転生したらメガテン世界だった orz   作:天坂クリオ

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ウタが きこ える

 

騒ぎを起こしていたメシア教過激派は全て捕らえ、隠れ潜んだ悪魔がいないかと探知型のシキガミを動員して調べていた。そんなこんなで16時を過ぎた頃、ついに異変が起こった。

 

どこから歌声のようなものが響いてきた。

距離を取って調べていた者たちと目配せし合い、大多数が注目した場所は地下の排水溝だった。

 

暴走COMPの件もあるので、そこは真っ先に調べている。

その時は特に何も見つからなかったので、この異変は地下を通ってきたかあるいは……。

 

「地下施設の壁が何者かによって破壊されました。中から高魔力反応……大型の悪魔と推定されます」

 

「魔力を遮断する隔壁か?やはりここにも隠し神殿があったようだな」

 

対悪魔専門の捜査官の話を、移動式の統制室であるトレーラーの中で聞く。

彼らは人外ハンターのライセンスも持っている、公式の最前線で悪魔と戦う者たちである。

 

「敵のレベルは?」

 

「アサイラム基準で40以上と推定されます。ですが我々のD調査機器(デビルスカウター)ではそれ以上の詳しい数値はわかりません」

 

「ふっ、どちらにしろ我々にはそんなバケモノと戦う実力はない。というわけで、後は任せた」

 

捜査官はこちらを見てうなずく。

ですよねー。

 

「分かってますよ。それではみなさんも避難を始めてください」

 

「すまない。情報はシキガミを通じて適宜知らせるようにする」

 

捜査官の言葉を背に、トレーラーから降りる。

排水溝から聞こえる歌声が、だんだん大きくなってきている。破壊音も混じっていることから、直線的に地上に向かって来ているようだ。

 

悪魔の出現予想地点は野球場の中。何の目的があるのか分からないが、施設の中なら人目を避けられるだろう。

 

観客席に上がって待つ。

 

「出てこい。【サマエル】【ティンカー・ベル】」

 

『シシシ、いよいよだな。待ってたぜ』

 

『うう、何か嫌な感じが近づいて来るんだけど』

 

「その通りだ。お前の力が必要になるから、前に説明した通りに頼むぞ」

 

『はーい』

 

しぶしぶうなずくティンカー・ベル。

 

近づいてくる歌声とともに、球場の中央の地面が沈み始めた。

 

固められた地面だったはずが、まるで砂のように細かな粒子となって滑り落ちていく。

そうやって大きく空いた穴からはいっそ五月蠅いほどの歌声とともに、大きな人が這い出てきた。

 

それは、まるでマネキン人形のようだった。

服を着ていなければ髪の毛も無い。それどころか皮膚もなく内側の肉がむき出しの人型の怪物。

女性のようにも見えるそれが、球場に這い出てきた。

 

「予想の範囲内ではあるけど、思ったよりグロいな」

 

そんな呟きをしている間に、巨人と呼べるそれが口を開け、大きく息を吸い込む音が聞こえた。

 

「早速来るぞ!サマエル、ティンカー・ベル!」

 

『シュー。いつでも行けるぞ』

 

『準備はできてるよ』

 

待ち構える俺たちの目の前で、巨人が声を張り上げた。

集中して身構えていたからか、それとも予想していたからか。その音の性質を見て取ることができた。

 

「白、破魔属性だ!」

 

『よっしゃ【マハンマオン】』

 

【拡散共鳴】(リンゴーン)!』

 

サマエルの使った魔法をティンカー・ベルが受け止め、増幅しながら放つ。それが巨人の歌とぶつかると、金属がぶつかるような音だけを残して消えた。

 

「予想通り上手くいったな。捜査官、観測しているか?」

 

『ああ、今の歌声はこちらまで届かなかった。相殺されたのは間違いない』

 

「あの巨人がどんなものかは分かるか?」

 

『そっちはまだ解析中だ。その調子で時間を稼いでくれ』

 

「了解」

 

簡単に言ってくれるが、この先も予想通りだとするととても面倒なことになるだろう。

 

『サマナー、今のうちに攻撃を仕掛けたほうが良くないか?』

 

「そんなヒマはないぞ。ってほら来た、今度は黒、呪殺属性だ!」

 

『ちっ【マハムドオン】』

 

【拡散共鳴】(リンゴン)!』

 

先ほどと同じように魔法と声がぶつかると、今度は少しだけ低い金属音が響き渡った。

 

『シィ!今のタメが無かったぞ。結構ギリだったぞ』

 

「だから気をつけなくちゃいけない。攻撃を仕掛けるには、反撃を封じておく必要がある」

 

『一発くらいなら食らっても大丈夫じゃないか?』

 

「それはオススメできないな。反対側の応援スタンドを見てみろ」

 

魔法による相殺で防いでこちら側は無事だが、反対側のスタンドはまるで十年以上野ざらしにされたかのように劣化していた。

 

「余波だけでああなるんだ。歌声を直接浴びると一気に灰になりかねないぞ」

 

『それはイヤだ』

 

サマエルはしおれているが、一発即死の可能性がある攻撃をお試しで受けられるわけがない。

「続けて来るぞ。白、白、黒だ」

 

『メンドーくさいぞコレは』

 

サマエルは文句を言いながらも、マハンマオンとマハムドオンを放つ。

 

相殺を任せている間に巨人の様子を確認しているが、俺たちが平気そうにしていることが気に入らないのかイラだっているように見える。

 

巨人が口を閉じたので、その隙にチャクラドロップをサマエルたちに食べさせる。

長丁場になる可能性があるので、MPはできるだけ最大値近くで保っておきたい。

 

そう思っていたら巨人が動いた。

地面に膝立ちしていたのだが、身をかがめて右足をしっかり地面につける。

まるでクラウチングスタートの体勢だと思ったが、これはまるで(・・・)じゃなくそのものもだ。

 

『OAAAAAAAA!』

 

「【怪力乱神】!」

 

ロケットのように突っ込んできた巨人に対して抜刀の勢いのまま攻撃スキルを置いておく(・・・・・)

振り下ろしてくる腕の側面に当てることで攻撃を逸らすと、巨人の手は無事だった観客席を床ごと粉砕した。

この威力では、俺でも直接受け止めるのは危険だろう。

 

近づいてきてくれたので、お返しとばかりに顔面に斬りつける。

様子見のつもりの攻撃だったが刀は深く刺さり、痛みに巨人がのけぞった。

こいつ、攻撃特化で防御力は弱いのかもしれない。

 

一気にたたみかけるべく観客席の手すりに足をかけたところで、サマエルが胴に巻き付いて止めてきた。

 

『サマナー、次の攻撃がくるぞ』

 

「……っ!?黒、黒!」

 

『【マハムドオン】【マハムドオン】』

 

痛みに悶えながらの叫びは音ばかりが大きく、攻撃としての性能は低かった。

しかしサマエルが止めてくれなかったら、間近でアレを浴びていただろう。

 

「助かった、ありがとう」

 

『ったく、オレサマに感謝しろよ』

 

巨人は少し離れた所からまた声を連発し始めた。

先ほどより近いから余裕は減ったが、落ち着いて見極めれば相殺は難しくない。

そうやってしばらく耐えていると、巨人が喉を押さえて血を吐いた。

 

『おっ、声が止んだな』

 

「今のうちにMPを回復しておこう」

 

『まだリンゴンしなきゃならないの?もう疲れたよ』

 

「文句は向こうに言ってくれ」

 

かなり耐久したので仲魔のMPは残り少なくなっている。今がチャクラポットの使いどころだろう。

 

一方の巨人は咳き込みながらこちらを睨んでくる。あの歌声は大きな負担になっているようだ。

相殺しているこちら側はまだ無事だが、反対側の観客席はすでに砂になっている。

 

巨人が拳を固めたのを見て、刀を抜いて構える。

 

『SHIIIII!』

 

「【ブレイブザッパー】!」

 

さっきの攻防で、向こうの実力は分かっている。

俺の攻撃は巨人の拳を真正面から割り、巨人はその痛みで大きくひるんだ。

 

「声を使えない今が攻め時だろ。くらえ【都牟刈村正】!」

 

気合いを込めた必殺の一撃を、巨人の頭にたたき込む。

巨人は大きくのけぞったかと思うと、そのまま後ろ向きに倒れた。

 

「やっ」『やったか!?』

 

サマエルに言葉をかぶせられ、あれそれフラグじゃね?と思い至る。

 

よく見れば倒れた巨人の口が大きく開き、空気をいっぱいに吸い込んでいた。

 

「また歌声がくる!」

 

『マジで?しぶといな』

 

『【拡散共鳴】すたんばい!』

 

『UUU、OAAAHAAAAAAAA!!!』

 

耳をつんざくような叫びとともに、白と黒の波動が連続して放たれた。

 

「……っ、白白白黒白白白」

 

『は?【マハンマオン】【マハンマオン】【マハンマオン】【マハムドオン】【マハンマオン】【マハンマオン】【マハンマオン】』

 

『り、【リンゴーン】【リンゴーン】【リンゴーン】【リンゴン】【リンゴーン】【リンゴーン】【リンゴーン】』

 

「黒黒黒白白白」

 

『【マハムドオン】【マハムドオン】【マハムドオン】【マハンマオン】【マハンマオン】【マハンマオン】』

 

『【リンゴン】【リンゴン】【リンゴン】【リンゴーン】【リンゴーン】【リンゴーン】』

 

「黒白黒白白黒黒」

 

『【マハムドオン】【マハンマオン】【マハムドオン】【マハンマオン】【マハンマオン】【マハムドオン】【マハムドオン】』

 

『【リンゴン】【リンゴーン】【リンゴン】【リンゴーン】【リンゴーン】【リンゴン】【リンゴン】』

 

「白、黒、白、黒」

 

『【マハンマオン】【マハムドオン】【マハンマオン】【マハムドオン】』

 

『【リンゴーン】【リンゴン】【リンゴーン】【リンゴン】』

 

長く続いた叫びの後で、巨人が血を吐き声が止まった。ずっと叫び続けた反動でしばらくの間は声が出せないだろう。

 

サマエルもティンカー・ベルもよく頑張ってくれた。どっちらかが力尽きていたら、全員まとめて死んでいたかもしれない。

 

感謝の意味も込めてチャクラポットを渡しておき、俺一人で巨人へ近づいた。

 

「悪いが、お前の歌声は危険すぎる。これ以上被害を広げないためにも、ここで首を落とさせてもらう」

 

声をかければ巨人は理解しているのか、腕を振って払いのけようとしてくる。

大雑把な攻撃なので避けるのは難しくない。振るわれる両腕を回避しながら近づき、頭を飛び越えざまに首へ刀を振るった。

 

「【ブレイブザッパー】」

 

両断とまではいかなかったが、背骨は確実に斬れた。人間と構造は違うだろうが、首を斬られればどんな怪物でも致命傷になる。

 

巨人は何か言いたそうに口を開けたが、出てくるのは血液だけだった。

 

やっと終わった。

そう思った次の瞬間、ドクンと巨人の身体が脈動した。

 

距離を取って身構えると、巨人の腹部が大きく膨らんでいく。

妊婦のように膨らんだそれを見て、ラプラスメールが【母】と呼んでいたことを思い出す。

つまりこの巨人の腹の中には、別の悪魔が潜んでいたということか。

 

出てくる前に、最大火力で吹き飛ばす。そう決断して気合いを溜めるが、準備が終わるより早く巨人の腹に亀裂が入った。

 

腹の中にいる何者かが、内側からこじ開けようとしている。

バリバリと大きな音を立てながら、巨人の腹が強引に開かれていく。

大量の血と蒸気が吹き出す中から現れたのは、黒髪の青年だった。

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