黄昏の精霊たち   作:松谷若草色

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幕間
ノアからエドヴァルドへの手紙


ラトランド大公国

イラーカン

ファン

 

エドヴァルド・スペンサー様

 

 

息子へ

 

 達者にしているか。

 先日狩りに出た際、葦の新芽が芽吹き始めたのを見かけた。北方大陸の季節はあっという間にうつろう。葦の新芽とくれば、そのうち朝の霜が消えて、すぐに別の草木の新芽があちこちに芽吹く。

 この手紙がそちらに届くのは霧がたちこめる頃か。うまくいけば、だが。

 

 必要にかられて便りすることにした。

 

 実は、妻をめとった。

 

 アルブ族で名をエレオノールという。俺は彼女を通してアルブの存在を知った。

 しかしアルブとラトランドは交易があるというから、お前はもしかしたらアルブについて何か(うわさ)くらいは聞いていたかもしれない。

 妻は故郷で(いさか)いに巻きこまれたようで、里から追手がかかっている。したがって周囲には、妻の出自をふせていることを、念のため申し添える。

 とはいえあまりに目立つので、ふせたとて意味があるか疑問だ。

 とにかくお前にしか開封できない封印をしておいたのはそのためだ。仰々しくて、少々驚かせたと思う。

 すまないな。

 それにしても、こんなことをお前に報告しても戸惑うだけだと思い、知らせなかったのだ。

 

 本題はここからだ。

 

 重ね重ね驚かせることになるかもしれないが、リヴァレットという娘がいる。お前にとっては異母妹だ。今年十六になる。

 

 そもそも妹が生まれたことはお前に知らせた方が良い、とも考えていたのだが、前述のこともあり報告の機を逸してしまっていたのだ。今回あえて手紙を書くに至った理由はリヴァレットが、ほかでもない、お前の大学に行くことになったためだ。

 

 めぐりあわせとは妙なものだな。

 

 知っての通り、俺はコーネルの北方大陸に暮らしている。数十年前、ひょんなことから領主と付き合いが始まったのだが、なんといまや家族ぐるみの付き合いをしている。ポートエリン家のシャーロット嬢の年が、リヴァレットと近いのもあってか何かにつけて行き来するようになった。

 ペトロス大学留学の件も、ポートエリン家から誘われたことに端を発する。

 学長の名を聞いた時は驚いた。お前、いつの間に教育者になったんだ。時の流れの妙に驚かされるばかりだ。

 

 お前のこともあったし、留学の件はそれなりに悩んだ。

 長命種にかぎらず、人はみな若いうちに受ける教育とその時に築く人脈が人生を照らす。

 先の長い娘の人生を考えた時、この地にとどまり続けるよりも、見分を広めて得られる体験が彼女の足元を照らすだろうと考えている。

 本人とも話し合った結果、ペトロス大学に留学させることにした。偶然にも学長が兄だと伝えたのだが、いまいち実感がないようだ。それもそうか。

 

 ついては、秋口に二人の娘を連れてファンの街に行くことになる。直接会って、リヴァレットのことでお前に相談したいことがある。

 おそらく俺は一か月くらいそちらに滞在した後、娘たちをお前に託して北方に帰る。

 妻のエレオノールもお前に会ってみたいとのことだが、今回は留守番をしてもらうことになった。この件はこの件で、いずれ面会の機会をつくろうと思う。

 

 ともあれ、お前と会えるのを楽しみにしている。

 身体に気をつけて。

 

コーネル王国

ノーザンメイア

タリオ

 

ノア・ローム

 

 

<追伸>もし、家族が出来たなら知らせるように(()のように遠慮することはない)

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