真・恋姫☨夢想 革命 張郃転生伝   作:青二蒼

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いい感じに筆(キーボード)がのる。
いきなりお気に入り数が伸びて驚いてる作者です。


拠点フェイズ(高覧1):立ち上がった理由

「取り敢えずは仕官、おめでとうですね」

「随分とあっさりで私は困惑気味です」

「でしょうね。まあ、配下となる分には出自にこだわりはないようですので」

 あれから無事に鈴花(りんか)桂藍(けいらん)さんの仕官はあっさりと終わった。

 真名についても交換済み。

 同時に俺の副将として鈴花はしばらく預けられることになった。

 つまりは将として鍛えろということらしい。

 まあ、側近である二枚看板の猪々子と斗詩は忙しいからな。

 俺にお鉢が回ってくるのも仕方ない。

 しかし、人材育成か……事務仕事なら前世の経験から教え方は分かるんだが、武官としてどう教えればいいのかよく分からんな。

 何にしても定石を知ってからの応用だろうということで、まずは兵法の勉強だろう。

 ということで、俺も利用してる城の書庫へと鈴花と共に足を伸ばす。

 基本的に兵法書は七書あると真直に聞いたが、『孫子』と『六韜三略(りくとうさんりゃく)』の二つを学んでおけば何とでもなるだろう。

 ちょっと文法違ってたりするから訳すの大変だけど。

 しかも孫子は十三篇あるから、結構内容が多い。

「取り敢えずはこれとこれですね」

 何度か既に読んでいて場所は分かるので鈴花に預けるように渡す。

「あの、これは……?」

「兵法書ですよ。将として鍛えるつもりですので、用兵の(すべ)を学んで貰います」

 と、鈴花の緑の瞳が書へと落ちる。

 そして静かに切り出す。

「……空様」

「どうしました? 勉学は苦手でしたか?」

「いえ、そういうのではなく……その……字が……」

 俺は彼女の言わんとしてることを察して膝から崩れ落ちる。

 しまったあああああ!?

 村の出っぽい鈴花が字を知らない可能性を完全に忘れていた。

 というか、この世界の識字率の低さを忘れていた。

「すみません、私の失策です」

「そんな、空様が気にしなくても……字なら頑張って覚えます!」

 むん、と胸を張って意気込む鈴花。

 真面目で最初から諦めないエエ子や。

 いつまでも這いつくばっている訳にはいかないので気を取り直す。

「まあ、字も大事ですからね。頑張りましょう。仕方ないので今日は私が読み聞かせる形にします」

 出来る勉強法に切り替え、取り敢えずはその形でやっていく。

 合間で字を教えるしかないな。

 未だに俺も字に関しては真直(まぁち)に聞く時は時折ある。完璧とは言い難いし。

 

 

「ーーつまりは戦は短期決戦で成功した例はあっても、持久戦……長期の戦は成功した例を聞いたことがないと書いています」

「な、なるほど……」

「長期になれば当然ですが糧食も多く必要になり、装備も浪費していくので補給が必要になる。結果として消費するばかりで国力は低下していくというわけですね」

「つまり、頑張って短い時間でいっぱい殺せばいいんですね」

 う、うん……間違ってはいないが言い方がサイコパスだ。

 今は俺の自室で鈴花に孫子の兵法を読み聞かせている。

 出来るだけ分かりやすく教えてるつもりだ。

 実際のところ、時折詰まるところはあるがもう一度噛み砕いて説明すれば理解してくれている。

「すみません、空様。バカで……」

「何をいきなり。後輩の面倒を見るのは先輩の役目というものです。私も、小夜(シャオイェ)さんや真直さんに比べて頭がよくはありません」

 自分を卑下する鈴花に気にするなとばかりに声を掛ける。

 そもそも軍師陣は次元がちょっと違うしな。

 この世界に学校という物は存在しないし、私塾なんて狭き門だ。

 聞いたところによるとかの有名な盧植(ろしょく)先生は人気がヤバ過ぎて弟子は千人を越えるらしい。

 大先生とも言うべき地位の人に直接教鞭をとって貰えるのは余程のコネがないと無理だ。

 しかもこの時代、教育を受けるとはエリートコースみたいなもので出世に大きく関わってくる。

 講習料もちゃんと取るらしい。

 まあ、今の塾とそこら辺は変わらないみたいだ。

 講習料がある以上、村の出身者では少し厳しい部分はあるだろうな。

 結局は陣営内で何とかするしかない。

 今日はこのあとに警邏も控えているのでここまでだな。

「さて、そろそろ警邏の時間ですし今日はここまでにしておきましょう」

「はい、空様!」

 気持ちの良い返事を鈴花はする。

 後輩気質だな。スポーツ系の部活の。

 

 

 装備をして警邏に向かおうと回廊を俺と鈴花が歩いていると、

「ああ、空殿。これから警邏ですか?」

「ええ、そうです。鈴花にはこれから頑張って頂かないといけませんからね」

 真直とばったり出会い軽い挨拶を交わす。

 俺の言葉に鈴花はまた元気よく答えた。

「はい、自信はありませんが……頑張ります!」

「元気ですね。はぁ……空殿、しっかりお願いしますよ。くれぐれも猪々子みたいには育てないでくださいね」

 切実な感じだな……真直。

 うん、まあ……猪々子の突破力は袁紹軍では頼りになるがいささか直情過ぎるからな。

 あとは浪漫に走る時があるから困る。

 そこら辺もあるから小夜は俺に鈴花を預けたところもあるだろう。

 ある意味では信頼されてるな。

「はあ、少し休もうかな……もうお昼だし」

「良いのではありませんか? 最近は城詰めで市井(しせい)の様子もあまり見れてないでしょう?」

「……そうですね。私も同行させて頂きます」

 俺の提案に真直は一理あると、承諾した。

 そうして三人で城下へと行く。

 (ぎょう)の内政は今のところ安定してると言えるだろう。

 通りの整備をして、ある程度の間隔に詰所を配置しているので治安も向上している。

 最近は盗みなども減ってきた。

 それも小夜の職業斡旋と裁判によって罪の軽い者は兵として取り立てる制度のお陰でもある。

 国力は高まってきてはいる。

 この制度を他の郡とかでも施行できるように今は頑張っているようだ。

 そのためには一度色々と粛清しなければならない部分があるが、朝廷と繋がりがある太守もいるため慎重に検討しているらしい。

 小夜は「面倒なのは早めに片付けるに限るでございますね〜」と、黒いことを言っていた。

 たまに彼女、サドじゃないかと感じる。

「ほあ〜……すごいですね、空様」

 城下に出たところで鈴花は感動の声を上げる。

 まあ、村に比べたら都会には違いないだろう。

 立ち並ぶ店に活気のある大きい通り。人の営みが目に見える。

「賊が増えている中でもこの鄴は安定してきてますしね。安心できる場所として認知され始めているようです」

「それは嬉しい限りです」

 真直の言葉に俺は達成感が少し出る。

 自分で判断しても自己満足だからな、こういう声が聞こえる方が実感が出る。

 正面から自分達と同じように巡回してるニ人の兵が歩いてくる。

「これは、張将軍」

 気付いた兵が礼を取る。

「ご苦労です。異常は?」

「今のところございません!」

「そうですか、そのままよろしくお願いしますよ。あと、たまには里帰りしておきなさい。今回は確か常山(じょうざん)の出身者を主に帰らせる予定ですし」

「はい! ありがとうございます。それでは失礼します」

 そのまま兵士達は嬉しそうに去っていく。

 一応だが里帰りの制度もあるようで人数制限はあるが、ある程度の出身別にまとめて帰らせている。

 戦場から帰ってきた兵なんて村からすれば頼もしいことこの上ないだろう。

 それに、仮に襲われても多少なりとも対処の仕方は知っているので地方の治安維持にも知らずの内に貢献している。

「よく分かりますね、空殿」

「共に戦えば名前はともかくある程度は顔は分かりますよ」

 真直は感心してるが顔を合わせる面子って結構同じだしな。

 何度も顔を合わせていれば、あいつはあそこら辺の人だったな程度には覚えてる。

 一人一人とはいかないが、何となく判別できるものだ。

 そんな時だった。

 ぎゅうううううう、っと盛大に腹の虫が聞こえる。

 結構音がデカいな。

 鳴った方向である鈴花を見れば、

「えっと……すみません」

 照れ臭そうに頬を掻く。

 カワイイ後輩だ。

 真直と顔を見合わせて思わず笑う。

「昼飯時ですしね。私のオススメの店に行きましょう」

「その、大丈夫です。気になさらないで下さい」

 と、鈴花は遠慮してるが腹の虫は相変わらず元気だ。

 またしても鳴るお腹に、鈴花はさらに照れる。

「まあまあ、鈴花さん。腹が減っては何とやらです」

 と真直もフォローする言葉を掛ける。

「で、でも……持ち合わせが」

 その言葉に俺は合点がいった。

 ああ、そうか……そう言えば仕官したばかりでまだ給金は多く貰ってないよな。

「別に食事くらい奢りますよ。遠慮は無用です。真直さんの分も出しますよ」

「私はちゃんとありますよぅ」

 真直は子供っぽくむくれて抗議する。

「仕事でも色々とお世話になってますし、この間も忙しい中で教えて下さった授業料ということで」

「そんなこと言ったら、空さんに仕事を手伝って貰ってる私が奢りますよ」

「……堂々巡りになりそうですね。まあ、間をとって今度また飲みましょう」

「空さんも好きですね。というか、あれだけ飲んでなんで酔わないんですか……」

「上手い飲み方を知ってるだけです」

 これでも酒の(さかな)や飲み方には拘りがある。

 そもそもこの時代の酒は現代に比べて製造方法が洗練されていないので度数が低い。

 まあ、それぐらいしか楽しみがないというのもあるが。

 女の子らしく、たまにはオシャレもしてみたい。

 ただそんな暇が現状はあまりないんだよな。

 性転換なんだから男の時に出来なかったことを楽しみたいんだが。

 まあ、あとの楽しみとしておこう。

「さて、では行きましょうか」

 と、俺のオススメの店にニ人を案内する。

 

 

 大通りから少し外れた場所にある飯店。

 人通りは当然、大通りほど多くはなくそこそこだがその中でもこの店は穴場だ。

 まず、他の店の価格に比べてボリュームがある。

 なので兵士もよく利用してる店の一つだ。

 それに、夜は居酒屋的なメニューに変わる。

 味付けも濃い目で酒呑みには嬉しい場所だ。

「いらっしゃい、将軍様。今日もありがとうございます」

「店主、今日は三名で」

「へい。ではあちらの中央に空いてる卓でお願いします」

 慣れた感じで店主とやり取りをする俺。

 食事に来ている兵もちらほらといる。

 こっちに気付いて礼をしようとしているが、無用とばかりに軽く手を上げて俺は制しておく。

 お品書きが書いてある竹簡を手にお互い何を頼むか考える。

 そして、真直はメニューを見て軍師らしく店について気付く。

「色々と豊富ですね」

「店主に色々と材料の伝手があるそうなので豊富なのだそうです」

「なるほど……穴場なんですね。というか完全に味付け濃いものが多い気がしますが……空さんーー」

「仕事中には飲みませんよ。ちゃんとあっさりした物もありますから」

 何故か疑いの目を向けられたので弁明しておく。

「い、いいんでしょうか?」

 と、鈴花はここに来てまで遠慮している。

「鈴花さんはまだ仕官されたばかりですし、ここは空さんに甘えておきましょう。あ、甘味もあるんですね」

「では、ご馳走になります……」

 真直にも言われてようやく鈴花も選び始める。

 そして、程良いところで店主が顔を出す。

「お決まりで?」

「私はいつものと今日は白飯で」

 常連なのでそれで通じる。

 いつものとは豚の角煮に炒飯だ。角煮はタレが染みてて美味い。

 店主こだわりのタレらしい。

「そうですね。餃子(ぎょうざ)と杏仁豆腐で」

 餃子と言ってもこの時代は水餃子とか蒸し餃子が主流だ。

 焼き餃子もあるにはあるが、少数派らしい。

 しかも日本みたいに白飯のおかずではなく、主食なのは驚いたな。

 なので真直が普通に餃子だけを頼んでいるのは何もおかしくはない。

「えっと……」

 鈴花は品書きを見て困ってる。

 そう言えばまだ字が読めなかったんだ。

「代わりに注文しておきます。何がいいですか?」

「肉と餃子と麺を」

 肉料理と餃子に麺か……ガッツリだな。

「三人前で……」

 ……マジか〜。

 まさかの大食いだった。

 いや、でもなあ……武官は基本的に大食いっぽいよな〜。

 馬超とか許褚とか張飛とか呂布もアレだし。

 あんまり不思議ではないな。

「店主、青椒肉絲(チンジャオロース)と餃子と拉麺(ラーメン)を三人前で」

「はいよ、腕がなるね」

 店主は驚くこともなく、厨房に戻った。

 今更だがこの時代にラーメンあるのか?

 いや、品書きにはあるし物もあるけど。

 食事事情に関してもこの世界は結構オーバーテクノロジーな感じがする。

 コロッケとか醤油っぽいの生み出してたし。

「さ、三人前って……猪々子にも負けず劣らずですね」

 そう言えば猪々子も結構食べるわ。

 身近な例がいたので真直もそこまで驚いてはいない。

「育ち盛りなんですよ」

 と、鈴花をフォローする感じで言っておく。

「それを言ったら、空さんは……」

 そしてさり気に俺に対して地雷を踏んでいく真直。

 もう俺はダメだ。

 成長してない訳じゃないが、ほとんど伸びない。

「諦めましたよ。真直さんみたいにわがままな体にはなれないみたいです」

「うっ、私だって気にしてるんですよ」

 軽く言い返してやると、真直は子供っぽくむくれる。

「育ち盛りですみません」

「いや、ものの例えですからね、鈴花」

 的外れな謝罪に俺はツッコむ。

 その後、それぞれの料理が来たかと思えば鈴花はペロリとたいらげてしまった。

 食べる度に幸せそうに顔を綻ばせる鈴花は小動物的な愛嬌があった。

 ただ、豪快には食べていないがペースを落とさずにノンストップで食い続けてたのには少し苦笑いした。

 猪々子もそうだが、体のどこに入ってるんだ。

 料金についてはまあ、お察しだ。

 念の為に多めに金銭を持ち合わせておいて正解だった。

 

 

 無事に警邏も終わり、真直は市井の様子に満足し共に城へ戻った。

 今は俺と鈴花だけだ。

 何を思ったのか鈴花は城壁に上がりたいと言い出したので俺も同行して、真直は先に執務へと戻った。

 城壁から見下ろす街並みはここからでも活気が見える程に栄えている。

 それに対して鈴花が何を思っているかは分からないが、何かを憂いている様子だ。

「村とは違いますか?」

 と俺は質問する。

 人は誰しも比較してしまうものだとよく知ってるからな。

「そうですね。ここでは、村のことなんて別のことに思えます」

「人の営みがあるのに違いはないでしょう。規模が違うだけです」

「しかし……豊かです」

「ここら辺は、ですがね。他はどうかは知りませんが、噂では大きな街でも活気がなく困窮している場所があると聞きます」

 それは太守が腐敗していたり、賊によく襲われたりと様々だ。

「空様は何の為に戦うのですか?」

 この手の歴史系ゲームとか戦争してる系の話ではよくある問い掛けだな。

 まあ、今の俺にとってはリアルで実際に質問されるとは思わなかった言葉だがーー

「さて、何の為でしょうね。少なくとも私は民の為にとは思ってますが」

「麗羽様ではなく?」

「麗羽様の為でもありますが、明確には答えれませんね」

 麗羽様に関しては仕官を認めてくれた恩と、雇われている身だ。

 それに一応は俺の働きも認めてはくれている。

 (まつりごと)も真直と小夜がいるなら特に問題はない。

 贅沢も散財して市井を回してると考えれば悪いことではないしな。無駄遣いには変わりないが。

 だからと不当に税を上げてる訳ではない。

 そんなの小夜や真直が許さないだろう。

 細かいことを気にしない気質はある意味では美徳であるので、支える者がしっかりしていれば治世に関しては問題はない。

 別に麗羽様じゃなくてもよくない? とかのツッコミは無しで。

 そんな訳で臣下が頑張ればいいだろう的な精神だ。

 麗羽様は象徴的な感じで。

 別に傀儡政権ではない。

「ともかく、何の為に戦うかは自分で見つけて下さい。義勇兵と共に立ち上がろうと思った気持ちが答えであると私は思いますが」

 答えなんて突き詰めれば結局は漠然(ばくぜん)としてシンプルなものだ。

 ゴチャゴチャするのは手段であって、目的ではないと思う。

「そっか……そうですね」

 何やら俺の言葉に合点がいったのか、鈴花は憑き物が落ちたように晴れやかな笑顔を見せる。

「空様、私……頑張ります!」

「ふふ……」

 振り返りその吹っ切れた顔に俺は少し嬉しさに笑ってしまう。

「な、何で笑うんです?」

「いえ……いい笑顔だと思っただけなので」

「そうですか?」

「ええ、熱烈に勧誘したかいがあったというものです」

「……空様って、女性ですよね?」

 その言葉に俺はピシリと固まる。

 何でだ……!?

 女性らしい曲線美描いてるだろう!? ボンキュッボンじゃないけど。

 自分で言うのもなんだがスレンダービューティだろう!?

 ……なのに、どうして。

 あれか? 魂が男だからか?

 あれ、おかしいな……別に気にしてないはずなのに涙が。

「え……空様?  私、何か粗相を?!」

「……私って女性として認識されてません?」

「そういう訳では、ないんですが。言動が美丈夫と言いますか……」

 王子様系ムーブしてるつもりないんだけど。

 ……もう少し女子力高めよ。

 女性に生まれ変わったのに勿体ない気がするし。

 性同一性障害? そんなの知らん。

 現状を楽しんで悪いことなんてないだろう。

 ある意味、俺の中で変な決意が固まった。

 

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