進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~   作:Nera上等兵

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41話 調査兵団の精鋭 VS 壁登りの変異種

ハンジ・ゾエは、目の前の変異種を睨んだ!

巨人の右手には握り潰された死体があり、その腕の手首にはアンカーが突き刺さったままだった。

その先には別の兵士の死体が繋がったままであり原型を留めてなかった!

相手は6m級であるが、明らかに今までの巨人とは機敏性と残虐性が違う!

 

 

「分隊長!下がってください!!」

「これ以上、下がれるものか!!」

 

 

副官のモブリットの提言を無視する理由があった。

これ以上、奴に侵入されると避難民が襲われる可能性があったからだ!

変異種は、右手で握っていた死体を噛み千切ってみせた!

これをカラネス区の住民に見せるわけにはいかなかった!

ようやく巨人という恐怖から立ち直った民間人に味わせるわけにいかない!

 

 

「くっ!」

 

 

残った胴体を自分に向けて投擲するのを見切ったハンジは立体機動で回避した。

それを予想していたかの様に巨人は、口に含んでいた上半身を噴き出した!

高熱な唾液を纏って高速で突っ込んでくる肉塊を近隣の屋根にアンカーを刺して回避する!

動きを感知し巨人はその方向に跳んで民家に向かって突撃してきた!!

 

 

「ああ!手ごわいね!だからこいつら嫌いなんだよ!!」

 

 

激突する瞬間を見計らって、すぐ近くの民家の壁にアンカーを突き刺してワイヤーを巻き取る!

見事に民家に激突した変異種は、無防備にうなじを露出させ討伐してくれと言わんばかりである。

だが、それで倒せるなら苦労しない。

 

 

「アーベル!弱点はどこだい!?」

「両手の甲です!!」

 

 

変異種は白色の器官で皮膚を硬質化しており、そこを潰さない限り斬撃が通用しない。

今回の場合は、よりによってワイヤーすら切り裂く鋭利な爪を持つ両手の甲にあるというのだ。

 

 

「どうしますか!?」

「プランCで行く!」

 

 

まともにやり合うのは分が悪いので、一時的に拘束して器官を潰してうなじを斬る事にした。

荒々しい討伐が第一分隊の作戦ならば、第四分隊はテクニックで攻める!

ハンジは青色の信煙弾を撃ち、第四分隊に作戦を伝えた!

 

 

「おいチビ野郎!!こっちを見ろ!!」

 

 

物陰から飛び出したケイジの大声に反応して変異種がそちらを見る!

 

 

「そこ!!」

 

 

その隙にニファが狩猟用の散弾銃で発砲し、巨人の視覚を潰した!

散弾の欠片が眼球に食い込み二度と元の視界を取り戻す事は無いだろう。

 

 

「モブリット!」

「分かってます!!」

 

 

動きが止まった変異種に向けてモブリットとハンジが双剣を構えて飛び出した!

狙いは両手の甲にある白いの器官、そこさえ潰せばうなじを狙える!

すぐにその狙いは打ち砕かれた!

 

 

「あああ!?モブリット!伏せろ!!」

「うっ!?」

 

 

ハンジの警告に思わずモブリットはアンカーを外して地面に着地して伏せた!

その瞬間、真上を何かが高速で通り過ぎた!

もし、上官の警告がなければ『何か』に身体かワイヤーに衝突する所だった!

 

 

「何だ!?」

「死体だ!!」

 

 

モブリットがその正体を分析する前にケイジがその正体の名を叫んだ。

それは、右腕にアンカーを突き刺したまま戦死した兵士だった肉塊である。

厄介な付属品は、表面積…つまり接触判定を増やしており腕を動かすだけで武器になった。

 

 

「この野郎おおおお!」

 

 

屋根を使って上空に飛び出したアーベルは、6m級の変異種の首にアンカーを刺した!

その瞬間、巨人は飛び跳ねて身体を高速回転して民家に激突しようとした!

飛び跳ねた時点でアンカーを外したおかげで、巻き込まれずに済んだ彼であった。

…が、アンカーを突き刺すとカウンター攻撃をしてくるのは厄介である。

右手首に繋がったまま戦死した兵士は、このカウンター攻撃で死んだとすぐに分かった。

 

 

「チッ!」

「俺に任せろ!!死ねえええええ!!」

「お前だけ行かせるか!俺も行くぞ!!」

 

 

ケイジとアーベルは、大声をあげて巨人へと向かっていく。

目が見えない巨人は脅威ではないはずだった。

 

 

「うわっ!?」

 

 

何故か獲物の居場所を把握しているようで変異種は、胃液を目標に向かって吐き出した!

高熱の酸性の液体が彼らに向かって飛んでいく!!

 

 

「クソがっ!?」

「ゴーグルをしていなかったら失明してたな…」

 

 

ケイジは辛うじて回避できたもののアーベルは、液体の一部が顔に掛かった。

何滴かがゴーグルに付着するだけ済んで、なんとか失明を避けられた。

しかし、安心している暇は無かった。

失明しているはずの変異種が的確に位置を把握して飛び掛かってきたからだ!!

 

 

「分隊長!」

「くそ…こいつ!音で反応してるな!!」

 

 

ハンジは経験から音で反応していると即時に分析した。

誰よりも巨人に向き合ってきたからこそ、こいつを存在させるつもりはなかった!

作戦の練り直しを迫られた第四分隊は速やかに次のプランに移行した!

 

 

-----

 

 

「ゲルガー!!避けろ!!」

「クソがっ!!」

 

 

一方その頃、ミケ分隊長が率いる第一分隊は変異種の動きに翻弄されていた。

比較的小さめの巨人は素早く、中には馬の最高速度を凌駕する者も居る。

ただ、それだけならミケ分隊長も第一分隊も苦労しなかった!

 

 

「【爪】を回避しろ!!」 

 

 

ナナバの叫びを聴いているゲルガーは「見りゃあ分かる!!」と叫びたかった!

6m級の変異種の爪は鋭い!

その両手の爪が伸びるとは誰が予想したのだろうか。

それはワイヤーどころかスナップブレードですら容易く両断するほどに!

 

 

「そこのチビ!!こっちを見ろ!!」

 

 

ヘニングの叫び声に反応した変異種はそこに向けて爪で引っ掻いた!

彼は大声で叫んだ瞬間、屋根から飛び降りたが着地するまでに紙一重で爪が掠りそうになった!

 

 

「一秒足らずで爪が伸びるなんてひでぇよ…」

「巨人は初見殺し満載だが、こいつはいくら何でも酷いな…」

 

 

ヘニングのおかげで何とか安全地帯に離脱したゲルガーであったが動悸で呼吸が苦しかった。

ミケは、彼と変異種の距離が13m以上という事から爪は最低でも10mは伸ばせると分析した!

そして、うなじを斬る為に潰す必要がある白色の器官が両手の甲にある。

 

 

「こりゃあ、砲兵の援護が必要だな」

「できると思うか?」

「オイオイ、リーネ…少しくらい現実逃避させてくれよ…」

 

 

真面目なリーネの一言で、溜息をつきながら残酷な事実と向き合ったゲルガー。

正直言って、砲兵の援護がなければ勝ち目が薄い。

その砲兵は壁上で全滅しており、どう足掻いても肉弾戦でケリをつけるしかなかった。

まだ壁上に生き残っている兵士は居るが、とてもじゃないがそれどころではない。

こいつと同格の存在が逃げ場がない場所で襲撃してくる地獄絵図では…。

 

 

「だが諦めるな!まだ我々は生きている!」

 

 

幸いにもここは住宅街という事があり、立体機動にも身を隠すにも最適な場所である。

むしろ爪が伸びすぎるせいで、民家の壁や屋根に激突し、本領が発揮できていなかった。

小柄で、すばしっこいがスタミナはそれほどでもない様である。

故に爪を伸ばして体力が消耗しないやり方で獲物を狩ろうとしているのだろう。

 

 

「チッ!」

 

 

ミケの声に反応した変異種は、吐瀉物を口から勢いよく射出した!

思わず舌打ちをした彼は双剣のロックを外し、回避しながら刃を投げつけた!!

巨人は伸びきった右手の爪で刃を弾いたが民家の壁に激突して崩壊した瓦礫に呑まれた。

 

 

「突撃!!」

 

 

分隊長の号令に反応して4人が一斉攻撃に移った!

瓦礫によって右手が塞がったうえに得意な機動力が削がれている隙を見逃さなかった。

すぐにそれに対応した変異種は、振動させた大気が人体を吹っ飛ばすほどの咆哮をあげた!

 

 

「ああっ!?」

「ぐっ!?」

 

 

ナナバとゲルガーが振動の直撃を受けて怯んだ!

それを見逃さなかった巨人は左手を2人に向けて爪を伸ばそうとした!

 

 

「させるか!」

 

 

ミケは変異種の左腕の腋下を勢いよく双剣で斬り上げた!

衝撃で巨人の左腕が真上へと伸ばされ無意味に空気を搔いただけで終わった。

 

 

「このヘタレ!!こっちだ!!」

 

 

リーネが変異種の右脚の前で大声で叫んだ!

自分から囮になった意志を尊重するかのように、巨人はその場所を左手で薙ぎ払った!

それが自身の右脚を両断するとは知らずに。

巨人化能力者ではないからこそ、通用する戦法だった。

 

 

「ナナバ!!」

「分かってる!!」

 

 

何が起こったのかも理解できずに体勢が崩れたのを復帰しようとしている変異種。

その隙にナナバとゲルガーは息の合ったバディアクションで両手の甲を切り裂いた!!

 

 

「頼む…!」

「大丈夫だ!!行ける!!」

 

 

すかさずヘニングとリーネは長年培ったコンビネーションで巨人の喉を切り裂いた!

その衝撃で頭が垂れて、分かり易く剥き出しになったうなじをミケが回転斬りで抉り取る!

勢いよく飛び出した褐色の肉きれは、地面に落ちると同時に肉体も蒸気を発生させる。

巨体が蒸気を出しながら粉になり風に吹かれて霧散していく。

まるで、そこに巨人が存在しなかったように綺麗さっぱり痕跡を無くそうとしているようだった。

 

 

「なんとか倒せたな…」

「まだ何か隠し玉があったようです…早めに倒せてよかった…」

「なん…だと!?」

 

 

リーネの一言で、ミケは更に変異種が何かを隠していたのを知った。

爪を伸ばす以外にも何か特殊能力があったようだ。

速やかに情報伝達するべく彼女に訊き込みを試みようとした!

 

 

「ミケさん!ハンジ分隊長も討伐したようです!」

「そうか…では次にやるのは…」

 

 

カラネス区の壁を守護する守備隊を喰らい尽している変異種。

第一分隊が勝利できたのは、地の利がこちらにあったからこそ。

駐屯兵団の守備隊と同じ立場だったら、成す術なく殺されていた。

だからこそ、迅速に彼らを救出しなければならない!

ミケは壁上を自身の庭の様に駆け回る6m級の巨人を睨み、折れた刃を換装した。

 

 

-----

 

 

「うひょおおお!みてみてモブリット!あの巨人すげぇな!!」

「分隊長!ふざけてるとマジで死にますよ!」

 

 

音響弾で誘導していたら変異種は、両手の爪を伸ばしてヤケクソに周囲を切り払いを始めた!

まるで障害物を一掃して獲物の音をしっかり聞けるように念入りに破壊していった。

もし、ニファが散弾銃で目潰ししていなかったら即全滅していたと言わんばかりの大暴れである。

 

 

「だから殺す!!」

「分隊長?いきなりマジになるんですか…」

「こいつはこの世に存在しちゃいけない。速やかに抹殺する…それだけさ」

 

 

調査兵団の中で『恐ろしい人間』は誰かと問えば、リヴァイ兵士長と答える者が多いだろう。

だが、調査兵団のベテラン兵たちからすれば、一番怖いのはハンジであると返答する。

巨人を知る事で、人類は巨人を克服できるという信念を見つけたから今の人格になっただけだ。

本来のハンジは、気性が激しく熱情的で巨人に対して復讐心を燃やしていた兵士。

力なき民間人に絶望を与える巨人、特に変異種は最優先で抹殺する気満々である。

 

 

「ほら来た!!」

「あぶなっ!?」

 

 

変異種の右手首にアンカーを刺したまま戦死した死体が鎖鎌の分銅のように打ち付けてくる。

下手に近づけば、伸びた爪で切り裂かれるか、ワイヤーと死体に接触して動きを封じられる。

変異種はある程度、知能があるのか。

動き回る捕食対象の人間に何かをぶつければ動きが鈍るのを知っているようである。

少なくともハンジとモブリットの居る場所にワイヤーを叩きつける所を見る限りは…。

 

 

「おーい下手くそ!悔しかったら当ててみな!!」

 

 

ハンジは、ひたすら変異種を煽る!

理性と本能が交互に入れ替わるせいで自分がどういう状況か把握していない。

ただ必死に大声で変異種の気を惹いているのは確かだ。

少なくともこんな事をさせるのは自分以外ではフローラしかいないだろう。

フローラがそれを聴けば必死に抗議してくる顔を思い浮かべながらハンジは双剣を構えた!

 

 

「おっ!やる気になったね!それで良いよ…本気で!お前を!ぶっ殺せるからな!!」

 

 

ハンジの声だけを頼りに6m級の変異種は爪を振り回しながら突撃した!

その動きを第四分隊が予想していなかったわけなかった。

 

 

「今だ!」

「喰らえ!!」

 

 

建物の影に隠れていたケイジの許可で、アーベルは巨人に向けて音響弾を撃ちこんだ!

音だけを頼りに突っ込んできたのを知ってるからこそ、一番効果的に撃ちこんだ!

唐突な音に一瞬、変異種は足を止めて、どこで発生したか辺りを探っていた。

 

 

物音がした瞬間、巨人はその方向に飛び跳ねて民家に激突した。

アーベルは音響弾を撃ちこんだピストルを適当な民家の壁に投げつけただけである。

 

 

「撃て!」

「了解!」

 

 

ハンジとモブリットはバディアクションで捕獲銃の引き金を引き、網を撃ち出した!

以前、フローラが使用した捕獲銃の改良型であり、反動を大幅に抑えた最新鋭の装備だった。

立体機動装置と鞘を刃を装備している兵士を反動で吹っ飛ばす威力があった捕獲網!

普通の6m級の巨人なら一撃で捕獲する勢いと頑丈さ、そして速度を兼ね備えている。

それで捕獲できていたら変異種などに苦労しないのだが。

 

 

「火炎瓶を投擲しろ!」

 

 

もちろん、ハンジは捕獲する気はないので動きを一時的に止める程度でしか期待してなかった。

その網には油がべったりと附着しており、捕獲する気がないのが窺える。

捕獲網を解こうとしている変異種に第四分隊は火炎瓶をありったけ投擲した!

 

 

「どうだい?これが人類が持っている最大の武器だよ!」

 

 

ハンジの声に反応するように火は瞬く間に劫火になり巨人の全身を舐めるように炎で包み込んだ。

まるで今まで犯してきた罪を禊ぐように業火が巨人の肉を焼き尽くす!

 

 

「まだだ!」

 

 

ハンジは決して油断しなかった!

捕獲網を破壊した変異種が動き出そうとした瞬間、またしても音響弾を撃たれ怯んだ。

いくら硬質化しているとはいえ、元は人の皮膚と同じである。

炎を浴びれば火傷をするし、榴弾が直撃すれば鎧と化した皮膚でも破壊できる。

この火炎瓶のよる攻撃で両手は灼熱の焔で焼かれ火傷を越えて炭化した!

 

 

「とどめ!!」

 

 

ニファは自作した手榴弾を巨人のうなじに向けて投擲し、見事に命中した!

うなじを爆風で損傷した変異種は、地面に倒れ込み黒煙を出したまま炭となった。

 

 

「これでよし!」

「ミケ班はどうなった!?」

「どうやら同時に討伐した様です!!」

 

 

ケイジが討伐したのを確認し、アーベルが戦況を俯瞰し、モブリットが状況を報告する。

誰一人、無駄は無く歴戦の猛者の風格を漂わせていた。

この場にエレンが居たら、変態集団のリヴァイ班並みの精鋭っぷりに驚いただろう。

伊達に壁外任務で生き残っていないのだ!

 

 

「分隊長!次はどうしますか?」

「先に壁上の変異種を叩く!」

「了解しました」

 

 

とにかく変異種2体の討伐が終わり、残りは街中に向かった変異種。

そして明らかに不利な状況下で必死に応戦しているカラネス区守備隊を喰らう変異種の2体。

街中の巨人は、フローラに討伐されるのを賭け、ひとまず守備隊の援護に向かうつもりだった。

 

 

「ハンジ!無事か!」

「ミケも無事のようだね!」

 

 

ここで第一分隊と第四分隊の精鋭が合流した!

意外と近くで交戦していたようで、変異種が合流するという最悪の事態になりかねなかった。

ただ、変異種2体の討伐が終わった以上、無用な心配となった。

 

 

「ハンジ!変異種の1体が街に向かったようだ!」

「あーもう!どっちがそいつを討伐するんだい?」

 

 

どちらかが街中の巨人、壁上の巨人を対応するか協議する為にハンジは口を開こうとした。

 

 

「うおっ!?」

「なんだ!?」

「ぐあっ!?」

 

 

突然、街中から大きな咆哮が聴こえてきた。

まるで巨大樹の森で悲鳴をあげた女型の巨人のような叫び声であった。

すぐに止んで、何かが街中で発生しているのを嫌というほど実感するほどである。

 

 

「逃げろおおおお!固定砲が落ちて来るぞ!!」

 

 

ゲルガーの警告で調査兵団の精鋭たちが慌てて後退した!

その瞬間、彼らが居た場所に壁上固定砲が地面に激突した!

50m壁の上に居た変異種が投げつけたものであった。

その巨人は、街中で放たれた咆哮に誘導されるように器用に壁を降りて全速力で向かっていった。

 

 

「何故俺たちを無視した!?」

「女型の巨人と同じ咆哮です!!巨人を呼び寄せたのでは!?」

 

 

ミケ分隊長の独り言に、すかさずリーネが返答した。

巨大樹の森で拘束された女型の巨人が咆哮をした後、巨人の大群が群がってきた。

その時の巨人は、奇行種のように目の前の人間を無視をした。

まるで女型の巨人だけを狙うように。

今回も同じ事が起こったと!

 

 

「つまり、なんだ!あいつらは仲間を呼ぶために叫んでいたというのか!?」

 

 

あの場に居たゲルガーはその恐ろしさを身をもって知っている。

巨人の肉の波に呑まれ、何名かが苦悶の表情で死んでいったのを目撃していた。

それがカラネス区に押し寄せてくると考えるだけで思考が停止するほどだった。

 

 

「多分、そうじゃないか?じゃなければ巨人が編成して襲撃するわけない」

 

 

変異種の不可解な行動とリーネの意見を踏まえてケイジなりに特性をまとめてみた。

その意見を肯定するハンジ。

 

 

「という事は…さらに新手が来るという事か…?」

 

 

ミケ分隊長の一言で全員が最悪の事態を思い浮かべた。

 

 

「ハンジ分隊長!新手が来ました!!」

 

 

モブリットの報告と同時に上から何かが降ってきた。

それは、まるで量産化された兵器のようにさきほど討伐した巨人とそっくりの変異種であった。

褐色の肌に6m級の巨人が両手の爪を伸ばしてハンジ班を見据えて口を開いていた。

飢餓状態の狼より質が悪い巨人の悪意が嫌ほど感じられる。

 

 

「どうする?」

「どうするって?早急にこいつを討伐して、街に行った変異種を討伐するだけだ!!」

 

 

ミケ分隊長の確認にハンジ分隊長が的確な指示を出した。

放置すればするほど、新手の巨人が壁内に侵入してくる。

その事実は、脅威であるどころか、冗談抜きで人類が滅亡しかねない。

それが巨人のせいだろうが内戦の結果だろうが、そんな事はどうでもいい!

 

 

「行くぞ!!」

「ハッ!」

 

 

臆さずにヘニングとミケ分隊長は、先陣を切って変異種の元へと走り出した!

振り下ろしてきた右手の引っ掻き攻撃を回避した彼らは民家にアンカーを刺して後方にまわった!

 

 

「ニファ…目潰しできるか?」

「モブリット副長!問題ありません」

 

 

ニファとモブリットは、再び変異種の光を失わせようと画策した!

 

 

「あいつらの援護をするよ!」

「やれやれ人使いが荒い…」

「酒を奢ってやるから来い!」

「よーし、ナナバ!期待していいよな!?頑張っちゃうぞ!!」

 

 

ナナバとゲルガーは軽口を叩きながらニファたちの援護にまわった!

 

 

「俺たちは?」

「もちろん、壁上固定砲で援護する!ついでに生存者が居たら手当するのが優先だがな…」

「私も手伝うぞ!!」

 

アーベルとケイジは、リーネを加えて50mの壁へと目指す!

ハンジ班とミケ班の混成精鋭班は、新たに壁内へ襲撃してきた変異種に対応した!

 

 

「くそっ…巨人め…」

 

 

やるせない気持ちを抱えながらハンジはスナップブレードを構えた!

例えここで討伐しても、このままだとウォール・ローゼが陥落するのも時間の問題である。

巨人が50mの壁を乗り越えてくるという事実は…内地ですら安全では無いと示す証拠だった。

偶然にも自分たちが居たから、被害をなんとか最低限に抑えられた。

では、居なかったら一体、どうなっていたのか。

 

 

「ははは、怖いね…」

 

 

壁の外に初めて出た時の恐怖と絶望感、それを久しぶりに感じてハンジは身震いした。

それを武者震いに変えてマッドサイエンティストの仮面を被って、変異種へと向かっていった。

自分と同じ経験を他者に味わせないように…。

なにより死んでいった者たちを無意味な死にしないように!

 

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