進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~ 作:Nera上等兵
死ぬ時に何かをやり残したことは無いかと、問われれば誰でもあると答えるだろう。
恩人に感謝の一言を伝える事ができなかった。
もっと早めに医者に診てもらうべきだった。
家族全員の食い扶持を稼げなくなるなんて嫌だ。
もっと勉学に励んでおけば…。
復讐を果たせなかった。
調査兵団の兵士が死に際に思い浮かべるのは、やり残したことではない。
ただの後悔だ。
「死にたくない」
「助けて」
「入団しなきゃよかった…」
「ごめんなさい」
「家族が…待っているのに…」
あらゆる感情を含んで調査兵団に入団した新兵たちは3年以内に8割が戦死する。
そもそも第12代目団長のキース・シャーディスが団長職を移譲するまで事実上の終身刑であった。
調査兵団の団長が戦死する度に巨人の脅威に立ち向かう勇気ある者が引き継いできた。
そうやって、生者が死者の意志を継ぎ次世代へと未来を託してこれまで歴史を紡いできた。
調査兵団は、歴代の団長も含めて大勢の屍を積み重ねながら、850年まで存続している。
「少しだけ時間を頂けるか?」
「はい、構いません」
調査兵団の第13代目団長であるエルヴィン・スミスは、壁外任務の当日、とある新兵に逢いに行った。
本来ならば新兵に伝える内容ではないが、今回だけは例外で報告する事にした。
この第57回壁外調査の真の目的について!
「君はこの壁外調査についてどう思う?」
「正直、肩透かしです!これではエレンの評価を覆らせることはできません!」
特別兵法会議においてエレンの処遇は一時保留となった。
本日、開始される第57回壁外調査の結果次第で彼の未来が左右される。
しかし作戦内容は、南西にあるシガンシナ区方面まで進軍してカラネス区に帰還するだけの任務。
王政派や憲兵派はもちろん、戦果を期待している商会や調査兵団の支援母体も失望させるものである。
「カラネス区の東にあるネドレイ区の扉を占拠するべきではなかったのでしょうか」
「中々鋭い提案だな、扉さえ封鎖すればネドレイ区は要塞になるだろう」
「王政を含むエレンに敵対している組織は、分かり易い実績を欲しています」
「ああ、分かってるさ」
新兵のフローラ・エリクシアは、この壁外調査に不満に思っている。
悪く言えば、ただの遠足をする任務だったからだ。
この任務を成功させてもエレンの実用性は証明できない。
ならば、そのまま直進してネドレイ区に向かった方がいい。
以前にも団長に提言されたが、却下されているがそれでも諦めきれなかった。
「君には本作戦の真意を伝えておく」
「…でしょうね、この作戦を成功させても人類の功績など得られませんから」
エレン・イェーガーの実用性を証明したいなら壁上に有力者を集めてパフォーマンスをするだけでいい。
エレンが巨人化して巨人を倒しまくって、援護と誘導はリヴァイ班が行うだけでいい。
フローラが大金を入手したように、分かり易くかつ目視で確認できる事で実感できるからだ。
「シガンシナ区まで進軍できるか試しただけ?たったそれだけだったのか?」
「第57回壁外調査は、ただの遠足だったと…はっはっはっ!笑わせてくれるわ!」
シガンシナ区まで進軍ルートの確認をしたところで第三者から見ればどうでもいい事である。
遠征が成功したからといってエレンは人類の味方とは証明できないし、納得できない。
「君はこの作戦の本当の意味を理解しているようだな」
「まるでエレンを餌にして何かを釣り上げるみたいです」
「その通りだ、私は兵団内に居るスパイ、それも巨人化できる者を捕らえるつもりだ」
彼女からすれば彼が何を考えているか見当もつかなかった。
ただ“声”は『どんな犠牲を払っても捕らえてみせる』という感情がある。
むしろ、それが負の感情なのはかなりの犠牲を含んでいるということ。
「私は超大型巨人と鎧の巨人がエレンと同じ人間が化けていると確信している」
「確かに巨人は人間しか襲撃しないのであそこまでピンポイントに攻撃できません」
「だがトロスト区の門が破られたのにローゼの扉が破られなかった…何故だと思う?」
「何かしらのトラブルがあったのでは?」
エルヴィン団長はフローラという少女の理解が早くて助かっている。
もしリヴァイ班の面々に説明しても、戸惑ったり作戦に支障が出るだろう。
「そうだ、5年前も今回も調査兵団が不在の隙をついて行われた」
「だが、トロスト区の場合は門を破られるだけしかなかった」
「エレンというイレギュラーが発生したせいですか?」
「ああ、だから私は5年以上調査兵団を務めている者しか味方だと思っていない」
彼は巨人のスパイでも仲間でもない存在は、調査兵団に5年以上所属している者しか確証がない。
だから5年以内に入団したリヴァイ班のメンバーも仮想敵になる可能性を考えている。
もちろん、これまでの壁外調査で104期調査兵以外は信頼できると思っている。
「わたくしは記憶喪失している新兵ですよ?何故そのような事を打ち明けたのでしょうか…」
「エレンに対する君の態度と実績、そして何より私と【同類】だからだ」
「つまり仲間を利用して愛する人を犠牲にしてでも目標を達成させる人物だと言いたいのですか?」
「違うのか?」
トロスト区防衛戦の時の彼女は、僅かな同期たちを救う為に大勢の命を切り捨てた。
ミーナとアルミンとダズを救う為に同期を100人単位で見捨てて、民間人の救援を無視した。
大切な物を守る為ならそれ以外を切り捨てられるのがフローラ・エリクシアという悪魔である。
「その通りです」
「これは君だけに伝えておくが当の本人は内緒にして欲しい」
「大丈夫です、墓まで持ち込む覚悟はあります」
「ありがとう」
エルヴィンは、その信頼している古参の兵士すら伝えて無い事を彼女に話すつもりだった。
「個人的見解だがエレンは弱い、それは誰よりもだ!希望が絶望に変わった時、全てが終わる」
「きっと彼は1人で抱え込んで破滅に向かうと知っても進撃していくだろう」
「…仰る通りです」
「だから彼の心が折れそうになったら君が支えてあげるんだ」
「エレンの本質を理解して精神的に支える事ができるのは君しかいないし代わりはいないんだ」
彼がエレン・イェーガーを観察している時に気付いた事がある。
何があっても志が折れない不屈の精神があるのは理解したが、それに身体がついてきていない。
「絶対に巨人を駆逐してみせます!」
「巨人化計画を成功させます」
「人類の希望になってみせます」
「自分の為に犠牲になった人たちを無駄にしないように精進します」
エレンは口では大層な発言をするが、それに追随できる能力はまだ無い。
立体機動も巨人との戦闘も巨人化も全て経験不足である。
それによって発生する失敗に彼はどんどん自身を追い詰めていくだろう。
例外を除いて誰一人心境を打ち明けずに手遅れになった時に初めて告白するのだ。
「エレンは知らず知らずのうちにフローラという存在に支えられている」
「あいつには負けたくない、同志として切磋琢磨したい、一緒に目標を達成したいなどだ」
「…そうですか」
「エレンを唯一、救えるのは君だけだ、だからこそ壁外任務で死んではいけない」
エルヴィンがこの壁外任務の本当の目的を打ち明けた最大の要因である。
フローラという存在を消失したエレンは、全てを自分1人で抱え込んでしまう。
彼は特別な存在になり過ぎて同期や幼馴染ですら距離を取っている。
そんな彼は、同志であるフローラのみ悩むを打ち明けて精神的な癒しを求めている。
それは重要な事であり彼を運用していく上で、なくてはならない。
「だからこそ、君に命令をする!エレンより先に戦死をするな!以上だ」
「大丈夫です、彼を死んでも守ると約束しているのですから…」
エルヴィンが一番危惧しているのは、エレンを唯一メンタルケアできるフローラの損失だ。
兵団全体を見れば巨人を討伐できる実力者を損失するので大きな痛手である。
「もう一度言うぞ、エレンより先に戦死をするな!この私ですら犠牲にしてでも生き残れ!」
「…はい、分かりました」
だが、本質は追い詰められたエレン・イェーガーという男を絶望から救出できなくなる点だ。
調査兵団の団長として、様々な死を目撃した上での経験がそれを実感させている。
壁内の人類の為にも、エルヴィン・スミスが夢を叶える為にも必要不可欠なピースだ。
しかし、ここで承諾したと勘違いした彼は、後に確認しておかなかった事を後悔する事になる。
フローラは理解したとは言ったが、死なないとは言っていない事に…。
「エレン・イェーガーは、長距離索敵陣の『5列中央・待機』に居る」
「もし何かあればリヴァイ班の元に向かい、リヴァイ兵士長の指示に従い行動せよ!」
「ハッ!」
フローラは自分を信頼してくれたエルヴィン団長の期待を裏切らないように覚悟した。
自分を信頼してくれたという事は、それ以外の兵士はどれだけの損害を払ってもやるつもりだ。
エレンと同じ巨人化できる人類。
それは【鎧の巨人】かもしれない。
団長の為にもエレンの為にも、そして何より自分の為にも絶対に成功させてみせる。
「それはそうとして、援護班としての活躍も期待しているぞ」
「はい、本隊の進軍を妨げないように旧市街地の巨人を殲滅するつもりで精進します」
「頼もしいな、期待しているぞ」
フローラはカラネス区壁外における単独巨人討伐14体が評価されて援護班に所属する事になった。
付近の巨人を掃討して270人以上の調査兵を旧市街地から安全に進軍させる重要な役目だ。
長距離索敵陣を展開するうえで真っ先に重要な役割を任されていた。
「済まない、1時間ほど時間をとらせてしまったな」
「いえ、有意義な時間を過ごせてとても幸せでした」
「よし、同期の元に向かって彼らを元気づけてあげてくれ」
「ハッ!」
壁外調査まで2時間を切ったのを知ったフローラは慌てて身支度をした。
ただ彼女は『強化・1型』シリーズという調査兵が愛用している物を装備した。
技術4班の自信作である『ブリッツ』シリーズは真の目標を達成させる為に不可欠だったからだ。
専用装備と違って補給できるのも強みであり例え団長から真相を聞かなくても装備変更をしていた。
『ブリッツ』シリーズと専用のガスボンベは愛馬に持たせてある。
「ライリー、ようやく貴女が求めていた自由を謳歌できる状況になったわね」
愛馬のライリーは最低でも3時間走らせないと気が済まないほどの気性が激しい性格だ。
少しでも走らせずに機嫌を損ねれば、例えパートナーであって本気の蹴りを繰り出してくる。
そんな彼女も見渡す限りに騎兵が居る環境では萎縮したのか、落ち着いていた。
「いよいよ始まるね…」
「みんなこの時の為に訓練してきたもの、必ずうまくいくわ」
「うん、絶対に生き残ろう!」
不安になったアルミンは恐怖の対極な存在であるフローラの顔を見て安心した。
自分たちの活躍で人類の為、そしてエレンの為になる!
そう考えたら、壁外調査などこわくなくなった!
「調査兵団だ!かっこいい!」
エレンは、自分を見つめて興奮している少年とその後ろで心配そうに見つめる少女を見つけた。
「英雄たちの凱旋だ…!行くぞミカサ!」
5年前のシガンシナ区で、調査兵団に憧れていた幼き自分と、ミカサの姿を重ねていた。
あの時は惨敗した調査兵団の兵士を見てなんて勇敢だと思った。
でも実際に所属してみると何のことは無い。
勇敢に巨人に挑む凄腕の兵士ではなく、巨人と戦えるようになった人間である。
「あの時とは違う!」
それでも成す術もなく母親を喰われたのを背負わられて見ているしかできなかった自分ではない。
決して彼らの期待を裏切ることはしない!
そう決意したエレンは、前を向いて手綱を強く握り一人前の兵士として彼らに魅せていた。
「緊張してきた…」
「ちゃんとトイレ行ってきたか?」
「なんだよジャン、俺が漏らすとでも?」
「漏らされると馬に迷惑をかけるからな」
「さすが馬面は、馬の事をよく理解してるってか?」
「なんだとコニー!心配してやったのに!!」
ジャンとコニーは軽口を叩き合い、104期調査兵はその様子を見て微笑んでいた。
その中で1人だけ例外が居た。
ミーナ・カロライナである。
「どうしてフローラだけ初列十四・索敵なの…」
長距離索敵陣形における配置場所は周囲に伝えられていた。
その中で新兵の配置場所は荷馬車の護衛班と索敵支援班の中間。
予備の馬と並走及び伝達係の任務が104期調査兵の任務である。
大切な親友だけが初列十四・索敵、魚鱗の陣で例えると右端に配置されていた。
「なんで私の大切な人は、みんな離れていくの…」
彼女は両親から渡された狩猟銃を手に取って眺めていた。
両親には、巨人に頭から喰われそうになったのを親友に助けてもらったと伝えた。
すると慌てて家宝のライフル銃を渡してくれたのだ。
「巨人にライフル銃なんて役に立たないわよ!」
「これは壁内に逃れてきた祖父の祖父から受け継がれた由緒正しき銃だ!」
「これで巨人の眼球や関節を狙って援護してあげなさい!」
帰省した大事な娘が話した出来事に両親は青ざめていた。
こんな華奢で可愛い一人娘が巨人の手に捕まり口内で貪られる。
てっきり駐屯兵団の兵士として生涯を過ごすと思っていた両親は耐えられるものではなかった。
「こんなの役に立たないわよ!」
「それで急所を狙撃して親友を援護してやれ」
「巨人は1人で倒すものじゃないでしょ、視覚を潰してフローラさんが動きやすくしてあげなさい」
両親の言葉を聞いてミーナは、初陣の事を思い出した。
トロスト前門が破壊されて巨人が進撃してきた時のことを。
負傷したサムエルをサシャが搬送して残った固定砲整備4班が相手にしていた。
足が竦んでどうしようもなかったが、それでも生還した。
訓練兵たった5名で巨人を5体も討伐した偉業を思い出していた。
「ありがとう、お父さん、お母さん」
その5体の巨人を討伐したのはフローラであった。
ただ、全員がガスと刃を半分以上消費したからこそ、彼女が活躍できた。
足手まといになるなら、せめて遠距離から狙撃で援護したい。
「結局、使う事はできないのね…」
そう思っていたのに、親友は遠い場所に居て援護できそうもなかった。
ミーナは悔しそうに得物を馬に固定させて指示を待った。
「どうするライナー」
「どうするって…兵士として任務を全うするだけだ」
ベルトルトは思わずライナーに自分たちはどうするべきか尋ねた。
すると兵士として彼は模範的回答を行なった。
傍から見れば頼もしく見える兄貴分である。
しかしベルトルトから見れば、ライナーの対応がちぐはぐしていて不安である。
「しかし、エレンが巨人化できるとはな…」
「もしかしなくても僕たちが求めているのはエレンじゃないかな…」
「何言ってんだベルトルト?エレンは俺たちの希望だぞ」
「…うん、そうだね」
戦士候補生としてアニと共に過ごしてきたライナー。
彼はいつの間にか成長して頼れる兄貴分となっている。
まるで志の半ばで散っていたマルセル・ガリアードの意志を引き継ぐように。
ただ本来の目的を時折忘れており、さきほどの会話も成立しているか不安になってくる。
「これで僕たちは故郷に帰れるんだね」
「ああ、奪還できれば全てが終わり故郷に帰れるんだ!」
ようやく終わるのだ。
この悪夢の世界から脱出できて、巨人の脅威がない世界に行けるのだ。
「それにここで格好いい所を魅せれば、クリスタも振り向いて喜んでくれるしな!」
「ライナー?何を言ってるんだ!?」
「お前も何か活躍しないと、好きな人に振り向いてもらえんぞ?せいぜい頑張れよ!」
「…そうか戦士じゃないんだな」
「何言ってんだこいつ、しっかりしろよ!」
頼れる親友がクリスタに向けて何度も視線を送っている。
まるで、雄鳥が雌鳥にアピールする機会を伺っている様に。
戦士だったライナーが気持ち悪い男に切り替わってベルトルトは動揺を隠せなかった。
自分が震えている姿を見て、励ましてくる彼の声は痛々しかった。
「見ろよクリスタ、ライナーがこっちを見てるぞ」
「もしかして髪の毛にゴミが付いているの?」
「馬鹿だな、私のお嫁さんの髪にそんなゴミを放置させるわけないだろう!」
「ユミル…」
「おっと、まだ告白されても…別にいいかもな!サシャはどう思う?」
クリスタは、さきほどから自分に向けて視線を送るライナーに困惑していた。
別に彼が嫌いなわけではないが、原因が分からない以上対応しようがないからだ。
頼みの綱であるユミルも完全にボケてしまって、真面目に伝わっていない。
「告白できるなら今のうちが良いですよ…」
「サシャまでそんな事を言うの!?」
「だって、いつ死ぬか分からないじゃないですか、私だったら死ぬ前にお肉を奢ってもらいます」
「お前、恋人より肉か!ホントお前と結婚する豚は可哀そうだな!」
「ユミル!冗談はやめてよ」
ユミルは、死に場所を求めているクリスタをどうにか助けようと画策している。
かつて『ユミル』と崇められて奉られていた彼女からすれば放置する事はできなかった。
第二の人生を歩んで自由になったからには、自分から不自由になる少女を助けたかったのだ。
「それができたらどんなに幸せでしょうか…」
兵士としての責務を放棄して自由に暮らす。
それができたらどんなに良かったことか。
自分を犠牲にしてでも大切な物を守り抜く覚悟があるミカサが羨ましい。
サシャ・ブラウスは、自分の無力さを噛み締めながら手綱を握っている。
「エレン、私が絶対に守るから…」
ようやくエレンと逢えたもののすぐに引き離される事を知っているミカサ・アッカーマン。
それでも、彼が無事だったことに安心してしまう自分に情けなさを感じている。
これでは、エレンを守るどころか彼を遠い場所に送り出す見送り人になりかねなかった。
「フローラ?覚悟は良い?」
「もちろん、援護班の一員として巨人を掃討してきますわ!」
「貴女は強いのね…」
「心身共にミカサの方が強いじゃない!」
「過剰評価よ、エレンが居なかったら今の私はないから…」
ミカサという女は、エレンに縋っているだけの存在だ、
心細かった自分にマフラーを付けてくれて家族の様に接してくれた彼。
両親を失った自分に道を示してくれた男の子。
「それは奇遇ね、わたくしもエレンが居なかったらこの場に居ないですわ」
「お互い生き残りましょう」
「もちろん、エレンを守り続ける為には生還しないといけませんわ」
「無論よ、私たちは絶対に生き残る」
エレンには敵が多い。
だから信頼している仲間と共に彼を守らねばいけない。
ミカサはマフラーをしっかりと締めて向かい風で飛ばされないようにした。
「いよいよだ!これから人類はまた一歩前進する!」
「お前たちの訓練の成果を見せてやれ!」
「「「「おう!」」」」
先鋒に居る第2分隊長の掛け声に続いて兵士達は声を挙げた!
これから壁外に行く道中であらゆる犠牲を払うかもしれない。
1人の兵士が死ぬ度に家族や仲間が悲しみ、1つの希望が潰える。
それでも成せばいけないことがある!
「第57回壁外調査を開始する!」
続いて先頭に居るエルヴィン団長が続けた。
彼の言葉なしでは、壁外調査が始まらないからだ!
「進めーっ!!」
号令と共に先陣をきる団長。
壁上に待機している調査兵以外の全員が団長の後を続いていった。
「頑張れ!」
「生きて帰ってこいよ!」
「どうせ期待してないが、せめて巨人をたくさん倒して来いよ!」
「トロスト区の悲劇が1ヵ月前にあったばかりだというのに…本当に凄い奴らだよ…」
その後ろ姿を見送る壁内の住民。
何度も送り出してきた調査兵団がボロボロになってくるのを目撃した者は多い。
それでも初めてカラネス区から大規模の部隊が出撃したのだ。
トロスト区出身ではない住民は、何かしら戦果を挙げて帰ってくると内心は思っていた。
まさか今朝送り出した調査兵団が半壊して夕方までに帰ってくるとは誰も思ってなかった。