転生したらメガテン世界だった orz   作:天坂クリオ

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すいません。今回は短いです。
コロナは思った以上に長引くので、予防はしっかりしてくださいね。
マジでやる気がそがれます。


ベルの因子

最後の暴走COMPを守っていたボス悪魔は少しだけ強かったが、問題なく倒すことができた。

これで渋谷の地下に配置されていた暴走COMPは全て破壊できたはずだ。

 

「ふう。これで低レベルのペルソナ使いが悪魔に殺される危険は排除できたな。後は停電に関係してそうな、新宿衛生病院の入院患者か」

 

「そっちは他の人が向かってくれておるんじゃろ?もう時間が遅くなっておるし、わしらは今日のところはもう休んだ方が良いと思うのじゃが」

 

「そうだけど、気になるんだよなあ」

 

今日は完全に推理を間違えた。

絶対に渋谷の地下鉄で間違いないと思っていたのに、実際は俺たちがいた新宿の近くだったのだ。

どうりでラプラスメールの予言で並んでいたわけだよ。あっちが終わってからすぐに向かえば、連続して解決できたんだから。

 

しかし新宿衛生病院はゲームに出てくる重要な場所なので、もしかしたら強い敵がいるかもしれない。ボス悪魔とか配置されてる可能性が高いだろう。

それならば今からでも俺が行った方がいいのではないだろうか。

 

なんて思っていたら、地上に出たところでメールが来た。

 

『新宿衛生病院の件、対象の確保が完了しました。衰弱していますが、命に別状はありません』

 

はい、終わり。今日はもう寝ようぜ。

 

◇◇◇

 

「ヴェルドレ司祭様、メリッサ・ベルが人外ハンターどもに奪われました。処理装置も破壊されたため、【ベルの因子】の回収は不可能です」

 

「ふむ、予想よりだいぶ早い。アレはたしか、電力を魔力にするだけの無害な変換装置だったはずだが、彼らはそんなものまで討伐の対象とするのか」

 

「アサイラムの愚かな不信心者どもめ。どこまで我々の邪魔をすれば気が済むんだ。あいつらが今までのんきに暮らしてこれたのは、我々が世界の平和を守ってきたからなんだぞ」

 

「落ち着きなさい。迷える子羊に見えるのは狭い牧場のみ。広大な世界を知る我らが神のご意思を理解できるわけがありません。我々は神のご意思に従って、粛々と進めなければなりません」

 

「失礼しました、ヴェルドレ司祭様。残された【ベルの因子】を持つ者は多くありません。こうなっては時間をかけて【ベルの悪魔】の成熟を待つしかありません」

 

「時間、か」

 

ヴェルドレ司祭はため息をつく。

そもそも残されていた時間が少なかったからこそ、彼らはこのような計画を実行することになったのだ。

 

【ベルの悪魔】計画。

それはナイア教授という天才が残した計画案を、天才にはとうてい届かない俗物たちが改造した妥協案だった。

 

不完全な天使召喚プログラムでは強力な悪魔を喚び出すことが難しい。ならば、強力な悪魔を自分たちで作り出せばいい。

まず【ベルの因子】を持つものを複数造り、その力を一体の悪魔に集約させることで強力な個体を作り出す。

壺毒の呪法にも似たこの儀式は、呪術にうとい者たちでも理解がしやすかった。

 

さらに【ベルの因子】を持っているなら、ただの人間であっても素体にできるという点が都合が良かった。

 

かくして、逆転の一手として【ベルの悪魔】計画は進められることとなった。

【ベルの因子】を持つ被検体が集められ、様々な方法でその因子を強化し凶悪な悪魔に変えていく。

もちろん簡単ではなかったが、追い詰められたメシア教過激派にとっては、その課程で出る犠牲は全く気にしなかった。

 

失敗した被検体は【ベルの悪魔】を喚び出すための生贄に使える。実に無駄が無いではないか。その程度の認識だった。

 

メシア教過激派の勢力が弱体化していたことで、犠牲となる人が大きく増えなかったのは世間的には幸運だった。

かつての過激派であれば犠牲者は何倍にも増えていただろう。だがそもそもこんな不完全な計画に手を出したのは、弱体化していたからなのだ。

 

ともあれ計画は進み、数体の【ベルの因子】を持つ人間と悪魔が完成した。

完成はしたがどれも弱く不完全であり、完全なものとするためにはより多くの生贄が必要だった。

 

だが過激派にはもう生贄に十分なほどの信者はいない。

ならばどうするか。こんなに頑張っているのに不幸な自分たちとは対照的に、のんきに暮らしている不信心者どもに世界の真実を教えるとともに神の世界のための礎となってもらえばいい。

そう結論づけられた。

 

自分たちの理想に基づいた、理想的な結果が約束された計画。

だがそれはあくまで理想であり、現実がその通りにいくわけがない。

 

【ベルの悪魔】は必ず失敗するだろう。

人生の苦労を知り、また小心者であるヴェルドレはそう確信していた。

だが司祭程度の自分ではそれを中止させることなどできはしない。ならばむしろ積極的に推進することでその手綱を握り、自分のために利用しようとしていた。

 

「今ある全てを使いなさい」

 

「司祭様、いま何とおっしゃいましたか?」

 

信者の問いかけに、ヴェルドレはいかめしい声で答える。

 

「この計画には、我々の未来がかかっている。成功すれば世界各地にいる同胞に希望を与えるであろうし、そうなることを支援者の方々に期待されている。我々の献身こそが、世界を照らす光となるのだ。そのために、私もこの身体の全てを投げ出そう」

 

「司祭様……!」

 

感動に身を震わせる信者に向けて、ヴェルドレは最後の指示を出す。

 

「来たるべき神の世のために、我々の全てを投げ出すのだ」

 

信者は司祭の言葉を伝えるために、部屋を飛び出していく。

この指示により都内に残った過激派は崩壊するだろう。だがヴェルドレにはそんなことはもう関係がなくなる。

 

「全ては平穏のために必要なのだ」

 

ヴェルドレは水で満たされた棺をなでる。

その中では、人形のような姿の大きな女性が眠っていた。

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