コレどう考えてもアレじゃねぇか!いやじゃいやじゃ童貞のまま死にとうない!!
これはそんな欲望全開で生き残ろうとした、零細神社の跡取り息子が頑張った結果の物語である。
東京に米国から発射されたICBMが着弾したあの日、世界の理は一変した。
空には異形の者達が飛び交い、地は人ならざる者達が我が物顔で闊歩して人間達を弄び、いたぶりながら喰らう地獄へと変貌したのだ。
人が多く集まる場所や、まるでこうなる事を見越していたかのようなメシア教団にガイアーズと呼ばれる集団となればまた話は変わるのだが。
地方の人々や抵抗する術を持たない人間達には、もはや抗う術はなく少しでも生き延びる為に息を潜めて肩を寄せ合うしか生きる術はなかった。
そして、今この時も……。
「ハァッ、ハァッ……」
「頑張ってお母さん!あと少しで神主様の村につくんだから!」
「私はもうだめ、走れない……せめて芳美だけでも逃げて、私が囮になるから……」
「そんなのダメよ!それじゃあ私達を逃がす為に囮になってくれたお父さんはどうなるの!?」
鬱蒼とした山道、かつては車両が行き来していたと思われるあちこちがひび割れた道路を二人の女性が悪魔達に追い立てられながら、必死に走り続けていた。
しかし年老いた女性の方は既に体力の限界がきており、妙齢の娘だけでも逃げて欲しいと懇願していて……。
その間も悪魔達は恐怖を掻き立てるかのように耳障りな声をあげ、ゆっくりと二人へと迫ってくる。
最早二人に逃げる体力はなく、抗う力も持たない彼女達もまた大多数の人間のように肉体と魂を食らいつくされるのは時間の問題となっていて。
もうだめだと、どうしてこんな世界になってしまったのかと二人が絶望し互いを強く抱き締め合い、涎を垂らしながらとびかかってくる悪魔の姿に瞳を強く閉じたその時。
風を切る音と共に飛来した矢が、狙う違う事なく二人の女性に食らいつこうとした悪魔の額に勢いよく突き刺さった。
断末魔の声を上げながらその身を消失させていく悪魔、突然の音に目を開いた二人は何が起きたのかと混乱し……矢が飛来したと思われる方向へ視線を向けた先。
その場所には、狩衣を身に纏った年若い神主の男性と……身長50cm程の狐の耳と尻尾が生え巫女服を纏った少女の二人が居た。
「なんぞ、くっさい気配がすると思ったらガキの群れではないか」
「玉姫、二人の保護は任せた。普段喰っちゃ寝してんだからそのぐらい働けよ」
「儂、お主の家の氏神じゃぞ?もうちょっと敬ってもいいんじゃよ?」
神主はまるで軽口のように氏神を自称する少女へ言葉を投げかけながら、その間も視線をガキと称された悪魔の群れから外すことなく矢を番えては放ち続け、一匹ずつ確実にその数を減らしていく。
ガキ達はせめて死ぬ前に人間を一口味わおうとばかりに腰が抜けてまともに動けない、人間の女性二人に飛び掛かるが……神主の矢を辛うじて抜けたガキ達は玉姫と呼ばれた氏神が放った火炎によって次々と討ち滅ぼされる。
離れても矢を撃たれ、近付けば氏神の炎で焼かれ息絶えるという状況にガキ達は漸く己達の不利を悟ったのか、神主達に背を向けて逃げ出し始める。
殲滅しておいた方が後々安心だが、しかし保護対象も居るが故に追撃を止め腰が抜けて立てない二人の女性へ歩み寄り、手を差し伸べる神主。
しかし、その時である。
ガキの群れが逃げ出した方向から頑健な肉体を持つ悪魔が、ガキを踏み潰しながら現れたのだ。
「邪鬼ラクシャーサじゃ、天竺の方の伝承に出てくる悪鬼じゃぞ!」
「明らかに強そうだな……」
玉姫が叫び、神主はどうしたものかと言わんばかりに呻き声を上げる。
二人の様子に辛くも命を救われた二人の女性が、神も仏もいない絶望を与え続けてくる今世に絶望を感じている中。
「満よ!今こそお主の真の力を見せる時じゃ!」
氏神と名乗っていたチンチクリン、玉姫の言葉に二人の女性は希望に満ちた視線を満と呼ばれた神主へ向ける。
そんな視線を向けられた神主の眼は、軽く濁っていた。
「お前、マジでお前……絶対許さんからな、後で覚えておけよ」
「なんで?!儂お主の希望通り力授けたじゃろ!?!?」
「チャクラを開く瞬間、くしゃみして手元狂った事忘れたとは言わさんぞ」
まるで地獄の底から響くかのような神主の恨み節にたじろぐ氏神、そして置いてけぼりの女性二人。
ついでに現れた邪鬼ラクシャーサは律儀にも待っていた、意外と話が分かる存在なのかもしれない。
しかし、やがて根負けしたのか神主は鉛のように重い溜息を吐くと。
狩衣の下衣部分を、勢いよく脱いだ。
混乱する二人の女性とラクシャーサ、しかし三者が凝視する中で神主の露わになったご立派が輝きを帯びていく。
何が何やらよくわからないが、しかしこのままにしておいては何か良くない事が起きる、そう確信したラクシャーサは咆哮を上げながら神主へ飛び掛かる、が。
邪鬼の爪が振り下ろされるよりも早く、神主が両手を添えて突き出した光り輝くご立派から放たれた極光がラクシャーサの首から上を消し飛ばした。
「いつ見ても見事じゃのう……お主のメギマラは」
沈黙する中で満足げに頷く自称氏神の玉姫の言葉が響くが、神主の顔はみじめな気持ちで今まさに泣き出しそうな顔をしていた。
彼の名は上野満、この世界に生まれ落ちた転生者と呼ばれる存在であり。
生き延びる為に手を尽くした結果、股間から万能属性の魔法を放つ体となってしまった異能者である。
ちなみに氏神様はしょっちゅう神主くんにEraい感じに折檻されてる模様、しょうがないね。