそうなヘニング。

しかし、さきほど焦った様子を見る限りは見た目ほど厳しい人たちではないようだ。

 

 

「しかし、新兵なのにミケさんレベルの動きとかどうなってんだろうね」

「リーネ知らんのか、彼女は訓練兵団で最強だって話題になっている子だぞ」

「巨人化できるエレンといい、104期訓練兵団は化け物揃いか」

 

 

褒められているだか、怖がられているのかフローラは分からなくなっていた。

 

 

「そういえば、3日後に兵站拠点の設置任務があるのを知っているか?」

「えぇ、一ヵ月後にある第57回壁外調査の布石として橋頭堡を作るって言ってましたね」

「橋頭堡というよりは、一時的な補給拠点っていうところだ」

 

 

調査兵団がウォール・マリア奪還作戦の布石として4年間かけて作りあげてきた行軍ルート。

それが先日のトロスト区の奪還作戦により入り口が大岩に塞がれたことにより事実上破棄された。

トロスト区の門から出撃する予定だった為、門が使えない以上、無駄になってしまったのだ。

その為、トロスト区から北東にあるカラネス区から、ルートの作り直しが始まる予定である。

 

 

「その任務なんだけど、君にも参加してもらう事になったんだよ」

「ちょっと待ってください!その日は兵団選定をする日ですよ!?」

「私たちも伝えたんだけどね…午前中の任務ですぐ終わるって事で強制参加させるらしいよ」

 

 

トロスト区の巨人襲撃を受けて兵団選定の日が大幅にズレた結果。

最前線のトロスト区ではなく、ウォール・ローゼ東区のカラネス区で行なわれる事になった。

 

 

「兵団配属前の新兵にやらせる任務じゃないんだけどね…君なら大丈夫だろう」

「か弱い女の子なのに?」

「その女の子に助けられた男が居るらしい、ねえヘニング?」

「…ああ、本当に済まない」

 

 

そういえば、巨人に掴まって喰われそうになった兵士ってヘニングさんだ。

任務中はそこまで気にしていなかったものの、いざ面識になるとなんだか恥ずかしくなる。

特に大の男に頭を下げられて感謝されるのを見てフローラは何とも言えない感情が溢れていた。

 

 

「大丈夫そうか?」

「大丈夫です!」

「すぐ終わる任務とはいえ、巨人がいる!気を引き締めていけ!」

「はい!ミケ分隊長!心して任務に掛かります!」

 

 

フローラは敬礼をして第1分隊の面々を見送った。

 

 

「ホント、健気だねーどっかの目つきが悪い男も見習ってほしいよ」

「そっくりそのまま返していいか?」

 

 

相変わらずリヴァイとハンジは夫婦漫才をしていた。

 

 

「ハンジ分隊長!大変です!」

 

 

その時、副官のモブリットが馬を翔けて向かってきた。

 

 

「どうしたのモブリット!?」

「被験体が!巨人が2体共殺されました!!」

「なんだってえええ!?」

 

 

目の色を変えたリヴァイ兵士長とハンジ分隊長は巨人研究所に向かっていった。

ついでに無理やり編成されてフローラも向かわされた。

 

 

「ビーン!ソニー!!嘘だああああ!嘘だと言って!!!」

 

 

ハンジは無残な現場を見て取り乱した。

日光を遮る実験、痛覚を確認する実験、意思疎通の実験。

どの実験でも巨人に喰われそうになっていた彼女であるが彼らに愛着があったのだ。

 

 

「犯人はまだ見つかっていないのか?」

「ちょうど交代の時を狙われたらしく見張りが見つけた時には立体機動で逃げられたらしい」

「貴重な被験体なのに…どこのどいつがやったんだ」

「同時に巨人をやれるって事は、複数の兵士の仕業なのは間違いないだろう」

「案外、これで良かったかもよ?巨人に恨みを持つ奴は多いし、壁内にいるだけで恐怖した民間人もいるしな」

 

 

集まった兵士からは様々な意見があった。

どれもが間違ってはおらず、納得する意見ばかりである。

 

 

「君には何が見える?敵は何だと思う?」

「巨人の仲間が兵士に化けてソニーとビーンを介錯したとか?」

「…中々面白い意見だ」

 

 

エルヴィン団長に質問されて思わず適当に答えてしまったフローラ。

答えを聞いた彼は、何度も頷いて他の人にも同じ質問をしていた。

そしてエレンにも同じ質問をしていたが、あえてフローラは無視をした。

 

 

-----

 

 

その日、104期訓練兵団の新兵たちは憲兵たちによって取り調べを受けていた。

 

 

「クリスタ・レンズの装置も問題ないようだ」

「よし、次だ!」

 

 

正直104期生は、この取り調べにうんざりしていた。

訓練兵が被験体を殺す動機などないからだ。

むしろ、巨人なんて殺して罪に問われる方がおかしく感じるくらいである。

同期を喰い殺された彼らには、巨人にいくらでも恨みがあるのだから…。

 

 

「ん?そこの席が空いてるな?」

「そこは…フローラ・エリクシアだな」

「ああ、あいつか」

「事件当時、調査兵団と共にトロスト区の壁外で巨人の掃討をしていたので除外だ」

「むしろ、訓練兵を編入している調査兵団を問い詰めたいくらいだな」

「ははは違いない!」

 

 

憲兵たちはフローラを疑わずに残りの訓練兵の立体機動装置を調べていた。

訓練兵たちの内心では戦場の処理に疲れているのになんか意味分かんない女に興味津々だった。

誰もが巨人の恐怖に怯えているのに、巨人を駆逐するという目標を有言実行する女を。

 

 

「ホントすげぇなあいつは…」

「そうだね」

 

 

コニー・スプリンガーは、巨人を恐れないフローラを尊敬していた。

巨人と交戦する前は、トロスト門で調査兵団に入隊すると言った。

だが地獄を見た後、二度と巨人の顔を見たくなかった。

トロスト門で誓ったウォール・マリアを奪還して肉を食べる誓いも頭の隅に追いやられていた。

 

 

「俺、最初は調査兵団に入ろうと思ったんだが憲兵も悪くねぇと思ってる」

「せっかくあのジャンが調査兵団に入団するって決意したのにな…」

 

 

コニーの成績順は上位8位、憲兵団に入団を志願する資格があった。

元々彼は、故郷の奴らに見返すつもりで兵士になろうと決意したのだ。

だから、憲兵になればみんな尊敬してくれるだろう。

隣に居たアルミンと会話していくうちにその気持ちがどんどん膨れ上がってきた。

 

 

「アニ、俺は憲兵団に入るべきだと思うか?」

「じゃあ、私が死ねって言えばあんたは死ぬのか?」

「はぁ!?意味わかんないし!死ぬわけないだろう!」

 

 

アルミンの隣に居た4位のアニに考えを聞いてみたらとんでもない問いが返ってきた。

思わず死なないって返答を返すと珍しく彼女の笑みが見えた。

 

 

「なら自分に従えばいいんじゃないの」

「そうだ、そうだよな」

「アルミンは死ねって言えば死ねるの?」

「僕は、そうしないといけなくなったら死ぬかも…もちろん嫌だけどね」

「そうか…あんたは弱いくせに根性があるからね…それでいいんじゃないの」

「アニって本当は優しいよね」

 

 

アニ・レオンハートは思わずアルミンの顔を見た。

自分の行動と言動のどこに優しさがあるというのか。

 

 

「だって、アニは僕たちに死んでもらいたくないって思ってるし憲兵団に入るのも理由があるんでしょ?」

「買い被り過ぎだよ、私は…ただ生き残りたいだけだ」

 

 

彼女の脳裏には父親の顔を思い浮かべていた。

必ず父の元に帰ってくると約束した以上、彼女は死ぬ気などなかったのだ。

いつ帰れるかも分からないけど、もうすぐ帰れるという実感はあった。

 

 

-----

 

 

「私は、調査兵団団長、エルヴィン・スミスだ」

「単刀直入に言う!君たちに話すのは調査兵団の勧誘の話だ!」

「諸君らもトロスト区の戦闘で、己の限界や巨人の恐怖を感じた者が多いはずだ」

「だが、トロスト区の犠牲で失ったものも多いが人類は勝利へと前進した!」

 

 

エルヴィン・スミスは自分が悪魔であると自覚していた。

自分の夢の為にこの場に居る新兵を犠牲にしてでも進んでいくと決意していた。

 

「それは、エレン・イェーガーという存在だ!」

「彼と諸君らの健闘によりトロスト区を奪還できた!」

「それに我々は巨人の正体を辿り着く術に近づいている!」

 

 

間違ってはいない。

今まで王政府に妨害されており、調査兵団の兵士は事実上の無駄死にであった。

だが、彼らの死体の山が幾度も築かれた今日、ようやく状況を打開できるチャンスが来た。

 

 

「彼に関しては話せる事は少ないが!少なくとも彼は人類の味方でありそれを証明できる!」

「そして出身地であるシガンシナ区の実家の地下室に!巨人の謎があるとされている!」

「ようやく辿り着きそうなんだ!そこでは100年も支配している巨人の支配に!」

「巨人の支配から脱却できる事実がそこに眠っている!巨人の謎がそこにあるのだ!」

 

 

彼には夢があった。

父親は自分の夢のせいで王政府に殺されたものである。

だが、止まるわけにはいかなかった。

屍で道を築いてきた以上、幼き日々から求めてきた事実がそこにある以上!

決して止まるわけにはいかなかった。

 

 

「だが、シガンシナ区の地下室に行くにはウォール・マリアの奪還が不可欠である」

「もちろん我々は当初からウォール・マリア奪還を目標にしてきた!」

「しかし、トロスト区が使えなくなった以上、東のカラネス区から遠回りになった」

「諸君らも察した通り…我々が4年間で築きあげてきたものが全て無駄になった」

 

 

エルヴィンは恥ずかしながら、自分は優しいと思っている。

嘘を付いて新兵を使い潰す方法をいくらでも思いついているにも関わらずできないからだ。

どんな犠牲を払っても目標に向かって突き進んできたが、今回は違う。

曖昧な目標ではなく、頑固としたものであり夢の手がかりがそこにあるからだ。

だからこそ、冷静になれた。

 

 

「その4年間で調査兵団の兵士が9割死んだ!2500人以上死んだのだ!」

「少なくともウォール・マリアに大部隊を送るには、その数倍の犠牲者が…」

「いや、正直に言おう!最低でも5倍の犠牲者と20年の月日が必要になる!!」

 

 

実際はこんなものでは済まないだろう。

果たして、10代先の団長ですら達成できるか疑問なほどに犠牲が出るはずだ。

目標が明確になり客観的に考えられるようになったこそ、無駄死をさせたくなかった。

後方では慌てた調査兵団の兵士があたふたしているのを感じられるほどに愉快だ。

 

 

「諸君に告ぐ!我々調査兵団は常に人材を求めている!」

「慢性的に人手不足であるからだ!」

「隠したりしない!今期に入団した新兵も一ヵ月先の壁外調査に出てもらう!」

「初回の壁外調査で死亡する確率は3割ほどだ!1年以内に死ぬ確率は7割以上だ!」

 

 

だからこそ、ここで『ふるい』をかける。

甘い言葉で釣られて兵士など調査兵団に不要なのだ。

屍になって道になる覚悟がある者だけが入団するように彼は現実を教えた。

 

 

「この惨状を知ってもなお、自分の命を投げだしてもやるという者だけがここに残れ!」

「もう一度言う!1年以内にほとんど死ぬこの兵団に!人類の未来の為に!」

「心臓を捧げられるのだと内心で考え抜いた者だけがこの場に待機せよ!」

「他の兵団の志願者は解散したまえ!以上だ!」

 

 

誰かが初めに動いた。

自分は死にたくないと!

誰かがその後、動いた。

自分は生きたいと!

この場に集結した104期訓練兵たちは、少しずつ歩みを速めた。

小さな穴から大量の水が低地に流れ出すように立ち去っていく。

 

 

「死にたくない」

「冗談じゃない」

「捨て駒になりたくない」

「内地に行きたい」

「巨人に会いたくない」

 

 

それぞれの想いを胸に皆は地獄から逃げ出した。

そして広場は静かになった。

 

 

「君たちは死ねと言われたら死ねるのか?」

「「「「死にたくありません!」」」」

「そうか…皆…良い表情だ…」

「よろしい!君達を調査兵団に迎え入れる!これが本物の敬礼だ!」

「心臓を捧げよ!!」

「「「「ハッ!」」」」

 

 

ミカサ・アッカーマンは、エレンを守るためにこの場に残る覚悟をした。

アルミン・アルレルトは、震えながらも皆が居て少しだけ安心した。

ジャン・キルシュタインは、全てに絶望しながらも敬礼をした

サシャ・ブラウスは、故郷を思い浮かべながら震えながら泣いていた。

 

 

「君たちの覚悟は本物だ、何も恥じることは無い」

 

 

コニー・スプリンガーは、ヤケクソになって開きなおった。

クリスタ・レンズは、みんなの為なら犠牲になれると覚悟したが震えて泣いた。

ユミル・ゲッティンは、クリスタを心配して残った。

ミーナ・カロライナは、亡き親友の為に、なにより親友が居るから泣きながら残った。

 

 

「訓練とは本能を克服する行為という話がある」

 

 

ライナー・ブラウンは、兵士として戦士として逃げることはしなかった。

ベルトルト・フーバーは、皆の想いで踏み留まった。

 

 

「ならば君たちは恐怖という本能に打ち勝った英雄たちだ」

 

 

エルヴィンは、彼らの表情をしっかり確認して想いを受け止めた。

 

 

「第104期調査兵団は敬礼をしている23名だな」

「ありがとう、君たちの英断を心より尊敬する」

 

 

しかし、エルヴィンは1人だけ想いを受け止める事ができなかった。

それは訓練兵でありながら調査兵団で何度も任務に就いていた女である。

 

フローラ・エリクシアは悪魔の様に嗤っていた。

 

まるで自分の正体を見透かせたように、瞳孔を大きく開き口角を釣り上げて嗤っていた。

悪魔になろうと成り切っている人間が本物の悪魔に馬鹿にされているように嗤われていた。

 

 

「…悪魔には悪魔の囁きが通じない…って訳か」

 

 

エルヴィン・スミスという男は、悪魔に慄き後退りをしながらも笑って返してみせた。

 

 

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