真・恋姫☨夢想 革命 張郃転生伝   作:青二蒼

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すまぬ、戦国恋姫をプレイしてたら全然進んでなかった。
エロゲですけど、名乗りとか葛藤とか色々と好きです。
架空戦記ならカッコいいのも外せませんね。

個人的に信虎と綾那の戦いはよかった。
カットインを恋姫無双の方でももっと入れて欲しいですね。


拠点フェイズ(麹義1):たまにはのんびり

 麗羽様が西園八校尉に任命されて後日。

 昇任、と言っていいんですかね?

 まあ、形だけで中身がなさそうな雰囲気でしたが。

 さて、私と言えば調練に警邏に真直達の手伝い。

 文官もこなせる武官は貴重ということで重宝されています。

 疲れてはいますが、どちらかと言えば麗羽様や猪々子の後始末の方が大変です。

 猪々子はいい加減に書類から逃げるなと小夜(シャオイェ)も珍しく、憤慨してました。

 そして、ある朝議の時です。

「ということで、青州の黄巾の残党は端から切り崩すように順次取り込めています」

重畳(ちょうじょう)でございますね。このまま、青州を任されればこちらとしては都合がよいでございますが……」

 桂藍(けいらん)さんの言葉に小夜さんは満足そうな感じです。

 しかし、このままだと曹操と麗羽様の戦力差が絶望的になりそうです。

 いや……どうでしょうか?

 戦力あっても麗羽様ですし、肝心な時に負けそうな気がしないでもないですが。

「では、朝議はこれまでですね。引き続き、各諸将ごとに継続して頂くということで」

 真直がそう締めくくろうとした時、

「いえ、一つまだあるでございます。空殿」

 小夜が私に気怠げな目を向けてきました。

 何でしょう?

 頼みたいことでもあるのでしょうか?

「本日は休むでございます」

「はあ……適度に休養を頂いてる気はしますが」

 いきなり小夜さんに休めと言われて私はそう反論する。

 そんなに働いてる気はしない……と言っても、それは信じてもらえなさそうです。

 こういうのって無自覚の場合が多いですし。

「逆に聞くでございますが、最後に休んだのは?」

「一応は先週も頂いてますけど」

「真直の手伝いをしたでございましょう?」

「片手間ですよ。仕事の内には入りません」

 書類を出来る人が少ないのが問題ですよね。

 文官がいない訳ではありませんが、いまいちパッとしない。

 名を聞いたことがある人もいるにはいるのですがね。

 許攸(きょゆう)という話してて知性を感じさせる文官の人もいるのですが、いかんせんお調子者でポンコツ臭がする人でした。ちなみに女性です。

 私の言葉に小夜さんは呆れ気味。

「真直殿も何を気軽に頼ってるでございます」

「すみません……つい」

 その言葉に真直は反省する。

 別に頼ってくれてもいいんですけど。

 まあ、あんまり仕事のお株を奪うつもりはありませんが、頼られるのは嬉しいことですしね。

 よくあるこの程度も出来ないのか、とノルマをこなしても頑張って結果を残しても変な欲をかいたり、何のために仕事してるのかよく分からない上司に付き合ってた日々に比べれば幾分もやりがいがあります。

「まあまあ……空殿のお陰で色々助かってるのは事実だけど、確かに働きすぎね」

 桂藍(けいらん)さんまで……

 まさか私がワーカーホリックだとでも言うつもりですか?

 しかし、同時に前世を思えば働きすぎだからと休めと言われることの何と温かい気遣いでしょう。

 思わず目頭が熱くなります。

「あたいも休み欲しいなあ……」

「文ちゃんは空さんを見倣って、もう少し書類仕事頑張ってよ」

「えー……」

 斗詩の言葉に猪々子は不満げ。

 いや、そこは苦手なりに頑張りましょうよ。

「大丈夫でございます。空殿の仕事は文醜に回すので、安心して休むでございます」

「うえええ!? 沮授、それは勘弁してくれよ~!」

 小夜の言葉に、猪々子は絶叫する。

 私も思わず重い息を吐きそうになる。

「逆に休めそうにないんですけど……」

「ああ、後始末が出たら全て文醜に責任取らせるので大丈夫でございます」

 余程に休ませたいらしい。

 これは、本格的に手を出したら怒られるやつですね。

 哀れ猪々子、というか頑張れ猪々子。

 袁家筆頭の武官がこんな扱いでいいのかとお思いつつ、半分は自業自得なところがあるので何も言えませんが。

「斗詩ぃ〜頼むよ、あたい一人じゃ無理だよ〜」

「それは別にいいけど……」

 総司令官である小夜を斗詩はチラリと見る。

 まあ、猪々子には少しでも他の仕事をさせたい感じなので気にしてるのでしょう。

 小夜はしょうがないとばかりに息を吐いて、

「まあ、余計な仕事を増やさないように補佐は任せるでございます」

 それだけ呟く。

 そうして、私は急な休養を頂くことになりました。

 

 

 私はいつもの場所である東屋で日課となってる読書。

 今回は完全な休養なので昼間から酒です。

 度数低いんですよね、この時代。

 相当飲まないとあまり酔えない。

 酒造方法が分かれば、日本酒とか作りたいものですが……素人じゃ無理があります。

 そんなことを考えていると中庭で見慣れた人影。

 あれは……銀鈴(インリン)ですね。

 ぼーっとした感じで庭の芝生の上で空を見上げてる。

 典型的なのんびりキャラみたいなことしてます。

 そのまま本を閉じて東屋から出て、何となく傍に近寄る。

「あ〜、クーだ」

 真名をカタカナ読みしたような感じで言って、銀鈴は私にすぐに気付く。

「よく気付きましたね」

 オフの私の姿を初見で気付く人は、真直以外にはいませんでした。

「ん〜、何となく〜」

 間延びした返答。

 ぽやぽやした感じで何とも小動物的な愛らしさがある。

 でも、武器か防具を身に付けるとまるで人が変わるのでギャップがすごいです。

「クーは、不思議だよね~」

 私からすれば銀鈴の方がよっぽど不思議なんですがね。

「そうですか?」

「うん」

 短く答えてそれきり。

 まあ、別に無理に話題を探す必要もないでしょう。

 この沈黙も居心地が悪い訳ではないですし。

 黙っていてても彼女の柔らかな雰囲気は、清涼剤のような感じで近くにいる人の心を和ませる。

 近くに腰を下ろせば、少しだけ私を見てボーっと青い空を見上げてる。

 とりあえずは当たり障りのない話題を投げてみる。

「普段は休みの時は何を?」

「ん〜、鍛錬したり。こうして空を見てる〜」

「そうですか。のんびりするのもいいですね」

 こうして落ち着いて空を見るのも悪いことではないです。

 まるで争乱なんてない、平和としか思えない風景。

 忙しければこうして上を見ることもない。

 ましてや戦時であれば尚更です。

 そう思えばこのご時世では貴重な時間ではあるかもしれません。

「異民族を追い払ってると、どんどん心が(すさ)んでくるからね〜。そんな時は空を見上げるの〜」

 そう言えば、異民族に対してプロでしたね。

 異民族……一体どんな感じなんでしょうか?

 思い浮かぶのはヒャッハー的な感じだったり、人っぽい何かだったりするのでしょうか?

 というか、こんなポヤポヤした雰囲気の銀鈴が荒むなんて想像出来ませんね。

 まあ、ずっと人を殺し続けたら変な気分にもなるでしょうけど。

 今は武官として刃を振るう立場ですが、あれは慣れるというより耐えることができると言った方がいいかもしれません。

 人を殺める(ごう)に耐える。

 そんな感じです。

「クーは、どうして戦場に立とうと思ったの〜?」

 緩い口調なのに切り込んできますね。

 まあ、どうして戦うのかと聞かれても、私は大層な理由なんて持ち合わせてないんですけど。

「そうですね。私の勇名が轟けば村が襲われる心配が減りますし、戦うのが嫌になるくらい戦上手になれば……きっと戦わずして勝つということも難しくないのではないかと、思いまして」

 最初は村の為でしたが、後者は最近そう思うようになりました。

 抑止力という訳ではありませんが、戦うのが馬鹿らしくなれば話し合いで解決しようと動く人もいることでしょう。

 たかが一武官で元一般人には大それた夢物語ですけど。

「クーは優しいね~」

「そうでしょうか? もっと平和なやり方、それこそ儒学者でもなった方が余計な血も流さずに済むのかもしれませんよ」

「でも~、クーは力があるって思ったから仕官したんだよね~?」

「私ならもっと多くの民草を救えると信じて下さった父や村の人が送り出してくれたんですよ。その期待には応えませんと」

 だからこそ、私は戦うならば被害を最小限に。

 決定的な敗北ではなく、次に繋がるような勝ち(価値)を得る。

 張郃の名を冠していようとも、私はそう在りたいと思います。

「そっか〜。住んでるところは大事だよね〜。インも戦うのは好きじゃないけど、クーと同じ理由かな〜?」

「戦うのが好きじゃない割には、武器か防具かを身に着けると人が変わるみたいですけど……」

 そこを思わず突っ込むと、銀鈴は珍しく恥ずかしそうに顔を赤くした。

 もしかして、気にしてるんでしょうか?

「あんまり言わないで欲しいな〜……恥ずかしいから〜」

 と、銀鈴はニコリとはにかむ感じで笑う。

 やっぱり気にしてるんですね。

 なんと言うか……別人格みたいでそれを自覚してて恥ずかしいという感じなんでしょうか?

「そうですか? 凛としてて歴戦の猛者(もさ)という感じで兵も引き締まると思いますが」

「必要なことだけど〜、兵のみんなにも静かな時はのんびりして欲しいから〜」

「そう言えば銀鈴の兵は精兵という感じでしたね」

 そうですね……私の隊の兵が十段階の内で評価するならば六で銀鈴の兵は八か九はありそうなくらい屈強な感じでした。

「みんな家族みたいなものだしね~。だからこそ、のんびりして欲しいんだけど〜」

 言い方から察するに彼女の兵達は銀鈴みたいにオンオフを分けてる感じではないらしい。

 実際、仕官の挨拶で門を出た時に指示を仰いでた様子も堂々とした佇まいだった。

 困ったような顔をする、そんな銀鈴の心配の仕方は母性を感じさせる。

 何とも不思議な感じですね。

 見た目中学生くらいですのに。

 まあ、私もあまり人のこと言えませんが。

「それだけ慕われてるということですよ」

「それは知ってるよ〜」

 家族みたいなもの、それ程までに心を通い合わせてるということでしょう。

 銀鈴も慕われてることくらいは十分に承知してるようで、改めて言われるまでもないと言った感じで答えた。

「だからクーも、もっとのんびりしよ〜」

「のんびりしてますよ」

「そうかな~? のんびりしてたら休めなんて言われないと思うよ~?」

「うっ……ごもっともです」

 鋭いことを言われて思わず詰まった。

 そんなに働きすぎですかね?

 などと考えていると、銀鈴が寝転がって腕を私の方に伸ばして出してくる。

 腕枕、ですかね?

 こういうの気軽にしてくれたり、したりと同じ女性で役得とは思います。

「ほら、今日はゆっくりしよ〜」

「そうですね……」

 代わりに私も銀鈴の頭のしたに腕を入れてお互いに腕枕する感じにする。

「おやすみ〜」

 穏やかな口調に誘われて、お酒が入ってるのも相まってすぐに眠気がきた。

 妙な包容力に身を任せて、意識が沈む。

 少ない平和を願いながら。

 


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