転生したらメガテン世界だった orz   作:天坂クリオ

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嵐の前の静けさ

【神宮外苑】

 

ラプラスメールの情報を得てから車に乗り、移動しながら掲示板に書き込みをしていたのだが、降りる直前で着信があった。

 

「池袋でまた悪魔が暴れ出した?え、ただのケンカ?……いや、バーテンダーがダークサマナーと戦ってるって意味わからないんだけど」

 

通信端末(COMP)越しに派手な戦闘音が聞こえるが、報告者は慌てている様子は無い。その上はやし立てるような応援の声まで聞こえる。

報告の通り個人同士の争いであり、それを楽しむ野次馬がいるということなのだろう。

 

一方はどこからか手に入れたスマートCOMPを使って悪魔を使役する一般青年。

人外ハンターでもなくアサイラムにも所属していないデビルサマナーということはつまり、ダークサマナーという分類になる。

 

もう一方は一応は人外ハンターらしいのだが、どうも未覚醒の部類らしい。それなのに電柱を引っこ抜いて悪魔をぶっ飛ばしているとのことで、「なんで?」としか感想が出てこない。

そもそも未覚醒なのに悪魔見えてるの?違法なアイテムとかヤバイ薬とか使ってない?

 

言葉選びに苦労しながら尋ねるが、報告者は『あの人にはそんな心配いらないッスよ』と自信満々に答えてくれた。

なんの解決にもなっていない。

 

二人は以前からの顔見知りでよくケンカをしているらしく、今回もその延長だと認識されているようだ。

だがいくら一般人の避難は完了していると言っても、悪魔を使った戦闘を放っておくわけにもいかない。

なので止められないか聞いたが、『あの二人の戦争(ケンカ)を止められるヤツなんているわけないッス。オレらにできるのは応援と後片付けくらいッスね』と自慢げな返事をされて、思わずため息が出た。

 

「なにやら面倒なことになっておるようじゃな」

 

「聞こえてた?これからボス戦が始まりそうって時に、人外ハンター……普通じゃ無いハンターとダークサマナーがケンカを始めたらしい。仲裁して帰ってくるだけなら時間的に難しくないだろうけど、そうなると前準備やってる時間が無くなりそうだ」

 

神主に連絡はしてあるが、あくまでボスと戦うのは俺ということになっている。

ラプラスメールから死亡予告が来なかったからという理由だが、そもそも葛葉ライドウが解決に当たっていると知られている以上やらない訳にはいかない。

 

池袋のケンカは放っておきたいが、戦闘による周囲の被害が大きいらしいので対処しなくてはいけなさそうだ。

ケンカしている二人はそこそこ実力があるようだし、止めるには相応のレベルが必要になる。

 

「では、わしが行こう」

 

「えっ、小夜が?」

 

「なんじゃ、わしが信頼できぬのか?これまでも別々にいくつも依頼をこなしておったではないか。それに今は昼日中の街の中じゃ。何かあっても、人は沢山おるじゃろ」

 

「まあそうだけど……」

 

時間がないのは間違いないし、それがベストなのも確かだ。

 

「……わかった、頼む。相手は普段から暴れてるような馬鹿二人らしいから、少しくらい乱暴にしても問題は無いと思う。文句言われたら俺の名前を出していいから」

 

「心配性じゃのう。でも悪い気はせぬな」

 

小夜は腕に抱きつき、それからネコのように首をすりつけてくる。

 

「その気持ちは素直に受け取っておくぞ。わしも離れたくはないが、今はワガママを言える時ではない。……よし、わしは満足した。こちらは任せた」

 

腕に残った暖かさとかがものすごく名残惜しかったが、しぶしぶ車から降りる。

車の中から手を振る小夜を見送ってから、外苑へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

およそ3時間後、俺は本題の過激派信者たちを見つけた端からボコって簀巻きにしていた。

警官に連れて行かれるメシア教過激派信者たちは、どこか憑きものが落ちたような顔をしていた。

彼らは天使族の悪魔を使役していたが、【アークエンジェル】や【プリンシパリティ】では相手にならなかった。

協力して【パワー】や【ヴァーチャー】を召喚してくるのもいたが、むしろ彼らを殺さないようにマグネタイトが枯れる前に倒す縛りがやっかいだった。

 

『オレサマのおかげだぞ。まあ天使はオレサマのエサでしかないからラクショーだがな。感謝しろよサマナー』

 

「わかってるよ、ありがとなサマエル」

 

『シシシ』

 

【邪神:サマエル】は俺とともに幾つもの依頼をこなしてきたからか、サイズ的にもかなり成長していた。

最初は大きめのアオダイショウくらいだったのが、今ではアナコンダくらいまで大きくなっている。

レベルも俺と小夜に次ぐ40超えの、主戦力の一角だった。

 

『これでオレサマの半身が見つかれば、完全な姿を取り戻せるんだがな』

 

「封印されてるんだから無理だろ。それに、今のままでも十分強いじゃないか。というか余計な力を持ったら、今度は俺がお前を封印することになるかもしれない。だから今までと同じように俺と一緒に成長してくれ」

 

『シュー。つまらないなあ。まあいいか。それよりも天使はもういないのか?』

 

【クダ】のギンコに探らせているが、もう信者も天使も残っていないようだ。この周辺の安全は確保されたと思っていいだろう。

 

つまらないと愚痴るサマエルを魔封管に戻そうとしたところで、紙きれが飛んでくるのが見えた。

あれはただの紙ではない。神主が作った連絡用の【シキガミ】だ。

 

『ライドウニキやっと見つけた。例の件だけど、やっと裏がとれたよ』

 

『例の件てなんだ?』

 

巻き付いてくるサマエルの頭をおさえつつ答える。

 

「メシア教が起こす事件が、俺たち【転生者】が知っている技術や計画に基づいているのが多いのが気になってたんだ。だからある仮説を立てて、その検証をアサイラムの運営に頼んでいたんだ」

 

『仮説?』

 

「難しいことじゃない。俺たちと同じ知識を持っているなら、向こうにも転生者がいるんじゃないかってだけだ」

 

これは実に順当な、あり得る推理だ。

 

『うんうん、当然だね。日本にもメシア教の教会はあるし、その身内に産まれた転生者もいるだろう。ボクとしては彼らも助けたかったんだけど』

 

「説得は不可能だろ。それこそ洗脳くらいしなくちゃ、味方にはなってくれないだろうな」

 

相手は腐っても一神教の大派閥の一つだった組織だ。信者の信仰心は堅いものだろう。

そんなところの身内に産まれてしまったら、救世主の再来だとかもてはやされて、ちやほやされてその気になっている可能性が高い。

 

『そうだったみたいだ。穏健派から聞いたんだけど、預言者と呼ばれる存在が産まれてから過激派が様々な計画を立て始めたらしい。ただ、現時点では実行不可能なものも多かったみたいだけどね』

 

「さもあらん」

 

メガテンというゲームは、発売された時代でも未来を先取りしたような設定が使われていることが多い。

インターネットが流行り始めた時代にすでにVR空間を使った交流の場を表現していたりするのだ。

そんなアイデアを提示されても、現実の常識がそこまでたどり着いていないのだから理解できる者は少ないだろう。

 

そう考えると、未来の技術を再現して広めた財閥系・技術者系転生者ってすごいんだな。

 

……話を戻そう。

そんな風な転生者が立てた計画のひとつが、今こうして現実に行われている。

こちらも知識があったからこそ対応できたが、そうじゃなかったら後手に回っていただろう。

それはいい。良くはないけど、対応できているから問題ない。今までは。

 

「今回の事件がデビサバだけならもう片付いている。でも、ラプラスメールにあった今日の事件の内容が問題だ」

 

『そうだね。新宿に現れるという【母】。そして比較的レベルの高い転生者でも死にかねないという強さ。ここから察すると、別のゲームのアイデアも伝えてそうだよな』

 

「新宿暗黒盆踊り……。うっ、頭が」

 

アクションゲームだったのが急に音ゲーになる某鬱ゲータイトルの三作目が脳裏をよぎる。

 

『複数いるわけじゃないから、盆踊りはしないだろうけど』

 

冗談じゃなく、本当に頭が痛くなりそうだ。

 

「今の状態だと、暗黒盆踊りみたいにバリア防御で対応しなくちゃいけなさそうなんですけど。食らったら即死の攻撃を失敗せずに防ぎ続ける自信が無い」

 

『暗黒?即死?なんだ、何の話をしているんだ??』

 

『ここに現れる【母】は、リズミカルな全方位攻撃を放ってくる可能性が高いのさ。そしてそれは同じ属性の広範囲攻撃で相殺するか自己の周囲に強固なバリアを張るしか防ぐ手立てはない。元ネタを知らないと理解しがたい内容だろうね』

 

サマエルが宇宙ネコみたいな顔をしている。割と貴重なシーンな気がするな。

 

『そんな感じでヤバそうな事態だけど、ラプラスメールはライドウニキの死亡は予言してないんだよね。本当は、何か対策があったりするんじゃないかい?』

 

シキガミの向こう側で、神主がニヤリと笑っている気がする。

 

「まあタイミング的に【母】は今回の事件と関連しているだろうから、このタイミングで進化した【ティンカー・ベル】が切り札になってそうな気はする」

 

【ピクシー】から進化した【ティンカー・ベル】は有名なアニメ風ではなく、古典的な妖精に近い姿をしていた。

これは仲魔にした後に人間(特に子供)に夢の粉を使わないよう言い含めた結果、原点に近い『金物の妖精』としての要素に寄ったのだろうと思う。

 

そんな話を休憩がてら続けた。

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