真・恋姫☨夢想 革命 張郃転生伝   作:青二蒼

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三章:張郃、曹操と謁見するのこと

 

 曹操への居城へと使いとして入城した私と鈴花。

 そこには食事店で見た彼女ではなく、主君として玉座で我々を待ち構えていました。

 こうして見るとより一層風格が出てますね。

 緊張します。

「どど、どうしましょう、空様。お食事の時と雰囲気が違います」

「いつも通りですよ。平常心、平常心。というか、鈴花も私と会った時は堂々としてたでしょう?」

「そうですけど。今更ながら荷が重い感じがしてきました……」

「本当に今更ですね……。まあ、喋るのは私ですし、そう気負わず」

 隣で鈴花が緊張してるお陰で私は落ち着きを取り戻す。

 あれですね。自分以上に取り乱してる人を見ると逆に冷静になるやつですね。

「お二方、そのまま参られよ」

 夏侯淵に言われ私は玉座へと近付き、膝を突き礼をする。

 それに続き膝を突いた鈴花はさっきと打って変わって堂々とした様子だ。

 小心な割に腹が決まると切り替えが早いですよね。

「我が君主、袁紹様からの使いとして参りました。姓を張、名は郃、字を儁乂(しゅんがい)と申します。彼女は私の副将、高覧です」

 紹介されると同時に鈴花は下げていた頭を少し深く下げる。

 書簡を出し、捧げるように掲げる。

「こちらが此度(こたび)の打倒董卓に関する書簡です。既に参加する諸侯は、我が君主である袁紹様、そしてその親類である袁術、陶謙(とうけん)、公孫賛、そして西涼の馬騰(ばとう)といった面々にも同様の物を渡しています」

 書簡を受け取った侍女が曹操へと渡し、そのまま曹操はそれに目を通す。

 大方を把握したのか一つ頷く。

「ふむ、よくもまあ。これほど名のある諸侯を並べたものね」

「既に董卓の暴政に民は嘆き、天を貫かんばかりです。禁裏では大粛正により血の臭いが絶えぬ都となっておりかつての栄華(えいが)は見る影もないとのこと」

「もって回った言い回しはやめなさい。大方、麗羽のことだし董卓が権力を握ったことの腹いせでしょ」

 私の言葉は嘘だとばかりにバッサリと曹操は切り捨てた。

 まあ、短くない付き合いみたいですしそこら辺は分かりますよね。

 麗羽様がそんな殊勝なことではなく、もっと俗物的な考えであることはよく分かってるみたいです。

「まあ、分かりますよね」

 私もどれ程使者としての言葉を並べても意味ないと思い、つい素になってしまう。

「空様……」

「曹操殿は麗羽様と旧知の仲です。大層な目的がないことくらい予想されているとは思っていましたよ」

 鈴花の呆れに私はこれ以上の言葉は建前であると分かっているので、無駄だと言外に述べる。

「使者がそれでいいのか……」

 北郷が思わず参陣してる列の中でツッコんでいます。

「美辞麗句と分かっているなら、取り繕う意味もありませんから。それに、まあ……麗羽様ですし」

「ですね……」

 立ち上がることはなく片膝を突きながら話す私に、鈴花も同調する。

「まあ、いいわ。楽になさい」

 そう言われたので、遠慮なく立ち上がり直立の姿勢をとる。

 雰囲気的に堅苦しい話は終わりらしいです。

 代わりに色々と聞かれそうな感じですが。

「あと、黄巾討伐の時に董卓が出向いた時に(まいない)を要求したとか。それを断られた怨みを引きずってるのではなくて?」

「よくご存知で……大粛正も不正を行っていた者のみで、文字通り誰彼構わず粛清してる訳では無いというのもご存知のようですね」

「よく聞こえる耳を持っていると、いらない話も聞こえてくるものよ」

 私の言葉に遠回しに既に知ってるとばかりに曹操は答えた。

 この時代に忍びとは違いますが、情報収集できるコネなり人材がいるのでしょう。

 うーん、地固めがしっかりしてると言いますか、頭の作りが根っこから違うと感じさせます。

「相変わらずね。空……さっさと見限ればいいのに」

「元気そうで何よりですよ、桂花。次会うときは戦場かと思っていましたが」

 その私と桂花の言葉に北郷は思わず疑問を口にした。

「え、知り合い?」

「あんたには関係ないでしょ」

「そう言われるとなんの言葉もないが……」

 生で桂花の超ツンが見れるとは。

 ツンというか完全に生理的嫌悪としか見えませんが。

「桂花は袁紹様に仕えていましたよ。でしたら、袁家の将と知り合いでも不思議ではないでしょう」

「ああ、そういう……」

 私の言葉に北郷は納得する。

「正直、無駄な時間だったわよ。献策のしがいもないから、こっちから見限ってやったわ」

 と、桂花はフンと鼻を鳴らす。

 その様子に私は知己の仲となった桂花が変わりないことに安堵する。

 ここで列の中から妙齢の女性が初めて声を上げる。

 紫陽花(あじさい)のような髪に、私と比べものにならないダイナマイトボディ……

 確か、陳珪と言う方でしたね。

「それで張郃殿。今言った諸侯で参加を表明している方々は?」

「先程言った諸侯は既に参加を表明しており、袁家に縁ある諸侯や流れに乗ろうという小勢力も続々と表明しています」

 その中で夏侯惇が確認するように声を上げる。

「おい。その中に、孫策とかいう奴はいるか?」

「袁術の食客だったかで確かにそのような方がいましたね……」

「……! 華琳様!」

 私の言葉に夏侯惇は、何かを請うように曹操の真名を呼ぶ。

 あー、確か黄巾党を追撃している時にうっかり領を越えてそれを孫策に見逃して貰っていたのでしたか……

 それの借りを返したいと、夏侯惇は思っている、と。

 案外覚えているものですね。と、我ながら自分の記憶力に感心していると桂花が、それを(いさ)める。

「春蘭、私情を控えなさい。個人的な借りで参加するなど、愚の骨頂よ」

「……っぐ」

 夏侯惇は言葉を詰まらせる。

 まあ、そうですよね。その個人的な借りを返すのに大きなリターンがあればいいですが、果たしてそれが、軍しいては勢力として巻き込む程の価値があるかどうか。

 難しいところですね。

「桂花、私はどうすればいい?」

 と、曹操は桂花に問い掛ける。

 こうして見ると曹操は参加するかどうか半ば決めているようですが、別の意見もあるかどうか聞いてる感じですね。

「はい。ここは参加されるのが最上かと……」

「なんだとぅ! 散々にわたしの意見をこき下ろしておいて、結局は賛成なのではないか!?」

「私は私情じゃなく、大局的な意見として賛同してるだけよ」

 夏侯惇の言葉に桂花は論理的に返す。

 そして、そのまま根拠を述べた。

「これだけの英傑が一挙に集う機会、利用しない手はありません。ここで大きな手柄を立てれば、華琳様の名は一躍広まり盤石なものとなりましょう」

 この場合の"盤石"とは何でしょうね?

 諸侯の中で曹操有りと示せば、同盟なり傘下になりたいという者、あるいは在野の人材への求心も高まる。

 私が考えられるのはそんなところですかね。

「でも……どうなんだ? 董卓がやってるのが本当に噂通りじゃなくむしろ正しい側だったら」

「そんなものはいくらでも変わるものよ。そもそも勝たなければ正しさを示すことも出来ない。それだけの話よ」

 北郷の言葉に、曹操はピシャリと言い放つ。

 勝てば官軍を地で行く感じですね。

「張郃、高覧。麗羽に伝えなさい。曹操はその同盟に参加すると」

「お伝えしましょう。では、私達はこれで」

 拱手の礼をして鈴花と共に下がる。

 さて、次は反董卓連合。

 いよいよ乱世の幕開けの第二幕といったところです。

 

 

 使者の役目を終えて数日掛けて南皮(なんぴ)へと戻り、曹操の同盟の参加の表明を報告。

 あとは戦の準備ということで私は自分の隊の装備やら何やらと見積もりと準備。

 しかし、竹簡で員数とか書くのは面倒ですね。

 この時代どうやって見積もりとかやってたんですかね?

 それとも、ざっくりなんでしょうか?

 もっと効率的な方法があれば良いんですけど。

 そう考えていると、桂藍(けいらん)さんが近付いて来た。

「どうしました?」

「いえ、特にはありませんよ。桂花はどうでしたか?」

「イキイキと毒を吐いてます」

「元気みたいね。少し安心したわ」

 判断基準、そこでいいんですか?

 まあ、私も同じこと言われたら元気そうだと返したと思いますが。

「そう言えば、連合の参加にはどなたが?」

「猪々子ちゃんと斗詩ちゃん、真直ちゃんは確実よ。あとは待機じゃないかしら」

「まあ、そうなりますよね。連合にかこつけて攻められないとも限りませんし」

「そうね。そう言えば、この連合に際して張楊(ちょうよう)という方が我が軍と合流するそうよ。於夫羅(おふら)と言う南匈奴(きょうど)の者も共にね」

 南匈奴……匈奴ということは異民族であったはずですが、それが漢の軍である麗羽様に合流。

 何ともよく分からない話です。

「匈奴は異民族のはずですが」

「ええ、匈奴は北と南に別れて南は漢に許しを得て長城の内側に住むことを許されてると聞いたことがあるわ」

 桂藍さんの説明になるほど、と頷く。

 異民族にも漢王朝に服属している者がいるとは聞いてはいましたが、異民族は異民族で色々とあるのでしょうね。

 ふーむ、多民族がひしめく大陸は争いが絶えないですね。

 まあ、島国で同じ民族で何年も内乱してた日本もよくよく考えれば狂ってるんですが。

 ブラック企業は身内で潰してるみたいな感じですし、そんな変わりないかもですね。

 と、前世(過去)を振り返るのはやめましょう。

「何もなければいいんですけどね」

「どうしたの空殿?」

「いえ、服属しているとはいえ異民族。どういう経緯での服属かは存じませんが、混乱してる今を好機と見て良からぬことをする人も出るのではないかと」

「疑り深いのね」

「慎重なだけですよ」

 人の善を信じたいですが、善人ばかりでないのは嫌と言うほど味わってきましたからね。

 前世でも……今でも……

 まあ、私の周りは今のところ癖はあっても道を外した行いをする人はいないのが救いではありますが。

 自分の配下がそうなった時に、私は処断出来るでしょうか?

 切り捨てられる側であった私は、どうしても躊躇してしまいますね。

 信賞必罰が、この世界ではより厳正にする必要があるとは分かっていても……

「それはそうと、これから長い戦いになると思うわよ」

「それは、前に話していた群雄割拠の時代という意味ですか?」

「そういう意味でもよ」

 反董卓連合での戦いも、ある意味長い戦いになるということでしょう。

 そう、桂藍さんは含みを持たせていました。

「まあ武官として、私はやれることをやるだけです」

 今を生き残らなければ未来もない。

 いつの時代も世知辛いことはあるものですね。

「空様、隊の準備が整いました」

 と、元気な声で鈴花が報告してくる。

「ご苦労様です」

 渡された竹簡の目録に目を通して、問題がないことは確認。

 あとは、命令あるまで待機というところですね。

 出陣する際に必要な糧食もある程度は見積もりましたし、戦となればこれを軍師の方に渡せば良いでしょう。

「あら、それは?」

 桂藍さんが不思議そうに目録を見る。

「もし、何かあった時の見積もりですよ。兵数とそれに応じた装備と糧食、考えられる費用をざっくりですが……あとでお渡しします」

 その言葉に桂藍は目をパチクリ。

 事務職やってた経験からやってみたのですが、もしかして許可要りましたかね?

 一応は小夜さんからすぐに兵を動かせる準備はしておいて欲しいとの話で、その延長でこの目録は私の判断で作成したのですが。

「ふふ、そこらの文官顔負けね。本当に私塾とか通ってないのかしら?」

「真直先生が良かったということで」

 今思えば村では活かす機会がありませんでしたからね。

 見積もりというか、算術関連に関しては。

 そう思うと若干ですが未来知識チートをやってる感じがします。

「それよりも、今は内政ですね。時代の機微に聡い者であれば同じことを考えているでしょう」

「そうね。そうならないことを祈りたいけれど。楽観的で考えては生き残れないもの」

 桂藍さんも私の言葉に同意する。

 戦乱は近い――そう気持ちを新たにする。

 

 

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