進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~   作:Nera上等兵

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22話 リーブス商会

「いいか新兵!調査兵団は10個の班で構成されているのは、さきほど伝えた通りだ!」

「しかし!壁外調査では更に細かく編成されるのだ!!」

 

 

ディータ・ネス班長は、23名の104期調査兵に向けて教鞭をとっていた。

10日間に渡る基礎訓練を修了した22名と、自由人に壁外調査の編成を叩き込む為だ。

 

 

「初日にも伝えた通り、この『長距離索敵陣形』をしっかり学んでもらう!」

 

 

黒板には、魚鱗の陣が描かれており目立つように色分けをしてある。

その一番上には、『長距離索敵陣形』と書かれていた。

 

 

「諸君らは、調査兵が巨人を討伐するエキスパートとイメージしている者が多いが実際は違う!」

「我々の任務は、あくまで調査及び補給拠点の構築であって、巨人討伐ではないのだ!」

「もう一度言う!調査兵団は、巨人を討伐するのはやむを得ない場合のみだ!!」

 

 

ネス班長がいじけているフローラの顔を一瞬だけ見て、また教鞭をとり始めた

巨人と索敵する班の役割、新兵の配属される場所、新兵の任務、部隊の移動などを伝えた。

それでも1名、実戦では、やらかすんだろうなという確信はあったが…。

 

 

「ネス班長!巨人を避けて移動するのは良いのですが!これでは包囲されませんか!?」

「アルミン、良い質問だ」

「先代団長までの調査兵団は、巨人を積極的に討伐しつつ進軍したが多大の犠牲者が出た」

「…何故だと思う?」

 

 

新兵に納得してもらう為にネス班長は全員の解答を待った。

質問されたことにより、講義の内容が頭に入るからだ。

彼は、新兵が納得するまでここから帰す気はなかった。

 

 

「平地が多いため、立体機動が生かせないからです!」

「落馬して、馬を見失うせいだと感じました!」

「進軍を止めると、巨人たちが集ってきて身動きがとれなくなるからです!」

「交戦したせいで本隊から逸れて撃破される可能性が高いから…」

 

 

22名の新兵たちは、考えながら返答したのを聴いてヘス班長は満足した。

どれも間違っては無いし、彼らのやる気が感じられたからだ。

問題なのは、最後の女。

 

 

「カラネス区壁外、討伐戦績14体、フローラ・エリクシア!何故だと思う?」

「補給物資が切れて戦えなくなったからです!」

「よし!お前は調査兵団本部の周りで1時間マラソンをしろ!」

「ううっ…分かりました!!」

 

 

こうして22名の視線を背後に受けながらフローラは退室した。

 

 

「さて諸君らの答えは間違っていない」

「先代までの調査兵団の団長は、討伐を目指したが却って犠牲者を増やすばかりだった!」

「しかし、エルヴィン団長が考案された陣形で、壁外調査の損害率が劇的に改善されたんだ!」

「積極的に巨人を避けるという逆転の発想でー」

 

 

ディータ・ネスはフローラの実力は認めていた。

壁外の平地で単独で巨人を14体討伐する新兵など実力を認めざるを得ない。

いや、認めていたが今回の講義では絶対覚えないだろうと踏んで退室させた。

キース元団長にそっくりな彼女に関しては、個人指導しないと覚えないと踏んだのだった。

 

 

-----

 

 

フローラが解放されたのは正午であった。

 

・巨人を発見したら赤色の信煙弾を撃て

・周りが緑色の信煙弾を撃ったら自分も同じ方向に撃て

・奇行種だけ討伐しろ

・許可なく編成を崩すな

・周りの動きに合わせて移動しろ

 

結局、片手で数えられる事だけを叩き込まれて解放された。

彼女からすれば巨人が居るのに討伐できないほど、もどかしいものはなかった。

 

 

「スケジュール表には…午後の予定はないわね」

 

 

気を取り直して、旧調査兵団本部へ4回目の訪問に行くために兵舎に戻った。

兵舎は訓練兵時代に利用した建物より立派であり、個室があるので広々に感じられた。

未だに木箱が置いてあったり、イラストを描くのに使う道具が机に置いてあったりと部屋は汚かったが…。

何より問題なのは、山ほどある勲章であった。

 

 

「もう、どっかに売り飛ばしたい!」

 

 

先日のパフォーマンスやトロスト区攻防戦で頂いた勲章が山ほどあったのだ。

無駄にかさばるうえに処分もできないので扱いに困っていた。

 

 

「どっかで売り飛ばせないか訊いてみましょう」

 

 

とりあえず適当に小さい勲章を何個かバックに入れて持ち運ぶことにした。

エレンと軽く面会した帰りにどっかの商店に立ち寄って聞く予定をたてたのだ。

以前だったら馬を借りる分、数日前に手続きをしないといけないかったが今回は違う!

専用馬のライリーのおかげで手続きが簡略できて動きやすくなったのだ!

 

 

「ねえライリー!たった1日放置しただけでそんなに怒ったの!?」

「ブルブル!!」

「うっ…毎日定期的に走らせなきゃダメなのね…」

 

 

不意打ちで後ろ蹴りされなくなった分、心を通わせたと思っていたのは自分だけであった。

名前を呼んだり、指笛で反応はするもののまだ相棒とは言えなかった。

高品質の名馬から誕生したという事もあって1時間早く到着したが落ち着かせるまで1時間掛かった。

 

 

「あとで虫よけの煙を焚くからもう少し我慢してね」

 

 

何度も頭を撫でて落ち着いたのを確認してから旧調査兵団本部に入っていった。

 

 

「ハハハ!お前らしいな」

「別に笑うことじゃないと思うんだけど」

「あいつらが元気にやってるだけで嬉しいよ」

 

 

エレンとフローラは、定期的な面会をしていた。

もちろん、持ち物はもちろん会話内容まで確認されるくらいに制限されていた。

それでもエレンは彼女の土産話に満足していた。

 

 

「そういえば、壁外で巨人化実験をするんだが聴いているか?」

「いえ、全く…むしろ巨人化計画なんてあえて訊くのをやめたくらいよ」

「3日後の午前にトロスト区の壁外でやるみたいだ」

 

 

エレンはかなりフローラを信頼しているのか、機密情報を漏らしていた。

彼女にとっても彼にそこまで信頼されるのは嬉しい事である。

 

 

「それは分かったけど、リヴァイ兵士長とエルドさんが居る前で発言することなの?」

「あっ…」

 

 

監視役の人類最強の男の眼前ではきついものがあった。

最悪、彼女も第57回壁外調査までこの城に軟禁されかねない事件である。

 

 

「よし選べ、自発的に動くか、肩ポンか、暴力で動くかだ」

「自発的に動きますわ」

「ごめん…」

「これでエレンを支えられると思えば良いかもしれませんわね」

 

 

観念したフローラは、立ち上がり観念したかのように両腕を上げた。

 

 

「あー!居た居た!ねえフローラ!!」

 

 

堅苦しい空気を壊しに来たかのようにハンジ分隊長が上機嫌で室内に突撃してきた。

 

 

「3日後、壁外でエレンの巨人化計画があるんだけど参加できる?」

「はい、できますけど、それって機密情報じゃないんですか!?」

「そうだよ、でもフローラなら良いでしょ?」

「そこまで知ってしまったら軟禁されるのでは?」

「あー!いいよ調査兵団全員に知らせておくからさ!」

 

 

機密情報が機密ではなくなってしまった。

思わずエルドは頭を抱えて、リヴァイも額に手を当ててしまった。

ハンジ・ゾエという人間は、普段は頭脳明晰であり優秀な人材であり団長の右腕である。

だが、巨人になるといろんな意味で理性が崩壊してしまうのだ。

 

 

「えーっと、助かりました!ありがとうございます!」

「良く分からないけど喜んでくれて嬉しいよ!」

 

 

軟禁を避けられたフローラは恩人であるハンジ分隊長に感謝した。

いつもお世話になっているお礼にと羽ペンとスケッチブックをプレゼントしたら喜んでくれた。

というのは建前で何か問題事を押し付けられる前に逃げたかった。

 

 

「あれ?フローラは?」

「プレゼントを囮にして素早く逃げていったぞ」

「えええ!?もっと話をしたかったのに!!」

「じゃあエレンが付き合ってよ!」

 

 

思わぬ流れ弾にエレンは硬直した。

以前、巨人の実験について尋ねたら酷い目に遭ったのだ。

彼女は実験について熱く語って、真夜中だったのに日が昇るまで話続けたくらいであった。

 

 

「おっとエルド、どこに行く気かい?」

「いえ、用事を思い出して…」

「あと6時間は用事が無いのは確認済みだ!」

「クソ!こうなったらオルオたちも巻き込んでやる!!」

 

 

逃げられないのを確認したエルドは犠牲者を増やす為に分隊長を伴って探索した。

 

 

「ええっ!?嘘でしょ!?」

「マジか!?」

「用事を思い…」

「逃がさん!」

 

 

フローラからプレゼントという名の撒き餌に釣られた『特別作戦班』は1人残らずお縄についた。

掃除器具が増えたものの、彼らはこの後、掃除をすることはできなかった。

 

 

「やってられん、ここで見張ってるか」

 

 

一瞬で物事を判断できるリヴァイのみがハンジの魔の手から逃れることに成功した。

 

 

-----

 

 

一方、逃げきれたフローラはトロスト区に居た。

半数以上の住民が帰還できたといえ、かつての活気を取り戻すにはまだ時間が掛かりそうである。

もっとも住宅のほとんどで被害が出ており、犠牲者は街の3割。

一ヵ月前と比べると街の人口は3割弱で、復興どころか廃れていっている。

 

 

「見ろよ調査兵だぞ…」

「税金泥棒が…」

「俺たちは飢えているっていうのに…」

 

 

少しでも大通りから離れるとこれである。

トロスト区を起点としてシガンシナ区まで4年かけて道を開拓したものの放棄された。

故に調査兵団の拠点なども東区のカラネス区に移転しており、更に街の活気はなくなっていた。

街の住民からすれば、復興に手伝わずに勝手に備品を持ち出していく泥棒のような扱いになっていった。

 

 

「おいそこの下っ端!そこで何をしている!」

「巡回任務です」

「嘘つけ、それは駐屯兵団の仕事だろうが!」

「…勲章を高く売れる店を探してました」

「勲章だと!?」

 

 

ディモ・リーブスは苛立っていた。

拠点であるトロスト区が壊滅的ダメージを受けて築き上げてきた市場も財産も人材も失ったのだ。

更に人類最前線の街という事でいろんな商機があったのにここ数日は一切なかった。

王政は、トロスト区の復興を事実上放棄していた。

 

 

「王政は、トロスト区を切り捨てて、街の役割をカラネス区に移行したんだ…」

 

 

誰かが言ったこの一言が全てを物語っていた。

辛うじて駐屯兵団の総本部がこのトロスト区に置かれている為、街としてやっていけている状態である。

しかし、情報筋によると、兵団本部もこの街の北部にあるエルミハ区に数年で移転するそうだ。

つまり、内地であるウォール・シーナの突起しているエルミハ区を駐屯兵団の拠点にするのだ。

 

 

「ボス、この街はもうおしまいです」

「仕事がなくて…家族を養っていけない…」

「薄めた豆スープすら2日も飲んでない」

「配給されたのが、おが屑だった」

 

 

辛うじて残ってくれた部下たちの生活は絶望的であった。

下々から搾取して良い暮らしをしていた商会も搾取する相手が居ないなら滅びるだけであった。

リーブス商会の財産を切り崩して部下たちの家庭を養うのが精一杯だった。

 

 

「何、上から目線で見てるんだ!」

「税金と人命を投げ捨てる調査兵団如きが!」

「お前たちのせいでどれだけ搾取されていると思ってるの!!」

 

 

リーブス商会の会長として、何か商機がないか街を見回っていると騒動を見つけた。

近寄ってみると、乗馬している女調査兵と揉めていたのだ。

ちょうどストレスの発散として彼は現場に急行した。

 

 

「勲章をここで売買してると思ってるのか!?」

「合法ルートが見つからないのでここに来ましたけど迷惑をかけましたので撤収させて頂きます」

 

 

話しかけてみると、巡回任務と嘘を付いたので追及すると勲章を売り払うという珍しい奴だった。

窃盗で非合法ルートに売りさばくにしては堂々としてるな…と顔を確認したら衝撃的であった。

巨人を10体以上討伐して金品を荒稼ぎしていた凄腕の兵士がこんな僻地をうろついていたのだ。

 

 

「おい、ちょいと待ち!」

「はいなんでしょうか?」

「お前、金貨10枚持ってたよな?」

「はい、この子を金貨4枚で譲り受けました」

 

 

リーブスは呆れた。

馬など勝手に配備されるものなのにわざわざ無駄に金貨を消費していたのだ。

更に気性が荒いところを見ると外れを掴まされたっていう所だ。

 

 

「お前、馬鹿だろう?」

「馬鹿にされるのはいつものことなので…」

「そのポンコツな馬を売っ払った金で、リーブス商会の品でも買ったらどうだ?」

「…ライリーを馬鹿にしましたの…?」

 

 

空気が凍った。

今まで野次を飛ばしていた老人や貧困者が震え始めた。

それどころか、会長の護衛たちすら震えあがって護衛対象の背中に隠れる有様だった。

 

 

「済まん…失言をした」

「失言で済むと思っていますの…?」

 

 

そこに居たのは、巨人のうなじを刈り取る狩人であった。

ここでリーブスは自身の失言が彼女の逆鱗に触れたのを感じて後悔した。

 

 

「調査兵団の兵士にとって、馬は相棒どころか家族みたいなものです」

「いえ、下手すれば自身の命よりも大切な大切な…伴侶です」

「それをそれを…許さない…許さない…絶対に許さない…!」

「よくも…ライリー…を…馬鹿にしましたわね…!」

 

 

フローラは激怒した。

鎧の巨人の次に怒りで身が震えたかもしれない。

震えるほど拳を強く握り締めたせいか古傷が開いて、血を垂れ流しにしていた。

さきほどまで鼻息を荒くしていたライリーは主人の怒りを感じて縮こまった。

もし、武装していたら巨人のうなじを刈るように裕福そうな壮年の男性の首を刎ねていただろう。

 

 

「済まないライリー!俺の無知さによって君を馬鹿にしてしまった」

「こんなどうしようもない俺をどうか!どうか!許してくれ!!」

 

 

ディモ・リーブスは、人生で初めて馬に頭を垂れてお詫びをした。

それは今までの中で一番の謝罪であった。

人見知りで他者に身体を触れられる事を抵抗して嫌がるライリーもこの時ばかりは静かであった。

 

 

「ライリーが…許すなら…ここまでにしておきましょう」

 

 

青筋を立てたどころか、立体機動訓練の傷が開いて頭から血を流しているフローラ。

馬鹿にしてきた壮年男性の本心からの謝罪の言葉を聞いて少しずつ落ち着いていった。

 

 

「おい大丈夫か?」

「訓練に失敗した時に付いた古傷が開いただけです」

「怒りで開くとは思いませんでしたけどね」

 

 

既にフローラを馬鹿にしていた人々は泣き叫んで逃げ出していた。

ここに居るのは、乗馬した調査兵と、壮年男性と、その護衛3名だけであった。

何もしてないのに勝手に流血していく彼女の姿は、まさに恐怖そのものだったのだ。

 

 

「あらよく見たら、リーブス商会のディモ・リーブス会長さんじゃないですか」

「俺の事を知ってるのか?」

「えぇ、このトロスト区の有力者は一通り目を通しています」

「…というよりカラネス区の巨人討伐ショーに観戦にきてましたよね?」

「ああ、商談のついでに、なんとなくな…」

 

 

頭に登った血が文字通り頭から垂れてきているせいかフローラは冷静になった。

すると目の前に居る男性がこの街の裏のボスであるリーブス商会の会長であることに気付いた。

 

 

「さきほどのご無礼をお詫びいたします」

「いや、そこまで謙虚することはない」

「リーブス会長様は、この勲章を売買できる場所はご存知でしょうか?」

「ああ、非合法ルートだが知ってるぞ…売ってどうする気だ?」

 

 

王都ミットラスに兵士の勲章をコレクションにしている大貴族が居る。

兵士の勲章というのは誇りというのもあって中々裏ルートですらやり取りされないのだ。

故にかなりの高値でやりとりされているのをリーブスは知っていた。

 

 

「納税を引いて残った資金で投資する予定です」

「投資だと!?」

「いつ戦死してもおかしくない兵士に大金を貯め込んでも意味がないので…」

「両親とか家族とかに分けないのか?」

「既に両親はこの世を去って、わたくしの死を悲しむ家族など居ませんので…」

 

 

リーブスは、投資をする兵士など聞いたことがなかった。

よっぽどの高官でなければ、投資をする元金すら貯蓄できない。

憲兵団に20年以上所属してようやくスタートラインに立てるほどである。

 

 

「というのは建前でお金を更に稼ぎたいんですけどね」

「まあ、そうだろうな…」

「ところで名前は何て言うんだ?」

「フローラ・エリクシアと申します」

 

 

リーブスには、エリクシアという姓に心当たりがあった。

かつてシガンシナ区で儲けていた商人であり親友であったからだ。

 

 

「もしや君の両親は、商人だったりしないか?」

「分かりませんが多分、違うと思います」

「そうか」

 

 

会長であるディモ・リーブスには息子が居る。

フレーゲル・リーブスという親の七光りと言わんばかりの未熟者だ。

そんな彼は10年くらい前にエリクシア夫妻の1人娘と仲が良かった。

商会がトロスト区で満足できずシガンシナ区に経済圏を拡大しようとしていた時期であった。

 

 

-----

 

 

「パパ?その人はだれー?」

「ディモ・リーブスっていう父さんの友人だよ」

「そうなのー」

 

 

栗色の髪をした可愛らしい女の子であった。

 

 

「父さんは忙しいからフレー君と遊んでなさい」

「分かったわ!」

 

 

何も知らず天真爛漫な子だった。

 

 

「わたしがしょうかいのリーダーでサブなの!」

「リーダーとサブは違うよ~!」

 

 

だがわがままで彼の息子のフレーゲルを困らせていた。

その息子とは3年くらいの付き合いしかなかったが…。

わがままな彼ですら振り回すほどの女の子であった。

 

 

「ディモおじさん!じこしょうかいするわ!わたしの名はー」

 

 

その子の名はー。

 

 

「ふろーら・えりくしあ なのよ!」

 

 

目の前の女兵士と同じ名前だった。

そしてなにより彼女の母親と同じ香水をつけていたのだ。

別人?そんな事はあり得ない。

 

 

-----

 

 

「どうかされましたか?」

「いいや、昔を思い出していただけだ…」

「そうですか…わたくしは昔より現在を考えてますね」

 

 

ディモ・リーブスは過去を思い出していた。

まだ事業拡大に燃えていた若き挑戦者だった過去に…。

 

 

「ところでどこに投資をする気だい?」

「兵器開発と土木工事ですね…あそこはいくらあっても足りませんから」

 

 

彼女の返答を聴いて無知さに呆れると同時に懐かしさを感じていた。

 

 

「それも良いが、このトロスト区に投資してみないか?」

「トロスト区に?」

「見たまえ!ここまで投資のしがいがある街などないぞ!」

「すべてがリセットされているんだ、下手な投資よりもやりごたえがあると思わんか?」

「確かに資金の一部で投資してもいいかもしれませんね」

 

 

兵士であっても商人の血は争えないということだ。

 

 

「それでは取り分の契約書を作りましょうか?」

「ん?」

「リーブス商会が紹介してくれるのでしょ?その配分について取り決めをしたいのですわ」

「ああ、そうだな」

 

 

巨人で打ちのめされて、死んでいた1人の商人は1人の兵士によって立ち直った。

商機を求めるのではなく作り出す事を思い出したのだ。

 

 

「なんだか懐かしく感じるわ…」

「どうかしたのか?」

「いえ、なんでもありません」

 

 

フローラは会長と話をしていて懐かしさを感じていた。

理由はよく分からない。

ただ、探求すると今の自分が崩壊するような…そんな気がして!

そのような感情は、脳裏の彼方へと飛ばして会長たちの後ろについていった。

 

 

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