ファイアーエムブレム 紺碧のコントレイルⅠ・Ⅱ   作:宵星アキ

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前話のあらすじ

皆は受け入れてくれるだろうか。許してくれるだろうか。
不安と罪悪感に押し潰されそうで紅涙を絞るばかりの夜は一睡もできなかった。
それを越えた先でシャニーは皆に謝り、新たな誓いを各々胸に刻んでレイサの許へ向かった。
彼らはレイサに侘びを入れ、ようやく十八部隊に流れていた歪んだ時が元に戻る。

その後、シャニーは医務室で今も治療を受けるミリアの許へ向かい直接謝った。
ミリアは彼女に想いを打ち明ける。リーダーは皆の憧れなのだと。
頼りっぱなしでリーダーを潰しかけたことを謝ったミリアは、元のリーダーに戻ってくれる事を条件にシャニーを許すことにし、次の休みに付き合って欲しいとお願いした。


第7話 先駆の狙撃手

 非番の日を合わせた二人はエデッサの城下町を歩いていた。

 天馬騎士団の制服以外を着た状態のお互いを見たのは初めてかもしれない。適当にぶらぶらするミリアに喋りながらついていく。

 

「シャニー、お昼にしないスか?」

 

 正午近く。いくらイリアが困窮の地とはいえ、有力者であるゼロットが治めるエデッサの町には多くの人が往来する。

 混みだす前にと早めの昼食を取ろうと店を探し始めた。

 

「オゴってくださいよ~、先輩なんだし」

 

 店に入るなり猫のようにごろごろと甘えた声を出し始めたミリアにぎょっとする。

 ついこの前、もう名前で呼ぶと言った割にこれだ。

 

「いいよ。好きなの食べなよ」

 

 今日は彼女への贖罪でもある手前、何も言い返すことなどできない。

 

「やりぃ! じゃあ何を大盛りにしようかな」

 

 子供のようにはしゃいだミリアはメニューをぱらぱらとめくっていく。

 半分冗談だったのだが、何だかあっさり行き過ぎてつまらない気がする。

 お互い新人でお金がないことは分かっているから、支払は元から割り勘にするつもりだったのに。

 その分、しっかりこの後本題で働いてもらうことにしようと、ミリアは出てきた山盛りのパスタに目を輝かせた。

 

 お互いに満腹になってお腹をさすりながら店を出た。

 次はどこに行くのかとミリアの背を追って歩いていく足取りに迷いはない。この道はシャニーも良く通る道だからだ。

 この先は職人街でいろいろなお店がある通り。ここの武器屋はいい鍛冶師を擁していて愛用している。

 

「あれ、やっぱり武器を見に来たの?」

 

 思わず自分の用事の時と同じように武器屋の前で止まってしまったが、ミリアも止まって中の様子を見ている。

 だが、中に入る様子が無いのでシャニーはミリアの視線の先を追ってみた。色々な武器が並んでいる。

 

「シャニー、ウチに合う武器、一緒に探してもらえないッスか?」

 

 自分に合う槍を探して欲しいと言っているのかと思ったが、どうにも彼女の視線は槍を向いていない。

 

「ウチはレンと違って魔法は使えないし」

 

 そう続けてきたのでようやく分かった。槍以外の何かを探しているのだ。

 

「あれだけ稽古をつけてもらって申し訳ないって思ってるッス。でも、この前の模擬戦で思い知ったッス。ウチには槍を扱えていないって」

 

「そういうことなら任せてよ。満足するまで探そうよ」

 

 武器は自分を守る大事な相棒。その選択を誤れば命に係わる。

 この前は稽古用の木の槍だったからケガで済んだが、真槍だったら間違いなく死んでいた。

 親友を守るためにも絶対に見つけてやると意気込んで武器屋へと入る。

 

「よう、また来たのか。シャニー。今度はどんな風にするんだ?」

 

 お得意様がやって来たので奥の方にいた鍛冶師は煙草をくわえながら手を振った。

 

「今日はあたしじゃないんだ」

 

 そう言いながら友達を連れて店の中をウロウロ。どうやら連れの子は“犠牲者”にはならずに済むらしい。

 色々な種類の武器を手にとっては、連れの子が手に取り、構え、軽く振っては首を横に振る。それをずっと繰り返している。もう煙草を何本替えただろうか。

 

「うーん……やっぱりしっくり来ないッス」

 

 剣を試し、槍もいくつか見て、斧にまで手を出したがさすがにこれは二人がかりで元の場所に戻す。

 

「射的なら得意なんスけどねえ」

 

 向こうに立てかけてあった弓を手に取って弦を引いてみるがとても扱えそうにはない。

 

「お前ら、さっきから何してるんだ?」

 

「この子に合う武器がないかなって探してるんだ。ここにあるので全部?」

 

 気になった鍛冶師がついに机に上げていた足を下すと二人のところに寄って来た。

 救世主を見上げてくるかのようなシャニーの質問に全部と答えかけて、ポンと手を打つ。

 

「ああ、そういや二階にもう少しあるぞ。他大陸からの輸入品だけどな」

 

 言い終わりもしないうちに二人は階段を昇り始めている。

 仕方なく鍛冶師も後追い、予想通り見たことがない武器を前にきょろきょろしている二人が視界に入って来た。

 特にシャニーは貴重な魔法剣を前にして目が輝いている。剣のことになるとこうなるから今までは黙っておいたのだが、壊さないか心配である。

 

「ん、なんスか? これ」

 

 十字架に弦が張ってある。持ってみると軽い。

 

「ああ、そりゃクロスボウだ」

 

 鍛冶師が歩いてきてミリアを試射場へと案内する。軽くレクチャーを受け、ミリアは奥に設置された的に照準を絞った。

 

「わっ、すごい、ミリア。真ん中!」

 

 雷でも迸ったかのような音がしたかと思うと、ボルトが的の真ん中を貫いていてシャニーが目を真ん丸にして拍手し始めた。

 クロスボウを持った手を下ろさないまま撃ち続けるが、どれもが真ん中付近を通過していく。

 

「へえ、お前さんなかなかやるじゃないか」

 

 鍛冶師に褒められてもミリアの腕が下りることは無く、不思議になってシャニーは彼女に近づいてみて驚いた。ミリアは震えていたのだ。

 

「ミリア……? だいじょ……」

 

「これ! これッスよ! これならウチでも使える! すごいしっくりくるッス!!」

 

「あ、危ないって! わぁ?! こっち向いてる!」

 

 クロスボウを持ったまま抱き着いてきたのでシャニーもさすがに焦ってもがく。

 向こうに見える穴だらけになった的が、何だかゆらゆら揺れて誘ってきているように見えた。

 あんな風になるのはごめんと、何とかミリアの手からクロスボウを取り上げる。

 

「はぁ……死ぬかと思った」

 

「ごめんごめん、でもありがとう、ようやく見つけた、ウチの武器!」

 

 胸を撫で下ろしてその場に座り込んだシャニーだったが、嬉しそうにするミリアを見上げていると、何だか自分のことのように嬉しくなってきて自然と顔が綻ぶ。

 槍を持っている時とその目つきがまるで違う。よほど自分に合ったのだろうか。

 

「でも、また変わり者集団って言われちゃうッスかね」

 

 シャニーやレンをからかいに来た第二部隊の連中の顔が浮かぶ。

 天馬騎士を名乗りながら戦闘ではあまり騎乗しない剣使いを筆頭に、天馬騎士なのに剣も槍も扱えずに、魔法を使う者がいれば今度はクロスボウである。

 天馬騎士団中探したって二人といないだろう。部隊長が放任主義なレイサでなければ今頃皆槍を握っていたに違いない。

 

「言いたい人には言わせておけばいいよ。ミリアだけにしかできない力にすればいいだけじゃん」

 

 レンの時と同じことを言って背中を押してくれる仲間もいる。

 ミリアは恐れることなく自分だけの道を歩む決心をし、新たな相棒を手に一階へと降りていく。

 きっとこの手で仲間を、横で一緒に笑ってくれる親友を守ろうと誓って。

 

「ちょ、ちょっとこれは……マズいでしょ!」

 

 ところが数分後、一階からはシャニーの焦った声が響いていた。

 会計をするために受付に行った彼女たちが告げられた値段は、剣や槍とは桁が一個違う。悪い汗がドバドバ出てくる気がする。

 

「シャニー、お願い! この通りッス! 先輩~可愛い後輩を助けると思って!」

 

 予算担当なので分かっている。こんな高い武器を買う予算など無いことを。

 この規模で予算をオーバーすれば始末書は免れない。相手が輸入武器だということをすっかり忘れていた。

 だが、親友がようやく相棒を見つけたのに諦めるわけにはいかない。ごくりと息をのんで命には代えられないと肚を括った。

 

「よ、よおし始末書でもお説教でも何でも来いってんだ」

 

「あー、今日は先輩が輝いて見えるッス!」

 

 数日後、事務方に呼び出されてレイサと合わせて三人こっぴどく絞られたことは言うまでもない。

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