進撃の巨人2~名もなき兵士という名の悪魔~   作:Nera上等兵

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85話 対人立体機動部隊と頭進撃娘

ウォール・ローゼの東部にあるカラネス区は調査兵団の拠点となっている。

トロスト区の正門が使用不可能になった関係で、拠点や装備、設備を移行した為である。

第57回壁外調査や壁外にうろつく巨人の掃討など事実上の本拠地となっていた。

 

 

『僕のせいで…みんなが…』

 

 

アルミン・アルレルトは、ディルク団長代行に招集されて調査兵団本部の待合室に待機していた。

 

 

『僕がユトピア区なんて言わなければ…!』

 

 

原因は、女型の巨人継承者がユトピア区で拷問を受けているとベルトルトに告げた件であった。

気を逸らす為にやったが、結果は奇襲したエルヴィン団長が右腕を斬り落とす重傷となった。

そしてなにより、ユトピア区の住民が危険にさらされるという要因を作ってしまった事である。

その為、ユトピア区だけはウォール・ローゼの住民が内地から帰還できなかった。

 

 

「アルミン・アルレルト様、お待たせしました!ディルク団長代行殿の面会の用意が整いました」

「は、はい!すぐに行きます!」

 

 

調査兵団のトップであるエルヴィン団長とは、会話する機会が多く、緊張はしなかった。

しかし、今回は自分の失言のせいで、大勢の人に多大な迷惑を掛けていると実感している。

それにディルク団長代行とは一切接点が無いのも彼の緊張を高まらせる原因だった。

兵士に呼ばれたアルミンは緊張した足並みで、廊下を歩いて会議室の前に立った。

 

 

「104期調査兵、アルミン・アルレルトです!」

「入室を許可する!」

「ハッ!失礼します!」

 

 

第二会議室の前に居たアルミンは、覚悟を決めて入室した。

そこに居たのは、リヴァイ兵長やハンジ分隊長、そして同格そうな熟練兵が座っていた。

そして、目立つ席には、団長より少し年上の年齢に見える厳格そうな男が椅子に腰かけていた。

あまりのプレッシャーに押されたが、それでも彼は指定された番号の札がある席の前に立った。

 

 

「アルミン・アルレルト君」

「はい!」

「そこまで緊張しなくて良いぞ。肩の力を抜いて着席してくれ」

「ありがたいお心遣い、感謝致します!」

 

 

ディルク団長代行は、新兵が緊張しているのを見てどうするべきか悩んでいた。

そもそも彼は、兵団の幹部が負傷したせいで無理やり団長代行をさせられている哀れな男である。

だからアルミンに関しては、リラックスさせるように粋な計らいをした。

 

 

「マレーネ!会議室に酒瓶持ってくるなと何度も言ってるだろうが!」

「馬鹿だね。会議が終わってから飲む予定だよ!」

「お前はちょっと、そこの新兵の純粋さを見習ったらどうだ!?」

「はいはい、主役が揃ったんだからさっさと会議を始めて終わらせてね」

「このアマ!!」

 

 

調査兵団第3分隊の副長であるディルクは、配下のマレーネの素業の悪さには呆れかえっていた。

同じ酒飲みのゲルガーと取り換えて欲しかったほど、胃がアルコールで満たされている女だった。

説教しようとしたディルクであったが自分の置かれた立場を思い出して咳払いした。

 

 

「ごほん、失礼した。そんなわけでアルミン君、君も楽にしたまえ」

「は、はい…」

 

 

緊張している新兵を彼女の軽口を聴かせて、自分を責める事は無いと察せられるようにした。

エルヴィン団長の秘蔵っ子を脅迫する事などするつもりは無いし、やる気なかった。

 

 

「さっそくであるが、諸君らが気にしているエルヴィン団長の安否の事だ」

 

 

前置きをせずにいきなり本題に入ったディルクに呆れるハロルド班長。

急な話に対応できてない兵を見て、もう少しアドバイスしておくべきだったと後悔している。

 

 

「団長は会話できるほど回復しており、もうじき復帰されるだろう!というかして欲しい!」

「ディルク団長代行!?」

「うるせぇ!お前らが復帰したなら即刻、第三分隊の副長に戻りてぇんだよ!」

 

 

ディルクからすれば、兵団の頭脳であるハンジやモブリットが負傷したせいで貧乏くじを引いた!

だから彼らが業務ができる様になった時点で代行はあっちの管轄になると思っていた。

その結果、引継ぎが曖昧になってしまい、ずるずる引き摺ってここまで来てしまった。

 

 

「幸い、団長は左利きであるので、書類のサインなどに困ることは無いだろう。以上だ」

「ディルク、お前の感想を聞きに来たんじゃねぇんだぞ!ちゃんとした本題に入れ」

「リヴァイ兵長は、相変わらずお厳しい。はい、調査兵団の幹部のみを招集したのは訳がある」

 

 

リヴァイ兵長に叱責された彼は、しぶしぶ本当の招集理由を述べた。

アルミンが今日まで寝不足で思考能力が落ちている原因でもある。

 

 

「巨人化能力者の一団がユトピア区を襲撃してくる可能性についてだ」

「申し訳ありません!僕の失言のせいで!ユトピア区の皆…「はいはい気にするな!」…えっ?」

「アルミン君を招集したのは、責める為じゃないんだ。むしろこれからの作戦について相談したい」

「ええっ?」

 

 

アルミンは謝罪について色々考えてきたがディルク団長代行に阻止されて困惑した。

気付けば全員、怪訝な視線というよりも自分に期待している視線のように感じた。

 

 

「我々は、巨人化能力者が!いつ!どこで!どういう目的で攻めてくるか見当が付かなかった」

「でもアルミン君が虚言したおかげで、次回の襲撃する場所を絞れたんだよ!…酒飲んで良い?」

「クラース!マレーネを退席させろ!あいつのせいで話がこじれる!」

「えー面倒だし良いんじゃねえ?」

「もうダメだこいつら…エリック分隊長さえ居ればこんな事には…」

 

 

マレーネが重要な話までふざけ始めて、ディルクは両手で顔を覆うしかなかった。

調査兵団の兵員の内、5割以上が第三分隊の兵員で構成されているせいでここまでふざけられた。

ミケ分隊長なら喝を入れてくれるが、リヴァイは意外とこういうのに介入してこなかった。

彼の言葉を借りるとするなら「お前らで解決できる問題は、お前らで解決しろ」という事である。

 

 

「良いから本題に入れ」

「そこで、アニ・レオンハートの結晶体をユトピア区の兵団支部の地下に保管する事となった」

「えっ!?」

 

 

リヴァイ兵長に急かされたディルクは、ユトピア区にアニ・レオンハートを輸送する事にした。

半壊したストヘス区では、保管する場所が限られるうえに再び戦場にできる環境では無かった。

更に憲兵団が王政の不利になりそうな物的証拠を隠蔽しかねないのでこうするしかなかった。

…ただ、ストヘス区の復興でそれどころじゃないのか、珍しく彼らは調査兵団の提案を承諾した。

これには、ディルク団長代行も意外であったが、問題ない以上、理由を問う事はしなかった。

 

 

「待ってください!」

「ああ、気持ちは良く分かる。同期でミステリアスの女の正体を知ってしまったらな」

「こっち見るな」

 

 

ディルクとマレーネが漫才している時、アルミンは焦っていた。

アニ・レオンハートに危害を加えられていないのは、彼女自身を覆う結晶体のおかげである。

それは不明確が多いのと同時に不安定でもある。

もし、移動中で目覚めたり結晶が壊れてしまったらアニの人生が…そこで終わってしまう。

 

 

「アニ・レオンハートの結晶体は動かさない方が良いかと!」

「大丈夫だ、お前が想っている末路にはしない。むしろ衝撃で目覚めてくれた方が良い方だ」

 

 

アルミンは気にしていなかったが、アニという女性が気になっている思春期の男である。

まだ『恋』という感情に芽生えていないだけの男だった。

ベルトルトがそれを知ったら即刻妨害するが、残念ながら彼女もアルミンを気にしていた。

第57回壁外調査で、女型の巨人が目撃者である彼を始末しなかったのはそれが大きかった。

 

 

「なるほど、例の結晶体をユトピア区に移動させるのは分かった。」

「だがまだ別の課題は残されているだろう?」

 

 

リヴァイが一番、聴きたかったのは、壁内に巨人が出現した件についてだ。

ユトピア区の住民が住居に戻れない以上、壁内がどうなっているか気になっていた。

駐屯兵団や王政、新聞では、巨人は全て掃討されたと書かれていたが、彼は信じなかった。

 

 

「…それはさっきから寝ているハンジ分隊長が一番存じてるはずだ」

「おい奇行種!?駄目だ…誰かこいつを起こしてやれ!」

「やけに静かだと思ったら!?分隊長!起きてください!」

「ううん!?うひゃあああああ?!」

 

 

ハンジ・ゾエは分かり切っていた会議と把握しており、寝不足から椅子に座った瞬間、寝ていた。

全員が仮にも会議の内容を聴こうとしている時に爆睡していた。

むしろ、寝ていたから会議が静かであった事に全員が気付き、呆れかえった。

そんな視線を気にしないハンジは、奇声を出して飛び起きて唯一、席から立ち上がってしまった。

 

 

「あれ?もう会議が終わったの?」

「そんなわけないだろう?例の物をユトピア区に護送する話が終わった所だ!」

「そうかい。じゃあ、それに関係して、寝るのも惜しんで巨人が壁内に出現した調査結果を…」

「するのか?」

「いや、しない」

 

 

回りくどい緒言を聞かされるのが大っ嫌いのリヴァイは、結論だけを求めた。

運動競技に例えると、選手の過去やそれに伴う挫折を踏まえた感動話より結果を重視していた。

そして、いざ聴こうとした瞬間、出鼻を挫かれて、ハンジ以外の全員が拍子抜けした。

 

 

「いやだってさ!エルヴィン団長の寝室でピクシス司令と待ち合わせててさ!その時に…」

「本当、ハンジって自分勝手にできる時だけは、喋るんだから…」

「なんか言ったかマレーネ?」

「あら、怖っ!調査兵団一お怖い奴が脅してきたよ!」

 

 

マレーネはモブリットに次いでハンジの事を理解している。

だからこそ、こうやってタメ口で話せる関係であるし、ライバルでもある。

 

 

「えーっと、僕は何で呼ばれたんですか?」

「そうだな、アルミン君は、アニ・レオンハートについて知ってる事を話してもらいたいんだ」

「知ってる事ですか…?」

「怪しげな行動から好物まで知っている事があれば、包み隠さずに報告して欲しい」

 

 

アニ・レオンハートを敵対勢力が奪還を狙っていると分かっている以上、対策が必要である。

しかし、同期からの聞き取り調査では、アニに関しての情報が少なかった。

アニと仲良しであるミーナですら、不明な点が多いせいで調査は難航していた。

そこで、女型の巨人の正体を見抜いたアルミンに詳細な情報提供を望んだ。

会議室に招集したのは、信頼できる人物以外に情報を聴かせない為である。

 

 

「すみません。アニの生活習慣や友人関係など僕も把握していません」

「別に脅迫してるわけではない。思い出したらハンジ分隊長などに知らせて欲しい」

「ただ…フローラがアニやライナーやベルトルトと深い接点がありました」

「どういう事だ?」

 

 

アルミンは、アニとライナーたちが一時期、仲が悪かった時期を知っている。

デリカシー無しの男にストーカーと化した腰巾着だったので、同期は大体原因を察していた。

今となっては、その時に何かしらの作戦で揉めていた可能性が高かった。

そして何故かフローラがパシリにされて、手紙の配達などをさせられていたのを思い出した。

意外とフローラは謎が多く、豊富な資金力の入手手段や人脈を把握している者は居なかった。

 

 

「実は、人類と敵対したアニは、ライナーやベルトルトと仲が悪かった時期があったんです」

「そして一時期、絶交した時期があってそれを修復させる為に走っていたのがフローラでした」

 

 

そこで出て来た疑惑が、フローラ・エリクシアが巨人化能力者という可能性である。

実際、3人共一番仲が良かったのがフローラという有様だった。

ならば、彼女も巨人化能力者のスパイとしての疑惑が出るのもしょうがなかった。

巨人化能力者だったら、ここ最近の活躍などにも納得できる回答になるのもある。

ただし、この場に居る全員が彼女を疑うほど疑心暗鬼になっていると信じたくなかった。

 

 

「まーた、フローラの名が出て来たぞ」

「いつもあいつの名を聴くな。さすが兵団一の問題児…!」

「ここに居る全員、あいつ知り合いという有様だ。まるでスパイみたいじゃないか?」

 

 

フローラの名が出て話で盛り上がっていく調査兵団の幹部たち。

その話を聴いていて疑問に感じたクラースの発言を受けて全員が黙り込んだ。

彼女は、調査兵団どころか駐屯兵団のピクシス司令、憲兵団のドーク師団長とも知り合いである。

それどころか全兵団トップのザックレー総統のお気に入りでもあり王政幹部ともやり取りがある。

もし彼女が敵勢力のスパイであるとしたら、作戦の根本が崩れ去ってしまう。

 

 

「そういえば、フローラもこの会議に出席する予定だったな?」

 

 

リヴァイは、出席簿を見てフローラがこの会議室に居ないのは確認していた。

鎧の巨人を恨んでいた癖にいざ、討伐できる機会になると何故か無視をしていた。

彼女の性格上、絶対に鎧の巨人を討伐するまで帰還するわけがなかった。

そこで彼の脳裏には、彼女がスパイである可能性が高まっていた。

 

 

「あいつなら今、クロルバ区に居るぞ」

「ディルク?なんでこっちに来させなかった?」

「いや、それが中央憲兵と共に巨人を掃討すると言い出してな…」

「「「「はぁ?」」」」

 

 

全員がディルク団長代行の言葉を信じられなかった。

王都ミットラスを警備している中央第一憲兵団が壁外で巨人を掃討などあり得ないからだ。

 

 

「そんな馬鹿な話があるか!?」

「俺に言うなよ…!これがその書類だ!マジで長いから覚悟しておけよ!」

「……全く、あいつを知れば知るほど謎が多い……何やってんだこいつ!?」

 

 

団長代行から書類を受け取ったリヴァイ兵士長がその書類が事実であると直感で分かった。

何故ならフリッツ王の筆跡からザックレー総統、各王政の幹部のサインまで本物だったからだ。

それだけなら良かったのだが、彼の目を引いたのは以下の文面だった。

『中央憲兵の備品を破壊したり口にしない事を誓う』などの念書に見える文面が書かれていた。

更に読んで一番下にフローラのサインを見たリヴァイは、呆れてしまい無言で隣人に手渡した。

 

 

「今度は王政の議会で何かやらかしたな…あいつ!」

「何をどうすれば、中央憲兵の備品を食べない念書が書かれるんだ!?」

「やべぇ…有名人だらけのサインだ。売るだけで大金が稼げるぞ…」

「フローラをスパイにするとフリッツ王を含めたあらゆる勢力に喰い付く事になるな」

 

 

彼女が残した書類からいろんな契約が書かれていたが誰もが呆れる物であった。

要するに王政の議会でも知られた問題児であり、馬鹿な真似をしないように約束した念書だった。

全員がフローラのやらかしに大体、心当たりがあったのも、脱力した原因である。

目の上のたんこぶである王政ですら、悩ましい存在であると分かり、ある意味平和になった。

いがみ合う複雑な勢力図でも、フローラのやらかしについては、全会一致していたという事だ。

つまり、どの陣営から見ても呆れるほどの問題児であるという事だ。

 

 

「クション!」

「何だ?風邪を引いたのか?」

「まさか!こんな時に布団を被って寝てられませんわ!」

「なら良いんだがな」

 

 

クシャミをしたフローラを心配したケニー隊長。

調子が悪いならさっさと安全地帯に行ってもらうつもりだった。

さすがに壁外の専門家を失えば自分たちがどうなるのかは理解していた。

 

 

「それより巨人に追いかけられてるんだが何か言う事は?」

「別に問題ないでしょ!想定通りですから!」

「そりゃあそうだけどよぉ!もぉーちょっとだけ怯えたりしないのか?」

「それをして何かメリットがあるのですの?」

「いや、無いけどよぉ!もうちょっと乙女らしくしてくれると男は頼もしくなれるんだがなー」

 

 

フローラとケニーは並走をしているが、その後ろを巨人の大群が追いかけて来ていた。

馬に騎乗しているとはいえ巨人に追いかけられるのは誰だって拒否反応がある。

それだけ巨人に背を向けて走っていくというのはケニーにとって辛い事であった。

 

 

「予定通り、アッカーマン隊長がこちらに向かってきます」

「カノン砲班、準備は良い!?」

「「「「ハッ!!」」」」

 

 

カーフェン副長の指示に従い、黄緑色の装備で構成された班が巨大樹に待機していた。

それだけではなく王政が隠し持っていた新技術を対巨人用兵器として転用している。

彼らは囮になっている最強コンビが来るのを待っていた。

 

 

「おい、まだか!?もう馬より俺がバテそうなんだが!?」

「合図が出ました!巨大樹の森に突っ込みます!」

「イーヤッホイ!!ただいまだぁあああ!ベイビー!!」

 

 

合図を確認して囮役の2名が巨大樹の森に駆け抜けていった。

それを追いかけて巨人の大群が森に侵入しようとしたその瞬間、複数の発砲音が響いた

発砲音と共にライフリングから飛び出してきた弾丸は巨人の膝や踵、脛を貫いた。

 

 

「狙撃班の攻勢が成功しました!」

「意外と威力がありますね。これならうなじを狙っても良かったかもしれません」

 

 

RF-01 クリーガーカスタムは、対巨人に改良したライフル銃である

TN-01 クリーガーカスタムは、その予備の銃身を左右で合計8本格納できる

MC-01 クリーガーカスタムは、狙撃して隠密をする立体機動装置なので静音性に優れている

 

 

狙撃部隊は、指定された巨人の部位を見事撃ち抜く事に成功した。

巨人の首を正面から狙っても弱点のうなじを吹っ飛ばす威力があった。

カーフェン副長は、ライフル型の装備の威力に満足した。

 

 

「副長!新手です!巨人3体、こちらに向かってきます!」

「射線状にいるか。カノン班!構え!……撃てぇ!!」

 

 

副長の号令を受けたカノン砲を構えた部隊が一斉砲撃を開始し、巨人の頭を吹っ飛ばした!

野砲や壁上固定砲が使用する榴弾とは違うのは、まずその威力!

鎧の巨人はともかく巨人の頭を狙えば頭部どころか鎖骨付近まで吹っ飛ばす威力であった。

 

 

ハードカノンmk-2は、片手で砲身を持てるほど精度と軽量化された砲身である

ハードホルダーmk-2は、替えの砲身を左右含めて6本装填できる

ハードモーターmk-2は、重量があるが、最低限の立体機動ができるようにボンベを増量している

 

 

「う、羨ましいですわ!この威力…!」

「……おい、嬢ちゃん?駄目だこりゃあ、完全に魅入ってやがるぜ…!」

 

 

フローラは、容易く巨人の頭部を吹っ飛ばしたのを見て目を輝かせて涎を垂らした!

この兵器が量産化すれば、野砲以上に頼れる空飛ぶ砲兵になれるだろう。

今回は待ち伏せであったが、本当の使い方は巨人にアンカーを打って間近で砲撃する戦法である。

威力的には充分過ぎて、むしろ爆発に巻き込まれないか心配になるくらいだった。

 

 

「巨人7体討伐!残り5体、全員負傷して回復待ちの模様!」

「自動小銃班と散弾班を投入!いっきに潰す!」

「ハッ!自動小銃班、散弾班、攻勢を準備を急げ!!」

 

 

クイーンバレルは、弾数30発が装填された赤色のマガジンを装填する小銃である

クイーンベルトは、左右にそれぞれに予備のマガジンを4つ、合計240発の弾丸を保管できる

クイーンシリンダーは、ワイヤーの巻き取る速度が尋常ではなく文字通り跳び回れる装置である

 

 

これは、主に散弾銃ではカバー出来ない遠距離攻撃や支援攻撃に特化した銃の一式である。

対人用であり、巨人相手には威力不足だが、騒音と衝撃で巨人の動きを怯ませる効果がある。

あまり意味が無い様に見えるが、遠距離で一方的に敵を攻撃できるのは利点である。

リヴァイ兵長ですら、遠距離の攻撃手段がブレードを投げつける事しかできないからだ。

そう考えると、赤い色で統一されたこの装備は、調査兵を殺すのに最適なのかもしれない。

 

 

「自動小銃班は出る幕があるのですか?」

「散弾班の援護というのが強いね。だって、射程範囲内に撃てるとは限らないから」

「確かに散弾では、よっぽど近づかないと威力が出ません。良いご判断かと思います」

 

 

元々、対人立体機動部隊の武器は、『一式銃』という対人用の散弾銃だけであった。

ところが、王政が急遽、巨人にも対応できるように隠された兵器を解禁した。

巨人の硬い表皮を貫通して、うなじに命中すれば破壊できるようになっている。

これで巨人にも通用するようになったが、散弾なのでよっぽど接近しなければ効果が無い。

そう考えると、奇襲ができないのであれば遠距離による援護攻撃は必須であった。

 

 

二式銃は、散弾が細かな硬質化の結晶を高速で撃ち込む事で巨人の表皮を貫通できるようになった

二式弾幕は、銃身を変える為の予備のカートリッジが合計10本ある

二式機構は、旧式の1式機構を改修してガスの残量も含めて性能が向上した

 

 

「しかし、二式銃を装備した兵は多いはずですが、そこまでする必要があるのですか?」

「全員が生き残るには、過剰に警戒した方が良いから」

 

 

念入りに警戒している副長に部下が疑問を投げかけるが、彼女は一蹴した。

王政の議会の為ではなく隊長に忠誠を誓った彼女たちは一兵足りとも欠けてはいけなかった。

中央憲兵の中で唯一王政の忠誠心が無い部隊の構成員なら尚更、死なせられなかった。

 

 

「ようやく俺の出番だ!思う存分、暴れてやるぜ!!」

 

 

ケニー・アッカーマンは上機嫌で巨大樹の幹にアンカーを打ち込んで飛んでいった。

ある程度空中に上がった時、アンカーを外して、巨人のうなじに向けて二丁拳銃を発砲した!

これは『両手射撃』という技能で短時間でより多くの弾丸を撃ち込む技能である。

操作装置にある銃口とアンカー射出の向きが同じの為、両方発砲するにはこうするしかなかった。

 

 

「アッカーマン隊長に続け!!」

 

 

部下達は巨大樹や巨人にアンカーを打ち込んで片手撃ちで巨人に弾丸を撃ち込んだ!

これは『片手射撃』という技能であり、比較的安全で正確に獲物を撃つ事が出来る。

ただ、クイーンバレルという自動小銃以外は1発撃ったら、銃身を装填しなければならない。

そう考えると、慣れれば両手射撃の方が威力も命中する精度も上がる。

散弾銃が配備されていたのは、立体機動をする調査兵にできるだけ命中させる為であった。

 

 

「やっぱり撃つ度に装填するのは面倒だな…おっと部下に獲物が取られちまう」

 

 

発砲した銃身を捨てて、大腿部に装着した銃身を装填し直したケニーは更に猛攻を仕掛けた!

まだまだ覚悟をしきれてない部下に自分の雄姿を見せつける事で指揮を鼓舞する狙いがあった。

訓練しているとはいえ彼らは、瞬時に特定部位を狙って射撃する事ができなかった。

立体機動をしながら近づく為、近くにある部位しか狙えないのである。

そんな彼らに『お手本』を示して、能力向上を狙った。

 

 

「羨ましいわ…」

 

 

フローラ・エリクシアは唯一、通常の立体機動装置を身に着けていた。

さすがに彼らの装置を身に着ける事はできなかったが、その装備については必死に分析していた。

 

 

『ミーナがこの装置を身に付ければ、射撃の技能を生かす事ができるのに…』

 

 

親友であるミーナ・カロライナは、双剣を構えて立体機動で巨人に挑むのは向いてなかった。

力は弱いし、立体機動で身体が振り回されており、白兵戦をさせるには問題があった。

以前では、巨人に挑むには、その戦闘スタイルしかなかったので仕方なかった。

しかし、この装備を纏えば、非力な彼女でも正確に巨人を討ち取る事ができる。

カラネス区壁外で見せた射撃の腕前を知っているフローラは、親友こそ相応しい装備だと思った。

 

 

 

「これで掃討完了だ!全員生き残ってるか?」

「「「「はい!!」」」」

「そうだな、今のうちに使用した銃身を回収しておけ。再利用するかもしれんからな」

「「「「ハッ!」」」」」

 

 

点呼を取る前に即答されたケニーは困惑しながらも、全員生還したのを感じて笑みを溢した。

巨人の位置を把握できる巨人専門家のフローラの動きから、暫くは安全だと結論付けた。

 

 

『さて、今回の実戦で欠点がいくつも発見できた。どう欠点を潰すかだな』

 

 

ケニーは、今回の掃討作戦に新型の兵器を運用して発生した欠点を分析していた。

特に問題だったのは、カノン砲やライフル銃を二丁にする必要性である。

重量があるうえに銃身が長いせいで立体機動に支障が出ていた。

クリーガーカスタムは発砲する前に銃身を交換しないといけないほど激突させた件もある。

 

 

『カノン砲に至っては、発砲の衝撃のせいで次弾装填できなかったな』

 

 

巨人に効果がある榴弾を携帯できるようにした様な砲身であるハードカノンmk-2。

片手で試し撃ちをさせたら、発砲した衝撃で砲撃手が吹っ飛んでしまった。

地面に居たからよかったものの立体機動で片手撃ちさせれば、事故になるのは目に見えている。

そのせいで、待ち伏せさせて一斉砲撃をさせるしかなかった。

 

 

『たったこれだけでほぼ全員がガス切れか。きついな…』

 

 

そして一番問題だったのは、ガス切れである。

ガスボンベを背負う形となっている対人立体機動装置。

訓練では良かったが、実戦ではガスの量が少なすぎて、動きづらかった。

巨人のうなじを狙う為に動き回ったらガス切れなど本末転倒である。

 

 

『多分、あの立体機動装置マニアの嬢ちゃんも欠点に気付いているな』

 

 

ケニーは、対人立体機動装置を見て興奮しているフローラを見て溜息を吐いた。

彼女は、索敵と壁外での活動のアドバイスをしてもらう為に同行してもらった。

もちろん、それは建前であり、これらがお前に襲撃してくるという脅しであった。

 

 

「私も装備してもいいですか!?」

「いや、訓練してなきゃできないよ」

「じゃあ、訓練すれば使わせてくれるんですね!?」

「えーっと…」

「この辺りの巨人を一掃しました!訓練する時間はありますわ!」

 

 

なのにあの女と来たら、さきほどから改善のアドバイスばっかり口にしていた。

それどころか隙を見て装備で飛び回れるように部下を口説いている有様だ。

副長のカーフェンが彼女に絡まれて、無言で自分に助けを呼んでいた。

 

 

『部下だったら可愛いんだが、敵にあんな事されたら対応に困るよな…』

 

 

子供の様に強請るフローラを見て、とりあえず叱る為にケニーは歩き出した。

なんで敵を叱るのか。彼自身も理解できなかったが仕方が無かった。

兵服のジャケットを脱ぎ捨ててノースリーブ姿になっている馬鹿女に向かって行った。

そして傷だらけの両腕を見て内心でドン引きしながらケニーはフローラを叱った。

その時に巨人の群れを感知したと分かったので余力がある内に部隊を退却させた。

 

 

『対人立体機動装置があればミーナが活躍できるわね!どうやって装備をもらおうかしら』

 

 

フローラは、親友のミーナが身に着けるべき立体機動装置をここで見出した。

身長143cm、体重48kgの少女に腰に鞘をぶら下げさせて立体機動させるのはきつかった。

だが、この装備であれば他の立体機動装置と比べて遥かに軽い。

更に彼女の特技である射撃も活かせる利点があった。

操作装置の底部からアンカーを射出する分かり易さもポイントである。

腰部にある射出装置でアンカーを射出する通常の装置の方が移動の難易度が高かった。

 

 

『どうにか王政を説得させて似たような物を作れないかしらね』

 

 

対人立体機動装置の豊富な種類の試験運用を行なって様々な欠点を発見していた。

この実戦データのおこぼれを狙っているフローラ。

もちろん、この立体機動装置が調査兵団に牙を剥くのを理解している。

だから王政のトップと敵対している内部勢力を支援してそれを妨害させるつもりだった。

 

 

『立体機動装置は奥が深いわ!ミーナを絶対に死なせない様に頑張るわ!』

 

 

しかし、その対人立体機動装置が牙を剥くきっかけを作ったのはフローラのせい。

それを調査兵団が気付いた頃には手遅れであった。

 

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