転生したらメガテン世界だった orz   作:天坂クリオ

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剣術修行は終了しました

剣術修行の最終日。三連休の最終日でもあるこの日は、異界に入ることを禁じられてしまった。

 

「貴様はすでに今回の目標を達成している。よく休め。それも訓練のうちだ」

 

教官にそう言われてしまえば、納得するしかない。

でも、訓練用異界のある場所の関係で宿泊所は市街地から離れている。ジョギングがてら行ってもいいが、それって休んでることになるのだろうか。

そんなのどうでもいいなと思ったので、最近おろそかになっていた授業の復習をすることにした。

 

気付くと昼になっていたので、ここ唯一の楽しみがある食堂へ向かう。

ここは俺たち【終末アサイラム山梨支部】が直接運営していて、食事や風呂に霊力回復効果がある。それになにより普通に美味しい。

今日もお気に入りの大盛りカツカレーを食べていたら、俺が訓練用異界に入れなくなったもう一つの理由である二人が食堂にやってきた。

入り口の前でこちらに気づき、当然のように両脇に座ってくる。

 

「わーい、お昼ゴハンだ!ねーねー、イブキさん、今日も私は頑張りましたよ!すごいですよね?ね?なのでいっぱいほめてくれていいんですよ?さあさ、どうぞどうぞ」

 

「頑張ったのはわたしも同じよ。リップとの連携も上手くなってきたし、自分が強くなっているのも実感しているわ。いい教官も貸してもらえたし、感謝してあげなくもないわ。頭をなでてあげようかしら?」

 

すり寄ってくるメルトとリップは無視するだけだと調子に乗ってくるので、強めに拒否する必要がある。

 

「二人とも離れてくれ。俺の飯を邪魔するな」

 

「「はーい」」

 

押しのければ離れてくれるのだが、意外と抵抗するので力加減に苦労する。

ぞんざいに扱っても傷ついた様子はない。ドMなのか反動形成なのか分からないが、どちらにしろ必要以上に関わりたくないのだが。

 

今日の教官は、俺ではなくこの二人の指導をしていた。

悪気があるのか知らないが、当然のように神経を逆なでてくるこの二人を冷静に指導できるあたり、ラル教官の人間力の高さがうかがえる。

俺にはとうてい真似できそうにない。

 

「私ごはんもらってくるね。メルトはどうする?」

 

「イブキと同じので」

 

「はーい。私もそうするー」

 

リップが二本の足で歩いていく。

彼女たちの武器でもある手足は式神製で、他人を傷つけないよう小さくすることができる。

その調節も慣れているようで、便利に使いこなしていた。

 

「ねえイブキ、午後は空いてる?できればわたしたちの修行に付き合ってほしいんだけど」

 

「教官に休めって言われてるからダメだ。それに俺とそっちじゃ、レベル帯が違うだろ。それとも半日だけで俺に追いついたのか?」

 

「いじわるな質問ね。どうせあなたは、わたしたち二人を合わせたよりも強いわよ。だからこそ、ちょっとくらい優しくしてくれてもいいと思わない?」

 

「別に思わないね。キミたちは俺の修行の邪魔してるってことを自覚してくれ」

 

「もう、つれないんだから」

 

メルトがすねるが、ほだされてはいけない。

元から俺は彼女たちの面倒を見るつもりはない。優しくして余計な気を持たせる方が罪深いだろう。

外野から恨みがましい視線が飛んでくるが、そんな目を向けるくらいなら彼女たちの気を引けるくらい強くなってほしい。そしてぜひ引き取ってくれ。

 

彼女たちも含め、ここにいる霊能力者は10人ほど。そしてその大半は、俺たちのような【転生者】ではなく一般人だ。と言っても霊能力者の家系であったり、悪魔に襲われていたところを助けられてたりして霊能力に目覚めた者たちだけど。

 

転生者と一般人では、才能の差がかなり大きい。これは第二次世界大戦後にメシア教が行った、霊能力者の粛正が関わっているらしかった。

【俺たち】は転生者特典とも言えるSSRの才能を持っている。それに対して、まともな霊能力者が刈り取られた後の一般人はほとんどがCかUCであり、R以上の才能は稀にいるかもというレベルらしかった。

 

転生者の中でも強さを求める攻略ガチ勢は、整備のされていない異界のような、もっとレベルの高い場所で修行をしている。

逆に戦闘が苦手な者はそもそもやって来ないので、ここにいる転生者は俺のような後発組だけだった。

 

一方、一般人は先述のとおりの才能なので、あまり強い異界には行けない。ここのレベルがちょうどいいため、人数が多いようだ。

しかもここを突破できれば上位入りなので、特にやる気のある人たちが集まっているらしい。

 

なので初日に両手に花を見せつけていたら(俺はそんなつもりはちっともないのだけれど)ケンカを売ってくるヤツが数人いた。

対人戦の修行になると思い審判ありの試合として受けたのだが、あっさり勝ててしまったのは自分でも意外だった。

 

「群れで悪魔を倒せたから、それを自分の実力と勘違いしたんでしょうね。ここが異界の中じゃないのが残念だわ。負けても生きているんですもの。敗者の顔なんて見たくないから、二度とここに来ないでくれるかしら?」

 

「ぷぷっ、倒した悪魔のレベルだけ見て勘違いしちゃったんですね。大見得切っておいてボロ負けしちゃって、今どんな気持ちですかー?」

 

「さすがにそこまで言うのはヤメテさしあげろ」

 

戦ったのは俺なのに、なんでこの二人がドヤ顔をしているのか。

だがメルトとリップの追い打ちが非道すぎたせいで、見物人たちももう口出しして来なくなった。

その点は楽になったのだが、そもそも二人がいなければこんな事態にならなかったよな?

 

「はいメルトにカレーをドーン!私もドーン!いただきまーす」

 

「ありがと。ここのカレーは絶品よね。いくらでも食べられそう。もちろんプロポーションを保つための運動は必要だけどね」

 

にぎやかに話す二人の言葉を聞き流しながら、食堂のテレビを見る。

協賛企業として【株式会社ドゥームス】と【アサイラム製薬】の文字が並んでいる。

最近よく見るようになったこの会社は、俺たち【終末アサイラム山梨支部】の関連会社だったらしい。

転生者の中にはすでに社会人として活動している者が多くいて、その中でも前世知識を利用して大企業を経営している人もいた。

例え大金を動かせるとしても、大破壊によって社会が壊れてしまえば一円も残らない。ということで大破壊を乗り切るために、湯水のように金を使って事業を拡大。そして【終末アサイラム山梨支部】を支援してくれている。

 

社会に根を広げて支配領域を増やし、悪魔や異界の情報を集め、都合の悪いことを金の力でうやむやにする。

なかなか暗黒メガコーポめいた動きをしていたりする。

 

ただ、それは必要なことでもある。

【俺たち】は霊能力者ではあるが、家族はそうではない。悪魔や異界と関係ない人がほとんどなので、そんな人たちに対する説明として『大会社の支社・子会社の所属』という肩書きを使えるのはとても助かっていた。

現に今も、転生者らしき三人組がテレビの前で話をしている。

 

「アサイラム製薬の関連会社に就職できたって言ったら、両親に泣いて喜ばれた。罪悪感がスゴイんだが」

 

「もれはコネを使ってドゥームスに弟を入れたぞ。これでいつタヒんでもあいつに両親を任せられる。なので、もっとハードな特訓ができるお」

 

「それに付き合うこっちまで回復代でカツカツになるからマジでやめれ」

 

和気あいあいとしている。俺もあんな仲間が欲しかった。

 

「あら、イブキはもう食べ終わったの?それともわたしの分も食べたいのかしら。欲しがり屋さんね。食べさせてあげるから、口を大きく開けて待ってなさい」

 

「あー、私もあげようと思ってたのにー。ほら、あーん」

 

「いらないから!俺はもう行くし!」

 

落ち着いて食後の余韻に浸るヒマもない。

食器を返して食堂を出るまで、二人の声と周囲の視線が辛かった。

 

 

 

食堂を出てホッとしてたら、教官とちょうど鉢合わせた。

 

「葛葉よ、ちょうど貴様を探していたところだ。神主の式神が会議室に来ているぞ、なにやら用事があるらしい。すぐに行きたまえ」

 

「わざわざ神主が?なんだろう。とりあえず了解しました」

 

敬礼してから会議室に向かう。

中に入ると小さな神主が、会議室のテーブルの上に座っていた。

 

『やあやあ、葛葉フレンズ。元気だったかな?修行は順調なようで何よりだよ』

 

「神主さんも元気そうですね。式神とはいえ【俺たち】のトップが来るなんて、俺なにかやっちゃいました?」

 

『やっちゃったといえばそうかな。ほら、この前の【霊長知能総研】のことさ。あれの調査結果が出たから、教えておこうと思ってね』

 

「ありがとうございます。でもあれ、米国……というかメシア教の圧力が強かったって聞きましたけど、大丈夫だったんですか?」

 

『へーきへーき。全部あそこの研究所の悪魔が暴走したってことにしたからね。研究内容を知ってる研究員は全員引き抜いたし、洗脳されてた警備員はカンペキに治療した。証拠のデータも残ってないし、かなり上手いことやれたよ』

 

神主の機嫌はとても良さそうだ。

 

『それで調査結果だけど、ハッキリ言って超お手柄だったよ。Dr,スリルを引き抜けたおかげでドリーカドモン、ひいては造魔を作れるようになった。これは式神製造の面から見ても大きい。それにあそこの研究所を放っておいたら、けっこうマズいことになりそうだったってのもわかった。早いタイミングで潰せたのは、すごく良かったよ』

 

「あの研究所って、そんなにヤバかったんですか?」

 

『そうだよ。だって動物を悪魔に変える研究をしてたんだよ?完成してたら、異界でもない街中を悪魔がうろつくことになってたんだから。悪魔は存在するだけで世界の理を狂わせる。異界の中なら異界をおかしくするだけで済むけど、街中に出るようになったら大破壊がすごく早まることになるからね』

 

なるほど、それはヤバそうだ。

 

『でももっとヤバそうなのが、コレだよ。分かるかな?』

 

神主が見せてきたのは、小瓶に入った芋虫のようなモノだった。

とげとげした“?”マークのような見た目のそれは、真3で見た憶えがあった。

 

「まさか、【マガタマ】ですか」

 

『ピンポーン。大正解っ★』

 

神主がノリノリで指さしてくる。

 

『ドクターたちはコレを使って、生物を悪魔に変えていたのさ。ただ、コレは劣化品の【マガタマ】だ。ただの人間を完全な悪魔にする力はないよ。才能のある人間を強化した上で飲ませれば悪魔になれるかもしれない、っていうくらいの性能かな?もちろん失敗したら命は無いよ』

 

あの時に戦った警備主任がその成功例だったのか。

よく成功したなと思ったけど、ヤツラは人体実験を平気でするような連中だ。たぶん失敗作が大量にいるんだろう

 

『もう一つ、ただの人間に悪魔を憑依させるためのマガタマもあったよ。どちらかといえば、こっちの方がヤバイかな。だって悪魔が憑依するのはマガタマの方だから、人間の才能にはあまり関係がないんだ。人間は完全にマグネタイト供給用のバッテリー扱いだね。だから悪魔が出てくる時間は短くなるけど、それだけで十分脅威だよ』

 

「これが、一般の警備員を悪魔化させたヤツですね。あの人たちは無事ですか?」

 

『いちおう生きているけど、衰弱してるね。まあ、時間が経てば復帰できそうだから、気にする必要はないよ』

 

思いっきりぶっ飛ばしてたから心配してたけど、それならよかった。

 

「その【マガタマ】を完成させるための研究だったんですね」

 

研究所にいた大量のコボルトと、その成りかけを思い出す。

真3では主人公がコレを飲まされ悪魔になる。その時にすごく苦しむ演出があった。

もしもこの研究が完成していたら、人でなくなる苦しみを味わう人間が、大量に出ていただろう。

ほんとうに阻止できてよかった。

 

『しかもコイツらタチ悪いことに、卵産むんだよ。信じられる?それが排水口から流出してさ、それを喰った魚たちまで変異してやんの。最初に報告してくれた魚がそれだね。まあ、魚の肉体が変異に耐えられずにみんな死んでたから良かったけど、研究が完成してたらかなりヤバかったよwww』

 

笑い事じゃないですよ、それ。

 

『まあそう言うわけで、頑張った葛葉フレンズにはボーナスが出ることになったから。装備かアイテムかそれ以外のどれが欲しいか選んでね』

 

「合体剣以外にももらっていいんですか?」

 

『合体剣は造魔のボーナスだよ。今回はメシア教の野望阻止ボーナスだから別だよ』

 

「じゃあ式神を」

 

『それはダメ。葛葉へ情報を流してるって疑ってるのがいてさ。もちろん僕はキミを信じているけど、それはそれ、これはこれってことでケジメを付けたよって示さなきゃならないんだ。それに葛葉なら封魔管とかあるでしょ。わざわざ制作コストのかかる式神とか必要ないでしょ』

 

「それが、葛葉から一応それっぽいものはもらったんですけど、使い方がわからないんですよ」

 

以前に渡された管を神主に見せる。

細長く華奢に見えるそれは意外なほどに頑丈で、中に悪魔が封印されてるかもと考えると、強引に開けることもためらわれた。

 

『ふうん、妙な封印がかけられてるね。特定の条件を満たした時に開くようになってるみたいだ。まあ、これを使えるくらい強くなれってことじゃないかな?期待されてるみたいだね』

 

「そうなんですかね?」

 

渡された状況を思い出すが、そんな感じではなかったと思う。

 

『まあ、とにかく、ボーナスには何が欲しいか考えておいてね。本体の方が忙しくなってきたし、今日はこの辺で帰るよ。じゃあ、またね』

 

小さな神主の姿が一枚の紙ぺらになり、一瞬で燃え尽きた。

相変わらず忙しい人のようだ。

 

「ボーナスか。何にしようかなあ」

 

武器は七星村正があるし、やはりここは装備にしておくべきだろうか。

俺には何が必要か、教官や葛葉に聞いてみるのもいいだろう。

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