たまに名前があっても資料がない人がいますし。
さて、三国志マニアだったら割と有名な董昭さんです。
どんな人かは、あとがきに残しておきます。
反董卓連合がある中である人物が南皮の城に訪れる。
私達が於夫羅の軍を破ってそう間もない時期でした。
いきなり謁見の間に集められたかと思えば、小夜さんは面倒そうな雰囲気。
「君主不在時に来客とは、面倒でございます」
「なら、君主の不在を理由にお断りすればよろしいかったのでは……」
「県令の訪問でございます。お嬢様の傘下とは言え
私の提案に小夜さんは理由を話しながらもまた疲れた顔。
さて、役職についてはまだまだ勉強の身ですが――
簡単に偉い順番で言うと、州牧と
次に太守、その下に都尉。次に県尉、県令、県丞。
一番大きい地方の区分けが州、郡、県の順番ですから……
日本で言えば県知事か市長かどっちかのレベルですかね。
なので、それなりに格式のあるお出迎えになっているのはそういう理由でしょう。
主要な文官、武官が集められてしばらく待っていれば――
「お待ちしていたでございます」
小夜さんが礼をして待っているところに、扉が開いてその人物は現れた。
「突然の訪問のお出迎え陳謝します」
優雅な感じで出て来た妙に怪しげな雰囲気を纏わせた少女。
紫のワンピースみたいな服装の中華風で身を包み、紫色の髪をなびかせている。
しかし、横にはエグいスリットが入ってる。
色々と見えそうなんですが。
ロリ……ではないですね、ギリギリ。
私と同じくらいの背丈には見えますが、どことなく妖艶な雰囲気。
「どうも……ようこそ
「沮授殿、面倒そうな顔をしないで下さいな。そんな顔ではいじけてしまいます」
と、董昭という女性は口に指を当てて腰を少しくねらせる。
え、演技臭い。
董昭……なんか、三國志IXとか歴史のシミュレーションゲームの動画で見たことあるような……
ヤバい、思い出せない。
しかしあの雰囲気は、どうも只者ではありませんね。
小夜さんと同じ、腹黒い人の雰囲気を感じます。
そんな中で小夜は顔を上げる。
「それで、どのような訪問でございますか?」
「いえ……袁紹様の戦況がどのようなものかと、案じてこちらに来た次第です。何かお知りになられてるかと」
「まあ、順調でございますよ。色々と諸侯同士でのいざこざはあるでございますが」
「それは予想できていたことかと、特別な情報ではありませんね」
「では、どのようなご用件で?」
「それはも・ち・ろ・ん、大変そうなのでわたくしも色々と助力を出来ればとこうして参じました。もちろん、県令としてのお役目もきちんとこなします」
「――ㇵァ~……」
わーお……小夜さん、小さいながらもため息とあからさまにめんどそうな顔してる……
しかし、董昭さんはニコニコと笑顔だ。
小夜さんは何かを考えて言葉を繰り出す。
「お嬢様に使いを、話はそれからでございます」
「お忙しい中、答えて頂ける余裕はあるかしら?」
「その君主が忙しい時に訪問したのは誰でございます」
「それは申し訳ありません。しかし、わたくしも純粋にお助け出来ないかと思ってこうして参じました」
今のところ言動が胡散臭い感じしかしないです。
ワザとやってるのですかね?
「……使者の返答を待つでございます。董昭殿を部屋にご案内を、他の者にも休息できる場所をご用意するでございます」
それで侍女が董昭さんを部屋に案内したところで出迎えしてた文官や武官は解散。
解散となってから、桂藍さんと小夜さんと私は何となく残った。
「
「何か裏でもあるんですか?」
と、私は小夜さんに思わず尋ねる。
いや~清々しい程の胡散臭さです。
私でも裏を疑わざるを得ないですね。
「裏はあるでしょうけど……おそらく悪いことではないと思うの。どうかしら?」
桂藍さんは、う~ん、と唸って小首を傾げる。
何となく分かってる感じの雰囲気。
一体何が狙いなのか、私にはあまりですね。
「この忙しい時に、自分を売り込みにきやがったのでございますよ。それも君主の不在時に」
「まあ、確かにいやらしい時ではあるとは思うんですけど……」
そう言われると、何となくは分かりますね。
桂藍さんの言うとおりいやらしい時ではあると思いますけど、そこまで考えますかね?
それだと余程に野心がありそうな感じですが。
「荀彧殿が抜けたのを知っていておまけに君主は連合へ参加。実際に内政の人手はいつでも不足……文官が何人いても好転はなく差し引きで無し、悪ければ悪化」
「そうですか? 国力は増してると思いますが……」
「国力が増しても、治世に長けたのがいないのでございますよ。お嬢様? 頼りになる訳ないでございます」
「君主不在なのを良いことに小夜さんの毒舌が三割増しに……」
それも鼻で笑って「頼wりwになる訳ないでございますw」と合間に草でも生えてそうな。
それでいいのか、筆頭軍師。
というか……ますます何で仕えてるのか不明になってくるんですけど。
それは置いといて、確かにそもそもと言えば小夜さんは筆頭の軍師というか総司令官なので、政治家ではないんですよね。
文官と軍師は兼任みたいな感じですので治世もしてますけど、よくよく考えればそうです。
まあ、明確に分けてる感じはしないですし、そういうものだと思いますけど。
「お嬢様のことです。使いを出したところで、忙しいだのなんだのでよく考えずに登用するに決まってるでございます。直接的に耳打ちできないでございますし」
「いや、ほら
「無理でございますね」
私のフォロー虚しく、バッサリですー!!
小夜さんは、押し切られるか何言ってるか分かんないかのどっちかで片付けられると思ってる感じです。
「別に助かるのは助かるのでございますが……取り入り方が気に入らないのでございます」
うーん、何でしょうね。
ぽっと出の新人が上手いポジションに転がり込んだ感覚でしょうか?
前から仕えてた身としては複雑、的な。
「確かに、内政に長けた人ってあまりいないものね。でも、小夜殿も仕事が減るのだからよいのではないかしら?」
「どうでごさいますかね……腹黒いのは桂藍殿だけで十分でございます」
「あらあら、腹が黒くないと軍師はやっていけないと小夜殿も仰っていたでしょう?」
「
「うーん……私、そこまで腹黒いかしら? 私はただ口車に乗る人が好きなだけなのだけど……」
『…………』
思わず私も小夜さんも桂藍さんの言葉にジト目になる。
何だかんだで桂藍さんも桂花と同類な気がします。
荀家はサド属性でも家系に組み込んでるんですか?
いや、しかし……桂花がアレですから桂藍さんもどこかドM属性を秘めていたりとか……
あんまり想像できませんね。
それは置いといて、董昭という人はどうやら注意していた方がいいかもしれません。
胡散臭い賓客が来てからも日常は変わらず。
まあ、戦乱中なので平和とは言えませんけどね。
しかし……戦火が遠い場所では剣戟の音がしたり矢の雨が日常的に降ってる訳ではありません。
それはさすがに殺伐とし過ぎているというものです。
ですが、賊は出てきますし……これ幸いにと暴れ出すものがいるのも事実。
私が覚えてる平和な日常とは随分と遠くになってしまいましたけどね。
そう言えば、早馬が来て麗羽様に送ってた使者の返答がそろそろ来ると言ってました。
その内に招集されそうですね。
いつでも応じられるように準備しておきましょう。
小夜さんの予想通りであれば――
「えー……その献身と状況を見て動く機微を認め、董昭を徴用する」
集められて早々に、ジト目でやる気がなさそうに小夜さんは親書を読み上げた。
その親書、かなり
「それはありがたい。身に余る光栄です」
「とはいえ、県令として自分の領地は統治して貰わないと困るのでございますが?」
「ただの県令ですもの。代理はおりますし、必要なことがあればきちんとお役目として戻ります」
「じゃあ、お役目の為に帰れでございます」
「……袁紹様のご厚意で徴用を認められたのに、さっそく帰れだなんて。わたくしは悲しいです」
「徴用はしても配置換えなんて勝手にできる訳ないでございます」
わざとらしく、よよよ、とした感じをだす董昭に対して小夜さんは頑なに返す。
「それはごもっとも。では、今日の所は帰りましょう。もしかしたらすぐに、必要になるかもしれませんけれど」
というと、一礼して彼女は優雅に去って行った。
何と言うか掴みどころのない人物でしたね。
「さて、各自持ち場に戻るでございます」
疲れたように小夜さんが指示を飛ばすとそのまま、ぞろぞろと他の文官たちも謁見の間を離れる。
「しかし、何が目的かよく分かんないわね。空は、どう思う?」
それから
私に聞かれてもという感じですが、
「さてね。今の内に袁家の中で地位を確立しておきたいのではないですか?」
「元々傘下なのに?」
「それ以上はよく分かりませんし、私にとってもただの予想ですので。狙いがあるとしか思えない言動ですけど、実は深い意味がなかったりとか」
「それは無理があるくない? メッチャ怪しいよ」
ですよね~。
あんなの怪しむなと言う方が無理ですよね。
しかし、もっと裏があるなら小夜さんが何かしら手を打ってそうですけど。
「あ~……お腹すいたね~」
「呑気な言動ね、銀鈴」
銀鈴がホケ~と、しながら歩いてきた。
その様子にさすがの美紅もツッコむ。
「難しいことはよく分かんない~。でも、悪い人じゃないと思う~。うーん、小夜様の怪しい顔してる時みたいだけど……悪い感じじゃなくて~」
「腹黒い感じ?」
「うん、まあそう」
「それ悪い感じじゃん?!」
やれやれ……愉快な同僚達です。
董昭という方はどういう者なのか。
それは、今後分かる事でしょう。
とか、何とか言ってる内に反董卓連合は無事に虎牢関を抜けて禁城を制圧したらしい。
そして、帝達の行方は知れず……董卓も姿を消した。
反董卓連合はこれで終わり。
しかし、帝がいないのならば誰が大陸を治めるのか……民の不安はそこですね。
間もなく麗羽様達も帰ってくるでしょう。
出迎えの準備に忙しくなりそうです。
とは言え、私は武官なのでいつも通りに警邏。
おまけに各警備の状況を鈴花と共に確認しませんと。
「……あ~」
部屋に戻ろうとしてる途中でうめき声。
止まった場所は、小夜さんの部屋の前……ですね。
なので、どんな姿でうめいてるのか想像が出来る。
「面倒臭いでございます~……」
こっそり入ってみれば、予想通りに机の上に顔を突っ伏してる小夜さん。
何を面倒に思ってるかは、大体分かりますけど。
向こうは既に私の入室に気付いてるみたいですので、一応は尋ねてみる。
「どうしました?」
「空殿~……妖術者の知り合いでもいないでございますか~?」
「そんな怪しい知り合いはいませんよ。妖術なんて何に使うんですか……」
「嵐とか地が割れるとかで、お嬢様を足止めしてください~」
「足止めって……報告書をなかなかやらない猪々子じゃないんですから」
一瞬、夏休みの宿題をやりたくない子供との例えが思い浮かびましたが、伝わらなそうなので表現を変える。
というか、帰ってきて欲しくない訳じゃないんですよね。
帰ってきて欲しくなかったら、帰って来るなともっと直接的に言いそうですし。
「子供とでも言いたいんでございますか? 文醜と比べられるのは、正直に心外でございます」
珍しく引っ掛かったのか、小夜さんは小さくむくれた。
いつもはそんなにあからさまに態度に出さないのに、珍しいですね。
それはそうと、カワイイ。
まあ、それは置いときましょう。
「どっちにしても忙しくなるんじゃないですか? 北へ勢力を広げて、南下するんでしょう?」
これは既定路線と言いますか、
戦略として思い描いていた計画的にもそうです。
「ですが、どうも……領地の境の諸侯の動きはきな臭い感じになってるのでございます。」
「なるほど、早くも誰に味方するかの品定めは始まってるんですね」
「詳しいことはお嬢様が帰ってから決めることでございます。前に来たあの女狐、本当にすぐに必要になるかもしれないでございます」
董昭さんのことでしょうか?
しかも、必要になるとは一体……
もしかして何か重要な情報でも握ってるんでしょうか?
公孫瓚との戦い……名のある諸侯との戦いはもうすぐ、始まろうとしていた。
董昭(とうしょう)……字は公仁(こうじん)。割と腹黒い人(三国志には割といる)の1人。袁紹が納めてる土地の県令であったが公孫瓚との戦いにて台頭。色々とあって曹操へと流れる。過去に書類偽装して粛清とかしたり、割と黒いことをやってる。
しかし、魏の建国に携わる重要なところでアドバイザー的な事をしていた。
桂花にとってはライバルになるかも、逸話的に。