転生したらメガテン世界だった orz   作:天坂クリオ

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人間はしぶといよね

クトゥルーの出現以降、世界各地で悪魔が発生した。

竜脈の活性化、GPの上昇、メシア教過激派による大悪魔の強制召喚。それらが相互に影響し合い、世界は終末へと加速していた。

 

そんな不安定な世界情勢ではあるが、日本は他国より落ち着いていた。

他国の文化を柔軟に受け入れる国民性という部分もあったかもしれないが、一番の理由は【アサイラム製薬】と【株式会社ドゥームス】による情報操作にあった。

 

俺たち【転生者】が多数関わるこの二社は多数の中小企業を統合していて、今や日本になくてはならない特大企業になっている。

それらが総力を挙げて、ご老人向けのテレビから若者向けの雑誌にまで広告を出し、『終末が来ても大丈夫』という空気を作り出していた。

 

そのおかげで、年が変わる前に我らが軽子坂学園は再開。世間でもクリスマスや初詣などのイベントもいつものように行われた。

 

高校三年を前にして進路指導では【人外ハンター】の道が提示され、厨二病を未だに抱える学友たちがこぞって体験イベントに参加した。

大半はドゥームスの最新VR技術を使ったダンジョンシミュレーターでボコボコにされ、一方的に死亡判定を突きつけられた。

それでもくじけない者たちだけが、辛い訓練と退屈な座学のあるハンター塾への入塾パンフレットを手渡された。

彼らが無事に覚醒できることを祈ろう。

 

友人の山本に「お前はどうするんだ?」と聞かれたが、「すでにハンターライセンス持ってる」と言って黒札を見せると、「ウッソだろ!?」裏切られたような顔をしていた。

 

親にも人外ハンターをやっていることを話したが、「そうじゃないかと思っていた」と言われたのでこっちが驚いた。

普段から泊まり込みのバイトと言って出かけていたし、帰ってくるたびにたくましくなっていたから薄々そうだと思っていたとか。

 

しかもそのバイト先であるドゥームスとアサイラムが、最近になって悪魔の実在とハンターの募集を始めたものだから、これはもう間違いないとなったらしい。

 

「お前の人生なんだから、好きにやればいい」と言ってくれるあたり、理解のある両親で本当によかった。

 

「ちなみに付き合っている子がいて」

 

「知ってる」

 

「その子と婚約することになって」

 

「もうそこまで行ってるのか!?」

 

「先方の家には挨拶に行ってて」

 

「この前の時か!」

 

「先方は人外ハンターみたいなことを昔からやってる伝統ある家です」

 

「これから緊急家族会議を始める」

 

さすがにスルーしてくれませんでした。

 

…………

 

頑張って両親を説得した結果、「お前の人生なんだから好きにやればいいんじゃないの?」と思考放棄した(わかってくれた)ようだった。

 

自分でもさすがに自由すぎるな?思う。ホント申し訳ない。

 

俺たちはそんな平和な日常を守るためにも、世界の崩壊をなんとかすべく戦わなければならない。

 

俺も十七代目葛葉ライドウとして、アサイラムや根願寺からの依頼をこなしていた。

特に根願寺からは、塩漬けになっていた異界の討伐という面倒なものが多かった。

すぐに対処していればいいものの、手が足りないという理由で放置されていた異界は成長が進んでいて、制作者を問い詰めたくなるようなギミックが発生していたりする。

 

さらにGPが上昇したことで悪魔のレベルも上がっており、一人だと危ない場面も出てきた。

なので小夜ちゃんと仲魔のレベリングをメインに考え、敵が弱い異界から順番に攻略していくことにした。

 

◇◇◇

 

【異界 裏・羅生門】

 

「トドメだ、【ブレイブザッパー】!」

 

『云おおおおおおおお怨』

 

愛刀が大型怨霊の核を切り裂くと、真っ二つになった怨霊が爆散した。

 

舞い上がる血煙を外套で防ぐ。

バラ撒かれる怨念は結界がある程度抑えているし、俺は守護霊(ガーディアン)が無効化してくれる。

 

人々の悪意を収集し蓄積させた怨霊は、高いHPと呪殺を連打してくるという嫌らしい特性を持っていたが、俺にとっては戦い易い相手だった。

 

倒れた怨霊の向こう側で、自称【現代に蘇った蘆屋道満】が睨みつけてくる。

 

「ンンン、どうやらここまでのようですね。仕方がありません、今回は拙僧の負けということでいいでしょう。ですが、これで終わりと思わないことです。いずれ第二第三の拙僧が……」

 

その言葉を遮って、スマホを取り出しコールする。

 

「悪いが、そっちも対策済みだ」

 

「ンンン?それはどういう意味でございましょうか」

 

道満は首をかしげる。だが騙されてはいけない、アレはとぼけているだけだ。

呼び出した相手は3コールで出てくれたので、道満にも聞こえるようにスピーカーモードにする。

 

『おうライドウ、こっちの形代は処分したったで。にしても、貸してもろたこの【コッパテング】なかなか役に立つやないか。コイツ後でオレにくれへん?』

 

「借り物だから無理だ。欲しいなら自分で仲魔に勧誘しろ」

 

『えー、そんなケチ言わんといて。オレとライドウの仲やん。あ、他のヤツラも処分終わったみたいや。コッパテングも全部見つけた言うとる』

 

「了解。じゃあこっちもそろそろ終わらせるから、後始末の準備をしといてくれ」

 

『はいはーい。ヒマしとるヤツラのケツを蹴飛ばしとくわ。オレもちゃんと仕事したんやし、後で修行に付き合ってや』

 

「全部終わってからな」

 

通話を終えてから、蘆屋道満に向き直る。

 

「聞こえたとおり、お前の形代(スペア)は全部処分した。あと残っているのは、今その体だけだ」

 

「なるほど、木っ端とはいえ天狗を使役し、その神通力で拙僧の運命を見通したのですか。デビルサマナーとはなんと忌々しい者どもでしょうか。ですが拙僧の行く先をなくしたところで終わりとは思わない方がよろしいですぞ。今この場にいる貴様を食い殺してから逃げおおせればいいだけのこと。この【裏・羅生門】にて収集せしめた怨念悪霊にて、拙僧は新たなる神へと成り上がってみせましょうぞ」

 

蘆屋道満の妖気がふくれあがる。人の皮がめくれ、ミイラじみたおぞましい姿になる。

追い詰められた獣は凶暴になると聞くが、その獣が高い知性と残虐性を持っていたらどうなるか、その答えが目の前に現れた。

 

『ンンンンンン。熟成不足か、いささか不格好ではありますが、すべて終えてからまた力を蓄え直せばいいだけのこと。さあ、新しき葛葉ライドウよ。新しき神へと至るこの【髑髏烏帽子蘆屋道満】の力を思い知るがいい』

 

「はぐれの転生者か、それとも本物の悪霊に乗っ取られたか現地民か知らないが、そこまで行ったらもう戻れないだろう。せめてこれ以上罪を重ねる前に終わらせてやる」

 

魔封管から【サマエル】と【クダ】を召喚する。

クダにタルカジャとスクンダを使わせて、戦力差を広げる。

 

サマエルは主に回復役だ。今までの経験でそこそこ育ってはいるのだが、主戦力にするにはまだ足りなかった。

 

道満が怨霊の塊をはき出す。それはゴーストや鎧武者などの形をとって襲いかかってきた。

大量の手下の後ろから範囲攻撃をしてくる戦略のようで、ただひたすらうっとおしい。

怨霊たちを片付けると、また新たな怨霊をはき出してくる。

倒しても倒しても終わらないイタチごっこだ。

 

ただ、本人が手下にくらべてあまり強くないので、負ける心配はまったくない。

 

たぶん異界の維持と隠蔽工作、配下の悪魔の調整、さらには時間稼ぎのための外部への破壊工作など、手広くやりすぎたんだろう。

つまりはリソース不足ということだ。

 

配下が意外に育っているので、このまま放っておいたらマズかったかもしれない。

 

小夜ちゃんには、形代捜索部隊の護衛をしつつ湧いている悪魔を狩ってもらっている。

雑魚とはいえそれなりに強くしかも数が多い敵を相手に、味方を守りながら戦っているのだ。俺がボスを早く倒せばそれだけ、向こうが楽になる。

 

大技で一息にトドメを刺すしかないだろう。

 

「お前ひとりにいつまでも付き合っていられないんだ。恨むなら、神を名乗った自分の不明を恨め」

 

愛刀を抜き、そこに霊力を乗せていく。

以前の異界で、伊吹童子の力を使ったことで消耗した七星村正は、作者であるムラマサの手によってより強い刀へと生まれ変わった。

 

俺の血と多数のフォルマを注ぎ込んで鍛えたそれは、ムラマサ本人が認める最高の逸品に仕上がった。

 

人が作った至高の名刀。

神をも斬れる人斬り包丁。

 

その名は……。

 

「これが俺の【都牟刈村正】(つむかりむらまさ)だ!」

 

大きく踏み込み、刀を振り抜く。

 

『この程度の攻撃が何の……なん……だと?』

 

受け止めようとしたその手どころか、頭まで一気に両断する。

 

ヤマタノオロチの尾から出た草薙剣と同一視される都牟刈の太刀。それを再現した刀は霊力を込めて振るえば、神さえ斬り裂く。

 

普通の刀だったなら止められただろう。

だが都牟刈村正はそうはならない。

 

蘆屋道満の身に無理矢理詰め込まれた怨霊が、傷口から噴水のように吹き出していく。

頭を両側から抑えても、斬られた傷はふさがらない。

 

『あああ、ダメです、いけせん、いくな、ありえない。私があれほど時間をかけて集めたのに、魂たちが逃げていく。私の努力が、金が、時間が、全て無駄になってしまう!今度こそはと反省し、地道にコツコツ頑張ってきたのに。強く、自由な、素晴らしい存在になれるはずだったのに。どうして、私の邪魔をする!どうして、私を傷つける!私は、ただ幸せになりたかっただけなのに!!』

 

「話が長い!いい加減に往生しやがれ!!」

 

白く輝く都牟刈村正をもう一度、叩きつけるように振り下ろす。

 

『ぎにゃあああぁぁぁ!』

 

蘆屋道満はため込んだ怨霊ごと爆発四散した。

 

「お前の幸福は、他人から奪って手に入れたものだからだ。お前はその本当の価値が分からないから、手に入れても色あせて見える。だから、また別の幸福が光り輝いて見える。自分で作り上げたワケじゃない幸福が長続きするはずがないだろ」

 

散った後だから、もう声は届いてはいないかもしれない。

だが生き残ろうとする執念がすごかったので、もしかしたらまだ魂の欠片でも残しているかもしれない。

 

念のために、後でもう一度調査をさせよう。

 

…………

 

異界の主に収まっていた蘆屋道満を倒したことにより、配下の悪魔たちは統率を失い個別に討伐されていった。

これで今回の依頼は完了だ。後始末は葛葉の処理部隊がやってくれる。

 

小夜ちゃんと合流し根願寺の担当者へ連絡用の式神を送ったところで、スマホにメールが届いた。

 

送ってきたのは神主で、タイトルを見て思わず変な顔をしてしまった。『【極秘】周回ニキの告白【一人で見てね】』

 

なんだこれは。どう反応すればいいのだ。

 

「なにやら変な顔をしておるが、どうかしたのか?」

 

「うおっ、小夜ちゃん!?いや、なんでもないよ、ほんとに。いやあ、今日の仕事も大変だったなー。帰ってゆっくり休みたいなー」

 

「そうか?ならば早く帰るとしよう」

 

なんとか誤魔化しつつどうするべきか考える。

周回ニキは小夜ちゃんの父親だ。なら見せた方がいい気もするが、タイトルにわざわざ一人で見てと書いてるのだから、そうした方がいいかもしれない。

とりあえず中身を見てから判断するしかない。

重要な部分だけ俺から伝えればいい。そうしよう。




・都牟刈村正(専用装備)
武器スキル:敵単体に特大威力の万能属性攻撃。クリティカル時に威力上昇。
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