ファイアーエムブレム 紺碧のコントレイルⅠ・Ⅱ   作:宵星アキ

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前話のあらすじ

『閃電』の魔術師との戦いで意識を失ったままだったシャニーが目を覚ます。
彼女は激戦を思い出して自信を喪失していた。
何度ウッディが声を掛けても、なかなか霧の様に沈む瞳は昇らない。

そんな状態に彼女を陥らせてしまった罪悪感から、ウッディは彼女に剣を教えてくれと頼む。
だが、非戦闘員の彼に教える剣など無く、自身も苦労してディークから剣を教わったことをシャニーは思い出し、授かった教えを改めて胸に刻むのだった。


第2話 魔剣の囁き

 数日後、レイサはいつもどおり木の上で寝転がっていた。

 夜の仕事がメインである彼女にとって、陽の光は昼寝のために存在するようなもの。

 上位部隊はいつも外へ出払っていて、内部治安を守るために残っている十八部隊をはじめ下位部隊しかいないから実に羽が伸びる時間帯だ。

 

 だが今日は運が悪いことに、午後からの部隊長会議の為に多くの部隊が城に残っており、昼寝をするには騒がしい。

 そこへ、ウッディがいつもどおり部隊の予算表を回収しに来た。

 

「レイサさん、予算表はできてますか?」

 

 顔をもたげて覗いてみると、他の部隊の予算表を抱えた白衣の男性が自分を見上げている。

 予算の催促が来るということは、もう月も終りが近づいているということか。

 

「何言ってんだい。予算表ならあんたの部屋にいる奴が担当じゃないか」

 

「え、でも彼女は怪我で」

 

「怪我が聞いて呆れるよ。どうせ元気なんだろ? あいつ。ベッドでじっとしているとは思えないんだけどねぇ。腹減ったとかうるさいんじゃないの?」

 

「ははは……正解です」

 

「それみ。そんなんだったら事務仕事ぐらいベッドに座ってでもできるだろ」

 

 酷い事を言う人だと思いつつ、彼女のことをよく理解している人だとも感心して、仕方ないので部屋に戻ろうと背中を向けたときだった。

 ゾクっとする感覚。急に背中へ気配を感じて振り向いたときには遅かった。もう、レイサは自分の背後に立っている。

 

「あの……それ止めてください」

 

「え? 別に何もしてないけど。まぁいいや。あんた、シャニーを逃がすんじゃないよ。そろそろ脱走するから、きっと」

 

 苦笑いするウッディが部隊を去り、さぁもう一眠りと木の上へ跳躍してバンダナを顔の上に乗せ、寝息を立てようとした、そのときだった。

 

「たいちょー、手紙ッスよ!」

 

 今度はミリアに叩き起こされてしまった。仕方なく起き上がって天馬に乗るミリアから直接手紙を受け取る。

 その内容を読んでいると、今度は正門付近がやたらと騒がしくなってきたことに気付く。

 

「あれは……ユーノ様じゃないか」

 

 紫色の髪を揺す前天馬騎士団団長のユーノの姿が見えた。

 彼女には珍しく、お付も連れずに中央通路を通って城へ駈け込んでいく。

 

「もしや……誰かユーノ様にシャニーのことを喋ったな」

 

 レイサも前団長が城に来たとなると寝てはいられない。

 彼女はするすると木の幹を降りてきて、前団長の走り去っていった方向をうかがいながらポツリと漏らす。

 その独り言に、それまできょとんとしていたミリアが口元を抑えた。

 

「あれ、言っちゃいけなかったんスか?」

 

「あんたか!」

 

「うわあ、ごめんなさいッス! だって、シャニーは最近元気でやっているかって聞かれたものだから。前団長だし、別に隠す必要もないかと思って」

 

 レイサは頭にかぶせかけたバンダナを額に押し付けた。

 現団長であるティトは、ユーノが心配することを避ける為に、敢えてシャニーのことを報告していなかった。

 ユーノは今の混沌としたイリアの中心人物であるゼロットの妻。

 多忙な彼を支えつつ、自らもイリアの為にいろいろ動き回り、さらに育児もしなければならない彼女の役割は大きい。

 今でさえ負担が大きいのに、これ以上負担をかけさせたくないティトの想い。

 だが今日の郵便業務の担当だったミリアは、朝一番でエデッサ城を訪れたとき、ユーノにシャニーの話を聞かれて喋ってしまったようだ。

 先ほどのユーノの慌てぶりからするに、シャニーのところへ飛んでいったことは間違いない。

 

「まったく、あんまり騎士団外の者に団内の情報を流すんじゃないよ」

 

 反省しているのかいないのか、ミリアがペロッと舌を出して愛嬌を見せている間に、ようやくユーノのお付と思しき人物が2,3名、中央通路に姿を見せて城へ駆けていく。

 

「それにしても、よほど心配なんスね。あんなに走るなんて」

 

「まぁねえ。ユーノ様とシャニーは母子みたいなもんだからね」

 

 ミリアは事情を知らないからあまり意味を理解できてはいなさそうな顔をした。

 しかし、すぐに何かを思い出したのか再びレイサの名前を呼んだ。

 

「そういえば隊長、ニイメさんが心配してたッスよ」

 

「へえ、あの鬼婆がなんだって?」

 

 レイサは久々にニイメの名前を聞いた気がした。

 あのニイメが心配していると聞いて、どんな言い草をしていたのか気になった。

 

「あの左巻きのあんぽんたんはまた居眠りしているのかって」

 

 彼女にとっては何かくすぐったい。実にニイメらしく、憎たらしい言い方。

 最近あまり散歩に騎士団へ来る事が無かったからレイサも少し気にはしていたのだが、相変わらずの憎まれ口を叩けるところからすると元気なのだろう。

 家族のいなかった彼女にとって、ニイメは肉親同然の大切な家族。姿を見せれば説教ばかりだが、それが何か嬉しかった。久々に庵に行って、肩揉みでもしてやろうか。

 だが、ふと彼女の頭に不安がよぎる。ミリアがニイメの庵にも寄って話をしている。はっとした。

 

「ちょっとあんた! あの鬼婆に変なこと吹き込んでないだろうね!」

 

 こういうときはどうしてこうも素早いのだろう。

 ミリアはレイサが振り向いた時にはもうすでに向こうへ駆け抜けていた。

 彼女が視線から遠くなっていくに連れて、レイサは血の気が退いていくのが分かった。

 

「……まぁ、庵に行くのはまた今度にしようかな」

 

 

 

◆◆◆

 一方、医務室では元気な怪我人のせいで、ウッディは仕事が進まずにいた。

 ベッドの上でシーツを叩きながら、しきりに医者へアピールをする。

 

「ねーねー、もう大丈夫だからさ。いい加減部屋から出してよ」

 

 もう何回こうやってウッディに懇願しているだろうか。

 そのたびにウッディからは同じ言葉が返ってくる。何かを見てそのとおりに喋っているのかと思うほどに。

 

「ダメだよ。君は頭を何度も強打しているんだから。見た目は治ってるように見えても、頭のダメージは後に響くからね。もう少し辛抱しなよ」

 

 ウッディが首を縦に振ってくれないので再び膨れ面を作る。もう、体が動きたくてうずうずしているのだ。

 しかも今日は忙しいらしく、全然相手をしてくれないので暇で、暇で仕方がない。

 ツンとウッディから視線を外し、気を紛らわそうとしばらく外の様子を眺めていると、向こうでは同僚が槍の稽古をしている。

 いても立ってもいられない。彼女は立てかけてあった剣をウッディに気付かれないように手に取る。

 その途端、部屋に響き渡った鈴の音。猫のように全身の毛が逆立つ。

 よく見れば、鞘に鈴がくくりつけてあった。

 

「ダメだってば、シャニー。寝てろって」

 

 自分の行動が読まれてしまっている。

 仕方なく彼女は頭までかけ布団をかぶると、ベッドの中にもぐりこんだ。

 ウッディはそれを見て安心したのか、ようやく机のほうへ椅子を向けて、医務室らしい静けさが戻ってくる。

 そう思えたのも一瞬の事。ようやく訪れた静寂も、あっけなく破られた。

 

「ねぇ」

 

「今度は何」

 

「お腹すいた。なんかない?」

 

「……」

 

 なるほど、壊れた蓄音機とはよく言ったものだ。

 ウッディは、周りを見渡してみる。何とかあの言葉の発射口を塞がなければならない。

 ちょうど、机の上に時間がなくて食べられなかった朝食のパンが置いてある。

 彼は席を立つとまっすぐシャニーの方へ向かい、彼女が何か言おうと口をあけた瞬間を見計らってその口へパンを丸ごと押し込んだ。

 やっとのことで静寂を勝ち取り、向こうではシャニーが幸せそうにパンをくわえている。

 パンをくわえたまま外を見ると、何やらどこかで見覚えのあるはげ頭が光って見える。

 

「あひゃー、あいあひふひのひょーぢはん」

 

 パンをくわえたままもごもご。シャニーが何を言っているのかぜんぜん分からない。

 だが、シャニーがもごもご言っている間に、今度は廊下も騒がしくなってきた。

 その騒がしさはどんどんこの部屋に近づいてきて、そちらへ身構える前に開け放たれた扉の向こうから現れた女性の姿を一目見て、シャニーはくわえていたパンを落とした。

 

「ユーノお姉ちゃん?! どうしてこんなところに?」

 

 目を真ん丸にするシャニーの姿を見つけるや否や、ユーノはベッドに向かって走りこんできた。

 驚くシャニーの顔をユーノは確認するかのように抱きしめ、そして撫でる。

 だいぶ長い時間そうした後、ようやくユーノは妹に声をかけた。

 

「大丈夫だった? もう傷は疼かない?」

 

「もしかして、心配してエデッサからわざわざ来てくれたの? 嬉しいなぁ!」

 

 ここカルラエからエデッサまでは、天馬を使ってもそれなりの距離がある。

 姉の格好から察するに天馬で来た訳ではなさそうだ。

 

「大事なあなたがずっと意識がないって聞いたんだもの。でも、良かったわ。元気そうで」

 

 姉は本当に大事そうに頭を撫でてくれるので、シャニーも久々の長姉との再会に何のためらいもなく甘えて満面の笑みを浮かべている。

 ウッディは、二人に気付かれないようにこっそり部屋を抜け出す。

 外を出て廊下を中庭方向へ歩いていくと、どうもユーノのお付と思われる老紳士が医務室へ向けて走っていく。

 その後ろを、空色の髪を揺らして走っているのはティトだ。

 

「あ、ウッディ。ユーノ姉さんが来ているって本当なの?」

 

「ええ」

 

 彼女はとても焦った顔で問いかけてきて、事実を告げたら彼女の顔に不安が広がるように見えた。

 疾風のように駆けていった彼女と別れた後、ウッディは事務棟から中庭へ出てみる。

 そこから連絡通路を見てみると、今度は事務方が医務室のほうへ向かっていくのが見える。

 医務室を離れて正解だ。あれだけ多くの人間が駆けつけて騒がしくなっては、研究どころではない。

 

「それにして、ユーノ様の人望はすごいな。騎士団を離れても、あんなに人が動くんだ」

 

 彼は寝転んで陽の光を浴びながら、向こうに小さく見える十八部隊の様子を眺めていた。

 

 医務室では、ユーノが未だに頭を撫でていて、シャニーは姉に起こった事を説明していた。

 ユーノはここに来る前、事件のあった現場を確認してきた。白以外には何も色がない。生を感じさせない世界を。

 その世界で戦っていた妹に意識が戻らないと聞いた時は覚悟を決めた。

 だから、目の前で元気に話す妹が、今まで以上に尊く見えて仕方がない。

 

「まぁ。そんなこと」

 

「うん。恐ろしい奴だった。あたし、もうダメかと何度も思ったもん」

 

「よく守りきったわね。さすが十八部隊の副将さんってところかしら」

 

 ユーノは妹の成長を心から喜んだ。

 怪我をすることは心配ではあるが、それは騎士として避けて通れない道。

 それを恐れず仲間を守りきった妹が、ユーノには頼もしく見えた。

 

「ううん。あたし、全然ダメだなって思ってるよ」

 

 だが、妹から帰ってきた言葉は悲観的なものだった。いつも褒めてあげると喜んで自画自賛する彼女が。

 

「どうしたの?」

 

「だって、結局騎士団の仲間が来てくれたからアイツは撤退しただけで、あたしが倒したわけじゃないもん。あたしが負けたことに変わりはないよ。全然歯が立ってなかったし。なんか、凄い自信失くしちゃってさ。戦場でああいうのが出てきたら、どうすればいいのかなってずっと考えてた」

 

 妹が壁にぶつかっている。今まで同じ状況がシャニーに無かったわけではないはずだ。

 単に、昔のシャニーは今回のようには感じなかっただけのこと。

 動乱のときの彼女はあくまでも見習いであり、そして傭兵団の一番下っ端でディークという頼れる人間がいた。

 彼らがフォローしてくれていたおかげで、彼女にとっては何事もうまくいっていたように思えてしまっていた。

 

 だが、今は違う。彼女は叙任騎士となり、チームプレイの中でも自分の身は自分で守らなければならなくなった。

 おのずと自分の弱点が見えてきて、何をするべきなのかが明確になっていく。

 今まで挫折なんていう挫折は経験してこなかった。

 だから余計に、自分の力では太刀打ちできないものが現れたとき、どうすれば良いかが分からない。

 

「今の状態じゃ、イリアの人たちを守り切る事なんて出来ないよ。でも、どこをどうすれば良いかが全然分からないんだ。またアイツが襲ってきたらと思うと寝られない。あたしには、無理なのかな」

 

 シャニーには珍しい不安げな瞳はユーノも経験した瞳だ。

 彼女も幼い二人の妹を養う為に死ぬ気で己を磨いた。

 どう磨いても、ぶつかっても倒れない敵が現れたとき、堪らずに団長へ質問をぶつけた。今のシャニーがしているように。

 

「どうしたの? あなたはいつも言っていたじゃない。無理とか、不可能とか、そんなのは口にしちゃいけない悪魔の呪文だって」

 

 見習い修行に出る前から、口癖のようにシャニーが周りに言っていた言葉だ。

 その言葉のとおり彼女は諦めることなく努力して、今がある。

 

「シャニー。結果を急いではいけないわ。焦っても自分を苦しめるだけよ。自分を信じて、できることを一個一個確実にこなしていくことが、遠く見えて実は近道なのよ」

 

 言われていることは理解できているようだが、シャニーはどうも納得できているような顔ではない。

 

「それにね、力でなぎ倒す事は騎士として相手を倒そうと考えるとき、その方法としてはほんの一部にしか過ぎないのよ。それどころかあまり良い方法ではないわね」

 

「え……」

 

「今回も貴女は仲間と協力して敵を追い払ったのでしょ? それで良いんじゃないかしら。戦いは何も一人でするものではないわよ」

 

 どこかで聞いた覚えのある言葉。かつてディークに指摘された事と同じ内容だった。

 戦いは一人でやるものではない。例え天才が一人いたとしても、人の輪に勝るものは決してない。

 これもかつてエトルリア軍の軍師が伝えた詩であった。

 

「まだ貴女は分からないかも知れない。でも、覚えておいて。一人ひとりの戦闘能力が高い事に越した事は無い。でも、もし貴女が部隊の長に立った時、何でも自分ひとりで収めようとしない事。皆の力を上手く引き出してあげる力こそが、騎士として本当に要求される力であると言う事を。その為には、戦うことだけが全てでは無い事を知るべきね」

 

 シャニーははっとした。姉の目が、いつもの優しい目とは少し違うことに気付いたからだ。

 今の姉は、姉としてではなく、騎士団の大先輩として自分を叱ってくれている。

 大先輩の言うことを黙って聞く。自分の気持ちがお見通しであるに違いない。

 

「貴女は確かに強い。それは貴女の今までの努力の賜物。これからも自分の感覚を信じて鍛えていけば、もっと強くなれるわ。でも、今の貴女に欲しいのはイリア騎士としての今以上の精神。いつも心に言い聞かせなさい。一人で戦ってはいけないと」

 

「なんで……そこまであたしの考えてる事が分かるんだろう。不思議だよ」

 

 先ほどから分かってはいたが、ここまでぴしゃりと自分の思っていることと同じ事をちょっと話を聞いただけで分かってしまうなんて、なんて凄い事だろう。

 もう目が丸くなって収まらない妹の顔を見て、ユーノは笑って質問へ答えてやった。

 

「簡単なことよ。私も同じことで悩んだのだから」

 

『伝説』の二つ名を持つほどに有名で、強く、聡明で包容力もある。

 未だに人望厚い彼女が、自分と同じ事で悩んだというのだ。シャニーにとっては意外だった。

 だが、やはり姉なら、前団長なら自分の悩みを全て聞いてくれるだろう。

 そして、その悩みに何かしらの答えを出してくれるだろう。

 彼女は怖くて先ほどウッディには言えなかった事を、ユーノに打ち明けることにした。

 

「あのね、お姉ちゃん。聞いてもらいたいことがあるんだ」

 

「どうしたの?」

 

 シャニーの手が震えている。何かよっぽどの事があるのだろうと、なかなか声が出てこないシャニーを優しく撫でる。

 

「あたしね、この前の戦いの時、イリア騎士の誓いに従って、剣を抜く前にこれがイリアの民の為なのか考えてから抜いたんだよ。その気持ちを確認しながら戦ってた。……途中までは。でも……」

 

「でも?」

 

「でも、途中からそんな事、どうでも良くなってた。相手を殺す事しか考えられなくて、相手が動けなくなるまでぐしゃぐしゃにしてやりたいって手が剣を離せなくなって……」

 

 シャニーは当時のことを思い出したらしく目が落ち着かない。手だけではなく体が震えて冷や汗も見て取れる。

 自分の制御ができなくなって自身に怯えていた。

 もちろん、あそこで制御できない部分が表に現れなければ、殺されていた事は間違いない。

 それでも、まるで自分の意識とは別に指揮権を持つかのごとく振舞う体に覚えた恐怖が、脳裏に焼き付いて離れない。

 その事実に、ユーノはすぐには返す言葉を見出せなかった。

 

「聞こえてきたんだ。あたしの声が、あたしの中から。イリアの民を助けたければ、私の力を使って目の前にいる魔道士を殺せ、殺せって。そのうち、その声だけしか頭に入らなくなってた」

 

「……」

 

「あたし、イリア騎士失格だよね。……もう、どうして良いか……分からないよ……」

 

 とうとう、ここまで我慢してきた悔しさの塊が堰を切ったように溢れ出してきた。

 自分の中にいたものの恐ろしさ、その自分を制御できない悔しさ、イリア騎士として情けない振る舞いをして、今こうして無様な姿を晒す虚しさ。

 

 自分のイリアへの気持ちは所詮この程度のものか。

 イリアの為と取った剣が、ただ欲望のまま血を求める魔剣だった事が、シャニーにとって最も情けなくそして自身を許せなかった。

 だから、ルシャナにもウッディにも、誰にも話せなかった。

 何とかして、この感情を押さえ込む方法を見つけなければ、いつか自分の刃は仲間へ向く。

 何があっても防がなければならないのに、どうしたらいいかまるで分からない。

 そのままシャニーはすすり泣き続け、ユーノはずっと妹の背中をさすっていた。

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