ファイアーエムブレム 紺碧のコントレイルⅠ・Ⅱ   作:宵星アキ

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怪しい魔女の庵に拉致されてしまった。始まるのはサバトか、洗脳か、改造手術か────
なんてシャニーは考えているようですが、彼女が聞こえる声の正体を確かめるべく、レンが師匠ニイメの下に連れて行ったのでした。

ニイメから火急の事態を知らされ、レンは騎士団の中を駆けまわります。
尽きたら即ち死を意味するエーギルを何も知らず使い続け、巨いなる精霊の力に呑まれゆくリーダーに早く前を向いてもらうために。


第3話 風の精霊セチ(前編)

 ニイメの庵から閃光のごとく飛び出した天馬。

 あっという間にカルラエ城へと帰還し、弾けるように相棒から飛び降りたレンはそのまま駆け出した。

 時間は18時を過ぎていて、もう城に残っている騎士は昼間の半分くらい。レンは目的の人物を探して廊下を駆けていく。

 厩舎、食堂……すれ違う騎士たちは、普段道を譲る姿しか見たことのない小さな弾丸に跳ね飛ばされかけ、びっくりして避けていく。

 ドアを勢いに任せて押し開ける。詰所の中からきょとんとするルシャナとミリアの視線を浴びるが、目当ての顔はない。

 部屋の奥を見渡してみる。窓の外に見える明かり……室内稽古場だ。

 

「レン? なに? どうした?!」

 

 ルシャナに問われるが答える間も惜しい。彼女とミリアの手を取ってずいずいと稽古場へと入っていった。

 

 

◆◆

「そんな不安そうな顔するんじゃないよ、シャニー」

「ムリあるじゃん! こんな事しておいて、よくそんな風に言えるよ!」

 

 ありったけ抗議を叫んでもレイサからは何も返って来ず、きょろきょろとシャニーの視線が跳ねる。

 戦場さながらの完璧な連携だった。稽古場に乗り込んできたレンの無言の圧に固まった隙に、三人がかかりで天馬に乗せられ今に至る。

 拉致されるように連れてられて来た先はニイメの庵。昼間ならともかく、こんな日没後に訪れる魔女の庵は不気味でしかない。おまけに、脇を固める仲間たちががっちり両腕を掴んでいて、これで安心しろなんて無理がある。

 庵の闇はどんどん深くなり、天井まで届く書棚が見通せない暗闇の先まで続いている。なんだかゆらっと本棚から手招きされた気がして悪い汗が止まらない。

 

「ん、師匠なら大丈夫」

 

 レンが言ってくれると少しは安心できる気もするが、庵が近づけば近づくほどやはり不安が広がり足元が震え始める。

 大人しくするしかなかった天馬の上で一応にレンから説明は受けたものの、具体的に何をするまでは聞かされていない。

 ろくに明かりも入らない暗い庵は、恐怖を増大させるには十分すぎる光景だった。少しずつ下半身が引きずられ始める。

 

「もう一度さ、念のためだよ? いちおー聞くけどさ……痛いことしないよね?」

 

 誰に聞くでもなく、視線をきょろきょろとさせながら何が起きるのかを探ってみる。

 

「あんたも騎士のクセに往生際が悪いね」

「エ゙ッ?! い、痛くないんだよね? そう言ってたよね?!」

 

 左右にいる二人は視線をわざと合わせてこないし、前を歩くレイサやレンも振り返ってくれず、明瞭に答えようとしない。それどころか、レイサの言葉は引き込んしまえばこちらのものとでも言いたげで、悪人のセリフにさえ聞こえて来た。

 

「ねえ……やっぱりパスかなぁ。痛いのはちょっと……」

 

 苦笑いしながらやんわり拒絶を伝え、足にブレーキをかけて逃走準備を始めたらレイサにバレたらしい。ようやくに振り返って来たかと思うと、顔に鼻先を押し付けられた。仰天して左右の二人に視線を送っても、みんなレイサの味方か。ますます強く腕を掴まれた。

 

「あのね、痛いのと解決しないのとどっちが嫌なんだい?」

「やっぱり痛いことするんじゃん! ウソツキー!」

「バカだね。1パーセントでも真実を含んでりゃ嘘とは言わないんだよ」

「うわーん! 屁理屈だ! 謀略だぁ! 人でなしー! 悪魔ぁーッ!」

「ハン、部隊長からお褒めに与り恐悦至極に存じますってな? 裏の人間に何求めてるんだか」

 

 心の準備さえさせてもらえていないシャニーは、得体の知れない恐怖に目を震わせ喚き散らす。馬上では怖いことはしないから大丈夫だとレンは言っていたのに、レイサのこの言い草だと何をされるか分からない。

 全力で駆けだそうとするのだが、両脇で腕を掴む二人がそれを許してくれない。

 それでも命の危険をビンビン伝えてくる第六感のまま大暴れして振り払ったまでは良かったが、レイサに影縛りを喰らって万事休す。後ろ手に手際よく縛り上げられてしまった。

 

「ルシャナ、ミリア! 力づくでも連れて行くよ!!」

 

 突然の出来事にもがくシャニーは、レイサがポシェットから取り出したものを見て仰天した。あそこから出てくる瓶なんて、毒薬以外にない。

 

「ぎゃー! 助けてええ! 人殺しいい!!」

 

 泣きわめくシャニーを三人がかりで担いで庵の中に入っていく。庵の中ではそんな喧しい声に顔をしかめたニイメが、描かれたペンタクルの前にちょこんと座っていた。

 

「どっかで見たことがあると思ったら、レンと武器を探しとったボウズか」

 

 なるほど。ニイメの顔にふっと笑みが浮かんだ。あの時からレンを引っ張っていたと思ったが、そのまま彼女のリーダーとなっていたとは。

 この庵でもレンは事ある毎にリーダーの話をしていたからだいたいの人物像は分かるが、彼女の言っていたような太陽の笑顔は無いし、エーギルは異常なまでに乱れている。

 どうやらレンたちが言っていた事象は誇張などではなく本当らしい。

 

「女の子なんだけど……」

 

 立ち上っていそいそと準備を始め出したニイメの背中に、シャニーは四月の時と同じ言葉を漏らす。

 

「ま、そんなことはどうでもいいさ」

「全然よくないもん! 女の子なんだからぁ!」

「騒がしいボウズだね。んじゃ、──早速始めようか」

 

 分かったと言うまで抗議するつもりだったが、直後にニイメが口にした言葉に思わず身震いしてしまった。

 この部屋の雰囲気……色々な護符が部屋中に貼られ、魔物を描いた掛け軸があちこちから睨んでくる。蚊帳のかかった部屋の中央に描かれた巨大なペンタクル。仕切られた空間の四隅ではパチパチと炎が焚かれていて、広がるお香で頭がくらくらしてくる。こんな部屋で一体何をするというのか。

 

「あのー……痛いことはしないよね? ゼッタイだよね?」

 

 レイサが濁したことをもう一度聞いてみるが、孫の方はまだ優しかったのだと思い知った。

 

「おまえはどこかの令嬢か? 騎士なら切った張ったで慣れたもんだろ?」

「あたしは慣れてないし! 避けるから慣れてないし!」

「ん。いつも一撃もらうとうずくまってる」

「レンッ、それフォローになって無いからね!」

 

 何をされるか分かったものではない。察したシャニーは後ろ手に縛られたまま立ち上がり、踵を返して駆け出そうとする。もちろん、周りを固めていた仲間たちがそれを許してくれるはずも無い。上背のあるミリアに行く手を阻まれ、また三人がかかりで引きずられてペンタクルの真ん中に無理やりに座らされてしまった。

 

「ヒィッ?! お願いッ、洗脳とか改造手術とかしないで! 魔人なんかなりたくないよぉ!!」

「これだから最近の若いのは……。ドルイドを何だと思っとる。下世話な話に影響されすぎだね」

 

 まるで処刑される前かのように顔がくしゃくしゃに歪む姿にニイメは呆れ顔。そっと触れただけでも大げさに飛び上がっている。

 

「あんたの魔法への耐性は……ほう、騎士にしちゃ()()()だね」

「は、はは……。それはどうも」

 

 まだニイメはシャニーの魔法防御力を触れて調べただけらしい。

 彼女の驚いたような声にシャニーは褒められたのだと思って一応感謝しておくのだが、どうやらそれは違ったようだ。

 

「シャニー気を付けて。魔法耐性が高いと副反応も酷いから」

 

 レンの顔が今は悪魔に見えた。やはり何か身の毛がよだつことをされるのだと察し、どんどん血の気が引いていく。

 このままここに座っていたら命がいくつあっても足らない。脱兎のごとく駆け出すのだが、またしてもミリアに跳ね返されて数分後には元の場所に座らされていた。今度は足まで縛られて。

 

「ごちゃごちゃやかましい。()()()()()()()()()()()()魔法感応が低いわけないだろ」

 

 諦めろ、そう顔が言うニイメがついにペンタクルを挟んで正面に座った。

 

「あぁ……、揚げパン食べときたかったしリキアの海鮮ももう一度……。あっ、あの高級店のマカロンも食べてみたかったなぁ……あと、あとね──」

「幸せな人生だったね。レイサ、コイツを黙らせとくれ」

「はいはい」

 

 レイサのポシェットから取り出された瓶にシャニーは絶句して全部飲み込んだ。

 もはやこれまで……最期を覚悟してシャニーは目を瞑ってしまった。ここまで来たらもうどうにでもなるしかない。

 

 彼女が大人しくなったことを確かめるとニイメは魔力をペンタクルに注ぎ始めた。呼応するように光り出し鮮明となる印。照らされたシャニーの顔に陰影が濃く浮かび上がっていく。

 

(なっ、何これ?! うぅ……気持ち悪ッ……)

 

 不思議な感覚に彼女の表情があっという間に歪んでいく。まるで胸の中に直接腕を突っ込まれて弄られているようで、拒絶するように体が震えるのをぐっと奥歯を噛んで堪える。

 すぐに湧き上がる吐き気に口元を覆うとしても、後ろ手に縛られて叶わない。ついに息苦しくなってきてその場に倒れこんでしまった。

 その姿を見つめていたニイメの目が瞠目し固まる。しばらく倒れたまま視線が遠いシャニーをまじまじ見つめた後、ようやく魔力の放出を止めた。

 

「……なんと言うことじゃ。おまえ……“本当”だったのかい」

 

 周りがしきりに声をかけてくれるがイマイチ聞き取れない。ニイメの声だけがハッキリ聞こえた。

 これが副反応というものなのか。頭がジンジンして頬を地につけたまま身を起こせず、凄まじい冷や汗は頬周りに池でも出来てしまいそうだ。

 仲間たちが駆け寄ってきて、縄を解くと水を口に流し込まれた。

 

「な? 痛いことはしなかったろ?」

「……レイサさんのオニ」

 

 彼女たちをうつろにしか見上げられないが、とりあえず極限の苦痛が去ったらしい。ホッとしてそのまま介抱するレイサの腕に身を任せる。

 その姿をニイメはじっと見つめるばかりで何も語ろうとはせず、シャニーの方が不安になって口を開いた。

 

「あの……何か分かったんですか?」

 

 本当に何も知らずにここまで生きてきたと顔が言っている。

 これほどのものを抱えておきながら……。ニイメは人生で初めての経験に武者震いが止まらなかった。古文書や噂話に見聞するだけだと思っていた存在が目の前にいる。

 

「ああ分かったよ。おまえがバチ当たりだってことがな」

 

 ここまで無知なら回りくどく言わなくてもいいかもしれない。真っ青な顔で今も仲間に横にさせられているシャニーへ短く答えてやった。

 

「おまえはセチとの契約者じゃ」

 

 人の身でありながら精霊の力を宿し、人外の異能を具現化する者。魔法と言う理の外に身を置き、無からその意志一つで無尽蔵に有を生み出し変幻自在に操る者。古文書はそれを契約者と呼び、噂は魔人と伝えてきた。

 それが今、顔を真っ青にして横たわっている。齢六十を越えて初めての経験に、ニイメはぞくぞくと身を震わせる。もっともっと調べてみたい……。だが、愛弟子の視線はそれを留めさせた。

 

「契約者って……ソルバーンさんも言ってたやつだ」

 

 ニイメが同じことを言った。ソルバーンは本当の事を言っていたとようやくシャニーは悟るが、湧きあがったのは納得ではなく疑念、不安、そして更なる恐怖だった。どうしても一層の困惑に眉が下がる。

 

「契約者って何? というかセチって本当にいるの?」

 

──ま、どうでもいいじゃねえか? お前は風の異能の具現者。それに違いはねえんだし

 

 あのときソルバーンに言われた言葉が浮かんできた。それでも聞かずにはおれなかった。

 未だに信じられない。ではあの声は、いつも自分に囁きかけてきた悪夢のような声はセチだというか? 精霊なんて聖典に出てくるだけの空想だと思っていた。

 

「まんまの意味じゃよ。契約したおまえなら、セチの力を自由に使えるはずなんだがね」

 

 自在に扱えずにいるのは、そっと視線を外す素振を見なくてもここへ運び込まれている時点で分かっている。その理由も、ここまでのシャニーの態度でニイメにははっきりとしていた。

 

「で、でもあんな恐ろしい力、自由にだなんてとても」

 

 本人はまるで気づいていないらしく、シャニーは今も狼狽して震えた声で力を前に怯えている。

 

「それじゃよ。そうやっておまえが拒絶してるから、セチが怒っている。セチの本来の力は穏やかなものだと聞くけどねえ」

「拒絶って……言われても……」

 

 ニイメにこう言われては、信じないと自身に言い聞かせる方が難しかった。この状態は自分のせいだというのか。

 拒絶……確かに拒絶している。だって恐ろしいから。仲間に何をしてしまうか分からない刃を握らせようと囁くこの声が、この魔力が。

 颯を生み出し神速に駆ける跳刻の力と、全てを切り刻む疾風迅雷が自分の意識とは別に仲間に向かう────鍵をかけておくしかないじゃないか。

 だけど、怒っている……静かな庵でそっと考えたら、確かに怒っても仕方ないかもしれないとも思えてくる。鍵を掛けて、だけど力だけ自分のものにしようとしている。セチに向けて掛けた言葉は……たった一つだ。

────うるさい! あんたにあたしの何が分かるんだよ!

 

「その状態から抜け出したきゃ、セチを受け止めてうまく調和する方法を探すんだね」

 

 無情にもニイメからはそれを止めるように言われてしまった。

 誰もが言う、開放しろと。ソルバーンも、アルマも、そしてニイメまでも。いや、もっと前からだ。セチの力と気づく前から、ユーノにはっきりと言われていた。抑えるのではなく上手く付き合えと。

──初代団長も、貴女みたいな一面があったそうよ

 あの時言われた言葉を思い出した。ユーノは分かっていてあんなことを言ったのだろうか。色々な情報が一気に浮かんでは頭の中に駆け巡る。

 

「ちょっと待ってよ、全然ついていけないよ。なんであたしがその……セチの契約者なの?? そんな家系の人間じゃないしさ」

 

 ようやく気分の悪さは収まって身を起こしたものの、騙されているような気分のままだ。話だけがどんどん先に進んでしまって、シャニーはついに髪をくしゃくしゃとし始めた。

 そんな家系の人間ではないのに……同じことを口にしてソルバーンに言われたか。“そんな家系でもない”と分かっているなら現実を受け止めろ、と。

 

「何か……心当たりはないか? 命が危険に晒されて、心から力を渇望したことは無いか?」

 

 心当たりなんか無いから聞いているのに……そう言いかけたが、静かに目を瞑ってニイメの問いへ真剣に考えてみる。

 ……そんなの、いくらでもあった。ベルン動乱中は自覚ある危機だけでも何十回と。だけどその都度、ディークをはじめとした傭兵団の仲間や、ロイに助けてもらったからそれで済んでいった。

 本当に……本当に心の底から死を覚悟する場面に陥ったのは騎士団に入ってからのはず。────いや。

 

「……心当たりと言えば、背中に消えないアザがある。ソルバーンさんにも同じこと言われた」

 

──背中にこんなアザがあって気づかねえとは随分とトロいんだな

 

 あの時、ソルバーンは答えを与えてくれていた。準備の出来ていない心は金言をただの石ころと放り捨てていた。

 もっと早く彼の言葉に気づいていれば、セチを怒らせずに済んだのかと思うと唇を噛む視線が俯く。

 

「じゃあそれの所縁の地に行ってみることだね。そこなら、精霊をよりはっきり感じられるかもしれん」

 

 明確なアドバイスはようやくにシャニーの顔に少し明るさを浮かばせたが、直後にニイメが放った警告が太陽を覆い尽くした。

 

「いいか、セチを拒絶し続ける限りそのままだ。それどころかいつかおまえ、精霊に呑まれるよ」

 

 頭からすうっと血が引いていくのが分かる。何かとんでもない事が知らないうちに進行していた──それを伝えるにはニイメの言葉は刺激が強すぎた。

 

「呑まれるってどういうこと?!」

「あんたの精神を精霊が支配するってことだよ」

 

 言われていることは何となく分かる。今まで魔力を解放しようとした時に現れた、あの卒倒感を指しているに違いなかった。

──私があなたとして生きていれば、今頃……ふふふっ

 セチも最近口にするようになったあの言葉。意味を知って体中に震えが走った。

 しかし、ようやくに、ようやくに分かった。何故セチがあんなことを言ったのか。どうしてこの異能があり、どうしてあの絶体絶命で生き延びられたのか。

 

(あたしを……ウッディを救ってくれた恩人を、あたしは拒絶し続けてきた……)

 

 一気に罪悪感が湧いてくる。途端、それまで弱り切っていた黎い瞳に普段の青が戻って力強く立ち上がった。

 

「みんなを守る剣が欲しくてここまで来たんだ。怖いけど行ってみるよ」

 

 年初に決めた誓い。逃げずにただひたすら前へ。少し足踏みしたが、もう一度踏み出すことにした。

 目の前に道があったのに恐ろしくて踏み出せないでいた。後ろにも道が無くなり立ち止まるこの場さえ呑まれるなら、飛び出すしかない。

 今まで通り、何もせず後悔するなら動いてから受け止めよう。そう思える瞳たちが守ってくれるように四方から見つめていて、早速レンが手を差し出してくれた。

 

「シャニー、みんないるから。大丈夫」

「そうッスよ! いざって時はウチらでシャニーを止めるッス」

 

 暴走を恐れているなら、受け止めてやればいい。

 どんなことがあっても互いの背中を守りあうと、部隊結成時から誓う瞳たち。

 誰もが逃げることなく真っすぐ自分を見つめてくれる力強さと優しさに、自然とシャニーの顔に笑みが浮かぶ。一番逃げてきたのは、逃げないと誓ったはずの自分かもしれない──そんな気持ちに違うと語りかけるように、ルシャナが肩を組んできた。

 

「家族でしょ? あんたのピンチは私たちのピンチだよ。背中は任せて、戦っといでよ」

 

 仲間を繋いできたのはこの想い。入団してまだ間もないころからシャニーがレンたちを守るために口にした言葉を、仲間たちは今も胸に刻んできた。今こそ、あの時守ってもらった分、守るとき。

 

「ありがとう、みんな。あたし頑張ってみるからね」

 

 仲間たちに決意を見せつけるように、はきと頷いたシャニーの足取りは庵に来た時とは別人のように力強く、前を見据える瞳は不屈を湛えていた。

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