真・恋姫☨夢想 革命 張郃転生伝   作:青二蒼

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今回は若干、劉旗の大望の話を組み込んでおります。
他に袁紹軍が黄巾党で活躍(?)してそうな話がないんじゃ……




十章:乱の終わりと雄飛の兆し

 最早日課となってしまった賊討伐。

 しかし、今回は事情が少々違う。

「おーっほっほっほ! おーっほっほっほ! さあ、迅速かつ華麗に前進なさい!」

 麗羽様と共に今は官軍、つまりは天子様の軍勢との共同戦線です。

 いつの間にやら冀州の西、お隣である(へい)州の牧にもなっていた麗羽様は官軍の要請を受けて司隷(しれい)というこれまた冀州と并州の南に隣接する州の賊討伐に加勢に行くのでした。

 ちなみに司隷州とはこの時代の都である洛陽があるところで、天子様のお膝元である。

「流れとしては司隷から追い出された賊を并州で迎え撃ち討伐する。簡単な話ですが、要は賊の押し付け合いですね」

「ですね~。現状ではどこも似たようなところかと……」

 私の考えに真直(まぁち)も同意する。

 今回の布陣は麗羽様、私と鈴花、真直、兵数は一万とそれなりの数である。

 麗羽様が「主上様の軍が出るのでしたら、この名門であるわたくし自ら赴くのが当然でしょう?」と、言ってきたので今回は出陣です。

 その時の小夜(シャオイェ)さんの表情はいつものやさぐれ顔で「面倒くさいこと言い始めたでございます」と疲れた顔をして私の隣で呟いていました。

 同時に「分かってますね?」とばかりの視線を向けられたので、私も苦笑しながらそれに応えた結果、まあ現状に至る訳です。

「荀彧さんの提言書の写しは真直さん、お持ちですよね?」

「ええ、空殿の予想通りでしたね」

 そして今回は官軍だけではなく(えん)州の州牧である曹操とも共同戦線に当たることになっています。

 まあ、(くつわ)を並べる訳ではなく別方向での同時作戦と言った感じですが。

 そこで、桂花から提言書……助言的な(ふみ)が届いたわけですが麗羽様のことです。

 勝手に出ていった桂花をよく思っていないので十中八九見ないだろうと予想はしていたので、一応は写し書きをしてから麗羽様に文を渡したら案の定、文の差出人の名前を聞いたら読まないどころか燃やした。

 その時の全員の表情と言ったら「えぇ……」みたいな困惑顔でしたね。

 それから一緒に行くことになってる真直に提言書の写しは渡してある。

 内容は、まあ……桂花らしく文面は整えつつも麗羽様はどうせ目の前のことしか見えてないだろうから気をつけなさい、的なことが書いてあった。

 まあ、これでもマイルドな表現ですが。

 あとは作戦の内容が書いてあり、司隷の山道から黄巾党が完全に出たところを狙って官軍と共に挟撃せよ、というものでした。

 麗羽様のことですし、どうせ山道を完全に出る前に突撃するでしょうね~。

 事前に策の説明はしてありますが、桂花の策だと知られれば動かないでしょうし。

 もし、予想通りの出来事になれば私と鈴花で別行動ですね。

 と、予定の場所到着しましたね。

「全軍停止してください!」

「はっ! 全軍停止!! 停止!!」

 真直が命令を飛ばし、副官がそれをさらに伝達する。

 それから真直が念を押して釘を刺す。

「いいですか麗羽様。司隷から流れてきた賊が、山道を抜・け・て・か・ら、突撃ですからね」

「言われなくても分かってますわよ……でも、真直さん? 山道から抜ける前に攻撃してしまえば相手は少ない数でこちらは大軍で掛かれるのではありませんの?」

 珍しく鋭いことを言う麗羽様。

 本来ならそれも一つの手ではあるのでしょうが今回は反対側に官軍がいる状況。

 完全に山道から出る前に叩いてしまえば、賊は反転して山道に逃げようとするでしょう。

 そうなれば逃げ道を塞ぐ挟撃となる。

 孫子にも逃げ道は空けておけ、という一節があります。

 当然ながら逃げ道がなく、命の危機ともなれば死にものぐるいで抵抗するに決まっている。

 窮鼠猫を噛むというやつですね。

 なのであえて逃げ道を用意することで相手は助かる希望を持ち、生きる方へと逃げる。

 手痛い被害を出さないのが兵法の肝だと、個人的には思いました。

「まあ、確かにそうですけど――」

「山道から敵が出て参りました!」

 なんか言い負かされそうになってる真直の言葉の途中で物見から報告が出る。

 来ましたね。

 山道から列をなして蛇のように這い出てくる黄巾党。

 しかし――

「……官軍の旗が見えませんわよ?」

「山の陰になってるんでしょうからすぐには見えませんよ」

「挟撃作戦と言うなら官軍の方が来なければどうにもなりませんわよ!? どうしますの真直さん!?」

「そう焦らないで下さいよ。まだまだ出てくるみたいですし――」

「ええい、煮えきりませんわね! 皆さん、華麗に突撃なさい! 山道から出てくる前に叩くのです!」

「ちょっと麗羽様ぁー!?」

 真直が止める間もなく焦って突撃してしまった。

 気持ちは分からなくもないですが。

「荀彧さんの危惧通りになりましたね」

 ここまで予想通りだと、一層清々しい感じです。

「どうしましょう、空殿?!」

 軍師が焦ってどうするんですか……

 まあ、麗羽様は突拍子もなく行動しますからね。

 対応出来なくても致し方ないです。

「鈴花、弓隊を引き連れて山道の崖の上に向かいますよ」

「分かりました、空様! 部隊を再編する! 弓隊は張郃隊に続け!」

「真直さん、麗羽様をお願いします。私達はこの先の崖上に向かって行きます」

 その言葉で真直はすぐに理解し、

「対応が早いですね……よろしくお願いします」

 と任せたとばかりに許可してくれた。

 

 

 すぐに山道の崖の上、黄巾党が引き返した先の方へと辿り着いた。

 一進一退。

 官軍と袁紹軍に挟まれた黄巾党が見え、必死の抵抗をしている様子がありありと分かる。

 そして官軍であろう旗が左の方に見えた。

「追い込まれて奮戦してますね。あれでは私達の方の被害は軽微でも官軍の方が……」

「共同戦線なら、味方の被害を看過は出来ませんね。それでは全員弓を構え! 官軍の近くの黄巾党を狙い撃ちなさい! くれぐれも天子様の軍には当てないでくださいよ」

 私の言葉に弓隊が矢を構える。

「放て!」

 号令と共に放たれる矢。

 これで官軍の方の黄巾党の勢いはなくなるだろう。 

「あの空様……私、弓はあまり……」

「岩でも投げとけばいいですよ」

「あ、そうですね」

 冗談のつもりで言ったんですが、鈴花は近くの岩に近付くと――

「よい、しょっ」

 腰ぐらいの高さのある岩を持ち上げて、

「せいや!」

 ボールを投げるような感覚で投げた。

 パワータイプなのは知ってましたけど、予想以上でした。

「賊に身を落とさなかったら、楽に死ねたのに……元は困ってる村の人だと思うと、何だかやるせないですね」

「投げてから言う言葉ですか……」

「でも、空様はどう思います?」

 その鈴花の言葉に私は考える。

 確かに彼らも元は村人だったのかもしれない。

 だが――

「彼らは獣であることを選んだんです。真っ当な者なら徴兵に応じたり、他の村に移住するなど考えたでしょう」

 我ながら無慈悲ですね。

 現代人なら考えられないでしょうが、すっかり私もこの世界に馴染んでしまったようです。

 

 ◆       ◆       ◆

 

 空達が崖上から矢を射掛けている時、官軍の将であるメガネを掛けた妙齢の女性、名を皇甫嵩(こうほすう)は状況の変化に気付く。

「兵の勢いがなくなったわね」

「どうやら、崖上から別動隊がいたようだな。見ろ、皇甫嵩殿」

 そして、同じく官軍の将である銀髪の女性――名を華雄――が、皇甫嵩に崖上を見るように促す。

「あの金色に張の旗。確か、袁紹配下である張郃でしょうね」

「張郃? 聞かぬ名だな……」

「噂によると五百の騎馬で二千五百の黄巾党を足止めしたらしいわよ」

「なに!? 五倍の兵力を足止めとは余程の手練れの将ということか……」

「どうやら、あの人のお陰で黄巾党の勢いがなくなったみたいね。華雄さん!」

「うむ、分かっている。総員、撤退! 撤退だ! 今の内に離れて態勢を整えるぞ」

 華雄の号令と共に官軍は無事に撤退することが出来た。

 

 

 そのことを別の陣営、曹操の名代として来ていた夏侯淵と荀彧――桂花はすぐ耳にする。

「張郃、か。確か、桂花は袁家にいたのだったな」

「まあね。あいつの用兵は私も少なからず認めているわ」

「ほう? 桂花が素直に人を褒めるとは、それほどの手練れか」

「気に食わないけど、華琳様なら欲しがる人材でしょうね。出来れば袁家を出る前についでに引き抜きたかったけど、妙に忠義が厚くてね」

「ふむ、人格的にも問題なさそうな様子だな」 

「でも、もし袁家と戦うことになったら注意した方がいいわ。単純なヤツならすぐにやられると思うわよ」

 と、何気に曹操陣営にも静かに話は広まるのであった。

 

 ◆       ◆       ◆

 

 官軍が無事に撤退出来たことを確かめたあと、矢を撃てるだけ撃って私達も撤退する。

 一応、矢を撃ち尽くしたりはせず余力を残してはいる。

 しかし、元の陣営に戻ってみれば既に討伐は完了している様子だった。

 まあ、あれだけ山道で打撃を与えれば平野にいた兵は微々たるものでしょう。

 麗羽様が焦ったのを除けば美しい勝利でしたね。

「おーっほっほっほ! やはりこの袁本初の敵ではありませんでしたわねえ」

「調子がいいんですから……あ、空殿に鈴花ちゃん。無事に戻られて何よりです」

 真直がこちら気付き、出迎えてくれる。

 鈴花は少し心配そうに聞く。

「真直様、大丈夫でしたか?」

「ええ、途中で黄巾党の勢いがなくなったので何事もなく……空殿の機転のお陰です」

「半分くらい予想はしてましたけどね」

 仕方ない部分もあったが、麗羽様ももう少し堂々とすればいいのに。

 しかし、当の本人は自分の功績を疑っていないようで、

「さあ皆さん! 華々しく凱旋ですわよ。今日はいい気分ですわ」

 などと上機嫌に去っていく。

 その背中を完全に見送ったあと、

『はぁ〜……』

 私達三人は同じため息を吐くのであった。

 

 

 程なくして、それから曹操が黄巾党の首魁(しゅかい)である張角を討ったという報が入る。

 結局、張三姉妹に出会うことはありませんでしたね。

 その報を聞いた我が君主様は――

「きいいいいいっ! あのクルクル小娘が運良く首魁を討ち取るなんて!! 先を越されましたわ!」

 まあ、そういう反応になりますよね。

 あの曹操が運良くという訳ではないと思いますが。

 どう考えても勝利をするためには、あらゆる手練手管(てれんてくだ)を尽くして手繰り寄せるタイプでしょう。

 そこを言うとまた面倒そうなので言いませんが。

小夜(シャオイェ)さん、真直さん、桂藍(けいらん)さん! 次はこの袁本初が名門であるのを示すのに相応しい活躍が出来る策を用意なさい!」

「面倒くさいでございます」

 ノータイムで拒否しましたね。

 小夜さんならそう言うと思いましたけど。

 すかさず麗羽様の檄が飛ぶ。

「ちょっと小夜さん! そこはもっとやる気を出すところではないんですの!? でないとまたあの宦官(かんがん)の孫娘に先を越されてしまいますわ」

「曹操の手腕は此方(こなた)も認めるところ。あちらも余程に良い人材が揃っていると見るのが無難でございます。それに、曹操とは旧知の仲でございますしどう動くかはある程度は分かるというものです」

 初耳ですね。

 しかし、意外なところに意外な人物が関わってますね。

 他も初耳だったのか、何人かは驚愕している。

 そして麗羽様も知らなかったようです。

「あのクルクル小娘と旧知の仲ですって?! 今まで一言もそんな話ありませんでしたわよ?!」

「別に話す必要もないことでございましたし……いつからと言えば、花嫁泥棒してたあたりからと申しましょう」

 視線を横に向けて面倒そうな表情をする小夜。

 そう言えばそんな逸話ありましたね。

 袁紹と曹操の花嫁泥棒の話。

「な、なんでその話を知ってるんですの!?」

 小夜がその話を知ってることに動揺する麗羽様。

 同時に、微妙な視線が彼女に集中する。

「花嫁泥棒って……」

 呆れる美紅(メイホン)

「まあ、若気の至りって誰でもあるものね」

 大人な対応な桂藍、

「異民族みたいだね〜」

 辛辣(しんらつ)銀鈴(インリン)

『………………』

 そして何も言えない猪々子、斗詩、真直の三人。

 私もノーコメントを貫く。

 そんな中で真直が沈黙を破るように話を切り出す。

「えっと……気を取り直して、黄巾党が討伐されたことにより協力した諸侯にその功績を称えて官軍より使者が来るそうです」

「あら、それは重畳(ちょうじょう)ですわね。まあ、この名門であるわたくしであれば当然のことでしょうけど。むしろ遅かったくらいですわ」

 何かしてましたっけ、麗羽様。

「麗羽様、何かしてましたっけ?」

「ちょっと文ちゃん。思っててもそういうのは黙ってようよ」

 猪々子と心の声がかぶりました。

 というか、斗詩も何気に思ってるのが何とも言えない。

「……何かおっしゃいまして?」

「いいえ、何でもありません!」

 幸いにも聞かれなかったようで猪々子はすぐに勢いで誤魔化した。

 全く、この軍は何ともグダグダなところが似合いますね。

「ともかく、名族のわたくしに相応しい働きをしてくれた皆さんには褒美を与えませんとね。そうですわね……ここのところ戦いばかりでしたし、使者が来る前までは休養を与えましょう。わたくしもお肌のお手入れをしないといけませんし。今日の会議はここまでとしますわ」

「では、皆さん解散してください」

 麗羽様の決定がなされたところで、斗詩の解散の号令と共に一同は一礼して玉座の間を出る。

 つかの間の休息ですね。

 まあ、私もゆっくりさせて貰いましょう。

 数少ない休養になるかもしれませんが。

 




曹操と袁紹の逸話

ニ人は正史では結構な悪ガキで、官職に着く前は人の結婚式に乱入した挙げ句に花嫁泥棒をするという割ととんでもないことをしている。
何だかんだで息が合う悪友である感じだとこの話を見た時に作者は思いました。
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