進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~   作:Nera上等兵

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28話 女型の巨人襲来

「よお!調子はどうだ?」

「絶好調ですわ!」

「よーし、その調子で頼むぞ!」

「はい!」

 

 

旧市街地を抜けたフローラはリヴァイ班のエルドに声をかけられていた。

 

 

「周囲の巨人は片付いたようだな…これなら問題なく進めそうだ」

「少し遅れはするが、ここで態勢を整えてから本隊に合流しよう」

「ですが早めに本隊に合流しないと巨人と遭遇するのでは…?」

「休憩できるならしとくのも手だぞ?ここで休むか本隊で休むかの違いでしかないが…」

「グンタの言う通りだ、まだ本隊と合流するまで時間に余裕があるからな」

 

 

精鋭中の精鋭であるリヴァイ班の面々は、休息の重要性を理解している。

身体を酷使する彼らは、空き時間を休息に割いて定期的にストレスと疲労を発散させている。

集中力が続くのは長くても90分ほど、いざという時が多い壁外調査だからこそ休息は大事なのだ。

英気を養った彼らは巨人を70体以上討伐しても誰一人欠ける事が無かった。

 

 

「それにしてもここまでよく働いてくれたな」

「うん、この一ヵ月でかなり成長したみたいだし、きっと今回の壁外調査でも生き残れるよ」

「まあ、俺たちの初陣に比べれば全然ー」

「ほう?お前らの初陣の事を話しても良いんだな?オルオ君…?」

 

 

フローラの奮闘をペトラは先輩として素直に評価したが、オルオは違ったようだ。

露骨に頼れる先輩面をしていたオルオを見てエルドは意地悪したくなった。

まさかの発言に忘れ去りたい過去を思い出した2人は彼を睨んだが効果はなかった。

 

 

フローラは、エルドさんの一言で先輩たちの顔が蒼白になり露骨に動揺したのに気付いた。

 

 

「オルオさんに一体何が…?」

「いいか新兵、余計な事に首を突っ込んでお陀仏なんてここでは良くある事だ!」

「肝に銘じておけぇ!」

 

 

オルオは新兵に釘を刺して威嚇していた。

まるで初陣で大失敗されたのを詮索されないように…。

 

 

「ペトラさん、どうしたんですか?」

「え!?ど、どうもしないよ!私、この話には関係ないからわからないなー」

 

 

一方、ペトラは可愛い後輩に見栄を張ってたら思わぬ飛び火に動揺が隠せずに脂汗をかいていた。

オルオに意識させたかったものの返答が棒読みになってしまい隠し通せたか内心で焦っていた。

 

 

「まあ、こいつらにも初々しい時期があったって事だ…それに比べれば慣れ過ぎて感心するな」

「人類の未来を考えているお二方と違って、巨人を狩り過ぎて感覚が麻痺してますわね」

「そ、そうよね!フローラは頑張り過ぎてるわ!ちゃんと休まないとダメよ」

「ああ、今は通用しても後でガタが来るからな!」

「そうだな、小娘らしく慎まずに傷だらけになって後悔しても知らんぞ」

 

 

フローラからすれば、失禁しようが泣き叫んで無様な姿を見せていようがどうでもよかった。

トロスト区戦は、羞恥心など消し飛ばすほどの凄惨な地獄だったので気にしなかった。

といってもミーナの尊厳を守る為、香水を同期達に配りまくる工夫をしたのでそれは理解できた。

 

 

「オイ、無駄口を叩いてないで、さっさと行け」

「兵長、す、すみません!」

「既に支度の準備はできております!」

 

 

リヴァイ兵士長は、彼らの軽口を聞いて気が緩んでいると思い気を引き締めに来た。

視線を逸らす事で自分のせいで緊張しているエレンにリラックスしてもらう意図もある。

 

 

「お前とはここまでだ…陣形の展開までに自分の配置に戻っとけ」

「ハッ!」

「根性だけは認めてやるが調子に乗って死ぬなよ?」

「はい!生き残ってみせます!」

 

 

フローラ・エリクシアという女。

既に調査兵団で屈指の実力者であるミケ・ザカリアスの実力を部分的ではあるが凌駕している。

だが、危なっかしい動きをしており自分の戦闘スタイルを確立できていないと感じられた。

それはかつて生き急いで無念にも戦死したモーゼス・ブラウンを彷彿させていた。

 

大切な戦力だからこそリヴァイは、あえて彼女を高評価せず生き残る事を意識させた。

 

 

-----

 

 

「オルオさん!オレの同期は巨人に勝てると思いますか?」

「バカ、この一ヵ月何をしやがった!」

「壁外調査って言うのはな!いかに巨人と戦わないか懸かってるんだぁっ!?」

 

 

急な揺れでまたしても舌を噛むオルオ。

それを見て自分の迂闊な発言を後悔したエレンだが、仕方が無かった。

訓練をしてきたとはいえ壁外調査から生還できるかどうかは神にしか分からないのだから。

 

 

「長距離索敵陣形!展開!」

 

 

エルヴィン団長の号令で訓練通りに展開していく調査兵たち。

104期調査兵も予備の馬と並走、伝達の任務を課せられており全員が持ち場についていく。

 

 

「お前ら!小便漏らすんじゃねーぞ!」

「言い出しっぺのお前が漏らすなよ」

「言いやがったライナー!後で覚えておけ!」

「フローラ!頑張って!」

「もちろんよアルミン!また壁内で逢いましょ!」

 

 

新兵の中で1人だけ索敵班に編入されたフローラは同期たちと別れて持ち場に向かった。

 

 

「ここが初列十四・索敵の班ですよね!?」

「そうだ!よく来た!」

「名前はフローラです!短い間ですがお世話になります」

「お前…何度も訓練しただろう…そこまで堅苦しい挨拶はしなくていいぞ」

「そうだぞ新入り!」

 

 

班員については事前に説明を受けていたし、何度も訓練してきた仲である。

それでもつい挨拶をしてしまうのは、やはり自分が新米で何も知らない初心者だからであろう。

 

 

「赤い色の信煙弾が出ました!?」

「さっそく巨人の発見か…フローラ!お前が撃て!」

「了解しました」

 

 

フローラは班長の指示に従って専用の小型銃を手に取った。

 

状況に応じて専用の発煙弾を使い分けるが、今回は赤い発煙弾を使用する。

中折れ式の為、ラッチ操作を行うだけで自動で排莢されるので装填が楽である。

トロスト区の兵団本部突入作戦にも使用したと同様の銃なので感慨深いものはあった。

 

 

「撃ちました!」

「よし、指示があるまでそのまま前進せよ」

「「「了解しました!」」」

 

 

基本的に巨人の速度より馬の方が早い。

更に巨人には人間と同じように疲労の概念があるので、距離を離せばそのまま逃げられる。

 

 

「緑色の信煙弾が撃たれたな!」

「よし左折するぞ!準備はいいか?」

「「「大丈夫です!」」」

 

 

赤色の煙を確認したエルヴィン団長が次の進路に向けて緑色の信煙弾を撃つ。

それは最短時間で陣営全体の進路を変更し、新たな方角に舵を切る為である。

 

 

「俺が撃つ!撃った瞬間、左折するからちゃんとついてこいよ!」

「「「了解しました!」」」

 

 

班長が緑の信煙弾を上空に撃ちあげて左折を開始した。

その動きを受けてフローラは彼の後ろへとついていった。

全体に方角を知らせる為に班長が緑の信煙弾を撃ちあげてから進路を変更する。

長距離索敵陣形は、巨人の戦闘を避ける為に蛇行の進路をとり臨機応変に進軍していく。

そう、訓練通りの手筈で進軍しているようであった。

 

 

「班長!」

「どうした!?」

「初列八と初列十の索敵班が反応してません!!」

 

 

フローラは、すぐに異変を察知した!

前方に居る初列十ニ・索敵班は、緑色の信煙弾を撃ちあげたのにその次が続かなかったからだ。

そして、異変が起きた班の辺りに巨人の“声”を聴き取った。

それも1体や2体どころか20体以上の大群の呻き声が聴こえてきたのだ。

 

 

「最初に巨人を発見した関係だろう!危機が去ったら撃つから安心して進め!」

「アルバン班長!前方の初列十ニ・索敵班が進軍を停止しました!」

「なんだと!?」

 

 

同僚が更に悪い知らせを報告してアルバン班長は苦悩した。

例え隣接している索敵班が全滅しても進軍するのが長距離索敵陣形なのだ。

とはいえトラブルが発生した班を見捨てられるほど彼は鬼ではなかった。

 

 

「フローラ!次列六・伝達班に右翼索敵班が壊滅したと伝達しろ!」

「分かりました!」

 

 

班長の指示を受けてフローラは次列六・伝達班に向けてライリーを走らせた。

その班は頼りになるライナーが所属している班である。

所属していた初列十四・索敵班のご武運を祈ってライナーが居る方向へ向かった。

 

 

「バルタザール!何をやっている!」

「アルバンか!あの女型の巨人が索敵班を搔き回しているんだ!」

「女型?おまえ、巨人は…なんだありゃ」

 

 

アルバン班長が駆けつけるとバルタザール班長が進軍を停止した理由が分かった。

珍しい筋肉質の女型の巨人が索敵班員を蹴散らしている惨状だった。

たった今、騎手が凄まじい勢いで蹴り飛ばされて遥か大空に向かって飛んでいった。

 

 

「あれは奇行種か!?」

「分からん!だが既にあいつに10人以上やられた!」

「舐めやがって!リンハルト!シーモア!手を貸せ!」

「「ハッ!」」

 

 

仲間思いのアルバンは、女型の巨人を生かして帰すつもりはなかった。

意志を感じ取った部下達は、馬を走らせて彼より先行して援護に向かった。

リンハルトは右手の手背を!シーモアは左足首にアンカーを突き刺した!

お互いを信じている彼らは自分の責務を果たす事を考えてワイヤーを巻き取っていく。

 

 

「うわっ……ごふっ!!」

「えっ…」

「なっ!」

 

 

右脚を支柱に振り返った女型の巨人は、右手を勢いよく降ろしリンハルトを地面に叩きつけた。

更にそのまま左脚で下段蹴りを行ない勢いよく上空に飛び出したシーモアは耐え切られなかった。

肉塊が限界を超えて吐血どころか身体から血が噴き出した!

 

 

「なんだこいつ…」

「アルバン逃げろ!早くしろ!!」

「はあっ!?…ぐふぉっつ!?」

 

 

バルタザールの叫びも空しくアルバン班長は視界を覆い尽される何かの肉塊を目撃した。

それが彼が見た最後の光景だった。

女型の巨人が繰り出した掌で彼は馬ごと潰された。

不幸中の幸いなのは即死した為、巨人に貪られながら喰われるよりだいぶマシな末路という事か。

 

 

「うわあああああああっ!」

 

 

部下も同僚も他の班の援軍も全滅して1人になったバルタザール班長は逃げ出した!

本隊の進軍方向とは逆に…つまりウォール・ローゼに向かって馬を走らせた。

パニック状態になった彼は既に自殺に向かっていった。

単独で本隊と逸れて生還した例は無いからだ。

 

 

「やだああああああ!かああちゃあああん!!」

 

 

人知を上回る未知なる存在を目撃すると、人間は思考を放棄して精神崩壊する。

彼は軍人である為、辛うじて手綱を使って全速力の馬で戦線離脱を試みた。

そんな後ろ姿を見た巨人は、左足首についていた肉塊を手に取って投げつけた。

地面にバウンドする度に血吹雪を噴出する破片が見事!バルタザールの馬に命中した!

 

 

「うわあああああっがっ!ああああああ!!」

 

 

奇跡的に破片の直撃を免れた彼は馬から飛び出して地面に激突した。

全身に激痛が迸り息が一瞬止まり身を縮めて絶叫した!

 

 

「やだあ…生きるんだああ!」

 

 

それでもなんとか我慢して女型の巨人に向けて視線を移した。

興味を失ったのか“彼女”は見向きもせずに去っていった。

 

 

「ううっ助かったのか…う!?うわああああっ!!」

 

 

すぐに彼は巨人が放置した原因が分かった。

背後から別の巨人に鷲掴みされたせいである。

4本の指が凄まじい握力で内臓を圧迫させ口から内臓の繊維ごと吐血した。

 

 

「ごほっ!ごっほおおおお!」

 

 

両腕が塞がって内臓を圧迫されているバルタザールはそれでも抵抗を諦めなかった。

そんな努力など無意味と言わんばかりに別の巨人が目の前に映った。

彼は成す術がなく別の巨人に頭を齧られた。

獲物を先に手に入れた巨人は慌てて握り直して獲物の腹部を噛み千切った。

鮮血と共に小腸と胃が引き摺り出されて、ある程度伸びきった後、音を立てて千切れた。

 

 

「~~~~~!!」

 

 

初列十二・索敵班の班長テオ・バルタザール 享年27歳。

巨人たちによる踊り食いされるという最悪の末路となった。

極限まで延命するかのように齧られたせいで彼が絶命したのは3分後であった。

 

 

-----

 

 

「…変だ、まだ陣形が乱れている…何が起きているんだ…」

 

 

次列四・伝達班に所属するアルミンは困惑していた。

赤い煙弾が撃たれてしばらく経つのに未だに陣形が乱れていたからだ。

 

 

「あれ…もしかしたら…!」

 

 

彼は優れた頭脳で分析を行なった結果、一つの結論に辿り着いた。

そしてその結論を結びつける決定的な証拠が見えた。

 

 

「黒色の煙弾!間違いない!!」

 

 

基本的に巨人は近くの人間に向かって攻撃を行なってくる。

しかし、近くの人間を無視して遠くに居る人間を狙ってくる巨人がいる。

未だにその巨人の謎は解明されていないが、嗅覚や視覚で自分の好物を狙っている説が有力だ。

 

 

「奇行種だ!」

 

 

壁外調査において基本的に巨人との戦闘は行わない。

ただし、動きが読めない奇行種は例外であり、見つけ次第討伐しないといけない。

長距離索敵陣形の内部を搔き回されて進軍に支障が出るせいだ!

新兵に向けて教鞭をとっていたディータ・ネス班長は過去の発言を振り返った。

 

 

「畜生!やるしかねぇか!」

「シス!お前はうなじを狙え!俺は動きを止める!」

「了解!」

 

 

調査兵団の兵士は鞍上で立体機動に移れるように訓練されているし、馬も対応できる。

しかし、訓練と実戦は違う!

平地では立体機動を生かせない上に落馬する関係上、隊列から孤立するリスクがある。

更に巨人を討伐しても馬が戻ってくるとは限らない。

 

 

「俺が新兵に教えたことだ!俺ができなくてどうする!」

「こいつの先にはアルミンが…まだ新兵に逢わせるわけにはいかねぇ…!」

 

 

新兵のアルミンに奴をぶつけるつもりはないネス班長は2人で討伐する事にした。

『やらなくて後悔するより、やって後悔する』を座右の銘に掲げている彼は腹を括った。

馬からガスで飛び出して右足首にアンカーを射出した!

 

 

「うおっ!…まだまだ!!」

 

 

ブーツを地面の摩擦で摩耗させながら身体の重心を傾けて動きをコントロールする。

半円を描くように巨人の死角から移動するように心がけた。

ワイヤーを高速で巻き取る勢いで、彼はうなじを斬る要領で右足首を双剣で抉り取った!

アキレス腱を切られた巨人は凄まじい勢いで地面にめり込んだ。

 

 

「今だシス!」

「おう!」

 

 

ルーク・シスはガスを噴出し鞍上から飛び出して巨人のうなじにアンカーを射出した!

そして立ち上がる前にうなじを刈り取って奇行種を討伐した!

 

 

「やった…勝ったぞ!ネス班長…!」

 

 

アルミンはその様子を遠くから目撃して興奮で身が震えていた。

 

 

「イテテテ…」

「大丈夫ですか…?」

「いやそれより馬は…双方とも来てくれたようだな」

 

 

ネスの愛馬であるシャレット、シスの馬も無事に戻って来ていた。

調査兵団の兵士は、巨人討伐よりも馬に見放されて死ぬ方が多いとされる。

 

 

「よく来てくれた…さすが俺の愛馬!」

 

 

それだけ壁外では馬が重要であり、大切なパートナーである。

とにかく本隊から逸れずに済むと分かって彼らは安堵した。

 

 

「ん?」

 

 

しかし遠くで地鳴りがして振り返ると新手の巨人が地平線の彼方から出現した!

右翼の索敵班が担当している場所であり、またしても奇行種を取り逃がしたようだ。

 

 

「またかよ…右翼の索敵班は何をやってんだ…」

「索敵班を無視してこちらに向かって来ているとなるとあれも奇行種ですね…」

「しょうがねぇな…もう一回やるぞシス!」

「了解!」

 

 

壁外調査が終わったら右翼の索敵班を問い詰めて奢ってもらおう!

ネスとシスは顔を見合わせてその確認をとって再び襲撃に備えて展開した。

 

 

「チッ!14m級か!こいつはきついぞ…おい待て!早過ぎるぞ!!」

 

 

ディータ・ネスは人生で初めて全力疾走する巨人を目撃したと断言できる。

15m級の巨人が走る速度は、時速70kmを越えると巨人学で習った。

しかしこの奇行種はそれより早いスピードで追い付いてきた。

馬の速度が巨人を引き離せるので、巨人との戦闘を避けてきた故に脅威の事である。

 

 

「くそ!回避が間に合わねぇ…」

「ひええええ…」

 

 

彼らの懸念と裏腹に奇行種は興味が無い様に過ぎ去っていった。

損害は、衝撃によって馬が少し呼吸と足並みを乱したくらいだった。

しかし、その巨人が向かう先には新兵のアルミンが居た!

 

 

「シス!行かせるな!」

「はい!」

 

 

2人は巨人を新兵の元に行かせる気はなかった!

同時に鞍から飛び出してうなじにアンカーを突き刺して空中を舞った!

高速でワイヤーを巻き取っている分、衝突する危険性があったが2人は気にしなかった。

とにかく調査兵団の未来を担う新兵を護りたかった!

それだけで同時にうなじへと向かっていった。

 

 

「えっ!?」

 

 

そんな2人の熱い想いは、巨人によって文字通り潰された。

左肩に向かっていったシスは巨人の左手で受け止められて握り締められて潰された。

その血は風に煽られて花弁のように飛び散っていった。

 

 

「は?」

 

 

信じられない光景で思わず思考を停止させたネスは、それが命取りになった。

ワイヤーを掴まれて勢いよく地面に叩きつけられた。

衝撃で背中を270°以上曲げてもダメージを和らげることはできず肉塊になった。

彼が最後に思い浮かべていたのは、遺してしまう愛馬のシャレットの事だった。

 

 

「違うぞ…」

 

 

アルミンは二人の死に様をしかと目に焼き付けた。

 

 

「違う…奇行種じゃない…ネス班長!教えてください!」

「どうすればいいですか!奴は!通常種でも!奇行種でも!ありません!」

 

 

頼れるネス班長たちが戦死した現実を脳が拒否した!

アルミンは錯乱して既にこの世に居ない班長達に指示を求めた。

 

 

「『知性』がある!鎧の巨人や超大型巨人と!エレンと同じです!」

「巨人の身体を纏った人間です!誰が!?なんで!?どうして!?」

 

 

さきほどの奇行種の動きは普通ではなかった。

まるで人間が操作しているように兵士を殺した!

食べるのではなく、躊躇いもなく殺すのは間違いなく知性がある証拠である。

 

 

「やばいよ!?どうしよう!?死んじゃう!僕も死ぬ!!僕も殺される!!」

 

 

巨人の動きを熟知しているディータ・ネス班長とルーク・シスを葬った奇行種。

その正体は、右翼に展開していた索敵班を壊滅させた巨人!

巨人を呼び寄せて長距離索敵陣形を崩壊させた元凶!

 

 

「誰か!誰かあああ!!」

 

 

【女型の巨人】がアルミンに迫っていた。

まるで最初から彼に興味があったように追いかけていた。

向こうの方が早いせいで少しずつ距離を詰めており、もう少しで攻撃範囲内に入るだろう。

 

 

「誰かああああ!」

 

 

それでもアルミンは馬を走らせる。無駄だと内心で気付いていても走らせる!

1秒でも多く生き延びたいからだ!

 


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