真・恋姫☨夢想 革命 張郃転生伝   作:青二蒼

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なんでか筆が進む。
なぜだ?

一刀はホモになってしまうのか?

TSFとは……

貂蝉「あらぁん♪ つまりワンチャンあるのかしらぁん?」

俺の傍に近寄るなぁぁぁ!?


一章:張儁乂推参

 

 さて三度目の生と言っていいのか分からないが、ともかく俺は張郃な訳だが……

 赤ちゃんの時の記憶とか自意識がない。

 なんだろうな、転生というより憑依的な感覚もするが……何でか5歳くらいにハッと意識が出た。

 プレハブみたいな寮で寝たのが最後の記憶。

 困惑は色々とあったが……何故か生活にすぐ適応した。

 まあ、諦めてるとも言えるが。

 この手の物語の約束はオタク趣味的に見飽きてるので逆に慌てるのが不毛だというくらい知っている。

 という訳で、現状の把握と来たるべき戦いに備えるのが現実的な話だ。

 社会人経験って大事だな。

 こちとら無駄に事務職と現場の両方を半端に経験してるから活かせることはあるだろう。

 え、女性の体についてはどうなのって?

 案外あっさり受け入れてる。

 悲しいぐらいに……

 だってどうしようもないし。

 そういう願望がなかった訳じゃないし。

 ともかく状況としては、自分の住んでるところは冀州河間郡鄚県(きしゅうかかんぐんばくけん)のどこかの村だ。

 冀州というのはまあ、簡単に言えば北で、三国志とか無双シリーズが好きなら何となくは分かるはず。

 南には兗州(えんしゅう)そしてのその兗州の南には袁紹がいるであろう豫洲(よしゅう)がある。

 かなりざっくりとした認識としては日本で言うなら州はなんとか地方ぐらい、群が都道府県、県が市町くらいの認識。

 まあ、地形に関してはよく分からん。

 ただ……大陸のスケールがデカすぎて城=街だから現代の市町村の大きさはあまり参考にならないかもしれない。

 そこまで三国志オタクでもなし……せいぜいがゲーム知識程度の曖昧な知識だ。

 勉強しかないよな~

 しかも文字が漢文ですよ、漢文。

 この時代は文法やらまだメチャクチャだって記憶してるし、果たしてどれだけモノにできるのか……

 私塾か? 私塾に行くしかないのか?

 しかし、後の魏の五将軍の張郃とは言え出生が不明で武家の一門ではないのは確か、というか家柄がどうとかも不明だったはず。

 つまりはお金があるようには見えない。

 村の中にある1つの家としか言いようがない。

 村自体はそこそこ栄えてはいそうだが、どうも……分からない。

 ともかくこういうのはまずはプランニングが大事。

 最終目標と中間目標、そして目の前の目標を立てるしかない。

 目下は武芸だな。

 今は女ですし……くっ殺展開は勘弁して下さい。

 さて、前世で運動のセンスはあまりなかった俺。

 はたして武芸など出来るのかどうか……

 まずは基礎的なことを教えてくれる師が必要だ。

 父は武芸の心得が多少あるようだ。

 どうやら父は村の自警団長的な存在。

 害獣やちょっとした盗賊程度に遅れはとらない腕があるらしい。

「武芸と言われてもどこから始めればいいのですか?」

「ふむ、基本はやはり足運び……体を思い通りに動かせることが大事であろう。という訳で舞などどうだ?」

 舞……舞ですか?

 なんかいよいよ無双シリーズの張郃っぽい感じになってきたんだが……

「踊りというのも体を自由に動かせなければ、美しくは見えない。体の調和であると父は考える」

 一理あるような感じではあるが、どうも胡散臭い。

 実際に中国には剣舞的なのはあるが……果たしてそれは実戦的なのだろうか?

「疑っているな? まあ、言葉だけでは分かるまい。どれ、1つ見せてやろう」

 父はそのまま家の裏の空き地へと案内するように歩いて行く。

 そして、俺が出たところで手頃な棒を投げてきた。

「どこからでも掛かってきなさい。まずは思うようにやってみよ」

「は、はい」

 父に言われて取りあえず棒を正眼に構える。

 父は後ろで手を組んでいるだけ。

 体の捌きを教えてくれるようだ。

「はっ!」

 まずは正面に斬る。

 父は最小限の動きで体を半身にして俺の左側面に。

 そのまま俺は左を薙ぐように切り払い。

 だが今度は後退して寸のところで回避した。

 これで多少の心得なのか?

 素人でも分かる程に洗練されてるように見えるが……

「やあ!」

 後退したなら今度は突きで追撃をしようとしたところで、足が微妙にもつれてこけかける。

 倒れはしないが、体が前のめりなる。

 思うように体が動いてない。

「おっと、大丈夫か(くう)?」

 いつの間にやら父が更に前のめりなる前に肩を正面から持ってくれていた。

 詰めるの速ッ。

「すごいです。父上」

 父を見上げて素直に俺は感想を述べた。

「見直したか? しかし、空は筋が良さそうだ。考えながら棒を振っていたな?」

 おおう……そこまで見抜かれてる。

 確かに距離が開けば突きとかで詰めて、横に避けるなら薙ごう程度にしか考えてなかったんだけど。

 次に繋がるように戦うのがいいかな? とか、素人なりに考えてやってたんだが……どうやら正解だったらしい。

「明日から少しずつ体の使い方を覚えるように鍛錬しよう」

「はい、父上!」

 精神的にある程度成熟してるとは言え、新しいことに挑戦するのは子供のようにワクワクする。

 実際に子供の訳だが、なんだろう……何だか生活が充実しているように感じる。

 

 

 という訳で、しばらくは農作業やら自警団の手伝いをしながら暇を見つけては鍛錬の日々。

 最初は体捌きなどよく分からなかったが、上半身に対して下半身が置いてかれるといったムラが段々となくなっていった。

 今では体を多少は自在に動かせる。

 重心の移動とかそんな感じだ。

 足だけで動くんじゃなく、体全体で動く。

 実際のところ父が言ったとおりに舞をやってる。

 舞踊(ぶよう)というらしい。

 カンフー映画とかであるような剣舞をやってる旅芸人がたまたま村を訪れた時に少しだけ教えてくれた。

 しかし、剣舞の歴史って古いんだろうか?

 こんな三国志の時代で既に認知されてるあたりは結構長い歴史がありそう。

 剣の代わりに木刀を作って、基本的な動きを繰り返す。

 剣を回転させ、時に突き、時に跳ねる。

 踊るというのは思ったよりも楽しく、自分のイメージ通りに体を動かせるのは何とも心地良い。

 そもそも娯楽が少ないこんな時代だ。

 やれることなんて、狩りとか、詩を詠むとか、こういった鍛錬とかぐらいしかない。

 本なんて貴重だから一般の村民にはあまり手が届かないし、碁とかも村に普及してる感じもない。

 裕福なところぐらいだろうな~そんなのあるのは……

 スマホやネットが恋しいぜ。

 ただまあ……不便な代わりに充実してるのは確かではある。 

 この時代を考えると少しだけ不安なことを考えてしまう。

 今はこの村は平和だが、賊がどこにでも跋扈(ばっこ)してる状態だ。

 いつ襲われてもおかしくはない。

 その時に俺は、守るために人を、殺せるのだろうか?

 そう考えてしまう。

 

 

 そんな事を考えながらも結構な日数が経った。

 カレンダーもないので実際は年が経ってそうだが、具体的な数字が分からん。

 いつも通りに農作業を終えて村の大通りを通って自宅へ戻る。

 父は村の自警団の仕事があるらしく今日は俺1人の農作業。

 泥とかを井戸の水で落としてから帰路についていた。

 案外、大変だな……農作業。

 上手く耕したりしないと早くも婆さんみたいな腰になりそう。

「張郃おねえちゃんだー!」

「それ、つかまえろー!」

 来たなわんぱくキッズども。

 男の子、女の子関係なく俺に突撃してくる。

 変にあしらうとこけたり怪我をするのでなるべく優しく対処しないといけない。

「元気ですねー相変わらず」

 呆れるように言って、とりあえず先頭の子供の大将の両脇を掴んで素早くくすぐり。

「あはははは! くすぐったいいいいい!」

 よし無力化。

 そのまま地面にゆっくり倒れさせる。

 む、背後から殺気?!

 なんて後ろに回り込んできた子供2人を宙返りするようにして飛び越えてさらにダブルでくすぐる。

「ああああ、やめてよー!」「ははははは、ごめんなさい!」

 よし終了。

 数少ない癒しだな。

 子供は国の宝とはよく言ったものだ。

「敵将破れたりってね。それじゃあ、お姉ちゃん帰るから。遊ぶのはまた今度ね」

「えーー! 今日はカッコいいあれやってくれないの?」

 剣舞を見てた子供にどうやら人気が出てしまった。

 まあ、この時代では舞踊ができるのは物珍しいから好奇心の塊の子供には新鮮で楽しいものに見えるだろう。

「だって物がないから、出来ないよ。夕食の時間でしょ? 早く帰りなさい。また今度見せてあげるから」

「はーい。じゃあね、お姉ちゃん」

 聞き分けが良くてよろしい。

 子供たちは仲良く元気に帰って行った。

 何だろうな。父性というより母性が芽生えそう。

 あんまり男喋りは今の容姿に似つかわしくないと思って早々にやめたが、その内本当に女性的な思考になりそうだ。

 

 

 家に帰ると自警団の仕事は終わったのか、父は既にいた。

「おお、空。最近の鍛錬はどうだ?」

「ええ、まあ……順調なんでしょうか? 実戦をあまりしたことがないので何とも言えませんが」

 父とは模擬戦的な事はやっている。

 それなりに打ち合えるので多少は腕に覚えがあると言っていいぐらいにはなってるとは思うが……これが命のやりとりとなるとどうなるかが分からん。

 恐怖で動けなくなるのか? はたまた、興奮状態で今までの動きを全て忘れてしまうのか……

「どれ」

 と言いながら父は歩み寄って俺の腕を触ってきた。

 そのまま腕を伸ばすように上げさせると何かを確かめるような手つき。

 なんだ、筋肉のつき方でも見てるのだろうか?

 そう思って触られるまま黙って見ている。

 そのまま父は太ももの方も触る。

 親とは言え、何だか変な感じだ。

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 ぱかん!

「ぐおッ?! 何をする空!?」

 反射的に父の頭を殴ってしまった。

「途中からいやらしい手つきになってましたよ。娘相手に何してるんですか?」

 明らかに筋肉を触る感じから柔肌(やわはだ)を揉んでる感じにシフトしてたぞ。

 グリグリとした感じの指圧が段々とモミモミに変わってやがった。

「いや、我が娘ながら。良い肉付きになったと」

「真面目に気持ち悪いです」

 この親、引くわー……俺もこの世界の荀彧とか曹洪みたいに男嫌いになるぞ。

 中身男だけど。

 父はそれから真剣な口調になる。

「真面目な話、よく鍛えられている。しかも舞踊をやってるおかげかしなやかな感じでありながら筋がある」

 それはアレか?

 麺は柔らかいけど、コシがあるみたいな。

 この例えは微妙だな。

 柳みたいにしなやかだが、竹のように真っ直ぐ的な方がしっくりくるか?

 ともかく、柔軟性とちゃんとした筋肉が両立出来てるということらしい。

「そうだな……この短期間で動きも良い。自警団に入ってみるか?」

「良いのですか? 父の事だからてっきり自衛のためだけだと思ってました」

「私も過保護ではない。娘を危険な場所に送り出したくはないが、情勢を考えればこうするのが空の最も益になると私は考えたのだよ」

 どうやら親父を俺を思って真面目に考えているらしい。

 久々に父に男と親としての気概を感じた。

「そうですか……正直怖いですが」

「まあ、そうであろうな。なに、そう固くならずとも父に任せればよい」

 くっ、なんて良い親なんだッ。

 たまにふざけるのがアレだけど……というかそのふざけ方が若干気持ち悪いのが結構マイナスだったりするんだが。

 

 

 話はとんとんで進み、俺は自警団の一員として今度の警邏に参加することになった。

 こんな小娘に警邏を任せるなど、不安がる人もいるかと思ったが――

「張郃の嬢ちゃんなら大丈夫だろ」「いや、張厳さんの娘さんは才女ですね。羨ましい限りです」

 と、会合の際に村の男衆は不安がるどころかめっちゃ高評価。

「褒められると照れます。大して何もしてないはずなのに」

 という事を言えば、

「舞踊を見てても惹かれるからな。美しい舞だったよ」「子供に大人気だからな。どうだ? うちの息子の嫁に」

 わーい、メッチャモテモテ……

 というか婚約には早すぎませんか?

 一応、この時代にも成人式的なのはあるらしい。

 聞いた時は少し驚いたが、こんな1800年以上も前にも成人の制度があるとは……古代中国恐るべし。

 もちろん婚約の件は「よく分かりませんので」と丁重にお断りさせて頂いた。

 12、3の俺に婚約なんて話されても困る。

 というか中身が男なのに男と結婚なんて困惑するわ。

 嫌悪感? そりゃあ、ある。

 だからと言って女の子同士というのも……悪くはないが、そこまでガチではない。

 いずれなるであろう乱世の奸雄じゃあるまいし。

 

 

「くしゅん……おかしいわね。こんな時期に風邪かしら?」

 そんなベタなことが大陸のどこかであったとかなかったとか。

 

 

 そんなこんなで警邏の日が来た。

 この村には時折害獣が来るのでなるべく定期的に見回らないと田畑が荒らされて税収に関わる。

 ここは比較的にマシな方だ。

 どうやら村の噂によると近くの別の村は不当に搾取されて生活もままならないらしい。

 朝廷の腐敗が段々と出てきてるようだ。

 ここで税を納められないと、それを好機とばかりに難癖をつけて不当に搾取される可能性があると村長は考えているらしい。

 なのでせめて目をつけられないためにちゃんと税を納められるよう、この自警団を提案したようだ。

 なるほど……自分達の生活を守るためにはそりゃ知恵も絞りだすしかないよな。

 改めて、前世の生活がどれだけ豊かを実感する。

 そんな訳で夜に松明を持って数人の村人と共に田畑の周辺を見回る。

 街灯もないので道は真っ暗。

 今日は月明かりがあるおかげで比較的見えるが、新月はマジで見えん。

「どうだ? 空。怖くないか?」

「ええ、まあ……ですがみなさんがいるので大丈夫です」

 父に言われて俺は笑顔で答える。

「はっはっは! いや、しっかりしてるな張郃ちゃん。俺の息子と同じくらいの年なのに子供とは思えねえよ」

 そりゃ、中身は成熟したオッサンですし……前世含めて生きた年数を数えたら悲しくなるからやめよう。

 恰幅の良い、よくお世話になってる商人の親父さんはそう豪快に笑った。

 商人と言っても構えてる店の品物はそんな高価な物ではないし、修理屋も兼ねてる。

 うちの村じゃあ商売だけでやっていける訳はないからな。実質何でも屋だ。

「しかし、隣の村もなんだか不穏な話が出てるべ。その内、うちの村にも――」

「分かんねえよ。だが、村長の言うとおり税を納めねえと俺達も同じようになっちまうかもしれねえ。今できる事をしねえと」

 不安がる村人たち。

 時代の情勢からして他人の事なんて考えてる余裕なんてないよな……

 前世の知識を使えば色々と楽できる部分はあるかもしれない。

 けど、あまり変に栄えたりしても別の意味で村に目をつけられる。

 そういう可能性がある以上、あんまり個人では動けないんだよな~

 どこか有力な太守とか刺史とか……権力者のいる組織にいた方が安全に知識を開示できるとは思うんだが……そんな伝手もない。

 大体、どこに誰がいるなんて分からんし。

 変なところに属してしまったら、面倒くさいことになりそうだし……

 ここの袁紹だけはマジで勘弁してくれ。

 曹操に仕える前は袁紹の配下だった張郃。

 だけど、その張郃は俺という前世の知識持ち。

 仮に配下になったら田豊、顔良と一緒に気苦労する未来しか見えない。

 なので目標としては曹操の配下、少なくとも三国志の英雄のどこかの配下になるのが安牌(あんぱい)だろう。

 あんまり半端な知識で動くと失敗するのは原作知識で一刀が証明してる。

 そうでなくても半端な知識は、人の判断を鈍らせる要因ではある。

 ちなみにこれは事務所や現場経験の実体験なので確信でもある。

 どっちにしてもこの世界で先入観で行動するのはよくないだろう。

「ん? なんだ、何か聞こえるぞ?」

 戦闘を歩いてた青年の村人が急に立ち止まる。

「もしや、獣か? この先は田畑だし」

「なに!? 早くしねえと荒らされちまう!」

 先行しようとする中年の村人を父は止める。

「待て。大型の獣であったら1人ではどうにもならんぞ。ここは足並みを揃えねば」

「あ、ああ……そうだな。張厳さんの言う通りだ」

 と言ったところで先程の先頭の青年が違和感に気付く。

「おい、こっちに何か向かってくるぞ」

 言いながら松明を掲げた先から何か光る物と共に走るような音が聞こえる。

 父は真っ先に気付いた。

「下がれ!」

「うおおおおおおお!」

 青年を引っ掴んで下がらせ、代わりに父が前に出る。

 振り下ろされようとしていたそれを切り上げ、弾いた。

 金属音……父が帯刀していた直刀の剣を抜いてそれが聞こえたということは……

「チッ、腕に覚えがある村人か」

 舌打ちをするのはいかにも賊という風貌をした男だった。

 父と同じような古びた直刀の剣を持っている。

「まあいい、お前ら! こいつらを殺して村を襲うぞ!」

「へっへっへ、待ってたぜ頭」

 いつの間にか似たような賊に取り囲まれてる。

 10人くらいだが、それでもこっちはただの村人だ。

 この状況は……ヤバい。

 恐怖に足が動かなくなる。

 いつかはこんな日が来るとは考えてた、覚悟はしてたつもりなのに。

 死に直面するとこんなにも足が動かなくなるなんて……

「空!」

「は、はいッ」

 俺の真名を呼ばれ、思わず父を見る。

 敵から目を背けず、背中で語っている。

「もっと穏やかに経験を積ませたかったがそうもいかぬようだ」

 父は歯がゆそうに語る。

 そう、か……これが乱世、ままならぬ世の情勢なのか。

「張郃ちゃん、すぐに逃げな。村へ行ってすぐに助けを呼ぶんだ。10人程度なら村人全員で戦えば何とかなる」

 商人の親父さんが優し気にそう言ってくる。

 そんな……置いて行くのか?

 確かに助けを呼んで数を頼みにすれば、この賊たちは追い払える。

 だけど――

「父上は?! みんなは?!」

 戻ったら死んでる可能性なんて十分ある。

 そんなのは流石に認められないッ。

「空、彼の言う通りだ。知らせれば備えが出来る。お前は若いし、足も速い」

「へっへっへ、そうは行くかよ。それによく見れば子供の癖に上玉じゃねえか」

 下卑た視線。

 それに初めて身の毛もよだつという体験をした。

 だがその時――

「ぐあっ!?」

 父の正面にいた男が悲鳴をあげて倒れた。

「私の娘に劣情を抱くなど言語道断! この張厳が貴様ら程度なぞ、すぐに斬り伏せてくれる!」

「なんだと、このオッサン? 手加減はいらねえ! 娘以外やっちまえ!」

 頭の一声で雄叫びと共に一斉に斬りかかる賊。

「う、うわあああああ!?」

 松明を振り回していた中年の村人が腕を斬られる。

 あ、ああ……何してんだよ。俺。

 こういう時の為に武芸を始めたんじゃないのか?!

 こういう情勢で必要だと覚悟を決めたんじゃないのか!?

 俺は何だ? 張郃だろ!? いずれ魏の五将軍と語られる人だろ?!

 ――深呼吸。

 一度は自分で命を絶ったんだ。人の命を絶つのがなんだ?

 自分を押し殺して、守るために殺せ。

「張儁乂(しゅんがい)、推して参ります」

 姿勢を低く、獣のように走り、松明を剣のようにして男の顔に突く。

「ぎゃああああああ!? 顔があああああ!」

 あまりに突然の事に周りの賊は足を止めた。

 顔を燃やされた賊はそのまま両手で顔を押さえようと剣を落とす。

 剣を拾い、俺は構える。

「こ、このガキ!?」

 再び姿勢を低く獣のように走る。

 今度は軽く飛び上がり、回転しながらの上段から斬りかかる。

 が、防がれた。

 及び腰の防御、そのまま足を払うように薙ぎ、態勢を崩したところで顎下から突く。

「ぐご、お?!」

 勢いよく引き抜き、そのまま左足を軸に回って持っていた剣を左にいた賊の顔面向かって投げる。

 この闇夜で血にまみれた剣があまり見えなかったのか、その賊の顔面に直刀が突き刺さる。

「ぎゃあああああ!?」

 代わりに目の前の賊の剣を奪い、舞うように他の賊に斬りかかる。

 既に音は聞こえなくなった。

 気付けば、いつの間にか賊は倒れてる。

「空! 空、大丈夫か?!」

 無我夢中とはこのことを言うのか、何もかもが朧げに見える。

 声が父だとは分かる。

 それよりも、意識が……

 何かに抱き留められるのを感じて、そのまま俺は眠りについた。

 

 

 木漏れ日がガラスのない木枠の窓から差し込む。

 知ってる天井だ。

 なんてボケてみたが、頭がボーっとする。

「おお、気が付いたか」

 父が心配そうに水差しの(かめ)を持って勇み足で近付いてきた。

「父、うえ?」

「ああ、そうだ。空……昨日はよくやったな」

 よくやった……か。

 やり過ぎなくらい、よく()ったな。

「ちなみに1人は怪我をしたが、他は大事ない。お前は守ったんだ」

「そうですか……イヤな初体験でしたよ」

「ああ、そうだな。だが、お前は村の英雄だ」

「……よく分かりません」

 人を殺して英雄って、こうして言われてみると気持ち悪いものだ。

「そうだな……今は、それでよい。ただお前の行いで救われた命がある。それだけ覚えていればよい。すぐに朝餉(あさげ)を持ってこよう」

 それだけ言って父は再びどこかへ行った。

 想像で考えるだけじゃ、やっぱり駄目なんだな。

 体から身を起こし、昨日の感触を思い出す。

 気味の悪い感覚だ。

 だが、救われた命があると思えば……不思議と罪悪感がない。

 これが、張郃としての初戦果。

 俺は本当に三国志の英雄の1人として大きく踏み出した。

 




おのれ!
軽い気持ちと懐かしさでやり始めたら止まらないぞ、どういうことだ?!

年末年始はテキストゲーだな……
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