進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~   作:Nera上等兵

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84話 鎧の巨人 VS 獣の巨人

 

ウォール・ローゼに巨人が出現してちょうど1週間が経つ。

ウォール・シーナに貯蓄した食料が尽きようとしていた頃、王政の議会から命令を下された。

全ての兵団は、壁内の安全を確保すると共に壁外の巨人を掃討し、壁内人類を勇気づけろと!

ザックレー総統は、無茶な命令を受けて作戦を立案し、トロスト区でさっそく作戦を開始させた。

 

 

「正気で言ってるのか?」

 

 

一方その頃、ウォール・マリアに巨人を侵入した元凶がシガンシナ区の正門に佇んでいた。

その犯人の1人であるライナー・ブラウンは、戦士長にアニの奪還を優先する様に懇願していた。

 

 

「もちろんです!ユトピア区で囚われた彼女を奪還するのが座標奪還に繋がると思ってます!」

 

 

ベルトルトからアニがユトピア区に居ると知ったライナーは必ず彼女を助けると誓った!

ずっと迷惑を掛けてきたのを実感しており、せめて彼女を救出しないと自分を許さなかった。

ジークは、その感情自体がくだらない物であり、軍人である以上、覚悟していると思っている。

一見、非情であるが、よく考えれば自分たちを誘き寄せる罠であるのは明白であった。

 

 

「…島の悪魔と仲良くし過ぎて頭がおかしくなったか?」

「返す言葉もありません…俺は兵士として演じていく内に狂って、洗脳されかけました…」

「ならば、戦士として使命を全力で全うしろ!」

「その使命を達成するには、女型の巨人の力が絶対に必要です!!」

 

 

戦士長の宥める言葉を聞き入れる事ができず、ライナーはアニの奪還を懇願していた。

壁内で習った『心臓を捧げる』敬礼をしてジークに考えを改めるまで動くつもりは無かった。

 

 

「ライナー!その話はアルミンが言ってたんだ!実際に拷問されていたなら話すわけがないよ!」

 

 

アニの現状を報告したベルトルト自体がアルミンの話を真面目に受けていなかった。

何故なら、アルミンの性格から考えれば、彼女が拷問されるなど黙っているわけがないからだ。

エレンを奪還する為に口から出任せを言って自分を動揺させる策だと思っている。

現にエルヴィン団長が死角から飛び出してきて斬り掛かってきたのを覚えていた。

 

 

「ベルトルトは、そう言ってるが?ライナー、お前は疲れているんだ」

「うっ!?」

「どうした?」

 

 

ライナーは『疲れているんだ』の言葉に反応し、無意識で壁内兵士の敬礼をした事に気付いた。

戦士と兵士が融合して正気じゃなかった時、エレンを同行を誘った時に返答された言葉であった。

あの時、どうすればよかったのか分からなかったが、監禁生活が続くと思って行動に移した。

その結果、顎の巨人継承者を壁内勢力から奪還したが、振り出しに戻ってしまった。

否、アニが兵団に囚われている以上、完全に敗北していた。

 

 

「戦士長!戦士アニの奪還を目指すべきです!あいつが居なければ始祖奪還は不可能です!」

「アニちゃんは大事だが本当にユトピア区とやらに居るとは思えんぞ」

 

 

ジーク戦士長は、ライナーの妄言に付き合っている気は無かった。

建前では、始祖奪還を優先しているが実情は、さっさとこの島から脱出したかった。

エルディアの悪魔に尊厳を破壊されて命ガラガラ敵前逃亡した彼は逃げたかった。

子供の様にホームシックになっており、とにかく家族に逢いたかった!!

 

 

「分かりました!では、俺だけでアニ・レオンハートを奪還しに行きます!!」

「正気か!?任務を放棄して私情で行動するのか!?」

「俺はあいつに贖罪しないといけないんだ!!あいつをこれ以上孤独にはさせたくないんだ!!」

 

 

ライナーは戦士長の制止を振り切って立体機動で壁を飛び降りようとした。

ベルトルトも彼の行動を無視できずに同行するつもりだった。

 

 

「よし!お前の気持ちは良く分かった!」

「戦士長?」

「じゃあ、男らしく決闘して決めようじゃないか!!恨みっこ無しだぜ?」

「受けて立ちます!!必ず戦士長を越えてアニを奪還させる!!」

 

 

ジークは、図体が大きくなったライナーが調子に乗ってると感じた。

戦士候補生の中で最下位(ドベ)だった奴が戦士長の意見に口を出してくる時点で狂っていた。

戦士長の命令は、上層部の意図や命令に反しない限り戦士は従うしきたりになっている。

彼が狂っていて歯向かおうとしているのなら、【痛み】をもって躾けなければならない。

 

 

「ライナー?戦士長?本気でやる気なのか!?」

「やはり男というのは、拳で決着させなきゃいけない時がある。全く嫌になるけどね」

「戦士長の仰る通りだ!ベルトルトは判定を頼む」

 

 

残されたベルトルトは、2人の行動を止める事が出来ずにただ見送るしかできなかった。

決闘の舞台は、現在待機しているシガンシナ区、ここならいくら暴れても良い。

巨人化能力者同士の決闘という過去にもあまり例がない事が起ころうとしていた。

 

 

「条件はどうしましょうか?」

「そりゃあ、男らしく一騎打ちをして戦闘不能になったら負けで良いだろう」

「戦闘不能なんですか?」

「だって、徹底的に敗北させないとお前は納得できんだろう?」

「仰る通りです」

 

 

建前では大幅にライナーへ譲歩したように見えるジーク。

実際は、エルディアの悪魔に自身がやられた事をやり返す感じでいた。

徹底的に敗北させて尊厳を破壊されて無力化させるという事である。

 

 

「ベルトルト!お前が合図の鐘を鳴らせ!」

「で、でもそんな事したら敵勢力に気付かれないの!?」

「奴らは壁内の巨人で手一杯さ。こんな所まで来るわけないだろう」

 

 

上官に言われて納得しようとしたベルトルトであったが1つだけ心当たりがある。

異様に聴覚が良いフローラが気付いて単身突撃してこないかと…。

もちろん、巨人化能力者が3名も居るのだから負けるわけが無いが…。

彼女なら殲滅できると思ってしまうほどの感覚があった。

 

 

『……もう良いかな?』

 

 

塔にある鐘の前に待機するベルトルトに向かって2人は手を振った。

それを見下ろして確認した彼は、覚悟を決めて鐘に向き合った。

 

 

『鐘か…』

 

 

正門の付近にある建物にある鐘は地獄を知らせる用途に使用されない。

基本的に壁外に出撃する調査兵団を見送ったり帰還を知らせる用途で利用される。

前回に聴いたのは、第57回壁外調査でカラネス区に帰還した時である。

 

 

「誰かの無事を願って鳴らす物が危害を加えるきっかけになんてね…」

 

 

前もってハンドルを回して綱を巻き取って鐘をゆっくりと傾けて固定してある。

あとは、留め具を外してハンドルを回せば、鐘が揺れて音色を届ける仕組みであった。

彼がハンドルを回した瞬間、音色が静かだったシガンシナ区に鳴り響いて騒乱の幕開けとなった。

 

 

-----

 

 

『勝てるのか?あの戦士長に……でも勝てたらアニを救いに行ける!』

 

 

ライナー・ブラウンは、自身の方針に従って行動させる為に戦士長と一騎打ちを選んだ。

鎧の巨人と獣の巨人、双方もマーレに必要不可欠の巨人の情け無用の戦いが始まろうとしている。

そしてベルトルトが鳴らした鐘の音を聴いて双方とも巨人化、大通りで向き合った。

 

 

『まず小手調べと行きますか!』

 

 

タックルして来る鎧の巨人を見たジークは近くにあった瓦礫を手に取って顔面に投げつけた。

大きな衝撃音と共に瓦礫がぶつかるがォール・ローゼに巨人が出現してちょうど1週間が経つ。

ウォール・シーナに貯蓄した食料が尽きようとしていた頃、王政の議会から命令を下された。

全ての兵団は、壁内の安全を確保すると共に壁外の巨人を掃討し、壁内人類を勇気づけろと!

ザックレー総統は、無茶な命令を受けて作戦を立案し、トロスト区でさっそく作戦を開始させた。

 

 

「正気で言ってるのか?」

 

 

一方その頃、ウォール・マリアに巨人を侵入した元凶がシガンシナ区の正門に佇んでいた。

その犯人の1人であるライナー・ブラウンは、戦士長にアニの奪還を優先する様に懇願していた。

 

 

「もちろんです!ユトピア区で囚われた彼女を奪還するのが座標奪還に繋がると思ってます!」

 

 

ベルトルトからアニがユトピア区に居ると知ったライナーは必ず彼女を助けると誓った!

ずっと迷惑を掛けてきたのを実感しており、せめて彼女を救出しないと自分を許さなかった。

ジークは、その感情自体がくだらない物であり、軍人である以上、覚悟していると思っている。

一見、非情であるが、よく考えれば自分たちを誘き寄せる罠であるのは明白であった。

 

 

「…島の悪魔と仲良くし過ぎて頭がおかしくなったか?」

「返す言葉もありません…俺は兵士として演じていく内に狂って、洗脳されかけました…」

「ならば、戦士として使命を全力で全うしろ!」

「その使命を達成するには、女型の巨人の力が絶対に必要です!!」

 

 

戦士長の宥める言葉を聞き入れる事ができず、ライナーはアニの奪還を懇願していた。

壁内で習った『心臓を捧げる』敬礼をしてジークに考えを改めるまで動くつもりは無かった。

 

 

「ライナー!その話はアルミンが言ってたんだ!実際に拷問されていたなら話すわけがないよ!」

 

 

アニの現状を報告したベルトルト自体がアルミンの話を真面目に受けていなかった。

何故なら、アルミンの性格から考えれば、彼女が拷問されるなど黙っているわけがないからだ。

エレンを奪還する為に口から出任せを言って自分を動揺させる策だと思っている。

現にエルヴィン団長が死角から飛び出してきて斬り掛かってきたのを覚えていた。

 

 

「ベルトルトは、そう言ってるが?ライナー、お前は疲れているんだ」

「うっ!?」

「どうした?」

 

 

ライナーは『疲れているんだ』の言葉に反応し、無意識で壁内兵士の敬礼をした事に気付いた。

戦士と兵士が融合して正気じゃなかった時、エレンを同行を誘った時に返答された言葉であった。

あの時、どうすればよかったのか分からなかったが、監禁生活が続くと思って行動に移した。

その結果、顎の巨人継承者を壁内勢力から奪還したが、振り出しに戻ってしまった。

否、アニが兵団に囚われている以上、完全に敗北していた。

 

 

「戦士長!戦士アニの奪還を目指すべきです!あいつが居なければ始祖奪還は不可能です!」

「アニちゃんは大事だが本当にユトピア区とやらに居るとは思えんぞ」

 

 

ジーク戦士長は、ライナーの妄言に付き合っている気は無かった。

建前では、始祖奪還を優先しているが実情は、さっさとこの島から脱出したかった。

エルディアの悪魔に尊厳を破壊されて命ガラガラ敵前逃亡した彼は逃げたかった。

子供の様にホームシックになっており、とにかく家族に逢いたかった!!

 

 

「分かりました!では、俺だけでアニ・レオンハートを奪還しに行きます!!」

「正気か!?任務を放棄して私情で行動するのか!?」

「俺はあいつに贖罪しないといけないんだ!!あいつをこれ以上孤独にはさせたくないんだ!!」

 

 

ライナーは戦士長の制止を振り切って立体機動で壁を飛び降りようとした。

ベルトルトも彼の行動を無視できずに同行するつもりだった。

 

 

「よし!お前の気持ちは良く分かった!」

「戦士長?」

「じゃあ、男らしく決闘して決めようじゃないか!!恨みっこ無しだぜ?」

「受けて立ちます!!必ず戦士長を越えてアニを奪還させる!!」

 

 

ジークは、図体が大きくなったライナーが調子に乗ってると感じた。

戦士候補生の中で最下位(ドベ)だった奴が戦士長の意見に口を出してくる時点で狂っていた。

戦士長の命令は、上層部の意図や命令に反しない限り戦士は従うしきたりになっている。

彼が狂っていて歯向かおうとしているのなら、【痛み】をもって躾けなければならない。

 

 

「ライナー?戦士長?本気でやる気なのか!?」

「やはり男というのは、拳で決着させなきゃいけない時がある。全く嫌になるけどね」

「戦士長の仰る通りだ!ベルトルトは判定を頼む」

 

 

残されたベルトルトは、2人の行動を止める事が出来ずにただ見送るしかできなかった。

決闘の舞台は、現在待機しているシガンシナ区、ここならいくら暴れても良い。

巨人化能力者同士の決闘という過去にもあまり例がない事が起ころうとしていた。

 

 

「条件はどうしましょうか?」

「そりゃあ、男らしく一騎打ちをして戦闘不能になったら負けで良いだろう」

「戦闘不能なんですか?」

「だって、徹底的に敗北させないとお前は納得できんだろう?」

「仰る通りです」

 

 

建前では大幅にライナーへ譲歩したように見えるジーク。

実際は、エルディアの悪魔に自身がやられた事をやり返す感じでいた。

徹底的に敗北させて尊厳を破壊されて無力化させるという事である。

 

 

「ベルトルト!お前が合図の鐘を鳴らせ!」

「で、でもそんな事したら敵勢力に気付かれないの!?」

「奴らは壁内の巨人で手一杯さ。こんな所まで来るわけないだろう」

 

 

上官に言われて納得しようとしたベルトルトであったが1つだけ心当たりがある。

異様に聴覚が良いフローラが気付いて単身突撃してこないかと…。

もちろん、巨人化能力者が3名も居るのだから負けるわけが無いが…。

彼女なら殲滅できると思ってしまうほどの感覚があった。

 

 

『……もう良いかな?』

 

 

塔にある鐘の前に待機するベルトルトに向かって2人は手を振った。

それを見下ろして確認した彼は、覚悟を決めて鐘に向き合った。

 

 

『鐘か…』

 

 

正門の付近にある建物にある鐘は地獄を知らせる用途に使用されない。

基本的に壁外に出撃する調査兵団を見送ったり帰還を知らせる用途で利用される。

前回に聴いたのは、第57回壁外調査でカラネス区に帰還した時である。

 

 

「誰かの無事を願って鳴らす物が危害を加えるきっかけになんてね…」

 

 

前もってハンドルを回して綱を巻き取って鐘をゆっくりと傾けて固定してある。

あとは、留め具を外してハンドルを回せば、鐘が揺れて音色を届ける仕組みであった。

彼がハンドルを回した瞬間、音色が静かだったシガンシナ区に鳴り響いて騒乱の幕開けとなった。

 

 

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『勝てるのか?あの戦士長に……でも勝てたらアニを救いに行ける!』

 

 

ライナー・ブラウンは、自身の方針に従って行動させる為に戦士長と一騎打ちを選んだ。

鎧の巨人と獣の巨人、双方もマーレに必要不可欠の巨人の情け無用の戦いが始まろうとしている。

そしてベルトルトが鳴らした鐘の音を聴いて双方とも巨人化、大通りで向き合った。

 

 

『まず小手調べと行きますか!』

 

 

タックルして来る鎧の巨人を見たジークは近くにあった瓦礫を手に取って顔面に投げつけた。

大きな衝撃音と共に瓦礫がぶつかるが、無駄に硬い鉄仮面のおかげで何ともなさそうであった。

とりあえずひるまなかった彼を見て、最下位(ドベ)だった時から成長したと思い、タックルを回避した。

 

 

『かわされた!?ぐあああああああああっ!?』

 

 

近くにあった民家に激突した鎧の巨人は、背後からうなじを直接殴られて吹っ飛ばされた。

獣の巨人は異様に手が長くリーチ差によって圧倒的にライナーが不利だった。

それ以外にも拳を硬質化させて遠心力で殴りつけるだけで立派な鈍器になるという事でもある。

 

 

「ああ、本当に始まってしまったか…頼んだよライナー」

 

 

ベルトルトは安全な場所でライナーを応援する事しかできなかった。

自分もアニ奪還を懇願したが私情よりも任務に優先してしまう彼はそこまで踏み込めなかった。

そのせいで、アニの救出に関してライナーに全てを押し付けてしまう形となってしまった。

彼は情けない様に見えるが、私情で爆破しまくりの人材を頭マーレでも選抜する訳がなかった。

よって、マーレ本国からすれば、彼は正常であり、継承している巨人の相性は抜群である。

 

 

『クッ…さすがジーク戦士長……強い!!』

 

 

立ち上がった鎧の巨人であったが、目の前に瓦礫が飛んできてもう一度態勢を崩された。

その隙に獣の巨人は更に後方に下がって瓦礫を集めて投擲の準備をする。

 

 

『ホント、良い的だな!外す方が恥ずかしいな!』

 

 

ジークからすれば、鎧の巨人の特性を全て知っているので肉弾戦などやるわけなかった。

要するに勝てばいいのだから、こうやってハメ技を駆使して一方的に嬲り倒すだけである。

鎧の巨人は、人体で例えると爪が体表の全身を覆っているだけでそこまで厚くない。

故に皮膚は無敵では無く、音速を越えた瓦礫をぶつけ続ければ装甲は勝手に剥がれていった。

 

 

『立ってるのがやっとのようだな?よし、一押しってところか?』

 

 

何度でも立ち上がる鎧の巨人の顔面に向かって硬質化パンチをぶつけてジークは離脱していく。

ヒットアンドアウェイであるが、卑怯では無いし、動きが鈍いあいつが悪い。

鎧の巨人も踏ん張って殴り掛かろうとするが、リーチ差で一方的に殴られた。

特定の部位を切り離してロケットパンチもできるが、歪んだ装甲のせいで射出できなかった。

 

 

『ふん、他愛もない。だから作文力で戦士になったお前の行動は無謀だったんだ!』

 

 

視界が見にくいので眼鏡が曇っていると思ったジークはレンズを拭こうとするが無理だった。

巨人化による無駄な時間と労力、そしてなにより虚しさを感じて溜息を吐くしかなかった。

この場に居るのは、審判のベルトルトと倒れ込んだ鎧の巨人、そして頭を手で掻きたい自分だ。

 

 

『俺は…俺は、アニに誓ったんだ……みんなで故郷に帰ろうって……』

 

 

ライナー・ブラウンは糞野郎である。

不利になると、それっぽい事を言ってまくし立てて、相手の思考をさせる暇もなく畳みかける。

そういう時は、急を要する事が多く、仲間はそれを受け入れて無駄に苦労するしかなかった。

特にアニ・レオンハートは、中途半端に優秀だったので酷使し過ぎてしまった。

 

 

-----

 

 

『王都に忍び込んで情報を探って来てくれ』

『何で私が!?』

『お前しか一晩で兵舎と王都を往復できないんだよ!戦士なら使命を果たせ!!』

 

 

座標の情報を掴むためにアニに諜報をさせて、ライナーたちは兵士ごっこに興じた。

昼間は訓練、夜は諜報という激務に彼女はいろんな意味で追い詰められた。

 

 

『教官の頭突きは嫌か?』

 

 

事情を分かっている癖に「兵士の訓練をサボるな」と嫌味を言うライナー。

わざわざ「ここに来た時を思い出して真面目にやるんだな」という煽り付きである。

その時からか、アニがライナーを殺そうと計画をし始めたのは――。

 

 

『もう駄目…宿題が、課題が…できない』

『アニ、疲れすぎだよ!私がやっとくから少しでも寝ておきなよ!』

『ミーナ、ありがとう。あとは、フローラに頼んで…』

 

 

寝不足で鬱になったアニは、自害も考えたが友人のミーナに宿題を任せて睡眠時間を確保した。

それでも寝たい時は、フローラに頼み込んで授業を潰してもらって貴重な自習時間で休んだ。

自分のせいで彼女が教官に叱られてしまうが、毎回、睡眠時間を作ってくれる彼女に感謝した。

糞野郎共はミーナに介入を牽制してもらって、堂々と昼寝するのが数少ない安らぎだった。

他人事で事情を知らないライナーは、アニがサボって寝ている様にしか見えなかった。

 

 

『あんたらの顔なんて見たくない!!二度と話しかけるな!!』

 

 

ついにライナーの横暴な態度と、ベルトルトのストーカー行為に激高したアニは彼らと絶交した!

戦士としての絆は、皮一枚で繋がっている状態であり、彼女は親友以外の人間関係を全て断った。

ようやく過ちに気付いた彼らは、フローラを通して彼女と交渉すると共に仲直りを模索した。

フローラの自由時間を犠牲にして、自分のせいでアニが追い詰められたと知ったライナー。

何とか3人で仲直りして以降も、猜疑心で彼女を警戒しており、裏切りを恐れていた。

 

 

『アニ!!マルコの立体機動装置を外せ!!』

 

 

自分のミスでマルコに秘密を知られてしまい近くに居たアニに人殺しを手伝わせた。

泣きながら拒否する彼女を弱点である父の事と忠誠を問い、無理やり共犯者にさせた。

こうすることで壁内人類に味方せずに戦士として意識されるのが目的だった。

 

 

-----

 

 

『あいつを連れて故郷に帰る!それがマルセルの代わり…!いやリーダーとしての役目だ!!』

 

 

意識が飛びかけたライナーは、気力のみで復帰して全身に力を込めた。

身体は痛み、口内は乾いて、視界は歪んで、耳鳴りをしている。

だがそれは彼女が味わった事を考えれば些細な事だった。

 

 

〈よし、勝ったぞ。アニちゃんの事は…マジかよ〉

 

 

ジークが勝利宣言をしようとしたら顔の装甲が剥がれた鎧の巨人が立ち上がった。

ガキの喧嘩で負けを認められない弱い奴がいじめっ子に負傷してもなお、立ち向かう構図である。

実際は、命令違反のガキが私情を諦めきれず無駄に足掻いているだけの馬鹿な行為だった。

 

 

〈ははっ!勝負はまだこれからだ!ってか?そう来なくっちゃな、ライナー〉

 

 

ボロボロのライナー相手にマウントを取っているジーク・イェーガー。

実際は、【エルディアの悪魔】に一方的にボコられて名声も精神も地の底であった。

目が覚めた瞬間、全裸で逃亡して、ピークに抱き着いて大便と小便を漏らして泣きついた。

それほど追い詰められた彼からすれば、ライナーは精神を回復させるサンドバッグだった。

 

 

〈延長戦と行こうじゃないか!サヨナラゲームで徹底的に負けを認めさせてやるよ!!〉

 

 

獣の巨人は、嬉しそうに腕を振ってチャレンジャーである鎧の巨人を待った。

もちろん、両手には瓦礫を握り締めており、一方的に投擲する気満々である。

 

 

「ライナーには意識があるかもわからないけど、戦う意思は、まだ残ってる」

 

 

ベルトルトは、既にライナーは意識が無いと感じていた。

あれだけ顔面に衝撃を受けたら能力者の脳も揺さぶる事になるのできついのが分かる。

更に足元がおぼついているのも拍車にかけた。

 

 

〈さて、目指すは完全試合!無傷でやっちまうよ!!〉

「ぐおおおおおおおおおおおおっ!!」

 

 

獣の巨人が投石しようとすると巨人の叫び声があがった。

位置的にはライナーでは無いし、ベルトルトが横槍を入れてきたわけでもなかった。

 

 

〈……何だ?まさか鐘の音のせいで巨人が迷い込んできたか?〉

 

 

フローラを含めた壁内人類は、獣の巨人は無垢の巨人の長だと勘違いしている。

実際は、ジークの脊髄液で巨人になったものだけ大雑把な指示を出せるだけである。

他の脊髄液で巨人化した者は、完全に敵であるので獣の巨人からすれば厄介な事だった。

配下の巨人でシガンシナ区に居た無垢の巨人を追い払ったつもりだったが、まだ居るようである。

 

 

〈オイオイ、戦士と戦士の決闘を邪魔するなんて、無粋もいいとこだぜ?〉

 

 

声がした方向には、褐色の肌をした14m級の巨人が居た。

あれは、女型の巨人をベースにした【異形の巨人】であり、通常種より厄介な巨人だった。

 

 

『女型で、器官は【赤】、プロトタイプか!ライナーは…まだ来ないし先に潰すか!!』

 

 

巨人化能力者は、別の巨人化能力者の脊髄液を摂取すると、その能力を手に入れる事がある。

それを無垢の巨人に転用しようとして誕生したのが、異形の巨人である。

エルディア帝国時代から運用されていたが、意外にも作られた個体は少ない。

1人の子供に複数の精神を付与された様なものであり、始祖の巨人ですら操作不能だったからだ。

後にマーレでも製造されたが、『女型』は初期型であり、運動神経がある巨人に過ぎない。

 

 

〈なんだよ?アニちゃんみたいに構えちゃってさ!……むかつくんだよ!!〉

 

 

人類を捕食するしか行動しないはずの異形の巨人は格闘の構えをした。

それを見たジークは人間ごっこをする女型に向けて怒り任せに投石を行なった!

 

 

〈ああ、異形の巨人もどきにマジになっちまったよ!〉

 

 

両足ごと器官を潰して這い蹲った女型タイプの巨人を見下ろして熱が冷めた。

残ったのは、哀れなエルディア人の末路である。

こんな奴にムキになってもしょうがないだろう。

 

 

〈さっさと楽にしてやるか…〉

「ああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」

〈うるせぇ!?〉

 

 

憐れんだジークがうなじを潰そうとした瞬間、異形の巨人は叫んだ!!

その巨人は、うなじを潰しても力尽きるまで叫び続けた!

 

 

『クソが…だから情を……ライナーはそこか…』

 

 

両耳をやられたジークは、耳鳴りが発生したと同時にバランス感覚を失いつつあった。

そして待っていた様に鎧の巨人がふらつきながらも寄ってきた。

 

 

〈邪魔者は片付けたな…では続きをしようじゃないか〉

 

 

あくまで嬲るのは、下級生物が良いのであって、無垢を相手にするのは空しいだけである。

だからこそ、ドベだったライナーが成長したのを叩き潰すの達成感は良い物だ。

他者の努力を踏み躙るほど優越感に浸れる物はないからだ。

 

 

〈なんだよ……まだ馬鹿正直に突っ込んでくるのか。ちょっとは学習しろよ…〉

 

 

殴り掛かろうと突っ込んできた鎧の巨人に呆れたジーク。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と誰かは語ったそうだが、責めはできない。

誰だって成功した経験を活かそうとするし、間違った行動など自分で判断できるわけがない。

ただ、無謀と分かって突っ込んでくる蛮勇は見てられなかった。

 

 

〈お前らサボってたんじゃないか?威勢の良いだけのガキになるとは失望したぜ…〉

 

 

思いっきり顔面を殴り倒して鎧の巨人は仰向けに倒れた。

案外呆気なく倒れたが、意識が朦朧してるのに意地で向かってきたのを考えれば良い方だろう。

少なくともジークには、多少の同情はあった。

 

 

〈ふぅ、片付いた。これでどうだ?……全身から蒸気を噴き出してるし俺の勝ちか!〉

 

 

傷口を回復する程度ではない蒸気の量を見てジークは勝利を確信した。

客観的に見ても彼が巨人化を維持できないのは明白であった。

 

 

「ライナー!?」

 

 

安全地帯で見守っていたベルトルトは、鎧の巨人に近づいた。

いくら一騎打ちしたとはいえ大事な戦士が死んでしまっては意味が無い。

獣の巨人は彼の救出作業を見守るつもりだった。

さすがにここから立ち上がって攻撃するのは、男として失格なのは奴にも理解してると思ってる。

 

 

「あれ?」

〈おい、どうしたんだ?早く負傷したライナーを救出してやれよ〉

「ライナーがうなじに居ないんです!!」

〈はぁ!?〉

 

 

ベルトルトが目撃したのは、もぬけの殻であり、うなじには誰も居なかった。

巨人の空骸には、文字通り巨人の死骸でしかなく、本体はどこかに消えていた。

 

 

〈そんな馬鹿な!よく探して見ろ!さっきまで…う…ご!?〉

 

 

獣の巨人は、さきほどから何か音が聴こえていた。

崩れ落ちる瓦礫や巨人の音、そして自分たちの会話ではない異音が聴こえていた。

そして、彼は嫌でもそれを知っている。

ベルトルトも良く知っている。何故なら3年間もその修行をしてきたのだから!!

 

 

「ジーク戦士長!!」

 

 

ライナーの言葉が聴こえてきたと同時にジークは右目を失明した。

慌てふためく彼と違ってトラウマを克服した戦士がそこにいた。

 

 

「まだ試合は終わってない!勝利条件は戦闘不能だ!!」

 

 

巨人化直後は疲労で動けない弱点があるが、休憩する時間は意外とあった。

戦士長が変異種と交戦している時、ライナーは身体を休める事ができて少し余裕ができた。

そしてそれが終わったのを確認すると、殴り掛かる振りをして、うなじから離脱した。

巨体が負傷していたおかげで、元から蒸気が噴き出してるので上手く隠れる事ができた。

 

 

『ここからは兵士としての経験で戦士長を倒す!!』

 

 

戦士のままだったら戦士長に負けていたかもしれない。

巨人同士の戦いでは、自分の性格や戦い方を知られている分、不利である。

だが、戦士長は壁内の兵士の戦い方を知らない!

それこそ、生身の人間で巨人を狩る戦法など知るわけが無いからこそ有利に動けた。

 

 

『こ、これはあの時の……!?』

 

 

更に好都合だったのは、ジークはフローラに立体機動で翻弄された挙句ボコられていた。

そのせいで、立体機動の音に恐怖を感じてしまい、躊躇ってしまった。

 

 

『落ち着け!あいつはここの戦い方を知っているだけだ!あいつとは違う!!』

 

 

今までジークが立体機動で巨人を狩った例を目撃したのは、2件だけ。

名前など知るわけが無かったがミケとフローラだけである。

明らかに練度が劣っているはずだと思い、彼は自身のどこかに刺しているアンカーを探した。

そこに繋がっているワイヤーを握れば勝利するからだ。

 

 

〈奇襲で勝った気になるなよ!青二才が!!ぐおっ!?〉

 

 

必死にライナーの姿を探す獣の巨人であったが視界は何かによって奪われた。

そして何か嫌な感触と共に完全に失明した。

 

 

『なるほど、手投げ式は役に立つな!』

 

 

ライナー・ブラウンは、フローラから受け取った『手投げ式の閃光弾』を使用した。

元々、これは単独で巨人と対峙している兵士が使用する目的で製造された物である。

調査兵団は、そのコンセプト自体を即座に否定したが、ここで活用される事となった。

目くらましで視界が乱れた獣の巨人の左目に2つの刃を突き刺してライナーは離脱した。

 

 

『皮肉にもあいつから受け取った奴が役に立つとはな…』

 

 

両目を刃で潰された獣の巨人は、もはや脅威ではない。

投石しようにも的は見えないし、リーチ差も活かす事は出来ない。

それでもジークは負けを認めずに暴れ回った!

 

 

〈どこだライナー!!よくも俺をコケにしてくれたな!!〉

「戦士長!!あんたは5年前から変わってませんね…!」

〈そこかああああああああ!!!〉

 

 

ベルトルトが近くに居るはずなのに失明した獣の巨人は声をした方に攻撃を仕掛けた。

それは、さきほどジークが想っていた負けを認めないガキと同じように見えた。

 

 

『アニに迷惑を掛けた俺は、あんな感じに癇癪を起していたのか…』

 

 

マルセルを失った時点で『座標奪還作戦』に失敗に終わった。

ところがライナーは、作戦続行をする為に2人を無理やり説得して再開した。

自分の描いた未来にならないと駄々をこねて暴れ回る子供の様に彼は難題を押し付けた。

そして今、壁内人類と戦士を巻き込んでこんな決闘をしている。

 

 

『これで終わりにします。これ以上は見てられない…』

 

 

ライナーは、手投げ式の音響弾を見つめた。

これは、ウトガルド城でフローラから『自分を犠牲にしないで仲間を失わない』ように渡された。

現在、その仲間は、調査兵団を半壊させたアニであり、本当に助けたいのは彼女である。

 

 

『すまねぇ…フローラ、ジーク戦士長。それでも俺はアニを救いたいんだ…!』

 

 

換装した双剣を毛深い獣の巨人のうなじに突き刺して音響弾を固定させて安全ピンを抜いた。

そしてライナーが立体機動でジークの巨体から離脱した瞬間、音響弾が炸裂した!

 

 

〈ぎゃあああああああああああああああああっ!?〉

 

 

さきほどの異形の巨人の叫ぶとは比べ物にならない騒音がジークの全身を揺らした。

遠くに居る巨人の気を惹く物であって、直接、括り付ける物ではなかった。

鼓膜どころか脳すら揺らして脳震盪になったジークは気を失って倒れた。

 

 

「ジーク戦士長、勝ちましたよ。アニ奪還を優先してもらいます」

「ライナー!?さすがにやりすぎじゃないか!?」

「…確かにそう思うけどな。ベルトルト、俺の勝ちで良いよな?」

「うん、誰が見てもそう思うよ」

 

 

巨体から救出したジーク・イェーガーは、気絶しており戦闘不能になっていた。

音響弾の騒音と衝撃を受けたせいか、失禁してズボンの股間を濡らしている。

そして悪夢にうなされて居るのか、時折痙攣させてその度に意味が分からない事を叫んでいた。

救助に当たった彼らも何故戦士長がここまでうなされているのか理解出来なかった。

 

 

『お久しぶりですわね』

『お前は…!?』

『じゃあ、さっそく拷問の続きをしましょうか!頭蓋骨なんて邪魔だから退かしますわね!』

『やめてぇええええ!!ぐあああああああああああ!?』

 

 

夢の中でフローラと再会したジークは個室の椅子に縛り付けられていた。

エルディアの悪魔と遭遇したジークは頭蓋骨を割られて脳を剥き出しにさせられた。

 

 

『ぎゃあああああああ!!あがっ!!がばあああっ!あっば!あっ!!あ!ああっ!』

『貴方は一体何者かしら?』

『あっ!俺は!あっ戦士長あっ!ああっ!!マーレの!あっ!!』

『なるほどね。マーレ、戦士長。続けて?…もう傷が塞がるの?もう1回、割ろうかしら?』

 

 

ジークは、脳に何度も木の枝を突き刺されて搔き回された挙句、情報を吐かされる夢を見た。

実際は、音響弾の衝撃のせいで時折、無意識に痙攣しているだけだが、現実の様な感じがした。

そう考えてしまうほど、ジークから見たフローラは悪魔でありトラウマだった。

 

 

『誰か!!俺を助けてくれ!!この際、グリシャでも良い!俺を助けてくれえええええ!!』

 

 

そして偶然にもフローラが最初にジークにやろうとしていた拷問と一致していた。

違うのは、木の枝が落ちて無かったので、スナップブレードで代用しようとしたくらいである。

ジークの人権を認めていない彼女は、容赦が無かったし最も優しい拷問と思っていた。

元を辿れば、罪人の頭を針を突き刺す尋問術があるとケニーが言ったので拡大解しただけである。

それが民間人を拷問する中央憲兵ですらドン引きする行為であるのは間違いないだろう。

 

 

「それにしても何で戦士長はこんなに苦しそうなんだ?」

「音響弾を直接、受けたとはいえ、ここまでなるとは思えないんだけどね…」

 

 

ベルトルトもライナーも何故、こんなに戦士長がダウンしているのか分からなかった。

暫くして起き上がった戦士長の説明を聴いても、全く理解できなかった。

容姿を聴く限りフローラであるが、さすがに話を盛り過ぎていると感じていた。

必死にジークは、そいつがマジでやるつもりだったと説明してもスルーされて泣き叫んだ!

 

 

-----

 

 

「ハンネス隊長、鐘の音に続いて、なんか男の叫ぶ声が聴こえますけど…」

「なんだよフローラ、また幻聴か。やっぱり、東防衛線から耳を傷めてるだろう?」

「確かにあの時に音響弾を使いまくりましたけど…」

 

 

フローラは、微かであるがシガンシナ区の鐘の音が耳に届いていた。

もちろん彼女ですら気のせいだと思っているが、そこまで聴き取れる能力があった。

ジークの叫び声も遠すぎて名前すら分からなかったが糞野郎が泣き叫んだのは分かった。

 

 

「それより返り血を拭いておけよ。他人の血は有害と聴くからな」

「お気遣い感謝します。もうじき門に到着しますので、あとで布で拭いておきます!」

 

 

トロスト区から壁外の飛び出した巨人掃討部隊は無傷では居られなかった。

参加した35名のうち、3名が巨人に喰われて6名が負傷した。

それでも巨人を39体も葬ってるから人類の歴史上からすれば大勝である。

フローラは、2名の兵士を救援しようとしたが間に合わず返り血を浴びて帰ってきた。

 

 

「フローラ!俺を置いて行かないでくれよぉ!」

「一緒に着いてくるだけで良いのよ」

「だってお前、巨人に突っ込んでいくじゃねぇか!どうしろと!?」

「でも、そのおかげで巨人討伐5体、討伐補佐7体になれたじゃない!」

「俺は生き残るのが優先で、そんな事なんて望んでなかったぞ!」

 

 

ダズはフローラに付いて行った結果、何故か巨人を5体討伐できた。

実際に他の隊員も目撃している為、否定する事ができない事実となった。

巨人5体を討伐すれば、勲章がもらえて周りから尊敬の眼差しを受ける事には間違い無いだろう。

 

 

 

「よし、リフトが見えてきたな!ダズ!巨人はまだ居るか?」

「いえ、残ってません!」

「じゃあ帰るぞ!俺たちの仕事は終わりだ!」

 

 

トロスト区の正門付近でうろついていた巨人は一掃された。

これでしばらくはトロスト区の住民が不満に思うことは無いだろう。

 

 

「これで…終わったのか!?」

「とりあえず掃討作戦は終了したわね。ダズ、お疲れ様」

「やっと、帰れるんだ」

 

 

ダズだけではなく駐屯兵団の兵士の全員が同じ気持であった。

犠牲者が出たが、それでも以前と比べれば成果がある分、無駄死にでは無かった。

50mの壁から見渡せば、地平線の彼方には巨人が…居るがそれでも平和に感じられた。

フローラは、総統から戦場の風景を忘れる前に手帳にメモしていった。

さすがに戦場で絵を描く行為は、頭進撃でも躊躇う行動であった。

 

 

「これで当分、平和になるな」

「もう二度と駆り出されないのを祈るだけですよ…」

「壁外も慣れれば良い所よ!ダズも慣れれば気が楽になるわよ!」

「フローラみたいに慣れちゃう方が可笑しいんだよぉ!」

 

 

わざと煽ったフローラにダズは反撃をして、壁内の平和が続くのを願った。

だが、シガンシナ区でライナーがジークに一騎打ちで勝利した為、その願いは叶う事は無かった。

それどころか、トロスト区の防衛戦を凌駕する最悪の日が迫っていた。

しかし、その舞台は人類の最前線であるトロスト区ではない。

壁内の兵力の半数を投入する規模の大激戦は最前線から遠く離れた地で起ころうとしていた。

 

 

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