進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~ 作:Nera上等兵
エレンの巨人化計画の当日、トロスト区壁外の遺跡にて9名の兵士が集結していた。
今回の計画では、かなりの困難を伴うので、少数精鋭によってエレンの巨人化実験を行うのだ。
…というのは、建前で本音は王政にバレない様にトレーニングする為である。
参加メンバーは、調査兵特別作戦班、通称リヴァイ班の5名及びエレン。
第四分隊からはハンジ分隊長と副官のモブリット。
そしてエレンの体調管理及びメンタルケアも含む支援兵としてフローラ。
エレンからすれば、1人でも自分を信頼してくれる人物が居るだけで安心できた。
「よし、これからエレンに向けて巨人の誘導を行う!」
「エレン、準備はいいか?」
「はい、問題ありません!」
巨人化実験自体は、壁内で何度も行われたものの成功しなかった。
ハンジ分隊長は、過去のデータから分析した結果、とある仮説を立てた!
戦場で巨人化したのを着目した結果、本実験が行われる事となったのだ。
「エレン、私たちは巨人戦闘のプロだけど、それでも君を守り切ることはできないかもしれない」
「君の命を守れるのは君しか居ないんだよ、それをしっかり心に刻んでくれ」
「分かりました、やってみせます」
いつもと違って真面目になったハンジ分隊長の話に彼は緊張していた。
この中で一番、巨人との戦闘に不慣れであり立体機動も経験不足のせいで劣っているからだ。
「大丈夫よエレン、わたくしは死んでもエレンを守って見せるってミカサと約束したから」
「最悪、フローラという世界一美味しいお肉で囮になってみせるから安心して…」
「お前…」
「なんてね!死ぬためにここに来たんじゃないわ!頑張ってねエレン!」
「ああ、今度こそ成功して見せる」
会話して落ち着きを取り戻したエレンは覚悟を決めた。
ここに居る全員が覚悟を決めていたのだ。
最後に笑ってみせたフローラの顔を見た彼は、腹を括る!
「よし、私たちも配置に付こう!」
「分かりましたわ!」
本作戦の流れは以下の通りである。
まず、リヴァイ班が囮になり各方面から巨人をおびき寄せる。
その中で奇行種が釣られてきた場合は討伐する。
そして巨人がエレンを目視できる距離になった時、1体の巨人を残して討伐をする。
危機が迫った彼が自傷行為を行って巨人となり、回避行動または攻撃態勢に移行する。
「しかし、巨人化したら正気を保っていられるのでしょうか?」
「モブリット、エレンを信じようじゃないか!」
「アルミンが言うには、うなじに刺激を与えると正気に戻ったそうですよ」
「なるほど、うなじに居るエレンを刺激してやればいいのか」
問題は、エレンが正気を保っていられるかという事。
駐屯兵団第一師団の精鋭班のリコ班長の報告書には、エレンは暴走していたという記されている。
巨人形態では3回に渡って人に攻撃をしたという記述で、フローラ以外の全員が警戒していた。
ただ、対処法が今さっき判明したので、少なくともハンジはなんとかなると踏んだ。
「巨人がこっちに向かってきます!!」
「さすがリヴァイ班の皆さんは、仕事が早いね!」
まず先行したオルオ班の2名が巨人を3体引き連れてきた。
そしてリヴァイ班も巨人を5体引き連れて目標場所に向かって進撃している。
「よし!オルオ班の一番小さい巨人を残して、あとは討伐だ!!」
「モブリットはオルオ班に向けて信煙弾を撃って合図を!私たちは急いでオルオ班を援護する」
「「了解しました!」」
フローラ・エリクシアは、覚悟を決めて愛馬のライリーに乗馬してオルオ班に向かっていった。
最大の懸念であったライリーは巨人を恐れておらず安心してシュツルムメッサ一Ⅱを鞘から抜いた!
「グリズリー班長たちの改良品、ここで使わせてもらいます」
彼女は、シュツルムⅡシリーズという以前の装備品の改良型を身に着けていた。
巨人討伐ショーで入手した金貨と戦闘データを技術4班に提出して改良してもらったのだ。
グリズリー班長曰く「ようやく技術班らしい事をすることができる」と自信満々に取り組んだ代物である。
量産化を見据えた試作品の設計を全て見直して、ギアから外観のフレームの材質まで変更した。
その結果、重量を変更せずにアンカーの射程範囲以外を改善した代物になった。
「ハンジ分隊長!もういいですか!?」
「よし、オルオ班はリヴァイ班と合流して付近の警戒に当たれ!」
「「了解!」」
馬を翔けるオルオとエルドは、リヴァイ班との合流を見据えて前だけ見て全力疾走した!
まるで第四分隊に後始末を頼んだかのように。
「お前たちの相手はー!私たちだよ!いやっほいいいいいいい!!」
「分隊長!先行し過ぎです!」
「覚悟なさい!」
「あんたも出過ぎだあああ!?」
フローラは、鞍上から操作装置のトリガーを引いてアンカーを射出した!
迷わず立体機動に移って驚くモブリット副長の声を背後に巨人へと向かっていった。
ハンジは、一番後方に居た巨人の左膝裏を斬り付けてバランスを崩させて倒れた。
その隙を見逃さずにうなじを刈り取ると、別の巨人に後頭部にアンカーを射出した。
勢いよく突き刺さったアンカーを回収するようにワイヤーを高速に巻き取る。
「死になさい!」
ついでにフローラは、ガス噴出をして身体を時計回りに回転させてうなじを勢いよく刈り取った。
巨人の前に飛び出した彼女は、ある程度の高さに達すれば振り子の様に後方に落ちていくだろう。
もちろん、そんな事など想定済みだ。
彼女は、空が真下にある事を確認し、アンカーを外し回収を行ない何度も身体を後転させた。
再度位置エネルギーに基づいて、後方に居る前屈みで倒れ込む巨人と激突する未来。
それは回転した後方に空気が引き摺れた分、揚力が発生して前進したおかげで回避できた。
「本当に無茶な戦い事をしてるな…あの子は」
前屈みになって倒れ込む巨人よりも前に飛び出せた彼女は、近くにあった木にアンカーを射出して無事に離脱できた。
それを見て、ハンジ分隊長以上の死に急ぎの女兵士に呆れているモブリットであった。
ちなみにトロスト区攻防戦で、戦死した兵士たちの大半は、巨人を攻撃する際に身体の回転を行なっていなかった。
投球で例えると、ボールにスピンをかける技能が無い為、変化球ができずに決まった軌道しか投げられないのだ。
逆に言えば、回転を理解すればある程度、空中における方向転換や、落下地点や攻撃の角度を変えられる事ができる。
故に、調査兵団に入隊した兵士は、立体機動に肉体の回転を加える動きの訓練をさせられるのだ。
もちろん、フローラは独学であるにもかかわらずパスできた分、空き時間があった。
「見た見たモブリット!?あの子凄い動きしたよ!?」
「ええ、本当にどっかで事故りそうで見てられませんよ!」
「あの動きも調査兵団の訓練内容に追加しようか!」
「いやいやマジでやめてください!冗談抜きで死人が出ますよ!?」
思わず、エレンに向かっていった巨人の事を忘れて盛り上がる2人。
一方、フローラはリヴァイ兵士長の動きを観察していた。
立体起動訓練で無理をして何十回も医務室に搬送された分、空間認識能力を培ったのだ。
しかし、そんな彼女でも兵士長の動きが信じられなかった。
回転する刃物が巨人のうなじだけを狙って刈り取る動きは、彼女目線から見ても化け物の動きだったのだ。
「兵士長の動きは…真似できないわね…」
フローラは回転斬りのコツは見抜いたが、兵士長の動きを完全に真似するのは不可能だと諦めた。
自分が空間把握能力に優れていて、どの動きをすればどう動くか理解しているのは自認している。
それでも、兵士長の動きは無理だと判定した。
3次元の動き、ガス噴出、回転、腕力、動体視力、空気抵抗、重力、経験、姿勢、重心、空間把握。
そこまでなら真似できるのに低身長、骨格、平衡感覚、生まれもった鬼才の勘まであるのだ。
彼の動きに感心をしつつ肉体の負担を和らげる姿勢を新たに発見して笑みを浮かべた。
「そういえばエレンは?」
「「あっ…」」
ハンジ分隊長の一言で現実に戻った。
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「なんでだよ…」
エレンは自傷しても巨人になれずに呆然としていた。
目の前に迫ってくる巨人が居るのに自分の情けなさに失望した。
「あの時はできたのに…」
「おい糞ガキ!!さっさと巨人化するか、回避しろ!!」
上官であるリヴァイの警告で慌てて立体起動で巨人を回避した。
噛みついた右手首から血が滴れ落ちて地面に飛び散っていった。
「なんで再生しないんだ…」
彼はかつて、脚と腕を消失したことがあった。
しかし、巨人化の影響か肉体が元通り再生できることは知っていた。
つまり再生できないのは、人間の肉体のままであるということだ。
「オレは…オレは!!」
巨人の攻撃を遺跡を利用して回避するものの本来の目的が達成できなかった。
この場に居る全員が自分に期待しているのだ。
全員が課せられた任務を達成したのに自分だけ達成できていない。
その事実は彼の心を絶望に染めるのに時間は掛からなかった。
「おいまだか!?」
「エレン!早く巨人化しろ!」
「俺たちは、お前の為にここに来たんだぞ!?」
「壁外調査まで2週間切ってるのよ!?」
リヴァイ班も中々巨人化しないエレンに痺れを切らして急かし始めた。
それが更に彼の心を傷付けた。
「できます」
「やってみます」
「分かりました」
「成功させてみせます」
どれだけ皆の期待を背負って返事をしてきたのだろう。
どれだけ皆の期待を裏切ってきたのだろう。
どれだけ無能な自分のせいで人命を失ってきたのだろう。
どれだけ失敗のせいで時間を喪失してきたのだろう。
「オレはー!オレはあああああ!!」
ついに追い詰められて8m級の巨人にエレンは鷲掴みされてしまった。
持ち上げられる間にも何度も手を噛んだが効果は無かった。
「しまった!!」
「エレン!!」
「間に合わねぇ…」
リヴァイ班も第4分隊も巨人の興味を惹かないように遠くに布陣していたのが裏目に出た。
一番早く反応したリヴァイですら、うなじを斬る前にエレンが喰われる状況だった。
「ああああ!!なんでだああああ!」
エレンは絶望して泣き叫んだ!!
「エレンを!!放しなさいいいい!!」
彼の頭が口内に入る瞬間、フローラは回転斬りをして巨人の手首を両断した。
衝撃で巨人の唇に激突した彼は何が起こったのか把握できずに落下していった。
そんな彼をフローラは間一髪、抱き締めて受け止めながら回避行動を取った。
「くそが…危なかった…」
巨人は衝撃のショックで隙ができて放心したかのように8秒ほど硬直していた。
その隙が命取りとなり、リヴァイの回転斬りの餌食となった。
「あ?あっ?えっ?」
「エレン、大丈夫?」
エレンが気が付いた時には、地面に寝っ転がっており心配そうにしているフローラの顔が見えた。
「もう良いだろう糞眼鏡!実験は中止だ!」
「ええー!エレンはまだ巨人化できてないのにー!?」
「よく見ろ、自分で噛んだ手首の傷が塞がってねぇ…つまり人間形態のままってことだ」
「じゃあ、これ以上やっても無駄だな!まあ、俺様は無理だと分かっていたけどよぉ!」
「何を偉そうに!知ったかする男ほど、無様な姿はないわ!」
「ペトラ…お前、本当に見る目がないな?俺の雄姿をじっくり見て目を慣らすんだな!」
エレンは自分の情けなさに次々から涙が零れて、呼吸が荒くなってしまった。
周りの反応は、巨人化できるとは期待していないかのように失望した者は居なかった。
人類の希望と讃えておきながら、現状を変える事を望んでいないように…。
自分が大勢の心臓を捧げる価値などないと、どんどん思いが汲みあがって来ていた。
「おかしいね、エレンが確実に命の危機を感じられるようにセッティングしたのに…」
「エレンの自身の気持ちの問題じゃないでしょうか?」
「どういう事?」
「心のどこかしら、リヴァイ班の皆様に守られる安心感があり決死の覚悟には至らなかったと…」
「そうかもしれない…いや、私の仮説が間違っている可能性があるね」
ハンジ分隊長とフローラの会話で更に自分の無力さに泣いてしまったエレン。
フローラからしても見てられず、彼の涙をハンカチで拭き始めてなんとか落ち着かせようとした。
「オレは…どうしようもない…みんなが頑張ってくれているのに…オレはぁ!!」
「とりあえず撤収作業に移ろうか!私とモブリットは実験結果をまとめておくよ」
「エレンはここで少し休ませて…フローラは彼の手当てをしてあげてくれ」
「了解しましたわ!」
テキパキと指示をしていくハンジ分隊長の指示を受けてフローラは持ち込んだカバンを手に取った。
そこから消毒薬と包帯など、止血に使う道具一式を取り出してエレンの元へ駆け出した。
「やっぱ、オレは処分された方が人類の為かもしれない」
「そんな事ないわよ!エレンには無限の可能性があるのよ!」
「これで8回目の失敗だ、もう誰も期待してない…」
既に心が折れた彼を見て、どう励ますか迷うところである。
同情すれば逆ギレをされるし、優しく励ましても更にダメージを与えるだけだ。
それどころか、超大型巨人に突撃していった体験ですら精神を締め付ける拘束具になっていた。
「仕方ないわよ…今までのエレンは鳥籠に居たんだから」
「意味が分からん」
「エレン、鳥籠で生まれた鳥が大空に向かって飛べると思うの?」
「無理だ」
「エレンはその状態よ…自由を求めていたけどいざ自由になると上手く飛べない鳥なのよ!」
彼は自由に憧れていたのを思い出してとにかく自由を意識させた。
人類を守る壁を鳥籠と評して、そこに居る人類を鳥としていた彼の言葉を思い出したのだ。
「ほら、ここは壁外、エレンは鳥籠から出された鳥。もう少し慣らさないといけないの」
「そうか…」
「自由になった鳥は、自由過ぎて怖くなって鳥籠に戻ろうとしてるわ…エレンあなたの事よ」
「自由…」
「時間はまだあるわ!その間に自由について考えればいいじゃない」
フローラの言葉を聞いてエレンは思い出した。
『自由』という単語が心に響いて脳裏から離れなかった。
自由を考えると不思議と力が湧き上がってくる気がする。
この右手で大空を掴みたい!
鼓動が早くなり体内が燃え滾る炎が外に出ようとする感覚がした!
「とにかく手当をするから腕を出して…ああ、こんなに怪我しちゃって」
フローラは傷の深さを探る為に軽く傷口に触れた。
その瞬間、辺りに閃光が迸って爆音と共に目の前が真っ白になった。
「きゃあああああああがっ!!」
突然、巨人化したエレンより放たれた衝撃波でフローラは地面に叩き付けられた。
エレンの右手だけが巨人化して肉塊が付着した肋骨の部位となっていった。
「なんで…今頃!?」
エレンは困惑した。
なぜ今になって巨人化したのか分からなかった。
「落ち着け!」
「違います…兵長これは…!」
リヴァイ兵士長の声を聴いて思わず振り向いた。
そこにはリヴァイ班の面々が抜剣して身構えていた!
「何故許可なくやった!?答えろ!」
「どういうつもりだ!?」
「その腕を少しでも動かして見ろ!その瞬間、首を飛ばしてやるぞ!!」
「兵長下がってください!」
「落ち着けお前ら!!俺の勘がよせって言っている!」
既に全員がパニック状態であった。
リヴァイですら理性ではなく勘で班員たちを止めている時点で察しが付くだろう。
「エレン!証明しろ!人類の敵じゃないってことを!」
「動くな!大人しろ!」
「兵長!危険です!!」
「答えろ!!」
エレンはどうすればいいのか分からなくなっていた。
どうすれば、この状況を打開できるのかと!
「酷いわ…エレン」
「フローラ!大丈夫か!?」
気力で復帰したフローラはゆっくりと彼に近づいて抱き締めた。
まるで盾になるかのように庇っていた。
「これで…あなたを守れる…」
「おい!しっかりしろ!!」
飛び掛かろうとしたリヴァイ班の面々も彼女が盾になったせいで身動きが取れなくなった。
そして、時間が経過していくうちに少しずつ興奮が薄れていった。
「うひょおおおおお!巨人だああああ!!」
1名を除いて。
「そのぉ!腕ぇ!触っていぃいい!?触るぅだけだからぁああ!」
音と衝撃で何事かと駆けつけてきたハンジ・ゾエはエレンを見て興奮した!
奇声をあげながらモブリットを引き離して部分的に巨人化した肉体に突撃した!
「うぉおおおおお!というかあんた邪魔ぁあ!!」
巨人の肌に触ろうとしたが、エレンにしがみ付いているフローラが邪魔であった。
なので、力づく掴んで投げ飛ばした。
既に瀕死だった『盾』は受け身をとることができず地面に叩き付けられた!
「あ…ああぐあ!!」
「「「「フローラ!!?」」」」
「熱いぃいいいい!めっちゃ熱ぅううううう!皮膚じゃないとこお!すっげぇ熱いぃいいい!」
「分隊長、いくら何でも酷過ぎます!」
リヴァイ班は、動かなくなったフローラを見て慌てて介抱しに駆け出した!
そんな事などお構いなしに肋骨に触れた瞬間、ハンジは熱さで転げ回った、
「ねえ!エレンは熱くないの!?右手の繋ぎ目はどうなってるの!?」
「そうだ…!これを抜けば…」
皮肉にも当事者が置いてけぼりにされたおかげで冷静になれたエレンは右手を引き抜こうとした。
左手で掴んで身体を外側に倒すようした瞬間、右手が抜けて巨人体から転げ落ちた!
「うわああああ!早過ぎるよおおお!?まだ調べきれてないのにいいい!」
エレンという本体から切り離された巨人体は、蒸気を噴き出して蒸発していった。
「はぁはぁ…」
「気分はどうだ?」
「兵長、気分は最悪です」
「だろうな」
兵長に話しかけれてようやく落ち着きを取り戻したエレンはゆっくりと息を整えた。
「分かっていましたが、ああやって敵意を向けられるまで考えていませんでした」
「自分があそこまで信用されていないって事に」
「だから、選んだ」
リヴァイは、部下達の行動に満足していた。
生きて帰ってくるのが一人前の調査兵と言われている。
選抜した兵士4名は、その地獄の中で何度も生き延びて成果をあげたのだ。
だからこそ、非常事態に対処できて即決断できる者たちを編成した。
「俺は今まで間違った選択肢を選んできたが…後悔はしていない」
「…そうですか」
「お前も後悔しないようにしっかり決断できる男になれ」
「…はい!」
リヴァイは激戦を生き延びてきた人類最強の兵士と評される。
故に多くの兵士達を看取ってきた。
自分の選択ミスで死なせた者も居れば自分を庇って死んだ者もいる。
それでもそのおかげで今があり、生きているのだ。
これからもずっと悔いのない選択肢を選んでいくだろう。
「なんで巨人化したんだ!?」
「分かりませんが…フローラが手当しに行った時に発生した感じです!」
「おおっ!じゃあフローラに事情聴取すれば巨人化のメカニズムを発見できるかもね!」
リヴァイ班に聴き取り調査したハンジは、フローラが鍵を握っていると分かった。
さすが自分が選んだ部下!
ようやく巨人の謎を解明できると!
興奮が止まらずに、歩き回ってしまうほど正気を失っていた。
「フローラ!!…死んでる!?」
「分隊長!あなたが投げ飛ばしたせいですよ!」
いっきに巨人に対する熱意が吹っ飛んだ。
愛する部下が全身が血塗れで虫の息であったからだ。
そうなった理由は副官のモブリットが伝えたものの、耳に入らなかった。
「ああ!フローラ!!起きろ!!起きてくれえええ!!」
「やめてください!マジで死にますよ!?」
「総員!この糞ゴーグルをとめろ!!」
慌てたハンジは、意識が朦朧としている殉職間近の女兵士の肩を大きく揺さぶった。
哀れなフローラは、自分を指名してくれた上官に止めを刺された。
享年、多分15歳、記憶が消失しているので5歳くらいの短い人生であった。
合掌。
「ぶはっ!!ああああ!なんでこんな目に遭うのおおお!!」
あまりにも散々な目に遭った怒りでフローラは息を吹き返した。
「巨人だ!4体!!こちらに向かって来ています!」
「しょうがないね…こいつらをやっつけたら撤退するよ!」
ハンジは口惜しいように呟いたが、覚醒したフローラが瞬く間に巨人4体を葬ったのを見て黙り込んだ。
リヴァイですらその様子を唖然として見届けるしかできなかった。
そして撤退する間、誰も口を開くことはなく無事に誰1人も欠けずに壁内に帰還できた。
「じゃあ、そういうことで!上に報告してくるから!」
「待ちなさいいいいい!!」
「ひええええええええ!!」
旧調査兵団本部に帰還した瞬間、ハンジは逃げるようにエルヴィン団長に報告しに向かった。
その背後に鬼の形相をした女兵士と主人の仇を討たんと言わんばかりに鼻息をあげている馬!
彼女達の追いかけっこは、エルヴィン団長が仲介するまで続いた。