トウカイテイオー27歳   作:幸イテ(旧名:kouta)

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テイオーは見事トレセン学園でトレーナーと再会できました!

……と思いきや、

そう簡単には復活しませんさせません。
ってことでヘタレのターンはまだまだ続きます。


第二話

「ヘタレですね」

 直球も直球、剛速球で大ダメージだった。

「だってさ! 1年だよ!? まるまる1年も会ってないんだから緊張しちゃうのはしょうがないじゃん!!」

「百歩譲ってだけど、怖気づいて帰ってしまったのは分からなくもありません。勇気だっているでしょう。で・も! それが一週間続いているのは流石に擁護しようがないですよ。ヘタレの中のヘタレです」

「なにをー!! 僕だって色々あるんだよ。その、まー、なんというか深い理由が……さ?」

「行けない理由を探す、代表的なヘタレ思考ですね。しかも言い訳の内容も決まってなく理論武装もできてない。どこまでヘタレなんですか。まさにヘタレの帝王です」

「ヘタレの帝王って……そこまで言わなくてもいいじゃんかぁ」

 ぐぅの音もでないとはこの事だ。ちょうど一週間前の事、とある人から勇気をもらった僕はすぐに着替えてトレセン学園へ向かったんだけど、目の前まで行ったら足が止まってしまったのであった。そのまま門の前を行ったり来たりしている内に、中から多分練習を終えたであろうウマ娘が出てきたのにびっくりして、慌てて逃げかえるという失態をさらしてしまったのである。

 それから毎日僕は気合を入れてトレセン学園の前まで行って、うひゃーと逃げ帰り、悲しみのスト〇ロはちみー割りを呷る日々を繰り返していた。カッコよく決めたはずなのにこの体たらく、どこをどう見てもヘタレである。分かっているけど、だからと言って何かできるってのは別問題だ。

 一人じゃにっちもさっちもいかないから人に頼ろうと思ったわけであるが、その結果が今だ。僕のハートは勇気をもらうどころかフルボッコにされている。目の前の辛辣な彼女はかつての僕の専属記者だ。しかしながら彼女は僕というよりも、サイレンススズカの専属記者であった事の方が有名であろう。彼女は何せウマ娘直々に指名された初めての人だ。

 スズカがレースで大けがを負った時、マスメディアはそれはもう好き勝手に書いた。『やっぱり大逃げは無理があった!』だの、『それを良しとしたトレーナーの資質は?』だの、スズカとそのトレーナーがどのようにして、大逃げに行きついたのか、そこにある覚悟を無視して、あーでもないこーでもないと専門家面し、こうすれば良かったと勝手に自論を立てた。出る杭は打たれるというが、やはりそれまでの成功者が落ちる姿というのは、残念と思う以上に痛快と言うのはあるのだろう。

 僕だってそれを完全に否定はできない。競技者であったからには最高の戦いをして、最高の勝利を得たいという思いに間違いなかったが、それでもライバルのコンディションが悪そうな時、それが残念だと思えるほどの余裕は僕にはなかった。心配した一方でホッとした気持ちを持ってしまったのは完全には否定できない。

 でもそれは僕達が実際に戦っているからだ。自分の勝敗が未来を分けると知っている、負けてしまうんじゃないかと恐怖と戦っているからこそだ。当事者じゃない人達が、あーすればよかったとか、お前は間違っていた、と喚きたてるのはどうにも納得しがたいものがあった。

 それこそスズカのトレーナーの取材会見は見ている側も怒りがこみ上げるほど酷く、乗り込んで行きたいほどであったが、取材陣の中で一人だけ雰囲気が異なる女性がいた。それが今目の前にいる彼女である。

 彼女は敗因を聞くなど、どこに粗があるのか探すような嫌らしい質問は一切しなかった。ただスズカの安否を気遣い、復活の時期や、次のレースの予定などポジティブな話ばかりを質問していた。特筆すべき事は他社が質問した内容について、ネガティブな内容であれば一切メモを取らなかった事だ。

 情報を売る記者からしてみればこれはあってはならない事だ。人の不幸は蜜の味、人の不幸は何時だってニーズがある。人は他人が不幸である方が安心できるゆえに。結果として数あるウマ娘の雑誌の中で、彼女の記事のある本はあまり売れず、一方で他社の売上は大きく伸びた。

 良い人ほど馬鹿を見る、世の中そんなものなのかもしれない。でもスズカはちゃんと彼女を見ていた。彼女の気遣いを知っていた。スズカはその恩に報いる形で彼女を専属記者としたのだった。

 そうして生まれた「サイレンススズカ、復活までの軌跡」はスズカが怪我してから復活優勝を果たすまでの一年を、完全密着取材を許された彼女が書き綴ったもので、サイレンススズカというウマ娘、それをささえるトレーナーとスタッフ達の生の感情が知れる大ベストセラーとなった。

 僕はその密着取材中に彼女と話す事がよくあって、いつの間にか気安い関係になっていたわけである。引退後もちょくちょく連絡を取っていた数少ない友人だ。

 

 僕の交友関係の中で、仲の良い友人と言ったらライバルでもあったマックイーンが真っ先に上がるわけだが、引退してから僕は彼女に連絡を取った事はなかった。

 いや、正確には取ろうとしたけど出来なかった。

 実際それまで何度か連絡しようとした事はあったのだが、どうにも引退の際に良い別れ方が出来なかった後ろめたさが思い出され、電話が通じてマックイーンらしき声が聞こえた瞬間に即切りしてしまった。そしてグダグダしているうちに時は過ぎ、時間が経つば経つほど後ろめたさは増してなおさら連絡が取りづらいと言う悪循環。

 G1レースにヘタレ記念と言うものがあったとしたら、僕はきっと10バ身差つけてぶっちぎり一位を取れるに違いない。

「あ、もう空か」

 本日3缶目となるスト〇ロを取りに行った時、僕は彼女の私物入れに何か物騒なものが入っている事に気づいた。

「なんで縄なんて持ってるのさ?」

「いや、もう簀巻きにしてトレセン学園敷地内の木に吊るしておこうかなと」

「お願いだからやめて!!?」

「こうした方が手っ取り早いですよ。それに会いたいんですよね? トレーナーさんに」

「……うん」

「だったらもう作戦なんて考えず、突撃して抱き着いてムチューっと」

「む、むむムチュー!? そそそ、そ、そんなのできるわけないじゃん!!!」

「でも悠長にしている時間ありませんよ」

「それってどういう?」

「トレーナーさん今付き合っている人いるって」

「えっ……?」

 いきなりのカミングアウトに僕は絶句する。そんな事って……

 僕が原因なのは分かっている。僕がうだうだ悩んで先送りしていたのが悪いんだ。恋愛だって勝負の世界、勝者と敗者が出るのは必然だ。でも僕は勝負の舞台にすら立てていない。このまま不戦敗なんて絶対認められない。

 僕は無敵のテイオー様だぞ!!

「確か近いうちに婚約発表するって言っていたような……」

「トレーナーの一番の愛バは僕だ!!!」

 いてもたってもいられなくなって僕は玄関へと走る。

「どこに行くんですか?」

 そんなの決まっている。

「トレセン学園!! トレーナーに問いただしてくる!!!」

「いってらっしゃーい」

 どこぞの馬の骨とも知れぬ女が僕からトレーナーを奪えると思うな!!!

 

 

 ~30分後~

 

 

 僕、帰宅。

 

 冷蔵庫開ける。

 

 スト〇ロとはちみーを取る。

 

 飲む。

 

 さめざめと泣く。

 

「このヘタレが!!!」

「だって、だってぇぇぇぇぇ」

 結局トレセン学園には行けませんでした! もちろんトレーナーにも会えていません! どうしよう、このままじゃトレーナー取られちゃうのに、うぅぅぅぅー。

「ドレーナァァァァァァァ、結婚しちゃ嫌だぁぁぁぁぁぁ」

「あー、もうこれでゴールイン、あわよくば延長戦でウマぴょいまで行けると思ったのに」

 心底面倒くさいといったようにため息つくと、彼女はあっさりと種明かしをした。

「嘘ですよ嘘」

「え?」

「だからトレーナーが婚約するのが嘘と言ったんです」

 真っ先に浮かんだのは安堵と歓喜、騙された怒りよりもトレーナーがまだフリーであった事の方が重要だ。彼女は『なんであんな勢いよく飛び出していったのに逆噴射するんですか、ツインターボですか! っていうか逆走だからツインターボ以下です!!』とぼやいていたが気にしない。トレーナーの愛バはやっぱり僕なんだ!

「そ、そうだよね! トレーナーが愛バの僕を忘れるわけないよね!! いやぁ、愛されて困っちゃうなぁえへへ」

 

「そう思ってるんだったらさっさと会いに行けやおらあぁぁぁ!!」

 

「ぎゃーーー! 僕のポニー引っ張らないでぇぇぇぇぇ」

 

 

 僕はトウカイテイオー、完全無欠のヘタレです。

 

 

 

 

 

 夢を見ていた。僕とトレーナーが初めて出会ったあの頃を。

 若き日の僕の目標は言わずもがな、かの皇帝、シンボリルドルフだった。圧倒的強さで7冠という偉業を達成した彼女は、ウマレースに憧れていた子供時代の僕にとって分かりやすすぎるヒーローであった。

 僕が他の子供と違ったのは、ウマ娘の性なのか一緒の舞台で戦いたいと思った事。ウマレースで華々しい活躍を夢見た僕は、子供ながらにどうすれば強くなれるか研究したわけだが、所詮は子供の思い付き程度のもので、それはトレーナー観についても一緒であった。

 かのシンボリルドルフを育てたトレーナーに鍛えてもらえば僕も勝てる! 今になって思うと笑っちゃうんだけど、子供の僕はそれを本気で信じていた。まあ自分一人で勝てるっていう傲慢さがなかっただけマシかな。

 そんなこんなでトレセン学園に入学した時、真っ先に生徒会長となっていたシンボリルドルフ、カイチョーの元へと向かい、またそのトレーナーにも顔を覚えてもらおうと挨拶したわけであるが、残念な事にシンボリルドルフのトレーナーはカイチョー以外を受け持つ気はなく、空いた時間はむしろ他のトレーナーの育成に力を注いでいた。

 後から聞いた話だが、カイチョーが目指す『全てのウマ娘を幸せに』を実現するために、カイチョーはレースでの勝利を夢見るウマ娘を支え、トレーナーは彼女たちの相棒となる若きトレーナー達を育成する事を目標としていて、僕が入学した時はそれがちょうどシステムとして動き始めた時だったらしい。

 シンボリルドルフのトレーナーに鍛えてもらうという僕の目論見は入学早々頓挫したわけだが、代わりとして目を付けたのが、それから長い付き合いとなる僕のトレーナーだった。彼はカイチョーのトレーナーの補佐をしていた人で、いわゆるサブトレーナーと呼ばれる存在だった。つまりはカイチョーのトレーナーの最初の生徒であり、彼が独り立ちしたのがちょうど僕が入学した年だった。カイチョーに憧れる僕が狙わないわけがなかった。

 でも僕はここで手痛い失敗をする事になる。僕は言っては何だけど自分の走りに自信があった。だから模擬レースで華々しい勝利を飾れば相手から声をかけてくれると信じていた。勝てるウマ娘を育てたい、それがトレーナーと呼ばれる人達の望みであると知っていたから。

 別に実力の差を見せつけられたとか、そういうのじゃない。僕は自分の想定通り模擬レースでぶっちぎりで勝った。確か彼女(F1ウマ娘)と出会ったのはこの時だったと思ったけど、その話は置いておくとして、自分の実力を証明した僕にトレーナー達は殺到した。誤算だったのはそこに目当ての彼の姿がなかった事だ。動揺する僕が周囲を必死に探すと、彼の後ろ姿があった。そう、彼は帰ろうとしていたのである。

 彼のお眼鏡に叶わなかった事、それは少なからずあった僕の自信を打ち砕いたが、その一方でこれ以上何が必要なのかと怒りを覚えた。若さとは恐ろしいもので僕はその衝動のまま、スカウトしようとしてくるトレーナーたちをかきわけて、彼に突撃して直談判した。

「君、カイチョーのサブトレーナーだよね。僕の何が悪かったのさ!!」

 怖いもの知らずとはこの事だ。ヒートアップしている僕と対照的に彼は冷静そのものであった。顎に手をあて、何か考えるような仕草をした後、落ち着いた声で答えた。

「何か誤解しているようだけどトウカイテイオー、君は何も悪くない。抜群の才能を持っている。きっと重賞に出ても勝てるウマ娘だろう」

「だったらどうして僕をスカウトしようと思わないの!?」

「トウカイテイオー、君は強いウマ娘と優秀なトレーナーが組めば一番良いと考えてる?」

「え、そんなの……」

 当たり前だよ、次の言葉を僕は告げる事が出来なかった。僕の中で生まれた強烈な違和感がそれを言うのを拒絶した。どうしてそうなったのか理由が分からず、自分自身に困惑していると彼は初めて笑みを見せた。

「強さはもちろん重要だ。強い人は練習環境も良く、強い人同士で何度も戦うから、蓄積される経験が段違いでさらに高みにいける。だが一流であるという事はその分精神面でも過酷だ。時に苦痛をも伴うトレーニング、みるみる強くなるライバル、その中で心が折れずに闘争心を保てるのは至難の業だ」

 誰とは言わなかったけど僕には分かった。これはサブトレーナーとして見てきたシンボリルドルフとそのトレーナーの話なのだと。

「勝負を左右するのは結局のところ心だ。心が強い奴が最後には勝つ。だからこそ俺は一番大事なのはウマ娘とトレーナーの相性と考えている」

「相性……?」

「俺が先輩から学んだのは育成方法だけじゃない。ウマ娘とトレーナーの信頼関係がどれだけ重要なのかを学んだ。二人の間に遠慮があってはいけない。本気でぶつかっても、それでも壊れない強固な関係、それがなければどれだけ才能があっても中途半端になってしまう」

 彼は言った。良いトレーニング方法であってもそこに信頼関係がなければ意味がない。半信半疑でやったトレーニングが身につくなんて事はないのだから。強くなる上で最も重要な「やる気」を得るにはお互いの信頼が必要不可欠だと。

 彼の言う事はもっともな話で僕は一切の反論もできなかった。

「心配しなくとも君の才能は本物だ。でも俺の方が君と上手くやっていける自信がなかった。それだけの事だよ」

「どうしてそう思うの?」

 僕はまだ本当のレースを知らない素人だけど、それでも彼が豊富な知識を持ち、強い信念を持っているのを感じられた。不足に感じるところなんて全くない。

「だって君が欲しているのは俺じゃなく先輩、シンボリルドルフのトレーナーだろう?」

「っ!!」

 だからこそ彼の言葉は僕に刺さった。最初から見抜かれていたのだろう。僕が彼の事をカイチョーのトレーナーの代わりとしてしか見ていなかったのを。言い訳なんてできなかった。そんな事しても恥の上塗りだ。他の答えなんて持ち合わせていなかった僕は、立ち去っていく彼を見送る事しかできなかった。

 

 

 そこから僕は本気で自分のトレーナーについて考えるようになった。ただの優秀なトレーナーじゃなく、僕に合う、僕だけのトレーナーについて。

 とあるトレーナーは熱意だけだった。熱意があるのは良い事だけど、夢しか見ていない姿に不安を覚えた。別のトレーナーは理知的でしっかりとした育成プランを持ってきてくれた。その人の用意したプランは魅力的であったが、雁字搦めにされそうで僕は首を縦に振らなかった。それからも色んなトレーナーと話をして、自分なりにではあるが考えに考えた。

 

 そうして出た結論は……

 

「やっぱり君が良い」

 元シンボリルドルフのサブトレーナーだった。

「理由を聞いても?」

「……ちゃんと叱ってくれたから。だってそれって君の言う本気で僕と向き合ってくれたからだよね?」

 他のトレーナー達と話していて改めて思ったのは僕はやっぱり有望株らしい。将来の事はともかくとして、僕は勝てるウマ娘としてトレーナー達から期待されていた。トレーナーとして僕に声をかけないのはありえないとまで言われたほどだ。

 でも彼は僕をスカウトせず、その心構えは良くないと教えてくれた。僕はここに彼が特別だという意識を持った。他の人の評価として僕は稀にみる才能との事で、それを信じるとすれば、彼だって僕の事は評価してくれているはずだ。実際彼からも才能があるとは言われている。

 彼がもし僕を欲していたとすれば簡単に契約できたのだ。そしてずるい事を言えば心構えなんて契約した後に教えてくれても良かった。それをしなかったって事はトレーナーの都合ではなく、僕のためだけを思ってやってくれたって事。僕としてはそこまで想ってくれる人を逃したくはない。

 といいつつも僕の考えはあくまで推測に過ぎず、確証そのものはなかった。そんな僕の背中を押してくれたのはなんとカイチョーであった。僕がどう彼の真意を確かめようか悩んでいた時の事、カイチョーが現れて僕にノートを手渡してくれたのだ。

 

「これは……?」

「私の元サブトレーナー君が作った君の育成プランだよ」

「ええっ?」

 驚いてパラパラとめくってみる。するとそこには誰よりも緻密なプランが書かれていた。これだけ細かく書かれているにもかかわらず決して独りよがりにもなっていない。何故ならプラン内では僕がどのように答えるか、あらかじめ何パターンかシミュレートしてあり、返答内容によってどう変えるのかも考えられていたのだ。

「凄い……」

「なんせ彼は私とトレーナー君の秘蔵っ子だからな! 身内みたいなもので多少のひいき目はあるかと思うが、彼の実力は私が保証する」

 そんなのは聞くまでもなくすぐに分かった。何て言えばいいだろうか、他のトレーナーと密度が全然違う。カイチョーそっちのけで夢中になった僕はノートの隅から隅まで調べる。そして僕は最後のページにかかれていたそれを見つけた。

 

 トレーナーとウマ娘は一心同体

 

 自分自身に言い聞かせるためのものだろうか? 僕は彼と初めて会話した時の事を思い出す。彼は確かに言っていた。ウマ娘とトレーナーは信頼関係こそが重要であると。

 

 心の奥からふつふつと湧き上がってくる。

 やっぱり僕には彼しかいない!

 

 そう心に決めたところで僕は一つ疑問が浮かんだ。

「でもカイチョーはこれをどこで?」

「彼の机からちょろっとな」

「ちょ、ちょっとそれはまずいんじゃ!?」

 尊敬するカイチョーのまさかの行為に僕は戦慄する。もしこれバレたらそれこそ僕ノーチャンスになっちゃうんじゃ?

「私としては将来有望な二人が組まない事に納得がいっていなかったからね。ちょっとお節介を焼かせてもらった」

「どうしてそこまでしてくれるの?」

「才能、だけであるのならここまで動かなかったろうな。だがテイオー、君は彼との会話を無駄にしなかった。彼に言われた事を君なりに考えて行動していた。そんな君だからこそ彼と上手くやっていける。そう思った」

 僕はカイチョーからの予想外の答えに目を見開く。

(カイチョーは僕をしっかり見ていてくれたんだ……)

 嬉しさと恥ずかしさがまぜこぜになり、僕は真っ赤になった顔を隠すようにうつむく。走りで褒められた事は多々あるが、他の事で褒められるのに僕は慣れてなかった。

「それにちょっと責任を感じていてな。彼があそこまで慎重になってしまったのは間違いなく私とトレーナー君のせいだ」

「それってどういう……」

「私達も完璧じゃないって事さ。当時は結構ぎりぎりなところもあって、私がトレーナー君と大喧嘩したのは一度や二度じゃない。彼はそんな私達の間に入っていたから……」

 シンボリルドルフに憧れていた僕だからこそ知っている。レースで本気を出したときのカイチョーがどれ程凄まじいかを。もしもあの勢いのまま喧嘩していたとしたら。さらに言えばカイチョーのトレーナーが、カイチョーと同じくらい強かったとしたら。

「うへぇ……」

 思わず変な声が出た。二人の皇帝の間に挟まれた彼を思うと同情を禁じ得なかった。

「こほん、と言うわけでな。少なからず私達は彼に迷惑をかけていた自覚があるわけだ。だからその恩くらいは返しておこうと思ったわけだ」

 恥ずかしそうに頬をかいていたカイチョーだったが、僕に向き直ると温和な笑みを浮かべて僕の肩を叩いた。

「テイオー、彼は君に興味がないなんて事はない。むしろ誰よりも君の事を真剣に考えている。だから安心して行ってくると良い」

「……うん!!」

 カイチョーから激励され、今度こそ迷いを断ち切った僕はその自慢の足で駆け出し、彼へと突撃をかましたというわけである。

 

 もはや怖いものはない。僕は彼を納得させるために言葉を続ける。

「君は僕をだます事が出来た。でもそれを良しとしなかった」

「そういう作戦かもしれないぞ?」

「その揺さぶりはもう通用しないよ。僕には確信があるからね!」

 ぶっちゃけズルではあるけれど、あのノートを見せてくれたのはカイチョーからだからね。僕は悪くない! 

「何度でも言うよ。僕は君が良い。君じゃないと嫌だ」

「……なんつー殺し文句だ」

 彼はまいったといった感じで額に手を当てる。間違いなく揺れている、あともう一押しだろうか。

「俺は君を育てきる自信がない。君は試されたと感じたと思うが、俺の本音でもある事には違いない」

「……僕はそう思わないけど」

 彼の意外な言葉に僕は否定を口にする。あれだけのプランを練っておいて自信がないって謙遜が過ぎる。それに今の僕はカイチョーのサブトレーナーじゃなくて彼自身を欲している。一体彼の中で何が引っかかっているのだろうか。

「ああ、確かに俺は君を強くする自信はある。だが心を守れるか、そこに自信がないんだ。先輩達が受けたプレッシャーは凄かった。君は才能のあるウマ娘だ。君もいずれそこに至るだろう。その時どうするべきなのか、俺には分からない」

 もし僕が先ほどカイチョーと会っていなかったら、どこまでも消極的な彼に対して、一体何をと思ったかもしれない。思い起こされるのは先のカイチョーの『完璧ではなかった』、『迷惑をかけた』という言葉だ。彼はウマ娘とトレーナーの信頼関係こそ重要と言ったが、それの裏を見れば、カイチョーとそのトレーナーはそれだけ厳しい状況におかれた事があるのだろう。

 カイチョーが言っていた『大喧嘩をした』と言う言葉、それが起こったであろう時期は僕ですら思い至る節がある。絶対王者であるカイチョーでもした三度の敗北、その時に違いない。本来であれば勝つ方が稀(何せ勝者は一人だし)で、普通であるはずの負けが許されない異様な世界、そこにかかるプレッシャーは尋常じゃなかったはずだ。

 そのある種の極限状態の二人を彼はずっと見ていた。その迫力にひたすらに圧倒されたのだろう。カイチョーのレースを常々見ていた僕だからこそ容易に想像できる。

 ウマレースで勝ちにいくとはその領域に踏み込むという事、それこそ並大抵の覚悟じゃ足りないのだろう。気後れしてしまうのも分かる気がする。

 

 でも、だ。

 

 彼の言葉を借りるなら、そこに立ち向かうのは一人じゃない。この時僕は初めてカイチョーが僕に何を期待していたか分かった気がした。

「それは君だけの問題じゃなくて僕の問題でもあるんじゃないかなぁ?」

 そう、これはウマ娘とトレーナー、二人の問題だ。カイチョーだけじゃない。カイチョーのトレーナーだけでもない。きっと二人で立ち向かったはずだ。だから一人で答えを出そうとする自体がナンセンスなのだ。

「信頼関係が重要だって言うんだったら、まずは僕を信用してよ。仮に駄目になったとしてもそれは君だけのせいじゃなくて、僕のせいでもあるはずだ」

 彼は本当にウマ娘を大切に思っているのだろう。だが過剰になるとそれも一つの押し付けだ。彼の言葉を借りるならウマ娘とトレーナーは子供と保護者じゃないのだ。そしてそれに気づかない彼じゃない。目を見開く彼に僕はトドメの一言を告げた。

 

「僕と一緒にやってやろう! 僕の方はもう覚悟できているよ!」

 

 ビシっと決めてやってこれでどうだ!! と彼を見る。それが今の僕にできる精いっぱいのアピールだった。もしここで断られても僕は諦めないぞ! と心に決めていたが、一方で彼の反応はと言うと頭を抱えて唸っていた。これはどういう意味で取ればいいのだろうか? 少し様子をうかがっていると彼はぼつぼつと話し始めた。

「……完敗だ。どうにも必要以上に気負っていたみたいだ。あのシンボリルドルフのトレーナーの弟子が失敗しちゃいけないって」

 がっくり項垂れていた彼であったが、急に自分の頬を両手ではたいたかと思うと、実に明朗な声で僕に宣言した。

「分かった! テイオー、君のトレーナーを引き受ける。いや、俺からお願いしたい!」

「ほんとっ!?」

「男に二言はない!! というわけで」

 彼はすっと手を差し出す。それこそが契約の証。

「これから俺と君はパートナーだ。よろしく、テイオー!」

 僕は満面の笑みを浮かべて差し出されたその手を握り返した。

「よろしく! トレーナー!!」

 

 

「懐かしいな……」

 あの時から本当の意味で僕とトレーナーは始まったのだ。そんなトレーナーが課した最初のトレーニングは華々しくはなく、徹底したフォームの修正と体力づくりだった。いわゆる基礎と言われるものだが、これがキツイのなんのって。

 初めのうちはよくトレーナー室でぐったりしてたっけ。パソコンで練習結果を打ち込むトレーナー、それをはちみー片手にソファーで寝そべりながら眺める僕、その時の光景は今でも鮮明に思い出せる。

 僕が一人暮らしを始めたとき、無意識のうちに配置がトレーナー室と近いものになっていて失笑したものだが、改めて見ても似てるよなぁって思う。っていうかトレーナー室そのものだよなぁって。

「……?」

 いや、いくら何でもそのものはない。配置が似ていたってそもそも物が違う。ソファー一つ見たって色が違うから違いは歴然だ。でも何で僕はトレーナー室そのものだって思った?

 妙な状況に戸惑いながら僕は辺りを見回す。『かつて』見慣れていたソファーに『かつて』見慣れていたパソコン、『かつて』見慣れていた机に『かつて』見慣れていたマル秘育成ノート、記憶から寸分違わぬ位置に置いてある。

 

 そして決定的なのはこの匂い!! この匂いはまさしくトレーナーのもの!!

 

 つまりここは……

 

「ここ本当にトレーナー室(真)じゃん!!!」

 

 え? 何?  え? 何さこれ?

 何がどうなってるのさ?

 

 僕さっきまでどうしてたっけ? 確かまた遊びに来た記者ちゃんとお酒飲んで、飲んで……飲んでから?

 ソファーの前にあるテーブルに紙切れが置いてあるのに気づいた僕は、猛烈に嫌な予感をしつつもその中身を見る。

 

『礼はいらない。さっさとくっついて末永く爆発しろ』

 

「あいつぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

 やってくれたなぁぁぁ!! 

 

 というかよく寝ている人をここまで運ぶなんて出来たね? しかも誰にも見られずに? 無敵のテイオーさんも流石にびっくりですよ!!

 

 やばいやばいやばいやばい、どうしようどうしようどうしよう?

 僕は泡を食って辺りを見回す。しかしながらすぐに逃げ出そうと思えないのは……

「ふにゃぁーーーー」

 部屋に充満したトレーナースメルのせいだ。1年ぶりに嗅いだそれは麻薬の様で。ウマ娘は人より速く走れるだけあって、身体能力で優れているわけであるが、嗅覚だってその例に漏れない。優れた嗅覚を持つウマ娘は一度嗅いだものは大体覚えている。好きな匂いともなれば尚更だ。

 だが匂いはもちろん一つではない。トレーナが仕事を続けているとすれば、僕がいなくなった後の担当バがいるのは当然であろう。感じる別の匂いはそういう事だ。

「一人? いや、二人かな?」

 すんすんと鼻を鳴らし、トレーナーと異なる匂いを探る。どうにもトレーナーは複数のウマ娘を担当しているようだ。しょうがない事だとは思いつつも面白くない事は面白くはない。

 久々のトレーナースメルでどうにもハイになっていたのか、妙なテンションになっていた僕。する事はただ一つ、家捜しである!!

 まずは食器棚だ。トレーナー室は練習以外の時間の多くをそこで過ごすため、軽食や飲料は不可欠であり、コーヒーメーカーなどもあるのでマグカップもまた必須である。そしてこのマグカップ、普通のグラスのコップとは違って共用ではなく、柄も千差万別という事から、各々で自分のを持ち寄る場合が多い。

 つまりマグカップの数を見ればここに何人のウマ娘が入り浸っているか分かるのだ。いけない事をしているという何とも言えない高揚感、急かされるように僕は食器棚の中身を見る。お目当てのマグカップは四つほどであった。一つはトレーナーの物だから、つまり今トレーナーが担当しているのは三人か。

「でも知らない匂いは二人分なんだよなぁ」

 匂いが感じられないという事を考えるに一人はまだ新人なのだろうか? そんな事を思いつつマグカップの一つを手に取ったところで僕は気づいた。

「これって……」

 見慣れたデザインに、馴染んだ感触、恐る恐る僕はマグカップの背面を見る。そこに書かれていたのは予感通りテイオーの文字だった。

「僕のマグカップじゃんか。まだ取っててくれたなんて……」

 一つ気づいてしまうと簡単だった。次から次へと僕のいた痕跡が見つかる。当時僕が置いていったものはそのままで、所狭しと並べられていたグッズには、今担当してるであろう子達の他に、過去に作られた僕の物もある。

「僕のぱかプチがセンターになってる」

 偶然なのか意図的なのか、これだけ数が多いとどれがメインかなんて些細な事だが、ちょっとだけ優越感を感じる。しかしグッズ化されているともなれば、トレーナーが今担当している子達はなかなか優秀らしい。グッズ化も意地汚い話になるが商売だ。勝てるウマ娘、あるいは人気の高いウマ娘じゃないと商品化される事はないわけで。

 勝てているという事はトレーナーと今の担当バが良い関係を築けているのだろうが、僕が特別であったらしい証拠が多々あるこの状況では、嫉妬する気はあんまり起きない。

 他に何かないかとトレーナーのデスクの方へと視線を向けると、写真立ての裏面が見えた。中身が気になった僕はぐるりと回りこんでのぞき込む。そこにあったのは僕が皐月賞を勝った時、つまり初めての重賞の中でもトップクラス、G1を制した時にトレーナーと撮った2ショットだった。

「懐かしいなぁこれ」

 僕はトレーナーの椅子に座り込み、手に取った写真をマジマジと眺める。僕にとって皐月賞は特別な一戦だった。大舞台で初めて勝ったというのもあるが、どちらかというとトレーナーと二人で作り上げた勝利、という方が重要だったかもしれない。

 当時トレーナーに対する風当たりは強かった。理由は僕を担当とした事だ。意外と言うか、トレーナー同士は同じ苦労を知る同業者だからこそそうでもなかったが、問題はあまり知識を持たない外野の人達だ。批評家気取りの人達からは、才能あるウマ娘を担当しているのだから勝てて当たり前、そんな風に言われていた。

 トレーナーはすでに想定済み、気にしていないと言っていたが、僕としては非常に面白くないわけで。でも怒り心頭の僕にトレーナーは笑って言ったんだ。

 

「外野なんて実力でねじ伏せてやれ」

 

 にこやかに笑っていても、トレーナーの奥の瞳はぎらついていて勝利に飢えた獣そのものだった。トレーナーたるものが感情むき出しなんて良くないのかもしれないけど、熱く燃えていた僕にとってはむしろ最良の答えだった。

 今まで鍛えて蓄えてきた力を爆発させ、文句なしの勝利で飾れたのは痛快の一言だった。そしてレース後は気持良くセンターで踊り、最高の気分で帰路についたわけだが、その時トレーナーは言ってくれたんだ。

「ありがとうテイオー」

「え? いきなりどうしたの」

「俺のために怒ってくれて嬉しかった。勝ってくれて嬉しかった」

 いきなりの事に戸惑う僕であったが、稀に見る素直なトレーナーに照れてしまう。嬉しさと恥ずかしさがごちゃ混ぜで、何て返事しようか迷っている中、トレーナーはとても穏やかな表情を浮かべて次の言葉を告げた。

「君が俺の担当バで良かった」

「……っ!?」

 今でも彼のこの言葉の衝撃は忘れられず、僕の心の一番奥に刻み込まれている。感極まって思わず大泣きしてしまったっけ。

 それまでも僕とトレーナーは上手くやっていけていた。トレーナーが課したどんなトレーニングだって僕はやってみせたし、その分トレーナーは僕に速く、そして強くなっている実感を与えてくれた。だからまだ日が浅い時期であっても、トレーナーと担当バの関係としては理想に近かったと思う。

 ただ僕としてはちょっと負い目もあった。選手である僕がハードなトレーニングをするのは当たり前の事であるが、トレーナーは僕以上に重労働で心配になるくらいだった。僕の勝利にはそんなトレーナーの尽力がありきなのに、勝っても勝ってもトレーナーとしての評価は変わらず、僕を担当したせいで余計な苦労をしょい込んでいる事実は、僕にとって大きなしこりとなっていた。

 僕を信じてよって大口叩いておいてこの様である。でもだからといって何か具体的な解決策があるわけでもなくて。負けたらそれこそ相手の思うつぼである。僕は勝ち続けるしかなかった。それがトレーナーに対してさらなるプレッシャーになると知っていても。

 

 でも、言ってくれたのだ。

 

 僕で良かったって。

 

 それがどんなに嬉しかったか……

 きっとこの時だったのだろう。

 今まで定まっていなかった自分の思いが明確な形となったのは。

 

 僕はこの時トレーナーに恋をしたんだ。

 

 

 今にして思えば僕にとってこの時が最良の時だったかもしれない。何せ気持よく走れたのはこれで最後だったから。天は二物を与えないと言うが、僕にとっての弱点は足の脆さだった。

 誤解なきよう言っておくと故障する前から僕はその事を知っていた。それはトレーナーのおかげだ。やっと始まるんだと思った矢先、『まず先に検査なー』と言われて出鼻をくじかれた時は怒ったっけ。でもだからこそ僕は自分の足が如何に危ういかを理解した。

 自慢だった僕のフォームは速度を目指すには良かったそうだが、一方で足の方が負担に耐えられない可能性が高いと説明された。当時のショックは相当に大きかったが、トレーナーが『時間はかかるが、同じ速さまで戻してやる』と言ってくれたのが救いだった。僕が文句も言わず、地道に基礎練習を続けてこれたのはこの言葉のおかげだ。

 その集大成こそがこの皐月賞であった。生まれ変わったフォーム、そして強くなった体で自己ベストを更新した。トレーナーからの信頼に応えられた事、恋を知った事、すべてが上手く回っていて、これを最高と言わずしてどうするってくらいの快進撃だ。

 目標に掲げていた無敗の三冠バも現実味を帯びていき、僕はノリにノッていた。無敗の三冠は僕にとって最大のモチベーションになっており、高い目標は僕をぐいぐい引き上げていってくれた。しかし結果としてこの目標こそが僕の苦悩の始まりだったのかもしれない。何せ無敗に拘ったからこそ僕は失敗したのだから。

 それは二回目の大舞台の時だ。ダービーで僕は圧巻のパフォーマンスを見せ、二位に三バ身差を付けて快勝した。

 

 足の故障という対価を支払って。

 

 調子が悪かったわけじゃあない。むしろ調子は皐月賞の時を上回るほどだ。事前に計ったタイムは優勝圏内、体調は万全で体も軽く、気力もみなぎっている。

 レース中だとさらに顕著で、高ぶっているのに頭は酷く冷静で、普段見れないものまで見えているような、そんな不思議な感覚。言うなればゾーンと呼ばれるものに入っていたのだろう。優勝以外あり得ない。そう思えるくらいに僕は集中していた。

 

 だからこそ僕は超えてしまったのだ。己の体の限界を。

 

 骨折と聞いた時、僕は開いた口が塞がらなかった。

 負けるのならまだいい。納得できる。だが、怪我なんてつまらないもので夢である無敗の三冠への道が断たれてしまった。その途方もない虚無感と言ったら。

 積み上げてきたトレーナーの名声だって怪我をしてしまっては落ちてしまう。この時の僕はすべてを失った錯覚にとらわれた。いくらダービーで勝利したと言ったって大きすぎる代償だった。

 

 皮肉だったのは己の足の脆さについて対策をしていたからこそ、最後まで走れてしまったという事だ。負担を軽減する走り方に変えていたせいか、当の僕本人は全く気づかないまま走っていたわけで。

 気持ちが最高に高ぶっていたのもあるだろう。脳内から分泌するアドレナリンには痛みを忘れる効果があるというけれど、一体どれだけ集中していたのか。実のところケガをしたのはあの瞬間だってのは今でも思い出せないでいる。僕はただ気持ち良く走っていただけなのだ。

 良くも悪くもダービーで僕はかみ合いすぎてしまった。この試合では誇張なく本当に『無敵のテイオー様だぞ!』だったのかもしれない。だって怪我した状態でぶっちぎったんだからね。

 ただ思うんだ。ここで無茶しちゃったからこそ故障が癖になったのかなと。もしもここで早くに気づいていたら、無敗の三冠を諦める事が出来ていたら、何かが変わっていたのだろうか? 軽傷で済んだ僕が一からしっかり鍛えなおし、今度こそ怪我とは無縁の世界で何の気負いもなく走っていたのだろうか? 

 たらればを言ってもどうしようもないがたまに考える事がある。

 

 そこから先はもうあまり考えたくないなぁ。

 

 一度でも故障してしまえばレースが怖くなる。それを乗り越えて奮起しても再度の故障でまたゼロに戻される。満足な練習ができず筋力の衰えた体は完成にはほど遠く、故障の記憶は重ねるたびにより強固なブレーキとなり、僕の思いっきり走りたい気持ちを妨げる。いくら努力してもあの時の最高の自分から離されていく。そんな感覚がたまらなく嫌だった。今思い返しても辛い事ばっかり。

 それでも止まれなかったのは意地だったんだろう。このままでは終われないと思ったし、僕が終わってしまってはトレーナーだって終わっちゃう、と言うのは建前かな? 多分この頃にはトレーナーの実力を疑う人はおらず、自分を奮い立たせる理由の一つとして僕がそう思い込んでいただけ。

 最後の方はトレーナーに強く当たっちゃった事もあったっけ。足を守るためにトレーニングしてきたけど結局こうなったじゃないかーとか。本当に酷い言葉だったと思う。後で自己嫌悪で落ち込んだりしたのは一日だけじゃない。

 思い通りにならない体、刻一刻と近づく限界、引退の2文字が頭をちらつく。そしてとうとうその日は訪れた。それは4度目の故障をしてしまい、療養していた時であった。その日、トレーナーは僕が一番恐れている事を口にした。

「テイオー、もう……やめないか?」

 一番聞きたくない言葉を、一番聞きたくない人から言われたショックは大きく、僕は冷静さを失った。信頼を裏切られたように感じた僕はヒートアップしてトレーナーと口論となった。そこで僕は言ってしまったのだ。

 

 決定的な一言を。

 

「君と組まなかったらこんな辛い思いしなくて済んだのに!!!」

 

 トレーナーの顔が酷く悲しそうに歪んだ時、その瞬間ようやく僕は自分が何を言ってしまったのか悟った。

「あ、ちが……」

 訂正しようにも咄嗟に言葉が出てこない。それもそのはず、どれだけ頭に来ていてもそれだけは言っちゃいけない言葉であった。パートナーとしての信頼を根こそぎ奪うそれに埋め合わせる言葉なんてあるわけない。それでも僕は何かしなければなかった。全てが壊れる瀬戸際だからこそ。

 

 しかし僕がそこでした事は、

 

「テイオー……」

「ごめんなさいっ!!」

 

 その場から逃げる事だった。

 

 その後何度か挽回のチャンスはあったと思う。でも僕の心はぐちゃぐちゃでトレーナーと会う余裕なんて到底なく、最終的にトレーナーとの契約を打ち切る事になったわけである。今のマンションへ移り住んだのはそれから程なくしてだ。

 しばらくは失意の日々を送っていた僕であったが、時と言うものは傷を癒やしてくれるらしい。喪失感を抜けさえすれば、レースという勝ち負けの生活から離れられた事は良かったらしい。勝たなければならないという精神面のストレスが大きく軽減され、無茶もしなくなった事から体調面も良くなって行った。

 余裕が出来てくると何かしたくなるもので。きっかけそのものは一人でいる寂しさに耐えられなくなった事であるが、お酒に手を出してみたり、ドラマとか映画を一気見してみたり、現役時代にできなかった事をやったりなど、少しずつ楽しい事を増やしていった。

 人間らしい生活を取り戻して思ったのは当時の僕がどれだけ無茶をしていたかという事。あの時は身も心も擦り切れる寸前でもはや限界だったのだ。トレーナーがどうして『もうやめよう』と言ったのか、この時僕は初めて理解した。もし僕とトレーナーの役割が逆だったとして、トレーナーが現役時の僕のようになっていたらやっぱり止めるであろう。

 本当はすぐに謝りに行こうと思った。でもトレーナーに対して言ってしまった最悪の言葉が忘れられなくて。あの日の最悪の別れが心に大きなしこりとなって残ってしまった。そこからは皆の知るヘタレテイオーだ。

 これだけ迷惑をかけて、信頼を裏切って、とっくの昔に見限られていると思っていた。それくらいの事をしでかしたという自覚があった。だと言うのに……

「何で相変わらずこんなに居心地が良いのさここ」

 トレーナー室は何も変わらずに僕を温かく歓迎してくれている。それはまさにトレーナー本人が僕を受け入れてくれているようで。これこそ僕が夢に見た光景そのものであった。都合の良すぎる現実に僕は思わず呟いた。

 

「少しは、自惚れても良いのかなぁ?」

 

 自分のぱかプチをウリウリと弄る。きっと記者ちゃんはこの部屋の事を知っていたのだろう。僕と違ってトレーナーの今だって知っているに違いない。僕に対しては無茶苦茶だが、それでも根っこは超がつくほどの善人だ。きっと僕が踏ん切りがつくようにしてくれたのだろう。

「ここまで御膳立てされちゃあ、もう逃げるわけにはいかないよね」

 しかしながら運命の日は今日じゃない。記者ちゃんが僕をここへ拉致ったのは今日トレーナーがいない事を知っていたからだ。確信を持って言える。今日トレーナーはトレセン学園にはいない。何故ならいくら手助けされようが、最後の一歩だけは僕自身の足で進めなければならないから。そこを間違える彼女じゃない。ただ……

「絶対帰りを失念してるよねぇこれ」

 トレーナーはいなくとも別の知り合いはいる可能性があるわけで。別に会っちゃいけないわけじゃないけれども、正直説明が面倒くさい。元選手だから融通は利くとは思うけども、不法侵入は不法侵入だ。どうやって入ったかなんて聞かれても、拉致られた僕には何て説明していいか分からない。

 そこを超えたとしても間違いなく長話になるには違いないわけで。いわゆる積もる話ってやつだ。他の人だって呼ばれるかもしれない。永遠と足止めを食うのはごめんである。

「誰にも会わずに抜け出せるか……」

 急に降って湧いたスニーキングミッションに僕は挑戦せざるを得なかった。といっても隠れながら移動するなんて事はしない。普通の人だったらともかく僕はウマ娘だ。しかも気ままに宅飲みしていたから服装はジャージという。

 見た目的には自主練中の生徒なのだ。そこ、『27歳で学生はない』と言わない。いくら童顔でもキツイのは一番本人が分かってるから。ともかくだ。

 僕はただ堂々としていればいい。堂々と廊下の中央を歩き、堂々と正門から、は流石にまずいか……それはそれ、まずは出てから考えよう。そう思い至った僕は戸に手をかけたが、すぐには出ずに一度きびすを返してトレーナー室を見返す。

「きっと……戻ってくるから」

 決心を口にして今度こそ僕はトレーナー室を後にした。

 

 

「まあ、さ? 実際のところ何かあるわけじゃないんだけどね」

 知り合いって言ってもほとんどは現役を退いている。引退後もトレセンに勤めているなんてのはあるかもしれないが、この時間に歩いているってのはまずないだろう。最初の覚悟はどこへやら、まったりムードで懐かしの学園内を歩く。

 懐かしい記憶に浸りながら窓の外を見ると誰かが走っているのが見えた。ジャージ姿でピンと立った耳、つまりはウマ娘だ。察するにレース前で自主練をしている子だろう。

 やる気があって何よりだけど、オーバーワークだけは気を付けないとね。立ち止まってじっくり見てしまったのは現役を思い出してか、それとも何か予感があったのか。

「っ!!?」

 気づいたら僕は外へ向かって駆け出していた。彼女が一本走り終えてインターバル入っている合間に僕は滑り込む。

「君ぃ!! なにしてんのさぁぁぁぁぁ!!!」

「え?」

「ほら、足見せて」

「ちょ、ちょっと?」

「早くする! 死にたいの!!?」

「死ぬ? えっ? 私死ぬの!?」

 呆気にとられる彼女を迫力でゴリ押して僕は彼女の足を手に取る。足を見る上で重要なのは両足のバランスだ。何故ならどちらかに偏れば負担が片足だけに集中し、怪我の確率が格段に上がってしまうからだ。

 僕がここまで焦った理由、それは遠目から見ても彼女のバランスは崩れていたからである。一見するだけで分かるという事は相当にまずい状態であるに相違ない。案の定彼女の両足の疲労度は明らかに違っていて、このまま走っていたら怪我をしてもおかしくない状況であった。

 その要因となったのは。

「両足で筋肉の付き方が明らかに違うね……君、過去に何か怪我をした?」

 嘘は許さないと僕は睨みつけるように彼女を見ると、見た彼女は観念したように耳が垂れる。幾ばくかの沈黙の後、彼女は正直に己の過去の故障について話した。

「……3か月前、左足を骨折しました」

「まだ病み上がりじゃないか」

 3か月と言う期間は骨がくっついてやっと再始動できるくらいだ。しかし筋肉と言うのは鍛えるのが難しい癖に、動かしていないと理不尽に感じるほど早く衰える。一か所だけ衰えるのはバランスが総崩れになってしまうから、ある意味全体が衰えるよりもキツイ。

 弱ったところを重点的に鍛える。これはまだいいが、意外とキツイのがそれ以外は余り鍛えられないという事だ。当たり前の事だが鍛えれば鍛えるほど、弱った部分との差が広がってしまうわけで、その差を埋めるためには弱った部分が全体に追いつくまで待たないといけないのである。つまりはリハビリ以外何もするな、状態だ。

「………」

 歯を食いしばる彼女、その気持ちは痛いほど分かった。何せ自分が立ち止まっている間、相手はさらにどんどん強くなる。この間に追いつけないくらい差をつけられんじゃないか、その恐怖といったらない。

「分かってはいるんです。ここで無茶したって悪くなるだけだって。でもあの子は私が立ち止まっている間に重賞を2つ取りました。でも今の私は……」

 彼女の言う通り今のタイミングでのトレーニングは最悪だ。悪い結果しか生まない。でもだからといって気持ちを納得させるのはそう簡単じゃない。無理に止めるのは逆効果なのは僕自身良く知っている。

「焦るなって言っても無理があるよね。でも走るだけが全てじゃない。こう考えてみたらどう? 走る以外の事を鍛えるんだって」

「走る以外って言われても」

「確かに速く走れる体は一番の武器だと思う。極端な例をあげちゃうとスズカとか」

 最速で先頭のまま最後まで走り抜ける、作戦なんて知ったこっちゃない分かりやすい最強だ。もし実在するのであれば確かにフィジカルの化け物が一番強いのだろう。

「でもね?」

 実際はそうじゃないのがウマレースの面白い所だ。

「ウマレースは速さを競うものだけど、それと同じくらいに心理戦でもある」

 ウマレースには作戦と言うものがある。俗にいう逃げ、先行、差し、追い込みと呼ばれるものだ。何も全員が全速力で走る訳じゃない。いつどこで仕掛けるか、駆け引きがあるのだ。

「君の脚質は?」

「先行……のつもりです」

 断言できないのは勝ててないから故の物か。でも『先行のつもり』、ね。いずれにせよ己に自信が持てていないのは良くない兆候だ。

「どうやら君の伸びしろはむしろこっちの方にあるかもね」

 僕はそう言って胸の位置、ハートを指さす。

「え?」

「僕はトレーナーじゃないけど、それでもウマ娘の体の事ならある程度分かる」

 現役の時に散々自分の体に付き合ってきたのだ。知識なんてのは嫌になるほど持っている。それこそ人の体つきを見て無意識に強さを判断してしまうくらいに。

「ここ三か月のブランクを踏まえて、怪我をする以前の君を逆算して考えてみたけど、多分その時の君の体そのものはベストに近かったはずだ。君の体を作るための努力は十分だったと僕は思う」

 左右のバランスが悪かったからこそ不調に気づけたが、彼女の体そのものの方はかなり良い体つきであった。彼女が動いていない状態であったならば気づかなかったに違いない。衰えてもこれだけなのであれば、当時は最高の仕上がりだっただろう。

 これで勝てなかったとすればおそらく『かかって』しまったか。きっと怪我はその時の無茶の結果か。普通に走れば勝てる子だ。でもその普通こそが出来ない。僕のその予想を肯定するかのように、彼女は己の本音を吐露する。

「自信が持てないんです。いくら調子がよくても、タイムが良くなっても。本番でどうしても勝ち切れない」

 負け癖がついてしまっているのだろう。トレーナー目線で言うと、仕上がる前に実戦経験を積ませようとしたが、それが裏目に出たというところだろうか? ここら辺は良い悪いじゃなくて合うか合わないかだ。彼女は今挑戦者と意識しすぎて空回っている。

「そんな悩める子には先輩からアドバイスを上げよう!」

 大胆不敵な自分を演じながら僕は悩める彼女へ言った。

「自信なんて持たなくていい!」

「え? そんなわけ……」

「んーん、自信なんて持たなくていいの」

 彼女の反論を僕は即座に否定する。

「自信を持っているように見える人は誤魔化し方が上手なだけなんだから」

 それこそ僕みたいにね。

「自信満々に見える姿は怖い気持ちに蓋をしてハッタリをかましているだけ。君が強いと思ってる子だってそう。自信があるように見せかけているだけの事。誰だって負けるのは嫌だし、怖いんだよ」

 それは至極当たり前の事だ。何せ八百長なしの真剣勝負のウマレース、特に重賞ともあれば強敵揃いだ。100%勝つなんて思っているウマ娘なんていやしない。単に『自分が勝つ』と思い込ませているだけなのだ。

「勝負が怖くないなんてウマ娘がいたとしたら、それは最初から勝負を捨てているウマ娘だ。時間がある今こそがチャンスだよ。周りをよく見てごらん。なんであんなに必死に練習するのか、なんでそんなに自信満々に見せるのか。君が劣っているところなんて何もないはずだ」

「勝負が怖くないウマ娘なんていない、そんな事……」

「レースは確かにタイムがあるし、それを縮めるには自分との勝負だと思う。でもウマレースは一人で走るわけじゃない。相手がいてこそのレースだ。自分を高めるのと同じくらい相手の事を知る努力を忘れちゃいけないよ」

 駆け引きをするためには相手を知らなければならない。皆やっている事だろうけど、成績や強さを見ているだけでは計れない部分、影響するのはほんのちょっとだけど、でも僅かな差を埋めうる最後の一手はここにある。最後は結局のところ、心の勝負なのだ。

「君の相手は完璧な機械じゃない。君と同じウマ娘だ。それを知る事で君は強くなる」

「………」

 考え込むように顎に手を当てる子を見て、僕は自分が成功した事を確信した。考える事自体に意義がある事ゆえに。考えるという事は一考の余地ありという事に他ならない。他者の意見を取り入れられるのであればきっとこの子はこれから伸びる。

 それにだ。彼女は一人じゃない。彼女の体を見れば分かるが、相当に気を使って仕上げていったのが分かる。この子のトレーナーは自分の愛バたる彼女を大切に思っているのは明白だった。そんなトレーナーがこの三ケ月何もしていないわけがない。

 僕の耳がぴくぴく動く。誰かが走っている音が聞こえた。それはウマ娘じゃない人の足音。お、これは、ひょっとすればひょっとするかな?

「ついでにもう一つ、もっとトレーナーを信頼する事。不安も怒りも悲しみも全部ぶちまけちゃえ。君のトレーナーはそれを受け止めてくれるくらいの度量はあるよ。なにせウマ娘とトレーナーは一心同体なんだから!」

「○○!!」

 後ろから男の人の声が響き渡る。

「え、トレーナー?」

 まさしく最高のタイミングだ。この人持ってるなぁー。振り返って見てみると、段ボールを持った若い男性が息を切らしていた。

 いないはずの彼女がいて気が動転していたのであろうか、見た目からして相当な重量がありそうな段ボールなのだが、一度置くと言う発想がなかったらしい。

 僕の事などまるで気が付いていない様子でトレーナーは彼女に鬼気迫る表情で話しかける。そりゃそうだよね。トレーナーとしたら心配でしょうがないよね。

「まさか走っていたのか!?」

「えっとその……ごめんなさい!」

 二人の修羅場? を尻目に僕はちゃっかり段ボールの中に入っているものを手に取る。

 おそらくこれは……

「うん、良いじゃない」

 中の書類を見ると案の定あの子のトレーナーが作ったであろう今後の予定が書かれていた。色々と細かく書かれているけども、結局のところ僕が言っていた事と同じだ。

 彼の新たなトレーニングはメンタルを中心としており、どう自信をつけさせるか、に焦点が当てられていた。個人的に評価が高いのは周りの状況を理解させる方向で、要するに客観視させる事をメインに据えている事。

 そう、自分に自信が持てない子に無理矢理やらせても逆効果だ。彼女の場合、外から攻めた方が良い。彼女は良いトレーナーに恵まれた。これだったら遅かれ早かれ気づいていただろうし、余計なおせっかいだったかな? 後はまあ大丈夫だろう。

「すみません、俺の代わりに彼女のトレーニングを止めてくれたみたいで……って、嘘だろ?」

 あれ、この反応って? この子のトレーナーは僕の事を知っている感じなのかな? 一方で彼女の方は何事かと目を丸くしている。

「ごめんね? ちょっと私用で来てたんだけど、見てられなくて君の役目取っちゃった」

「いえ、助かりました。彼女が焦ってたのは分かっていたんですが、一歩遅かったみたいで」

「ちょっと見せてもらっちゃったけど、いいねこれ」

「本当ですか!? あなたに言ってもらえると自信になります!!」

 トレーナーの興奮した様子にクエスチョンマークを浮かべている彼女であったが、段々とその顔色が険しくなる。まあ分かるよその気持ち。トレーナーが自分そっちのけで他のウマ娘と爛々と話していたとあれば面白いわけがない。

「さてさてもう王子様は来た事だし、お邪魔虫は退散しようかな?」

「お、王子様って!!?」

 さっきまでの不機嫌はどこへやら、ポンと熟れたトマトのような真っ赤な顔をする。ほんと初々しいなぁ。こりゃのろけられる前に退散だ。

「じゃあまたね」

「ちょ、ちょっと待ってください。あなたは一体?」

「え、お前ウマ娘なのにこの人の事知らないの!?」

 うーむ、反応としてどっちが正しいのかな? 彼女が僕に対してノーリアクションだったから、忘れ去られているのが普通かと思ったんだけどそうでもないみたいで。でもまあ知らないのであれば答えてあげよう!

「僕? 僕はね」

 ふと脳裏にF1娘ちゃんの顔が浮かぶ。

 

 『やっちゃってください、テイオーさん!』

 

 任せてよ!! ここはビシっと決める!!! 

 

「何度怪我しても這い上がる、不屈のテイオー様だよ!!!!」

 

「テイオー、テイオー……え? あ、あのトウカイテイオー? えぇぇぇぇーーーーーーーーーーー!!!!!?」

 

 あ、これちょっと気持ちが良いかも。

 

 

 

 

 

 

 テンションが妙に上がってしまってついやってしまった僕であったが、家に帰った後、ベッドの中で悶絶したのは内緒である。

 

「不屈のテイオーって……不屈のテイオーってうあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 




 と言うわけでトウカイテイオー27歳第2話いかがだったでしょうか? ヘタレ、ウザ可愛い、意外と理論派、かっこいい、羞恥テイオー、今回は色々詰め込んでみました。 
 設定の矛盾問題が起きてしまった27歳設定ですが、一方で大人の先輩として悩める子を導くテイオーを演出するには、この年齢はちょうど良い感じだったかと思います。不屈のテイオー発言の時は多分後ろ振り返り姿でサムズアップしている感じですw

※ イメージ図
https://www.pixiv.net/artworks/94067439


 前回のレーサーウマ娘の他にも新キャラが増えちゃいましたが、どうにも役割にハマるキャラがおらず、また身内ではない外の世界を描きたかったのもあったので、あえてこうさせていただきました。
 例えばですが記者ちゃんには乙名史さんも考えたのですが、テンションは高いけど、こんなに内まで突っ込んでくる感じではないなぁと思って没にしました。
 後輩ちゃんについては作中でも語った通り、テイオーがすでに27歳なので、ゲームに出ている子達は皆卒業していて、いたとすれば全く知らないウマ娘だろうなと。
 本当は彼女らに名前つけた方が良いのだろうけども、長編ならともかく中編ならあれかなぁと思って、妥協している次第です。
 それではまた次のお話で会いましょう。
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