ファイアーエムブレム 紺碧のコントレイルⅠ・Ⅱ   作:宵星アキ

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前話のあらすじ

エトルリアで営業を行うティトたちの前に広がる白き高貴な都。
復興が進む大国の首都で、ますます自国の遅れに責任を感じずにはおれない。

魔道軍将セシリア邸で営業中に、破天荒なアルマの行動に肝を潰す想いをする。
ぐったりとして屋敷から出てきた彼女に声を掛けたのは、ずっと文通を続けてきたリグレ侯爵家のクレインだった。

彼はティトを連れてエトルリアの街へと誘う。


第4話 一刻の相聞歌

 ああ……幸せ。もうこのままどこかに連れ去ってもらえたなら……。

 駄目だと頭が心を引っ張っても、帰らなければいけないと何度も突いても、あの背中を今すぐにでも追いかけたい。

 私だって、今すぐ返事をして一緒に帰りたい。

 でも、ダメなのよ、ティト。あなたは天馬騎士団の団長なのだから。早くその手を下ろして帰らないと……

 

◆◆◆

 クレインは店に案内する道中も、色々と話しかけてくれる。

 スマートなエスコートはそれだけで至福の時。ティトは彼の歩いていくままについていく。

 

(本当に、夢みたい……)

 

 夢なら覚めないで欲しい。そう願いながら肩を包んでくれるクレインの香りに身を預ける。

 そのうち、行きつけの店が見えてきたようで、クレインの指さす方に目をやると白い立派な建物が見えてきた。

 店が近くなっていくにつれて、ティトの顔には自然と笑顔が浮かぶ。こんな立派な店はイリアにはない。

 

「素敵……」

 

「はは、気に入ってもらえたなら、ぼくも嬉しいよ」

 

 白を基調とした立派なレンガ造りの店は良いコーヒーの香りに包まれていて、清潔感溢れる高潔な雰囲気。

 店の中の調度品のどれを見ても素晴らしいものばかりで、店の格式をこれ以上無いほどに引き上げる。

 

(こんな素晴らしい場所がこの世にあるなんて……)

 

 ティトにとってはどれも見たことがない天国のような場所。

 エトルリアを何度も訪れているが、貴族街の店に入ったことは初めてだった。

 

(本当に素敵……。だって、今は……)

 

 だが彼女にとって何よりも膨らむ幸福感は、今もクレインが自分をしっかりと腕の中に包んでくれている事。こうして彼にしてもらえたのなら、どんな店でも良かった。

 ベルン動乱の時は雇い主と傭兵と言う立場。

 帰国の際にクレインからラブコールを受け、飛んでいきたい気持ちを抑えてイリアに戻り、天馬騎士団の復興に着手してきた。

 

「ケガもなく無事で何よりだ。ぼくの心配は君の事だけだよ」

「ありがとうございます。クレイン様。おかげさまで」

 

 包んでくれる手先が軽く肩を突いてきた。

 

「名前で呼んでくれと言っただろう?」

「あっ、はい! クレイン……さま」

 

 やれやれとクレインは額に手をやっている。ティトの生真面目は相変わらず。

 戦中から、ティトには名前で呼ぶように頼んできた。

 言ってすぐは良いのだが、少し経つとこうして畏まってしまう。

 

(そんな事を言われても、なかなかそうは行かないわよ……)

 

 クレインの好意には申し訳ないと思いつつも、毎回ティトは内心で困惑していた。

 彼がなんと言おうと、相手はエトルリアでも五本指に入る有力貴族、リグレ侯爵家の人間。

 自分はただの傭兵だ。おまけに仕事着でエトルリアの貴族を呼び捨てなど、どこにどんな目があるか分からないのにできるはずがない。

 

「ティト、ぼくは君を愛している。もし君に妙なことを言う者がいれば、ぼくから話をしよう」

 

 ストレートな言葉に心臓が飛び出しそうになる。彼が気持ちを伝えてくれて半年が経った。

 その気持ちに彼女も返したかったが、どうしても立場の違いがそれを阻み、故郷の復興のために返事を待ってもらった。

 

「すみません……」

 

 今もそれしか出てこない。

 もう少し気の利いた事を言えれば良いのだが、考えている内に、沈黙に焦ってしまう。

 

「……分かった、場所を変えよう」

 

 せっかくの良い香りのコーヒーにほとんど口もつけないまま、クレインはティトの手を取って店を出た。

 高潔な白き貴族街を抜け、多くの人が行き交う市場も通り過ぎた。

 手を引かれるまま、ひたすら歩く街並みはいくらでも歩ける気がするが、周りの景気にそわそわし始める。

 耳が壊れそうなくらい騒ぐ者たちで溢れる狭い通りでは、二人は際立って目立つ。

 

「えっ……?! ク、クレイン様? このような場所……」

 

 新たにクレインが連れてきてくれた店の前で狼狽するティトはクレインにストップをかけた。

 だが、彼はひとつウインクするとそのまま店に入っていってしまう。

 

(ええっ……。クレイン様、どうしたのかしら)

 

 クレインがティトを連れてきたのは、夜は荒くれも集まるような小汚く、男臭い、喫茶を楽しむというより騒いで楽しむ酒場のような所だったのだ。

 

「ここなら、ぼくを知る者はいない。ティト、ぼくは君と対等に話がしたいんだ」

 

 こんな場所にクレインを連れてきたと知れたら、彼を溺愛する妹君になんと言われるか分かったものではない。

 最初は何とか店の外に出ようとしたのだが、何せ店は大繁盛で飛び出せる状況ではない。

 それどころか人の波にもみくちゃにされ、店の一番奥の席に流れつく。

 それでも未だに決心がつかない様子のティトに、クレインはついに奥の手を使った。

 

(嘘……?! 夢? でも……)

 

 不意に抱き寄せられて、真ん丸に見開いた世界の全てにクレインが映る。

 ティトはついに観念して目を閉じると、クレインにされるまましばらくそのままにしていた。

 賑やかな店の隅にいれば、誰も気には留めない。

 愛している、言葉だけではないことをしっかり伝えたクレインがそっと離れ、名残惜しそうに伸ばされたティトの手を取った。

 

「さぁ、これでもういいだろう? 名前でちゃんと呼んでくれ」

 

 ここまで彼にされたら、もう覚悟を決めるしか無い。恥ずかしさをふうっと大きく吐き出した。

 

「……分かりました。クレイン」

 

 ようやく生真面目な彼女からオッケーがもらえて、クレインの顔に安堵の笑みが浮かんだ。

 

(あのクレイン様が……こんな事をしてくれるなんて……)

 

 クールな彼の意外に情熱的な一面を知り、ティトは今も顔をトマトのようにしている。

 あの感触が忘れられなくなりそうだ。

 

「あの動乱以来だな。まさか本当にその服を着ていたとは……」

 

 改めてティトを見つめてみると、天馬騎士団の純白の士官服姿だ。紺のマントを止めるブローチは金色。

 もうすっかり着こなしてはいるが、クレインには心配が膨らんだ。

 彼女の意志であるとはいえ、今も戦場に立つ彼女をどうしたら救えるのだろうか。

 

「ええ、少し前に選挙で正式に団長となりました」

「え……ああ、そうなのかい。みんな君を選んだんだね。さすがティトだ」

 

 クレインの反応が少し鈍かった理由はティトも察している。

 彼の愛の言葉に対しての答えとしては、あまり良い方向ではない事は分かっている。

 自分だって、彼の腕の中にいる事が出来たなら……毎日そう考えては頭の中から消してきた。

 

「そういえば、君はどうしてエトルリアに?」

「営業です。セシリア魔道軍将のところへ。クレイン様もお忙しそうでしたね」

「ああ、ちょうど議会が終わって帰路に就くところでね」

 

 無理やり話題を変えるようにクレインは近況を問うが、問わずともティトがエトルリアにいる理由など知れている。

 イリアとエトルリアは距離がある為、そう何度もある機会ではない。そこに重なった偶然にお互い神に感謝していた。

 

「エトルリアは本当にすごいスピードで復興が進んでいるようですね」

「そうだね。動乱前と同水準とまでは行かないが、政治の根幹部分の修復は完了している」

 

 エトルリアは市街戦を回避したこともあり、街が以前の姿を取り戻すことに時間はかからなかった。

 だが、宰相をはじめ政治にかかわる多くが逮捕、あるいは戦死した中、基盤の復活と整備には多くのエネルギーを注いできた。

 動乱後は弓を置き文官となったクレインも毎日奔走し、今日もまだ多くのスケジュールを残す。

 どんな凛々しい姿で仕事をこなしているのだろうか……ティトは頭の中でクレインの仕事姿をイメージしていた。

 

「羨ましいです。イリアはようやく騎士団が動き出した程度。復興と言える復興はまだまだ先になりそうです。私のやり方で、この先どうなっていくのか本当に不安で……」

 

 クレインに悩みをぶつけてみた。彼になら悩みを打ち明けられる。助けてくれる。彼女にとって無くてはならない存在。

 手紙の中でも何度か弱音を吐いた時に励ましたり、アドバイスをくれたりもしてきた。

 彼も忙しいと分かっていながら、甘えられる数少ない相手。

 

「君の大変な立場は理解しているつもりだよ。騎士団をまとめて、国のことも考えて」

 

 イリア三大騎士団の一つを預かるだけでも大変な上に、国防も復興も一手にその双肩に責任を負う天馬騎士団の団長。

 その重責を立派に果たす彼女の事を、もっと周りが認めてあげて欲しいのだが、国内はなかなかそうもいかないらしい。

 手紙の中で悩むティトを何度、側で励ましたいと思ったか。

 

「ぼくは君のしていることが、間違っているとは思えない。頑張っているのは手紙の内容からでも分かる。結果がなかなか見えなくて、ぼくも歯がゆい思いだよ」

 

(ああ……クレイン様にこう言って貰えたら、もう十分だわ……)

 

 どれだけ勇気付けられる言葉だろう。

 自分を理解してくれる人がいる事が、どんなに心強いことだろう。

 互いに国の頂に近い場所にいるから、相手の気持ちや苦労はよく分かる。

 

「だけど……怖いんです。もし、私のやっている事が間違っていて、私の判断のせいで国の情況が好転しないのではないかと思うと……。最近……どうしてしまったのかしら。私なんて国を背負うようなそんな器では無いんじゃないかって。誰か他に適任者がいるんじゃないかって」

 

 ティトの言葉を、茶を飲む手を休めて黙って聴く。落ち着かない瞳をじっと見つめて。

 最後まで聞き終わると彼はグラスを静かに置き、華奢なティトの双肩にそっと手を置いてこちらを振り向かせた。

 

「それが、国を動かす者の葛藤さ。ぼくも、皆も。ロイ様だって同じ事を仰っていた」

 

 愛する人が苦悩に押し潰されそうになっている。

 どうやって声をかけてあげれば、一番に彼女を癒してあげることができるだろう。

 短い時間では最良の結果を選ぶことは難しいかもしれない。最善を尽くす。それは政治でも同じだ。

 

「クレインさ……クレインでもそう思われるのですか?」

 

 言ってからはっとして言葉を飲み込んでも遅い。苦笑いと共に伸びる背筋を摩られてしまった。

 

「ほら、もっと肩の力を抜いて。もっと自分を出して話をしてくれ」

 

 どうしても気が退ける。侯爵家の人間相手に。だが、じっと見つめてくるクレインはこのままでは許してくれそうにない。

 

(ううう……もう、どうなっても知らない!)

 

 もう、いつ次に会えるか分からないのだ。今、彼の気持ちに応えなくてどうする。そう自分に言い聞かせ、意を決して口を開く。

 

「クレインでもそんな風に悩んでいるの?」

「ああ。ぼくよりもっと優れた施策を考え付いてくれる人がいるんじゃないかってね」

 

 ふっと優しくクレインの顔が微笑んでくれた。これを見せられると何も言えなくなって、どきっとして視線を逸らしてしまう。

 いつもこうだ、本当はもっとこうしていたいのに。

 

「でも、評価はどんな結果であれ後からついてくるものだ。だから今は、ぼくが最善と思うことを、自分を信じて行うだけだよ」

 

 自分に自信を持っている人間の言葉は強い。羨ましく思える。

 団長として毅然とした態度をいつも心掛けているが、不安は隠しきれずに零れ落ちている。

 

「君には既に結果が出ているじゃないか。みんな、団長に選んでくれたのだろう?」

「はい……でも、それは」

「それは?」

 

 言えなかった。派閥争いの末の票取り合戦となってしまったなんて。

 

 ────自信を持て

 

 クレインの顔がそう告げて来る。彼に言われると不思議と勇気が湧く。

 どんな結果であれ、自分は騎士団員に選ばれた。再び問うてくるクレインへ静かに首を横に振る。

 

「いえ、そうね。私ももっと頑張らないと」

「ひたすら、前に進むだけだよ。まずは自分を信じてあげないと」

 

 自分が19,クレインは21。年は2つしか離れていないのに、まるで大人と子供くらいの差があるように思えてしまう。

 だが、クレインは逆を想っていた。

 

「君の場合は特に、ね」

 

 こんな細い双肩に、あの広大なイリアの未来がかかっている。

 有力な騎士団が国を切り拓くイリアでは、幹部一人一人にかかる重圧は計り知れない。

 まして三本指に入る天馬騎士団とあっては。

 それでも凛と咲くこの乙女を、クレインはリスペクトしていた。

 

「君は部下を従える人間だ。将が自分を信じなければ、部下は拠り所を失うことになる」

「そうね……。でも、だからこそ怖いの。信じてくれる部下を誤った方向へ導いているとしたら、と」

 

 どこまでも生真面目で、仲間想いの団長だ。だからこそ、クレインは彼女に惹かれた。

 慎ましく、驕らず、それでいて凛と前を見据える。そう簡単にできることではない。

 

「もしそうなったら、皆が教えてくれるさ」

 

 街に消えて行った彼女の部下たちの様子を見ればクレインには分かった。

 

「部下たちは君についてきてくれないのかい?」

 

 何度も首を横に振る。皆良く指示を聞いてくれるし、指示以上の事をしてくれる。

 この前の団長選出選挙でも、自分を信じて最後まで戦ってくれた。

 いつも彼女達は、感謝してもしきれないくらい、動いてくれる。

 

「いえ、みんな一生懸命に頑張ってくれて感謝しています」

「なら、それが答えじゃないか。君が周りを大事にするように、周りも君を大事にしてくれる。君を信じる仲間を信じて、ただひたすら前へ歩こうよ」

 

 ティトははっとした。心の余裕が無くなって、部下の気持ちを聞くことを忘れがちになっていた。

 口から出る言葉だけがすべてではない。身振り手振りすべてが、自分へのメッセージ。

 部下を勇気付けるのは、自分の諦めず力強く前へ進む姿。

 間違っているならば、部下がきっと正してくれる。

 

「その仲間にはもちろん、ぼくも入れて欲しい」

 

 その時、肩に乗っていたクレインの手がそっと頭へ伸びてきた。

 びっくりして一瞬だけ肩が跳ねる。彼に撫でられていた。

 よくやっていると誉め、将として逃れようのない孤独を癒すかのように。

 普段は姉にされると恥ずかしくて拒否するが、今だけはこのままで居たい。

 

「早速仲間からひとつ言わせてもらうよ」

 

 その気持ちをクレインは知ってか、そのまま抱き寄せられた。彼のいい匂いが全身を包む。

 

「もっと自分を労わって欲しい。君の仲間も顔がそう言っていたし、少なくともぼくはそう思っているよ」

 

「ありがとう……クレイン。私、気持ちが楽になったわ」

 

 ずっとこうしていたい。いつの間にか彼女もクレインの体に手を回していた。

 見下ろしてクレインはふっと笑う。愛する女性のあんな苦悩に沈む顔を放っておくなどできるわけがない。

 少しでも彼女の為になれたなら、それだけで生きている意味を感じる。

 

「それは良かった。うん、君にはそんな笑顔が似合うよ」

 

 国境を越えた最愛の人の優しい想いが、凍り付いて動けなくなっていく心を溶かしていく。

 

「私の求めていた答えが見つかった気がする。あなたに会えて、本当に良かった……」

 

 それ以上は二人に言葉は要らなかった。喧騒に紛れるように、店の隅で互いを抱き寄せあった二人は、今しか楽しめない時間を過ごす。

 楽しい時間。妹や騎士団の親友と話していることも楽しいが、この体が浮かんでいるかのような幸福感は何物にも代えがたい。

 限られた時間の中で二人ともこの時を、互いを求め合うように結ばれた視線が切れることは無かった。

 

 

 

 楽しい時間はあっという間に過ぎ、ついに来てしまった別れの時。

 名残惜しい。次に会えるのはいつだろう。どうしてもクレインの顔をじっと見つめてしまう。

 

「今日はありがとう」

「こちらこそ、また何かあったら手紙をしてくれ」

 

 それは彼も同じ。そっと口づけを交わすと無理やりに歩き出す。

 

「ティト」

 

 再び立ち止まってティトを呼ぶと、クレインは振り返った彼女の所に戻ってきた。

 

「ぼくはいつまでも君だけを見ている。返事を待っているよ」

 

 それだけ言うとクレインは再び歩き出し、もう振り返ることは無かった。

 残された乙女は小さくなる背に手を伸ばし、街角に彼の姿が消えてしまうまでずっと見つめていた。

 本当なら今すぐあの背中に抱き着きたい。

 

「果たすべきを果たしたら……必ず」

 

 その気持ちをぐっと飲みこみ、伸ばされた右手を左手で抑えて下すと、彼女もまた町の中へと消えて行った。

 その瞳に、愛に満ちた希望と、立ちはだかる大きな壁に立ち向かう勇気を湛えて。

 

 

 

 ◆

「はぁー、やっぱエトルリアのメシは最高!」

 

「まったく、お前は遊ぶことになると研究に余念が無いな」

 

 お腹をさすりながら歩くエダに、ソランは呆れ顔だ。

 どうやらエダはここに来るにあたり、事前に本を読み漁って色々と店を調べていたようで、ティト達と別れた後の行動の手際の良さにはソランも舌を巻いた。

 結局、部隊を率いたのはソランではなくエダという始末。

 ティトと集合の約束をした場所に行くと、もうそこには団長が待っていた。

 

「おかえり、楽しめた?」

 

「そりゃあもう! これでまたバリバリ働けます!」

 

 ソランより先に答えたエダの顔を見て、ティトはほっとした。

 自分が引っ張っていかなければならない大切な者達だ。

 なぜかティトも、エダの元気に押されてか、いつも出ないような言葉が出た。

 

「よーし、じゃあ頑張って今度はオスティアでも仕事を取るわよ!」

 

「がってんです!」

 

 隊員たちは団長とは思えない掛け声に顔を見合わせている。

 エダがまたアルマにちょっかいをかけに走って言った後、今度はソランがティトに歩みを合わせてきた。

 

「どうだった?」

 

「ええ、とても楽しかったわ。ありがとう」

 

 ティトの顔には笑顔が戻ってきている。たった2時間ぐらいの間に何があったかと不思議になるぐらい。

 

「なんか顔が違って見えるよ。さっきものすごく疲れてるみたいだったもの」

 

「自分の中で吹っ切れたところがあるみたい」

 

 二人は久々の笑顔を顔に湛えながら空へと羽ばたく。

 名残惜しそうに見降ろしていた白の街並みに別れを告げるその顔は、活気に溢れていた。

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