真・恋姫☨夢想 革命 張郃転生伝   作:青二蒼

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メリークリスマス

やべえよ……どうでもいいけど、FGOでアヴァロンクリアしてねえからコヤンスカヤイベントに完全に出遅れてる。

それは置いておいて一部の武将は恋姫化して出ます。
一応、有名どころはある程度出すつもり。

キャラ付けが難しいけど。


四章:情勢と初陣

 

 袁家に仕官が決定し、この世界で初めての労働となった訳だが……

 そもそも個人の技能ならともかく指揮なんてやった事がないので現状の武官としては三流もいいところな俺。

 仕方がないので真直の補佐として、軍の指揮や政務を学ぶことにした。

 旅の途中にある程度の勉学に励んでいたので報告書としては最低限の形は保ててるだろう。

 流石に最初から誰も彼もが名将な訳じゃないだろう。

 経験を得て大成するものだと思いたい。

 確か司馬懿(しばい)も張郃を失った戦いを経て、晋という国を立ち上げるまでに至る訳だし。

 というか、この世界に司馬懿はいるのか?

 それを言ったら原作でいないあの人はどこに、的な話になるが。

「空殿、そちらはどうですか?」

「ええ、多分これで問題ないかと思いますが。この軍備品の補充記録はどちらへ?」

「それは私のところで。そう言えば、補充記録と一緒に掛かった経費の記録も近くにありません?」

「経費……ああ、これですね。ところで……真直(まぁち)さん」

「はい?」

「割とこの軍危なくないですか?」

 何で連合組む前から微妙にアンバランスなんですかね?

 例えるなら、ボートに穴が開きかけて漕ぐためのオールが1個しかない。

 そもそも無駄遣いが多すぎる。

 火の車一歩手前だ。

「空殿……その話はやめません?」

 言いながら真直はハイライトが消えて遠くを見始めた。

 この子、早くも仕官した時の希望を失ってるぞ。

「大体なんなんですか?! やり取りの多いこの商人との記録は! しかも、城の改装費って守りを強固にするとかじゃなくて豪奢(ごうしゃ)にしてるだけだし!」

「真直さん。お茶でも飲みましょう」

 あなた疲れてるのよ。

 湯呑を二つ出して茶を淹れ俺は優雅に落ち着いて飲む。

 あー……お茶が美味い。

 現実逃避だって?

 想像はしてたが、予想以上に現実が酷くて逃避もしたくもなる。

「でも……治世はそこまで悪くないし、土地もそれなりに豊か……何とかすれば、きっと最大の勢力に――」

 茶を飲みながらぶつぶつと一人で呟く真直はすぐに現状を良い方向に持っていけるように思案させる。

 現状を見つめ直した上で放り投げたりはしない。

 相変わらずの生真面目さに、俺は呆れる。

「真直さん、少し休憩にしましょう」

「え、ええ……そうですね。久々に胃が……」

「外でも出て気晴らしでもしましょう、ね?」

「そうします……」

 疲れたような表情をしながらも真直はゆっくり立ち上がる。

 俺も一緒に立って、部屋を出て城の中の庭園へ向かう。

 庭園に到着した瞬間、素人の俺が一目見て豪奢と分かる程に華美にされている。

 おかしい……庭園にあるあの東屋(あずまや)を金ぴかにする必要性はどこに……

 ところどころ庭の装飾も派手すぎて逆に落ち着かない。

「絶対にお金の使いどころを間違えてるとしか……」

 真直はまたしても疲れた顔をする。

 気晴らしに外に出たのにこれでは気晴らしにならない。

 何か別のこと……そうだ!

 そう言えば最近は剣舞をやってないし、せっかく庭園に出たのだからやってみよう。

 見せる程のモノじゃないが、そこはご愛嬌だ。

「まあまあ、真直さん。少し私の舞をお見せしましょう」

「舞、ですか? 空殿は舞踊(ぶよう)か何かを?」

「そんなところです。剣舞をしてる旅芸人が村を訪れまして、その時に少し習ったのですよ」

 言いながら俺は直刀の剣を抜いて、軽く確かめるように手首を使って回す。

 それからそのまま真直から離れたところで舞を始める。

 人前に自分から見せるのは初めてだな……ちょっと恥ずかしい気もするが、娯楽が少ないのだから仕方ない。

 

 ◆       ◆       ◆

 

 空殿が直刀の剣で舞を見せると言って庭園の中央で静かに構えだす。

 まるで空気が澄んでるみたい。

 さっきまで話してた空殿は別人みたいになって、剣を回しだす。

 激しい剣舞の後にピタリと片足立ちになって静止し、次には大きく円を描くように体を動かし剣が弧を描き始める。

 静と動、激と麗、それらが見事に調和してるような舞。

「綺麗です……」

 そんな言葉がもわず漏れる程に洗練されている。

 これに(がく)が加わればもっと華やかに見えるでしょう。

 本当に……多才な人。

 少しばかり羨ましくなります。

 

 ◆       ◆       ◆

 

「こんな感じです」

 一通りの舞を披露して、俺は剣を仕舞う。

「お~……」

 素直に真直は感心したように目を丸くする。

 感心してくれたのなら、少しは舞った甲斐があるな。

「まあ、本職の芸人には遠く及ばないでしょうけど」

謙遜(けんそん)ですよ。私も芸術には疎いですが、美しいって思いましたし」

「そうですか? そう言ってもらえるとありがたいです」

 どうやら楽しんでもらえて何より。

 それに褒められて少し照れる。

 ほぼ我流だしな~

 基本の型みたいなのを教えて貰っただけで、あとは自分で考えて実戦でも使えそうな自己流にしてるだけだし。

「空さん、お見事です」

 と顔良――斗詩がどこからともなく称賛の言葉と共に現れた。

 お見事、って――

「見てました?」

「ええ、まあ……覗き見るつもりはなかったんですけど、つい目に留まって」

 申し訳なさそうに斗詩はそう言う。

 別に怒ってる訳ではないのでそう気にしなくていいと軽く答える。

「ところで斗詩さんは? どうしてここに?」

「えっと……文ちゃんを探してて。報告書がまだだから催促に」

 質問して返ってきたのはありきたりなパターンだった。

 まあ、ここの文醜――猪々子がそういう細かいことをさっさと終わらせてるイメージがない。

 バカカワイイを体現する筆頭の1人だし。

「おーい! 空!」

 噂をすれば何とやら、猪々子が声を上げて走って来る。

 ……何故か武装して。

 何だか嫌な予感がするぞ。

 っていうか、原作知ってようが知ってまいが基本的に思い付きで行動してるとしか思えないのはすぐに分かるからな。 

 真直はその様子を見てすぐ質問する。

「どうしたんですか、猪々子殿。武装してくるってことは、どこかに出兵でも?」

「いや、違うけど?」

「では調練の帰りですか?」

「違うって、目的は一つ! 空、あたいと勝負だ!」

 何故に?!

 唐突にも程があるだろ。

 斬馬刀みたいな大剣で俺にその切っ先を向けてくる。

 あぶねえから人に刃物を向けるな。

 勝負を挑まれた俺は困惑しながら答えるしかない。

「えっと……何故ですか?」

「え? さっき、剣を持って振り回してからさ。てっきり鍛錬でもしてるのかと思って。それに、空の実力を見たいっていうのもある」

 あー、うん……あながち間違いではない。

 舞をしてるのは立ち回り的な意味もあるし、鍛錬と言えば鍛錬だが……

 それに実力を測ることも悪いことではないとは思う。

 それよりも斗詩の用件の方が深刻な気がする。

「それよりも文ちゃん、出兵費用の報告書まだ? 締め切り今日までだよ」

「そんなの後でも出来るって」

「もうっ……! そう言って大体やらないじゃない」

 斗詩の言葉に内心で同意する。

 だろうな~

 本当にこの袁家に仕官して大丈夫なのだろうかと不安になる。

 いや、大丈夫じゃないから官渡で余裕で負けるんだろうけど。

 俺がいたところで大勢はあまり変わらない気がしてくる。

 ともかく仕事はきっちりとやるべきだろう。

 だからと言って正論で言ったところで猪々子は聞かないだろうから、分かりやすいエサで釣るか。

「それよりも空! どうなんだ?」

「え? そうですね~斗詩さんの言ってる報告書を終わらせたらお相手しますよ」

「なんだよ~ノリ悪いな」

 いや、ノリとかじゃないし……

 真面目に仕事してる方としては頭痛いな。

「でしたら報告書を終わらせた上で私に勝てましたら……食事をご馳走しましょう。もちろん奢りで」

「マジで!?」

「ええ、いくらでも」

「確かに聞いたぜ。すぐに終わらせてきて勝負だ!」

 と猪々子は意気揚々と帰っていった。

 現金だな~

 そんな中で真直と斗詩はポカンとしてる。

 何だ、その顔は……別に何も問題はないだろう。

「空さん、来て間もないのに文ちゃんの扱いが上手い」

「やっぱり、将としての才能が――」

 と、それぞれに感心された。

 こんなので才能とか言われてもって感じではあるが、取りあえずは猪々子の仕事が終われば相手することになってしまった。

 うーん……負けはしないだろうが、果たして通用するのかどうか。

 そんなに強敵と会ったことがないから、よくある武人同士の「コイツ出来る!」みたいな尺度がまだあまりないんだよな。

 そういう意味でも引き受けたのは悪くないかもしれん。

 体のコンディションでも整えておくか。

 

 

 

「待たせたな」

 はええよ!?

 まだ半刻――今でいう1時間――も経ってねえよ。

 やり切った感じを見せる猪々子はさっきと同じく武装してやってきた。

 あの感じだと仕事は終わったんだろう……中身はともかくとして。

「約束通りに仕事は終えてきた。さあ、どっからでも掛かってこい! それと飯をいただく!」

 完全に実力を測る的なことは二の次になったな。

 単純すぎて心配になる。

 待ちながら雑談をしてた真直と斗詩もこちらに戻ってきた。

「あー……斗詩さん。合図をお願いします」

 言いながら俺は鉤爪を構える。

 今度武器名でも考えておくか……この鉤爪、結構な上物だし。

 文斉さんや父に感謝だな。

「はい、分かりました――では、始め!」

 合図と共に先攻は猪々子。

 大剣を声と共に振り上げ、突っ込んでくる。

「でやああああああ!」

 鉤爪で受け流せる得物ではないので軽く横に(かわ)し、距離を取る。

 まずは相手の出方を見る。

 間合いが肝心だし、戦い方を見て実力を推し量るしかない。

 大剣が振り下ろされた場所に大きく砂煙が上がり、穴が出来る。

 うーん……腐っても名のある武将。そこら辺の賊とは違って久々になかった緊張がする。

「おりゃああああ!」

 今度は横に構えて薙ぎの姿勢。

 目で追えない訳じゃないし、相手は割と大振り。

 決めようと思えば一瞬で決められるか?

 ……行けるな。

 そう思った瞬間に俺は駆け出す。

 猪々子が振ってくる瞬間、こっちの胴を薙ぐ手前で飛んで大剣の腹を足場に彼女の頭上を飛び越える。

 そのまま空中でクルリと回転して背後に着地し、

「終わりです」

 既に両腕の鉤爪の間には猪々子の首が納まっている。

 このまま鉤爪を引けば、彼女は終わり。

 勝負あったな。

「え、えっと……そこまで!」

「……え?」

 斗詩の終了宣言に猪々子は状況が追い付いてないのか、素っ頓狂な声。

「え、えええええええええ!? ウソだろ?!」

「いや、この状況はどう見ても終わりですよ」

 首の間に鉤爪が挟み込まれてるし。

 チャリと金属音が猪々子の首元で鳴る。 

 すぐに鉤爪を下ろして、私は手から鉤爪を外す。

「まさか、文ちゃんが一瞬なんて……」

 斗詩も予想外だったのか、感想を漏らす。

「相性が良かった。そちらからすれば相性が悪かったのでしょう」

 俺の戦い方はどう考えても正面から切り結ぶものではないし。

「うぅぅぅぅ! だぁー新参者に負けたああああ!」

 猪々子は項垂れる。

 まあ、そりゃ袁紹軍の筆頭だしな……もうちょっとプライドとか立場に配慮すれば良かったかも……と今更思った。

 今更だけど。

 でもなあ、忖度(そんたく)して手加減されても不愉快だろうし。

 だけど猪々子はすぐに納得した感じだ。

「だけどまあ、ある意味納得だよ。あんなに賊に囲まれても平然としてるんだもんな……」

 賊に囲まれたって、ああ……山道で襲われた時か。

「多対一は慣れてるんです」

 本当に乱戦に強くなったな~俺。

 何でデフォルトで基本数では劣勢なのか意味が分からん。

「しゃあねえ! ここはこの文醜様が奢りだ」

「そう言えば猪々子さんが負けた時のことは何も言ってませんでしたね。いいんですか?」

「いいんだよ。こういう時は甘えとけって。歓迎の宴はしたけど……あたい達とはあまり飲み食いしてないだろ?」

 確かに。

 賊がどこもかしこも活発化してたおかげで色々と出兵が重なってる気はする。

 なので筆頭の武将二人は城を空けることが多い。

 やはり黄巾党の乱が近いのだろう。

「よろしくな、空の姉貴」

「姉貴と呼ばれるほど、姉御肌じゃないんですけどね……」

 こうして袁紹軍筆頭の二人に対して俺と真直は親睦を深めた。

 

 

 

 そうして後日――

 いよいよ、真直と俺は袁紹軍に参入しての初の会議。

 袁紹とも既に真名を交換している。

 麗羽は一同をぐるりと見回すと、いつも通りに堂々と話を切り出す。

「さて、皆さんにお集まり頂いたのは他でもありませんわ。どうやら最近は黄色い布を巻いた賊が蔓延ってるそうでして、夕方についに都からも軍令が届きましたの。黄巾の賊徒を優雅に華麗に平定せよと」

 優雅と華麗は絶対に書いてないだろ、その軍令。

「今更ですね~……」

 と、原作では見ない初めて見る顔がいる。

 ボサボサの天然パーマっぽい黒髪に、タレ目気味の灰色の瞳。

 体は俺より小さいな……女子中学生くらいか?

 第一印象はやさぐれてるとしか言い様がない。

小夜(シャオイェ)さん、これは都の命令ですのよ! もうちょっとしゃきっとなさって下さい」

「なら、此方(こなた)のお話をもう少し聞いていただきたいですね~。最早、朝廷の腐敗は明らかですし~……先を見据える必要があるのでは?」

 なかなか切り込むなこのやさぐれ少女。

 朝廷を悪く言うのは問題発言では、と内心思うが。

「なーにを言ってますの! この袁本初――もとい袁家が主上様がおられる朝廷を見限れとおっしゃいますの?!」

「別に~、見限った方がいいんじゃないかとは思いますけどね~。とは言えお立場があるので汲みますが……まずは賊の平定ですね~」

 なかなかに鋭いことを言って、麗羽の言葉も介さずに本題に戻した。

 俺は初めて見る人に近くにいる斗詩に少し聞く。

「すみません、斗詩さん。あの軍師と思われる方は?」

「え、ああ……小夜さん?」

「それ真名ですよね?」

「彼女は沮授(そじゅ)さんと言って、袁紹軍をまとめる参謀ですよ」

 誰かと思ったら沮授かよ!?

 関羽とかに比べたらマイナーと言えばマイナーだが、袁紹軍の筆頭軍師じゃん。

 やっぱり違う外史と思った方がいいな。

 探せばあの武将だ、みたいな人がいるかもしれん。

「現在のところ豫洲(よしゅう)の各地にも黄巾のものと思われる賊は多いで~す。随分と散発的ではありますがね~」

「ええ、今のところ最大でも百人規模のものしか確認できていません」

 沮授と真直は現状を分かりやすく述べる。

 散発的ね……現代で言うとゲリラ的な感じだな。

「チマチマしてんな~。もっとこう、一万規模の軍勢とかいない訳?」

「そんな分かりやすい本隊みたいなのいれば困りません」

 猪々子の言葉に沮授は疲れたような顔をしながら、ふっ、と息を吐いて呆れて言う。

「ともかく! この名門であるこの袁本初の領内で賊などのさばらせてはおけませんわ。こうなったら報告が入れば(しらみ)潰しで優雅に平定なさい!」

「まあ、現状はそれしかありませんね」

 麗羽の言葉通り、黄巾の活動は散発的で虱潰しでやっていくしかないだろう。

 真直も特に作戦が思いつかないようである。

 そんな中であった。

「軍議中に失礼します! 西の方で賊が出ました!」

 兵士の一人が慌ただしい様子で片膝と着いて報告に来る。

 その言葉に真直は真っ先に視線を鋭くする。

「規模は?」

「およそ五百人ほどかと」

「そこそこ多いですね……」

 確かに真直の言うとおりにそこそこ多いな。

 そんな報告を聞いていた麗羽はニヤリと笑う。

「あら、ちょうどありませんの。空さん」

「はい」

「今回の賊討伐、空さんにお任せしますわ。初陣(ういじん)としては充分でしょう? サクッと片付けてらっしゃいな」

「分かりました。では、すみませんが田豊殿を補佐として連れても?」

「ええ、別に構いませんわよ」

 いつかこんな日が来るとは思っていたので、補佐役は経験のある人にお願いしようとは考えていた。

 相手は五百か……確かに初陣としてはちょうどいいのかもしれん。

「という訳で真直さん、よろしくお願いしますね」

「はい。しっかりやらせて頂きます」

 

 

 

 こうして張郃としては初の出兵。

 与えられた兵は千人ほど。

 相手の二倍の兵力という訳で下手な用兵をしなければまず負けないだろう。

「斥候からの報告は?」

「はっ、例の賊と思われる集団はこの先の平野に展開しているそうです。陣形を組んでるようには見えません」

 とは言え油断しないためにも戦況は把握しておく。

 しかし、陣形も無しか……聞いてる限りはろくな指揮官もいないそうなので当たり前だが。

 真直が俺の隣に馬を並べ、

「空殿。どう用兵するかを考えてます?」

 にこにことした笑顔で聞いてくる。

 随分と上機嫌だな。

「ええ、まあ……ろくな陣形もないのであればこのまま鋒矢(ほうし)の陣で突っ込み、敵を中央から分断。その後は私と田豊殿を二つの隊でおおよそ半数に分けて分断された集団を各個撃破。こんなところでどうでしょうか? もっと言うのであれば私は分断した後に左翼、真直さんは右翼で」

「………………」

 唐突に真直がぽかんとした感じで黙り始めた。

 え……何か間違ってたのか?

 軍師に黙られると不安になるんですけど。

「あの、真直さん?」

「あ、いえ……手堅い用兵だと思いまして。全然問題ないです」

「そうですか。旅の中で勉強してた甲斐があったというものです」

 どうやら問題ないらしい。

 本当に兵法をある程度学んでおいてよかった。

 きっと、もっと色々と把握しないといけないことはあるんでしょうがね。

 今回は裏をかくような指揮官がいないからこれで行けるだろうが、その内には裏の裏を読んで用兵したり複雑な戦況も出てくるだろう。

 戦略ゲーみたいに物事が運ぶとは思えないし。

 一時期はまってたな。懐かしい。

 真直はこちらを安心させるように語り掛ける。

「何かありましたらこちらで補佐しますので、空殿は思うようにやってみて下さい」

「それはそれで責任重大ですね。うぅ……変な武者震いが」

「それ緊張してるだけでは……空殿も緊張するんですね」

「どういう意味ですか? 才能あるなんて思われましても初めてなものに不安がない訳ないじゃないですか」

「そ、そうですよね。どうやら見えてきたようです」

 真直に言われてみると、確かに視線の先には黄色い集団っぽいものが見える。

 遂に初陣か。

 口上とかも考えてきたけど緊張するなあ……

 こんな規模の前で話すなんて初めてだし。

 取りあえずは声を張り上げて自分を奮い立たせるしかない。

「空殿、号令を」

 真直が先程の軽い雰囲気はなく、真剣な目つきでそう言ってくる。

 どうやらもう戦闘を開始していいらしい。

 息を吸い込み、覚悟を決める。

「よく聞け! 目の前にいるのは賊に身を落とした獣の集団。私達が遅れをとることはない! 華麗に撃破し、私達の武名を轟かせよ!」

『うおおおおおおぉぉぉ!』

 声を上げ、士気を高める。

 そして俺は具体的な指示をする。

「このまま鋒矢(ほうや)の陣で敵の中央に突っ込み、分断する! その後は張郃、田豊隊の二隊に半数で分け各個撃破! 全軍、抜刀!」

 剣を抜く音が背後からする。

 準備が整ったと思ったところで俺は号令を発する。

 

「突撃いいいい!」

『うおおおおおおおおおおおおおおおお!!』

 

 先ずは騎馬による突撃が敵の中央に食らいつく。

 馬に轢かれたくないのか、自然と人は避けていく。

 槍なんてそこらの賊では早々に持っていないだろう。

 つまり騎馬の突撃を止められる有効な手段はない。

 集団の中央を容易く突き抜け、真っ二つに中規模な集団へと別れた。

「副将はこのまま騎馬を率いて一度離れて歩兵の後方、後詰として待機! 歩兵隊は私へ続け!」

 副将に指示を出して俺は馬を返し、歩兵の先鋒へ。

「張儁乂、推して参ります!」

 再び自分を鼓舞し、俺は再び黄巾の獣の中へと突っ込む。

 

 ◆       ◆       ◆

 

「弓隊はそのまま斉射を続け、相手を近付かさせないで下さい! 槍隊! 打ち漏らした敵を刺しながら前進!」

 このままじわじわと押しつぶしていけば勝利は確実。

 空殿の初陣(ういじん)なのに何の苦労もありませんでした。

 と言うか空殿が手が掛からなさすぎなんですよ。

「田豊様、敵が壊走(かいそう)していきます」

 副将からの報告。

 随分と早い……

「でしたら周辺の土地に詳しいもの十数人ほどで逃げた一団を追跡。もしかしたら、本拠地や本隊が分かるかも」

「はっ!」

 指示を出して、隊を編成し直す。

 どうやら空殿の部隊も敵を打ち破ったみたい。

「あ~ぁ……軍師として優秀な武官を持つのはいいけど、その内空殿……軍師とかいらなくなるんじゃ」

 我ながら贅沢な悩み。

 空殿の部隊も再編してこちらへと徐々に合流を果たす。

「ご無事で真直さん」

「負ける要素がないですからね。って、空殿?!」

 なんか、手先辺りが真っ赤なんですけど!?

「もしや、どこか怪我を――」

「ああ、コレですか? いやあ、得物が鉤爪ですからどうしても手に血が滴って……」

 やれやれとばかりに両手をヒラヒラして困りながらも笑顔。

 返り血ですか……

「初戦果としては上々ですか?」

「上々も何も……文句なしですよ」

「それはよかったです♪」

 満足そうに答える空殿。

 自慢とかする訳でもなく、無事に終わったことに満足してる様子。

 うぅ……武人なのに自分の功績を語らない辺りが人格的にも出来てる感じがする。

 朝廷のバカ連中に比べれば……思い返すと涙と胃痛が……

「あとは戦後報告して、事務処理して終わりですね。今日はお酒でも吞みましょう」

「ええ、良いですね」

 この人は絶対に死なせないでおこう。

 こんなところで死んでいい人ではないと、どこか確信してる。

 私を気持ちを新たに麗羽様だけでなくこの人も支えようと決めた。

 




フリーで使える三国時代の地図はないものか……
地形とか説明するのに使えそうだし、イメージしやすいとおもうんだが……
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