転生したらメガテン世界だった orz   作:天坂クリオ

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美少女クズノハは葛葉なのか

「ああ、また女子が群がってるよ。アレじゃあ今日も話せそうにないな」

 

教室の後方かつ窓際。いわゆる主人公ポジションの席にクズノハが座ってた。それを囲む壁のように女子が集まっている。

モデルというか作り物の人形のような外見なので、近づき難い雰囲気もある。

 

デビルサマナーの【葛葉】と関係があるのか探りたいが、今は無理そうだ。

クラスメイトならば話す機会はあるだろうし、気長に待とう。

 

そう思った直後、射貫かれるようなプレッシャーを感じた。

反射的に顔を向けると、クズノハが周囲を囲む女子の隙間からこちらをガン見している。

それは数秒続いたかと思うと、興味をなくしたかのようにフィッと前を向いてしまった。

 

俺は深呼吸をしたことで、自分が息を止めていたことに気がついた。

今のことについて話そうと山本の方を見るが、気付いてないのか別なクラスメイトと話をしていた。

さりげなく周囲を見渡すと、俺とクズノハについて誰も気にしていなかった。

 

予鈴が鳴り響き、みんなが自分の席へと戻っていく。

 

不気味なものを感じながらも、俺も自分の席についた。

 

 

勉強でも何でも、自分の成長を感じれるものは面白い。それが押しつけられたものでなく、自分で努力して勝ち取ったものなら最高だ。

寝不足や体調不良などは成長を大きく邪魔するので、健康的な生活をするよう頑張っている。

これがとても重要だと最初から知っているのも、転生のいいところだ。

それに学校の授業だけで成績が保てれば、余った時間を自分の好きなように使える。遊んでもいいし、勉強してもいいのだ。

押しつけのない時間は最高だ。

 

そんな風にいつも通り真面目に板書をノートに書き写していると、机の上に奇妙なモノがニュルリと滑り込んできた。

蛇のように長い体だが、白いふわふわの毛並みと四本の足を持っている。そして首から上が真っ黒で、狐顔に赤い縁取りのような模様がある。

 

俺はコイツを知っている。メガテンに出てきた【魔獣:イヌガミ】だ。

人に使役され、取り憑いて凶暴化させたりする妖怪だ。

 

それが机の上に、折り紙の鶴を転がした。

何かと思って手に取ると、イヌガミはそれを鼻先で指し示す。

開けってことだろうか。

 

折り鶴を広げみると、内側の白地に流暢な文字が書かれていた。

 

『放課後に、屋上へ』

 

これはつまり呼び出しってヤツだろうか。

 

イヌガミは机から飛び降りると、床を滑るように駆け抜けていった。

クズノハの方を見るが、普通に前を向いて授業を受けている。

 

妖怪を使役しているということは、やっぱりあいつはあの【葛葉】なのだろう。

とりあえず屋上に行く時は、警戒しておくことにしよう。

 

 

それ以降は何もなく時間は過ぎていき、放課後になった。

普段ならば部活があるのだが、まだ体調が万全じゃないから休むと連絡してある。

だからこのまま屋上へ行ってもいいのだが、問題はクズノハだった。

 

わざわざ屋上へ呼び出すのは、目立たないようにするためだろうと思っていた。だが帰りのホームルームが終わるとすぐに、俺の席のすぐ近くにやってきた。

 

「えっと、何か用?」

 

クラスメイトに注目されるけどいいのか?と視線で問いかけたつもりだが、わかっているのかいないのか、人形のような顔でじっと見つめてくる。

美人が真顔で見つめてくるのは、けっこう怖い。

 

もしかして一緒に屋上へ行くつもりか?

メモにあった『屋上へ』って、案内しろって意味なのか?

 

クラスメイトに変に勘ぐられないよう時間をずらして移動するつもりだったのだが、この分だと無理そうだ。

いつまでもこのままでいる方が目立つ。しかたない。

教室を出ようとする俺の後ろを、クズノハはしっかり付いてくる。こっちを見てくるクラスメイトに手を振りつつ、教室を出た。

 

 

 

屋上は立ち入り禁止になっているので、誰もいなかった。

本当だったらカギが閉まっているはずなのだが、なぜか開いていた。

 

広い屋上の中央で、俺はクズノハと向かい合う。

クズノハはこちらをじっと見るだけだったので、俺から口を開いた。

 

「クズノハさん。確認のために聞くけど、昼間のイヌガミはクズノハさんの使い魔だよね」

 

「……」

 

クズノハはわずかに目を見開いたように見えた。

 

「クズノハさんって、もしかして霊能力者の一族だったりする?イヌガミの他にも使い魔がいたりする?よかったら見せてもらいたいんだけど、いいかな?ああ、ちなみに俺はおととい霊能力に目覚めたばっかりでさ、昔からちょっと勘がいい方だったんだけど、なんとなく感じていたものがハッキリ見えるようになって色々と新鮮なんだ。でも霊の対処法とかあんまりよくわかってないから、よければ教えてくれると助かるんだけど……」

 

しゃべりながら一歩近づくと大げさに後ずさりされたので、熱くなり過ぎたことに気がついた。

 

「ご、ごめん。つい熱が入りすぎたみたいだ。ちょっとウザかったよね」

 

「……」

 

クズノハは黙ったままうつむいている。ドン引きされたようだ。

と思っていたら、急に顔を上げた。

 

「うるさいヤツじゃのう。いきなりベチャクチャ言われても、すぐに答えられるわけなかろ。もう少し常識のあるヤツかと思っておったが、ワシの見る目が曇ったかのう」

 

キレイな顔から出てきたのは、辛辣な言葉だった。

 

「く、クズノハさん!?」

 

「黙れ。質問はワシがする。貴様はそれに正直に答えるのじゃ。よいな?」

 

言葉に妙な圧力が感じられる。ここはとりあえず、素直にうなずいておく。

 

「よし、まず貴様は、ワシのイヌガミが見えていたと言ったな。それは本当か?」

 

「本当だ。それに今も……」

 

クズノハが急に雰囲気が変わってしゃべり出した時。うつむいていた顔を上げる直前に、その頭の上に出現したそれを指さした。

 

「クズノハさんの頭にある黒いイヌミミ。それってイヌガミのだろ?」

 

「はっ、イヌミミ?何を言っておる。そんなものあるわけ……。なっ!?なんじゃコレ!」

 

気付いていなかったのか。

自分の頭の上に手をやって、ぴこぴこ動くイヌミミを確かめている。

 

「雰囲気が変わったような気がしたけど、イヌガミを自分に憑依させたのか。イヌミミかわいいじゃん」

 

「このワシに嫌味を言うとは貴様は命知らずだな。一般人でなければ燃やしてやるところじゃぞ」

 

本心から言ったのだけれど、親の仇を見るような目を向けられてしまった。

 

「まあいい、続けるぞ。貴様はおととい霊能力に目覚めたとか言っておったが、それは本当か?本当ならばなぜ突然に目覚めたのかを答えよ」

 

ふむ。覚醒のこと今さら隠せることじゃないけれど、どこまで話していいのだろうか。

前世の記憶があるとか言ったら、心の病を疑ってくるだろうか。

 

「昔から不思議なモノをなんとなく感じることがあってね。ネットで検索してたら偶然にも同じような経験をしたことがある人たちの掲示板を見つけたんだ。そこで話をしたら幾つか審査をされて、合格したら覚醒修行に招待されたんだ」

 

「掲示板?なんじゃそれは」

 

「ものすごく簡単に説明すると、ツブヤッターみたいなものかな。匿名で色々と書き込めて、同じ掲示板を見てる人たちと会話ができる。情報交換もできるけど、顔が見えないから騙されないよう気をつけなきゃいけないのも同じかな」

 

「ツブヤッター?」

 

「そこから説明しなきゃならないの??」

 

クズノハのお嬢様は、どうやらかなり世間から乖離しているようだった。

 

一般的な話題は後回しにして、向こうが知りたがったことを答える。

修行場は富士山の麓の神社だったと話すと、納得してくれたようだ。

 

「優秀な跡継ぎがいると御婆様から聞いたことがある。霊場としても悪くないから、適切な方法ならば覚醒も可能じゃろうな。じゃが、そのことについて報告がなかったのが問題じゃな。報告されとればわざわざワシが駆り出されることもなかったはずじゃ」

 

「クズノハは誰かから命令されて来たってことか?」

 

「まあ、そうじゃな。本家からの指令は拒否なぞできぬ。外の世界を知ることができるいい機会じゃと思ったんじゃが、こうもあっさりカタが付くとは思ってもおらなんだ」

 

クズノハはため息をついた。

 

「ただの報告漏れとは、肩すかしもいいところじゃな。まさか破格の霊地を管理する神社が、次代を外部から選ぶとは思わなかったのう。む、じゃが代替わりしてまだ時は経っておらぬはずでは?……のう、貴様は覚醒するまで何年かかったんじゃ?」

 

「こないだの三連休だけだぞ。昨日は修行の反動で一日動けなかったけど」

 

「は?つまりなんじゃ、貴様はたった三日で覚醒したというのか??」

 

「そうだよ。俺も早いほうだけど、最速では一日で覚醒した人もいるらしい。一年以上続けてる人もいるらしいから、かなり運が良かったみたいだな」

 

「待て待て待つのじゃ。覚醒してる者が何人もいて、さらに今も修行を続けておる者たちが多数いるじゃと!?」

 

なんかすごい大変なことを聞いたような顔をしているが、そんなにすごいことなのだろうか。

 

「普通の霊場でだって、修行をしてる人たちはいっぱいいるだろ?そんなに驚くようなことじゃないだろ」

 

「いやいやいやいや。そんなことあるわけないじゃろ。普通の修行は己の精神を高めるためのもの。覚醒は副次的なものでしかないわ。というか覚醒なぞ狙ってできるものではない。いわんや覚醒修行なぞ、できぬことを謳った誇大広告でしかない」

 

「でも俺は覚醒してるし」

 

「ウソじゃろ……」

 

ウソだと言われても困る。

 

「詳しいことは、そっちで聞いてもらっていいかな?俺はどこまで答えていいか分からないし。こっちでもいちおう話を通しておくからさあ」

 

「ぐぬぬ。こんな報告しても、本家が素直に受け取るとは到底思えぬ。そうじゃ、貴様が出頭して直接話をすれば……」

 

『お嬢。それは無理ダ』

 

クズノハからイヌミミが消えたかと思うと、イヌガミがするりと顔を出した。

 

『本家ガ一般人に屋敷の敷居をまたがせるわけがないダロ。まず今日のことを報告して、その後のことは本家のヤツラに考えさせればイイ』

 

「……!……!」

 

イヌガミに抗議するように、クズノハが手を振り回している。

 

『それにお嬢だって、もう少しシャバの空気を味わっていたいダロ。コイツはその理由にピッタリだと思うゼ』

 

「…………」

 

クズノハに睨まれたので、笑顔で親指をグッと立てて見せた。

 

『オマエ、オレが見えるんだったな。オレは普通の人間には見えないから、代わりにお嬢のことを助けてやってくれ。いいダロ?』

 

「なら代わりに、霊能力の扱い方を教えてくれよ。ただ悪魔が見えるようになっただけじゃあ意味がないからな」

 

『それぐらいならお安いご用ダ。なあお嬢』

 

「!?」

 

『よし、決まりダナ。契約完了だ。コンゴトモヨロシクダゼ』

 

イヌガミがクズノハのポケットに滑り込み、金属の管を取り出した。

 

『コイツはお守りダ。契約書の代わりに、一本持っておきな』

 

「サンキュー。でも、勝手に話を進めていいのか?」

 

「……!……!」

 

クズノハがイヌガミを捕まえようとしているが、慣れた遊びのように避けられている。

 

『このくらいなら、お嬢の裁量の範囲内ダ。本家の意向に反しているわけじゃナイ。もしダメだったらオレが消されるだけダゼ』

 

「さらっと言うことかよ。ダメだったらすぐに返すから言ってくれよ」

 

『ハハハ。消されたら幽霊になって回収しに来るサ。おっと、お嬢。そろそろお迎えが来る時間ダゼ。じゃあなニンゲン、頼んだゼ』

 

イヌガミはクズノハの袖にするりと入った。

クズノハは不満顔でお腹を叩いていたが、俺に気がつくと軽く睨んできた。

 

「改めてよろしく。それと、俺の名前は伊吹雄利だ。貴様じゃなくて、名前で呼んでくれよ」

 

「……。葛葉、小夜(さや)

 

小さな声で名乗った後、葛葉小夜は走って屋上から出ていった。

 

 

◇◇◇

 

6:名無しの転生者

覚醒したけど、まだ実感ないよな。近所で浮遊霊見つけたから叩いたけど、経験値が少しも溜まった気がしない。

 

7:名無しの転生者

覚醒して初めて家に地縛霊がいたことが分かった。部屋を間違えたかと思って謝ったら、漫才みたいなノリで止められたぞ。

 

8:名無しの転生者

>>7 なにそれ詳しく

 

10:名無しの転生者

いや普通にドア開けたらすぐ目の前にいて、「あっ、すいません」って閉めようとしたら「ちょいちょいちょい、ここ自分の家やで」って言われた。

 

11:名無しの転生者

>>10 地縛霊になってもツッコミが上手いとか、さすが関西人だな

 

13:名無しの転生者

話してみたらすごい面白かったんで、今はルームシェアしてる。食費も手間も掛からない、いつでも話し相手になってくれる自宅警備員は最高だぞ。

 

14:名無しの転生者

>>13 体調に変化はないか?生命力吸われてないか健康診断させてほしい。

 

15:名無しの転生者

そんなことより、悪魔が出やすい場所を教えてくれ。レベル上げもマッカ稼ぎもできないんじゃ覚醒して意味ないんじゃ。

 

16:名無しの転生者

>>14 そのデータ共有してくれ。霊に憑かれた人間の傾向が分かれば病院で霊の居場所が見つけられるようになるかもしれん。

 

17:名無しの転生者

なにそれ面白そう。俺にも教えてくれ

 

18:名無しの転生者

俺も知りたい

 

19:名無しの転生者

俺も俺も

 

20:名無しの転生者

じゃあ俺も

 

21:名無しの転生者

>>18 >>19 >>20 お前らデータ分析できないだろ。座ってろ。

 

22:名無しの転生者

市街地で修行になりそうな場所ないのか?走り込みしかできなくて体重が減っていくばかりなんだが。

 

23:名無しの転生者

俺もかつてないほど運動してる。やっぱモチベーションがあると違うな。終末世界が待ち遠しい。

 

25:名無しの転生者

こうも何もないと、本当にこの世界がメガテン世界観なのか分からんな。実は平和な普通の世界だったりしない?

 

26:名無しの転生者

>>25 帰国子女のワイ、メシア教徒に勧誘されたことがある。

 

27:名無しの転生者

>>25 東北民だけど子供の頃に妖怪と遊んだことあるぞ。覚醒したらまた会えるかとワクワクしてる。

 

28:名無しの新人転生者

葛葉の関係者と会いました。

 

30:名無しの転生者

>>26 >>27 >>28 なにそれkwsk

 

31:名無しの転生者 >>26

ワイは普通に道歩いてたとこを勧誘されただけやで。普通に断ったら普通に帰ってったから面白い話はなしや。

 

32:名無しの新人転生者 >>28

葛葉の関係者が学校に来て、いつ覚醒したのかとか聞かれました。アラヤ神社で修行したって言ったら疑問符ついてたけど納得してもらえました。

あとこの掲示板についてフワッと教えたけど、ネットについてあまり詳しく分かってなかったような。

 

33:名無しの転生者

>>32 ココのこと教えたのはマズくないか?

 

34:名無しの転生者

>>33 そもそも入り口のパスワードが転生者じゃないと解けないだろ。似たような場所もあるし、ココが見つかる可能性は低いと思われ。

 

35:名無しの転生者

せやな。でも軽率に話を広めない方がええのは間違いないやで。

 

36:名無しの新人転生者

ココのことをどこまでなら話していいとか、ガイドラインってありますか?

 

38:名無しの転生者

>>36 個人の裁量で判断してください。

 

39:名無しの転生者

>>38 役立たずすぎてワロタww

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