ファイアーエムブレム 紺碧のコントレイルⅠ・Ⅱ 作:宵星アキ
「何て呼べばいいんスかね。──殿下とか?」
「殿下?!」
稽古の中で出た、とある名前にミリアは仰天。
その流れで彼女がそんな風に呼んでくるからシャニーまでびっくり。
若草色の髪を風になびかせ、カルラエ城を目指すミリアの小気味良い鼻歌が風に乗る。
もう後一か月もすれば終わりを告げる極寒の空は、太陽が未だ昇らず黎明を黒に包む。その中を飛ぶ純白の天馬はそれでもくっきりと輪郭を残し、寒空を引裂きコントレイルを残していく。
いつも時間ギリギリの登城だが、今日は気持ちよく早起きしてしまった。たまには一番に登城して皆を驚かせてやろうと気合を入れ、急がなくていい黎の空でトップスピードに乗る。
城に着き、詰所がある廊下を歩いていく。やはり部屋に灯りは点いていない。不思議な達成感に白い歯を見せていたミリアだったが、ふと廊下の奥に目が行き、詰所へ入ることなく直進して城を出る。
「ありゃ、一番だと思ったのに」
一旦外に出て通路を挟んだ反対側に見える扉の先は、夜や吹雪の日によく使う室内稽古場。入団して間もないころ、シャニーによく稽古をつけてもらった場所だ。
その場所には既に灯りが見え、扉を開けた途端に聞こえてきたのは鋭く鋒が空を切る音。この音がするなら間違いない。中に入っていくと予想通りシャニーの背中が見え、電光石火の連撃を振るっては青い髪を揺らしていた。
「シャニー、おはようっス。早いっスね!」
「あっ、おはよ。ミリアこそ早いじゃん!」
剣の流れが止まったタイミングを見計らったように掛かる声。
びっくりして振り返ったシャニーは、朝から明るい顔で手を振っているミリアに気づき、白い歯を見せながら同じように応えた。
似た者同士、互いの元気が近づくだけで元気になれる。稽古するにしたって、一人で籠るより仲間がいる方が俄然力も入る。護りたい人が目の前にいれば、やはり意味は大きくなる。
「いつから来てたんスか?」
「一時間くらい前? あたし、うちが近いからさ」
姉が在籍していることもあり、カルラエ近郊に住んでいるシャニーにとってカルラエ城は小さい頃から身近な場所だった。
歩いてでも往復できる距離は自然に登城は早く、帰宅を遅くさせた。こんな近い距離ですら、姉は時間を惜しんで城に寝泊まりしていると考えると、団長がいかに大変なのか最近よく考えることもある。
「ミリアもどう? 朝ごはんの前に軽く」
ただ稽古を見ているだけのミリアへ左手に持った剣を掲げてみるが、彼女は困ったような顔をしている。
いつものノリの良さとは違う表情を不思議に思ったシャニーは、剣を下ろしてミリアの許まで歩いていく。至近距離まで近づいた途端だった。
「ひっ?!」
目が飛び出すかと思った。堪らず両手を挙げてしまう。突き付けられているのはクロスボウだ。
「イイっスけど……ウチだとシャニーが穴だらけになるッスよ?」
ボルトは装填されていないようだが、いきなり銃口を向けられては生きた心地がしない。
クロスボウの威力は高く、十八部隊の主砲と言っても過言ではなかった。広範囲へ短時間で、さらに空中から掃射できる武器は強く、相手を足止めする能力で考えたらいくら剣を磨いてもとても勝てない。
「まさかコレを避ける特訓でもするんスか?! さすがシャニーッス! レベルが違うッスね!」
「へへへっ、矢躱しは十八番ってもんさ! でっ、でも、今はヤメとこうかなぁ……ハ、ハハハ……」
ノリを合わせたのが間違いだった。ますます銃口が近づいてきて首をぶるぶる何度も横に振った。冗談で無いのはミリアの目を見ればわかる。
弓矢とクロスボウでは勝手が違いすぎる。ミリアの射撃精度は心得ているし、おまけに最近はクロスボウを研究し、自身でバラしてカスタマイズするくらいだから手に負えない。
(は、はは……。こんなの相手にしてたら、いくら命があっても足らないじゃん)
穴だらけになる未来しかイメージできない。
戦場ではそもそも弓兵にそこまで近寄られるような立ち振る舞いはしないし、天馬に乗っていれば高所へ退避すればいいだけなのでちっとも当たる気はしない。
万が一、地上で弓兵に近寄られた後では相手の目線や体の動きを見て、一瞬の読みあいで勝負に出るしかない。
それなら射られる前に一気に距離を詰めて斬る──持ち前のスピードを生かした光速の剣技が再び稽古場に軌跡を描き出す。
一から四まで剣技を流し、締めに終の風舞までを案山子に叩き込む。ふうっと大きく息を吐きだして剣を下すと、後ろから拍手が聞こえてきた。
「相変わらずスピードがエグいっスね」
「あたしの一番の武器だからね」
ミリアに褒めてもらえて嬉しさ半分、残りは不安だ。
最近戦場で剣を振るう機会が少なくなっているから稽古には余念がない。任務の性質を考えたら機会は無いほうが良いのだが、十一月のような強敵がいつ現れるかも分からないと思うと不安が剣を取らせる。
今までずっとそうだ。現状の剣に満足できない不安が、ひたすらに剣を振る原動力となって来た。
「……何かが足らないんだけどさ。うーん……」
額の汗をぬぐい、再び構えを取る。
色々試してきた。構えやら武器の軽量化に刀身の形やら……。
槍は姉から仕込まれたし、今も周りを見ればいくらでも手本がある。
だが、剣はディークに基本を教えてもらってからは完全な我流。師の構えも見てきたし、彼の相棒の振りを盗んだりもしてみた。騎士団に入ってからもひたすら振って研鑽を積んできたつもりだ。
それでも、未だにしっくりこなかった。今握っている剣もあれこれ改造していて、もはや騎士剣とは言い難い。どうにも、自身の剣の性格と騎士剣に求められている方向性が噛み合わず
そのズレを整えるべく、再び鋒で空を裂く。剣など触らないからか、ミリアはすぐに退屈になってしまったらしい。また後ろからぼやく様な声が飛んできた。
「それにしても、何でこんな時間からこんなとこ籠ってるんスか?」
剣を止めて振り返ると、彼女は頭の後ろで手を組みながらこちらを見つめている。どうしようか一瞬迷ったが、観念して白状することにした。
「この時間にしか出来ないからだよ」
本当はミリアにこの場にはいて欲しくなかったのだが、彼女も一度見ている以上、もう隠しておくことはできない。“もう一人の
静かに目を閉じ、呼びかけるように奥底に眠るものと意識を繋げていく。
「わっ……! そ、それッスか?!」
思わずミリアは後ろに退いた。目を瞑ったリーダーから滲み出てきた青焔が天へと揺らめき、あたりの景色を歪め始めたのだ。
聖天騎士団との死闘で見せた青焔と同じものを、目の前でリーダーが噴き上げている。
その焔は最初こそ透き通った美しさを持っていたが、そのうち何かが混じりだして黎く変わっていく。
いつしかどす黒い何かを纏い、どんどん美しい青を飲み込み始めた途端、シャニーは目をばっと開けて剣を放り捨てた。その目は焦燥に駆られるように普段の朗らかさを失っている。
「ダメっ、これ以上はやっぱりだめだ」
あの短時間で掻いたのか、額に浮かぶ大粒の汗を拭う。
恐怖をシャニーは克服できずにいた。途中までは湧きあがるセチの魔力が自分を包むようで力が湧き上がってくるのだが、次第に意識が遠くなって体を制御できなくなってくる。
でも、諦めるわけにはいかない。剣を拾い、もう一度意識を集中させていく。
「大変そうッスね」
気付いたら再び辺りに高い音が響いてしゃがみ込んでいた。優しく背中を擦ってくれるミリアに返す言葉はどうしても弱くなってしまう。
「得体がまったく知れないからどうしたらいいのかサッパリでさ。でも、なんとかモノにしないと」
大きく深呼吸して気持ちを整え、立ち上がって剣を拾った。
何としても、皆を守る剣として自分のものにしなければならない。その為にも、
「だーかーらーさぁ~! ガマンなんかしてないでさァ、おいでよォ? こっち来ちゃえばタノシイよぉう?」
今も囁いてくる声は、さっきまで意識を繋いでいた相手であり自分の声だ。逃げてはいられない。ユーノにも言われたのだ、抑えるのではなく活かすために自分を説得せよと。
あの時は誰にも打ち明けられなかったが、今はこうして仲間に悩みを吐き出せるだけマシだ。
「あたしを使えば誰だってヤれるよ? 例えば~……あなたの嫌いな副団長とか? 今すぐヤりに行こーよォ! キャハハッ」
思わずびくっと体が震えた。そんなことは望まない。望んでいないはずだ。ぶるぶると首を振り、再び精神を集中させる。
(まだだ。まだっ。こんな声に負けないくらいの何かをきっと掴まなきゃ……)
何も考えず、無になって平常心を保てばきっとこの声にも克てる。そう言い聞かせて
その顔をじっと見ていたミリアは、またしてもリーダーが剣を放り出すとそれを拾って取り上げた。
「また今度エデッサに遊びに行かないッスか? もちろん、オゴリなんて言わないッスから」
剣をそっとシャニーに返しながら誘ってみる。
最近忙しくてまるで遊んでいない。二人とも家に帰っても誰もいないからよく互いの家に行って遊んでいるが、最後に街へ繰り出したのはいつだろうか。楽しいことが大好きな者同士、誘って断られたことなど一度も無い。
「おっ、イイねイイね。行こう行こう! そろそろ春物も見てみたいし」
今回も白い歯を見せてきて二つ返事で決まった。あれを買おう、これを見たい──そんな会話をしていたら気が紛れたのか、シャニーの剣は完全に下を向いた。
「エデッサかぁ……」
天馬ならそこまで時間を要さない場所だが、久しく行っていない気がする。思わず懐かしい場所を思い浮かべてシャニーは独り言を漏らした。
「お姉ちゃんのところ、久しく顔出してないなぁ」
エデッサ城には長姉のユーノがいる。彼女と顔を合わせたのは八月が最後。あの閃電の魔術師と戦った後、ベッドから動けなかった時に血相を変えて飛んできてくれて以来ご無沙汰だ。
元気になった姿を見せていないし、何よりお礼をちゃんとしていなかったことを思い出す。今頃姉は元気にしているだろうか……。
「お姉ちゃん?」
思慕を募らせるシャニーへミリアは興味津々を向けた。
「エデッサにお姉さんがいるんスか?」
ミリアの知るシャニーの姉はティトだけだった。姉のことを口にしながら嬉しそうにするリーダーの顔からしても、ティトと同じようにきっと大好きなのだろうと伝わってくる。
ティトがそうであるように、敬愛する人が大好きな人ならどんな立派な人なのだろう。イメージを膨らませていると、シャニーにきょとんとした顔をされた。
「あれ、話したことなかったっけ? ゼロットさんの奥さん。ユーノお姉ちゃんはあたしのお姉ちゃんだよ」
「……──はっ……?」
イメージが完全に吹き飛んでいく。結構盛っていたつもりだったのだが、シャニーが口にした名前は遥か上を行く遠い存在で、ミリアは信じられなくて固まった。
反応が不思議でシャニーは彼女の顔を覗き込んでみた。ぴくりともせず、顔の前で手を振っても反応がない。
「はぁぁぁっ?!」
「うわぁ?!」
更に顔を近づけたら急にミリアに意識が戻り、飛び出すように迫ってくるものだから思わず後ろに飛び退ける。
「びっ、びっくりしたぁ!」
「ゼ、ゼロットってあの聖騎士ゼロット様?!」
「……? へ? そだよ? (何でそんな驚くんだろ?)」
顔を押し付ける勢いのミリアに尻餅をつきかけた。それでもミリアの興奮は収まらない。それどころか逃がさんと言わんばかりに両肩を掴まれてしまい、シャニーは危機感を覚えて苦笑いしか浮かべられずにいた。
「と、言うことはユーノって、あの『伝説』の天馬騎士のユーノ様?!」
「そうだよ。お姉ちゃん凄いよね! 『伝説』だって。カッコいいなぁ!」
ゼロットの名前はイリア騎士なら誰でも知っている。騎士の中の騎士、英雄バリガンの再来と謳われ、イリアの中で最も民の人望と他国からの信頼を集める一流中の一流だ。
その妻もまた、天馬騎士団の中では知らない者はいない羨望の的。『伝説』の二つ名を持ち、実力と包容力を備えた歴代最高の団長と謳われる。
まさかリーダーの姉がそんな人だったとは。道理でその下二人も凄いわけだと内心ミリアは舌を巻いた。
「シャニーだって『妖精』ってかっこいいのがついてるじゃないッスか」
姉の事を語るリーダーの顔は何と朗らかなことか。これだけで姉との関係が伝わってくるし、彼女も憧れていると分かる。
だが、姉の事を凄い凄いと言っている彼女自身だって、ミリアから見たら別次元の人だった。二つ名を他騎士団から贈呈されるなんて、常人離れしていなければあり得ないのだから。
だが、自身の二つ名を聞いた途端シャニーが真顔になった。
「おばさんになった時に『妖精』って、なんかイタくない?」
因縁の相手からもらった二つ名だから嫌っているのかと思ったらそんな感じではない。時々、こういう反応に困ることを言う。
「はー、もっとカッコイイのがいいな。『烈風』とかさ、ティトお姉ちゃんみたいにさ」
ティトの二つ名は『疾風』。ああ言うのが良いらしい。その後もあれこれとかっこいい言葉を絞り出しては消していくシャニーだが、ミリアはまるで付き合う気にはなれず彼女の両手を取った。
「そんな事より、サインもらってきて欲しいッス!!」
「サ、サイン?! なんで??」
「『伝説』の天馬騎士ッスよ?! 天上人ッス! 家宝にするッス!」
「あ、あはは……。分かったよ、お願いしてみる」
ミリアにとってももちろん『伝説』は憧れ。雲の上の存在だと思っていたが、こんな身近に接点があったなんて夢のようだ。
握る両手をぶんぶん振りながら目を輝かせるミリアの押しの強さは、頷かないと穴だらけにされそうな気がしてシャニーは苦笑いしながら引き受ける。
「あれ……と、言う事は……?」
「な、なにさ? 顔に何かついてる??」
飛んで跳ねて喜ぶミリアだったが、ふと何かが閃いてシャニーの顔をまじまじ覗き込み始めた。
「ゼロット様ってあの王様になるかもしれないゼロット様ッスよね……?」
イリア国内でにわかに湧きあがって来た建国推進論。以前からしきりに唱えられてはきたが、実現を目指すほどの活気はなく常にマイノリティだった。
それがベルン動乱後一年が経ち、ここ最近は急に熱を帯び始めているらしい。騎士団内だけでなく、村人からさえも噂を耳にする機会が増えていた。
その中で常に中心に据えられているのはゼロットだ。イリア最大勢力の騎士団を統べ、民からの信望篤く他国にも顔が広い彼を王に────その声は日に日に大きくなっている気がする。
「もしゼロット様が王様になったら……シャニーは王族関係者??」
姉のユーノが妻としてエデッサに嫁いだのなら、シャニーはゼロットの義妹で、ゼロットがもし王になれば彼女もまたロイヤルファミリーの一員ということになる。
ミリアの表情がみるみる変わっていくが、シャニーは困惑しながらも口を尖らせた。
「そんな目で見なくて良くない?」
まじまじと見つめてくるミリアの眼差しは、羨望と言うより似合わないと笑っていて今にも吹き出しそうだ。
シャニーにとっては、今までそんなことを考えたことすらなかったから王族と言われてもイマイチぴんと来ないし、周りからそう見られると思うと不思議な感覚だ。それでも、この目の前にある反応にはがっかりするばかり。
「だって……。またなんか遠いトコに行っちゃうような気がして。何て呼べばいいんスかね」
「うーん……分かんない。考えた事無いし。ってか、義妹は関係ないんじゃ?」
「そうなんスかね? 殿下とか?」
「殿下?! へっ、へへ……。カッコイイけどあたしには合わないかな、やっぱり」
まだ決まったわけでもないのに妙な呼称で呼ばれて鳥肌が立った。
だけど、せっかくできた友が離れて行ってしまうのなら、そんなものは要らなかった。
それに、仮にゼロットが王になっても自分の生活が変わるとは思えない。現にユーノとは半年会っていないのだし、ゼロットに至ってはずっと傭兵に出て世界を回っているから一年近く顔を見ていない。
「もしそうなったって、きっとやるコト変わんないよ。あたしで役に立てるところは助けてあげたいけどさ」
願望にも似た言葉が漏れ出す。一つの国になれば──そう思うことは今までも何回もあった。けれども、いざ国としてまとまった時に、自分がどの立ち位置にいるかなんて考えもしてこなかった。これからずっと民の声を聞き、祈りを形に変える仕事をしていくのだと誓っていたから。
「あの話……ホントなのかなぁ」
それでも、いざミリアに話を振られ、“殿下”なんて耳にしてしまうと否応なしに気になってしまう。どのようにイリアが変わっていくのかわくわくするし、そこにどのように関わっていけるのかを思うと楽しみだ。
「そうなるといいッスよね。やっぱり一つにまとまったほうが動きやすいッスよ」
仲間の言葉に何か希望が湧いてくる気がする。
今までずっと寒さに耐え春が来るのを待つしかできなかった。それが自分たちも春を引寄せるために動く立場になっている。
(もちろん誰がこの激動に活躍してもいいけど、その輪の中に絶対にあたしもいるんだ!)
イリアの黎明の空に、必ず自分が生きた軌跡を残してやる──青い瞳は意気を湛え、剣を握る手がぐっと強くなった。
「もし王国騎士団の部隊長とか任されたら、ウチを一番に呼んで欲しいッス!」
彼女の瞳を見つめてミリアは直感していた。自分たちのリーダーは必ず変革の中心へと突き進んでいくに違いないと。支えたいこの人は、必ず新しい世界に自分を誘ってくれると。
今までだってそうだった。天馬にも乗れなかった自分の手を取って生きる道を一緒に探してくれ、家族と言えるような部隊を率いて騎士としての誓いを示している。
これからもきっとそうだ。ずっとついて行くと誓ったつもりだったが、リーダーは大げさだと笑っている。
「ははっ、なにそれ。よっし、もしなったら一緒に頑張ろうよ」
外国で数多の戦場を駆け抜けている上位部隊ならともかく、イリアの中でちょくちょくと賊討伐に剣を振るう程度の部隊が、国の騎士団など別世界の話──シャニーはそう思っていた。
もちろんそれだって騎士として生きている以上は憧れる魅力的な仕事だが、今突き進んでいる道は性に合っていた。成功も失敗も、全てをたった四人で受け止めなければならないけれど、行動がイリアに反映されていくのを肌で実感出来るこの道が。
でも、たとえどの道をこの先歩もうとも、ミリアをはじめとした家族とはこれからも苦楽を共にしていきたい、心からそう思える。
仲間を得て、今ならあの時よりは立派になったと、少しくらいは姉に自慢できるかもしれない。
「お姉ちゃんかぁ」
日が昇り始めた東の空を窓から見上げ、シャニーは姉への思慕を漏らした。
「ちょっとエデッサに行ったとき顔を出してみようかな。アリスちゃん大きくなってるかなー」
話したいこと、聞いてもらいたいことはいっぱいにある。
今から何を聞いてもらおうかと、ワクワクする心が足取り軽く稽古場を飛び出す。朝陽に青髪を揺らし、一日を始めるべくミリアと共に食堂へと向かうのだった。