ファイアーエムブレム 紺碧のコントレイルⅠ・Ⅱ   作:宵星アキ

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家族と築き上げた『三誓』を手にしたシャニーは団長室へと向かう。

騎士団へはじまりの時を知らせ、新しい空へと飛び立つために────


第Ⅰ部 最終話 イリアの礎たれ

 ゆっくりと、それでいて力強く、まっすぐと前を向く眼差しが一歩、一歩と団長室へと近づく。

 半年前、怒りに身を任せて走り抜けたこの廊下。その廊下を、仲間と共に手に入れた誓いを握りしめてしっかりと歩いていく。靴底が廊下を叩く音がどんどん近づいて、十八部隊の始まりの時を迎えようとしている。

 色々あったこの半年を思い出しながら歩く道のりは、星の軌跡のごとくあっという間に運命の扉の前まで辿り着いた。

 

(部隊長として……十八部隊としての最初の報告だ)

 

 今まで重く、圧し掛かるように見えてきた団長室の扉。だけど今日はどこか今までより明るく、迎え入れてくれるかのよう。

 

「第十八部隊、部隊長シャニーです」

 

 自分のことを部隊長と呼ぶのは今でもむず痒い。おまけに、この扉の向こうには一番近しい姉がいるのに。

 

「どうぞ」

 

 今迄よりも声が優しい気がする。部屋に入ると姉はこちらを見ていた。いつもは書類を処理していて視線は下を向いているのに。

 早く姉に十八部隊の想いを聞かせてあげたい。シャニーは吸い込まれるように団長の座る机の許まで歩いて行った。

 

「シャニーさん、部隊長就任おめでとう。これからもよろしく頼むわよ」

 

 あくまで部下としての扱い。当然か。でも嬉しい。姉から労いの声と共に頼りにしていると言ってもらえたのだから。自分たちがやってきた事、悩んできた事、そして導き出したもの。それらを認めてもらえた気がして。

 

(いや、まだだ。これから、認めてもらうんだ)

 

 手にしてきたものをぎゅっと握る。

 

「はい。まだどういう事をしようって具体案は無いけど、あたし達の進む道はあたし達なりに答えを出してきたつもりです」

 

 一年前はお互いに平の制服だった。それが今、姉は団長の、そして自分は士官の服を着て、共に幹部として騎士団の中にいる。自分なんか、去年は見習いだったのに。

 その自分を信じて大抜擢してくれた姉の期待に応えたい。まっすぐに姉の目を見つめ、しっかりとした所作で自分たちの『三誓』を手渡す。

 イリアの礎となって戦っていく覚悟を記したつもりだ。きっと姉は頷いてくれるはず。

 

「そちらに座って、少しお話ししましょう」

 

 中に記されていた誓いをじっと見つめていたティトは何も言う事はせず、手でソファを指してシャニーを誘った。

 今まではテーブルを挟んで対面していたが、今日の彼女はシャニーの隣に腰掛けて、心配そうに体を摩り始めるからシャニーもびっくりして背筋が伸びた。

 

「体は大丈夫なの? 賊討伐で怪我をしたって聞いたけど」

 

 あっと口が開く。姉の顔が、机に座っていた時に見せていた厳しい団長の顔ではなく、ちょっと前までいつも見ていた姉の顔に戻っていた。

 ずっと、ずっと、自分たちが成長する姿を見つめながら傘になってくれた姉は疲れ果てていた。

 

(お姉ちゃんを早く安心させてあげたいな)

 

 甘えたいけれど、自分を見下ろしてそれをぐっと堪えた。もう新人では無いし、ただの正騎士でもない。姉が喜ぶのは、きっと士官として凛とする姿だ。

 

「う、うん! まだ少し痛むけどへーき。部隊長だしね、泣き言言ってられないよ」

 

「ふふっ、あなたも半年で大分成長したみたいね」

 

 本当に成長してくれて、ティトは報われた気持ちに包まれていた。

 入団式の日に怒鳴り込んで来た時は上手く行くか心配だった。部隊長を追い出したと聞いた時は卒倒しそうになったし、正体不明の敵に襲撃されて意識が戻らないと聞かされた時は地獄へ突き落とされたようだった。

 それでも、団長選出戦で十八部隊を引き連れて現れた妹の姿はどこか凛々しく見え、誓いを口にした先月はもう一人前の顔だった。

 少しずつ、確実に成長してきた妹が誇らしく見える。だが、普段なら誉めれば調子に乗るシャニーの顔には困惑が浮かんでいる。

 

「どうしたの?」

 

「あ、ううん、団長に褒められるなんて思ってなかったから」

 

 そんなに彼女のことを叱ってばかりだっただろうか。互いの顔に苦笑いが浮かぶ。

 だが笑い声はすぐに消え、部屋には静寂が戻ってきた。嫌な静寂ではない。心を落ち着かせてくれる静寂。テーブルを見つめるシャニーの口元は柔らかく笑みを湛えている。

 

「失敗ばかりの半年だった」

 

 今までを思い出すように漏らす。何も知らない自分がする事はいつも空回りで、仲間を傷つける事だってあった。何度戦っても剣を折られ、自分は無価値なんだと道を見失って……。

 

「失敗ばかりのあたしだけど、みんなあたしを信じてくれた。だから、やってみようと思う」

 

 悩んで、もがいて、一人では抜け出せずに酒にも手を出して。それを引き上げて助けてくれた仲間は、信じてついて行くと言ってくれた。

 半年と言う長い時間を考えることに費やし、信じてくれる者の為に戦う事を気づかせてくれた家族。彼らの想いを皆に伝える事こそが、部隊長として為すべき事なのだと決めていた。

 

(あたしがすべき事は、信じて託てくれる人の想いを訴える懸け橋になることだ。絶対にやって見せる!)

 

 その決意の瞳は、半年前の自信だけ一人前の騎士には無いものだった。

 

「良かったわ。これは貴女にしか任せられない仕事だったから」

 

「え?」

 

「どの色にも染まっていないイリアを美しく染める仕事よ。既に染まってしまった人では、それは出来ない」

 

 戦後のイリアは、未だ整備が行き届いていない部分も多く、旧騎士団勢力は大きく変貌した。

 まだ新しいイリアは色を持っておらず、白と言う混沌が未だ雪のごとく覆いかぶさっている。そこに新しい色を付けていくものが必要だった。

 民は傭兵に出て守りが手薄な中、心の拠り所を求めている。十八部隊には彼らの色になって欲しい。ティトはそう願っていた。

 

「これでようやく、私も安心できるわ」

 

 妹はしっかりと彼らの誓いを認めて持ってきた。受け取った『三誓』には、彼らの決意がしっかりと刻まれていて、ティトを安心させるには十分なものだった。

 そしてシャニーは、自身の理想を心の真ん中にしっかり立てて自分の口で語った。これなら、後は行動し結果が見えて来るまで待てば良い。

 これからしてやるべき事は、彼らがレールを敷こうとするのを、後ろから支えてやる事。ほっとして思わず零してしまった言葉を飲み込もうとしても遅かった。

 

(やっぱりお姉ちゃん、決まったのかな。エトルリアの……クレイン様との話)

 

 聞かずにはおれなくなって、シャニーは顔を近づける。

 

「あの……これは妹の言葉として聞いて欲しいんだけどさ……お姉ちゃん、結婚するの?」

 

 再び部屋を包む静寂。今度の静寂はちょっと重い。これでもまずまず遠慮を込めて聞いたつもりだったのだが、いけない所を突っついしてしまったかとシャニーは内心後悔した。

 

「……誰から聞いたの?」

 

 おまけに追求するような静かな口調で姉が問うてくるものだから、どうやってうまく返そうか頭がフル回転する。

 

「そ、それは……。ウッディだけど、ウッディが誰から聞いたかまでは知らない」

 

 明らかにウッディを庇おうとしていることは分かる。相変わらず嘘をついたり誤魔化すことがヘタだ。

 妹とこうして二人きりで話ができる機会はそうない。ましてこれからシャニーは城を空ける時間が増えるだろう。

 もう、今更隠せる相手でもない。ティトは大きく深呼吸するとシャニーの手を取った。

 

「絶対言わないって約束できる? 天井にいる人も」

 

 天井の人……言われるまでシャニーは気づいていなかったようで、観念するように天井の板が外れて下りてきたレイサの姿に、目を真ん丸とさせて驚いている。

 この二人にならもう教えてもいい。ティトは妙に緊張しながら静かに口開いた。

 

「私は来春、退団するわ。クレイン様の……リグレ侯爵家に嫁ぐために」

 

「ホント?! やったぁ!!」

 

 噂として知っていたはずなのに、それを本人の口から教えてもらえると何か体の中からわっと嬉しさが湧き上がって、自然に両手が頭上に突き上がって歓喜が漏れた。

 ずっと苦労してきた事を知っているから、姉の幸せを聞くととても心が清々しくなってくる。ぱっと明るく笑ったシャニーは、思わずティトの手を取ってはしゃいでしまった。

 

「おめでとう! 良かった、本当に本当なんだね! ああ、嬉しいなぁ」

 

 まるで自分の事の様に喜び祝ってくれる妹に、ティトの顔にも自然と笑みが零れた。本当に、人を笑顔にする事が上手い。今までも何度救われてきた事か。今も満面の笑みを浮かべながら、抱き着いて来て涙まで浮かべている。

 心が雪のように溶けていくような温かさ……。だが、だからこそ後ろめたさもあった。

 

「ごめんなさい、シャニー。貴女達に仕事を押し付けてしまって」

 

 志半ばで団長を降り、イリアを去る。それがどれだけ無責任な事かといつも悩んできた。愛する人の許へ行きたい気持ちと、故郷の再建を託してくれた人々の期待と。そして、騎士団の中でもなかなか上手く行かない統制と。幾重にも板挟みにされて来た。

 その状態で妹たちに後を任せることへ罪悪感が重く圧し掛かる。だが、それから救ってくれたのは今回も妹だった。

 

「ううん、あたしも分かるよ。会いたくても遠くにいて声を聞けない辛さ」

 

 苦しみを理解して声をかけてくれる事がどんな慰めよりも癒しになる。だが、ティトは困惑の眼差しをシャニーへ向けた。

 

「貴女が……? もしかしてこの前の休暇って」

 

(あっ、ヤバッ!)

 

 シャニーをそんな気持ちにさせる相手がいるとは初耳だった。もしそうなら、あの時は可哀相な事をしてしまったと思ったのだが、シャニーは首をぶんぶん振って否定してきた。

 

「あっ、いえ、その何でもないよ。自分がお姉ちゃんの立場だったらって思っただけ。それより、もう具体的にいつって話は決まってるの? 結婚式いつ?」

 

 無理やり話題を変える。ティトはまんまと話題を変えられたことにしておいた。妹だって年頃だから、そういう相手がいたっておかしくはない。一体誰なのかは気になるところだが、言いたくなさそうなのでこれ以上の詮索は止めた。

 うまくバレずに済んだと胸を撫で下ろしている妹の仕草は可愛く見えた。

 

「そこら辺の話はまだ決めてないの。まずはクレイン様の気持ちにお答えしないと」

 

 正式にクレインへは回答していない。だが、そろそろ答えないと……その繰り返しでここまで来てしまった。

 応えたいのだが、多忙を極める毎日ではとてもエトルリアに向かう時間の都合をつけられない。手紙ではなく、しっかりと相手の顔を見て伝えねばなるまいと心に決めていた。

 

「へへっそうなんだ。じゃあ邪魔しちゃ悪いね。仕事はあたしたちに任せて、頑張ってよ!」

 

 着ている服は変わっても、シャニーはやはりシャニーだった。朗らかな笑顔で人を幸せにしてくれる。

 自分がいなくなった後、彼女が大丈夫かティトは心配していた。十八部隊の部隊長として、直接矢面に立つことになる。

 この笑顔は誰をも笑顔にして彼女を守る力にしてしまうが、明確な悪意を持った相手にはそれは通用しない。彼女を守る様々な力が悪意を払ってくれることを祈った。

 

「シャニー。ありがとう。これからもお願いね」

 

『三誓』を受け取り、ティトはさっと手を差し出した。さん付けではなく、いつも通りに名前を呼んで。

 

 ────もう、何もあなたに注文を付けることは無い

 

 そう言われた気がしてシャニーの瞳が揺れる。

 

 ────任せて! 

 

 独り立ちの喜びと不安。決意を見せつけるようにしっかりとティトの手を握り返し、親指を立てながらニカっと笑って彼女は部屋を出て行く。その背中をティトはレイサと共に見つめていた。

 

「ふふっ……あの子の士官服姿を見る事になるなんて」

 

「自分で任命したんだろ? 良かったじゃないか。元気みたいで」

 

 ティトには伝えないで置いた。ここに辿り着くまでにシャニーがどれだけ毎日悩んで、もがいて、嘆いては紅涙を絞っていたのか。その彼女を仲間たちがどれだけ支えて励まし続けてきたのか。

 今が元気なら、ティトに知らせるのはそれだけでいい。あっという間に終わるイリアの夏のように、一人の新人の成長をずっと傍で見守ることが出来た喜びは、自然とアサシンにも笑みを浮かばせ陽が顔に差す。

 

「これで私もひとつ肩の荷が下りました」

 

 心から安堵したかのような静かだが澄んだ声。それは本来のティトの声。シグーネの配下であった時の、本当の声。

 団長としての威厳、騎士団としての使命感。それらに縛られて作る声ではないものが、隙間から飛び出してきたかのように漏れた。

 

 ────新人を傭兵で終わらせない

 

 少し当初描いていた事とは違うが、むしろ最善となった気さえする。

 シャニー達が自分たちで見つけ、選んだ道。その軌跡を見つめ、自分がいるうちはできる限り守ろうと思った。イリアの冬に咲いた新しい健やかなる花々を。

 

「何だい、まだ若いのに」

 

 ティトの声に驚きながらもその言い草にレイサは笑った。ティトは団長と言ってもまだ十九歳だ。自分より七つも下だと言うのに。

 

「叩かれたり、批判されたりする事を力に変えて跳ね返してやろうってやってきましたけど、最近は少し……耐えられなくなってきちゃって」

 

 団長と言う鎧を脱いだティトから漏れ出した言葉は、顔こそ笑っていても弱弱しかった。笑顔の中にも滲んだ苦労。笑って口にするからこそ、その苦しみがどれ程だったかと想像させる心をより重くさせる。

 変革に対して抵抗する者がいる事は仕方ないことだ。だが、ティトの場合は相手が悪すぎた。おそらく、これから同じ事を十八部隊長も思い知る。

 

「あと少しだけど、支えてもらいなよ。自分が蒔いた種から咲いた花たちにさ」

 

 凛としてすくっと咲いた花から出でた種たちが、彼女の周りで花を咲かせだした。

 もう彼女は独りではない。困ったときに相談できる同士ができたのだ。まだまだ、彼らを想って自身は萎れるなんて時ではない。花が咲いたからこそ、一層に力強く咲いてもらわなければ。

 静かに頷いたティトが再び瞳を開いた時、そこには普段の団長がいた。

 

「レイサさんも彼女たちをお願いします」

 

 さっと差し出された手。シグーネも何かを頼む時、よくこうして差し出してきた。姉に信頼されている、そう感じさせる手を。

 彼らが勝手に育っただけ。そう言いたかったが、この団長にはそう言ってやるよりも頷いてやる方がいい。

 

「ああ、やれる所迄はやってみるよ。あいつが背負ってるものは人と違う気がする。常に自分だけじゃない何かを背負ってる気がしてさ、あいつ」

 

 あの若い部隊には、一人くらいは苦言を呈する嫌われ者がいないと、間違った方向へ進んだ時に修正が利かないだろう。多くを背負おうとする所は姉妹でそっくりだ。

 部隊長は言った、あなたは家族だと。ならば、家族を守る為に出来るその一切を引き受けよう。

 覚悟はティトに改めて手を差し出されずとも決めていた。それが今、しっかりと握られたことで覚悟は誓いへと変わった。

 

 ────愛された分、自分もまた愛そう

 

 

 

◆◆◆

 廊下を叩くブーツの音が大きくなってくる。あの出口から差し込む光の先に何があるのか、楽しみにするかのように足取りはどんどん早くなる。

 それを待っていたように、柱の陰から出てきた存在がシャニーの足を止めた。

 

「顔つきが戻ったな。いや、変わったと言うべきかな?」

 

 何かにとりつかれたように重かった表情はそこにはなかった。真っすぐ見据える顔には陽が差して、道をひとつ見つけて影を切り払った瞳が活き活きと見つめてくる。

 自分の知るライバルがそこに居て、アルマは嬉しそうに声をかけた。

 

「だが、他の部隊の眼は冷たいぞ? 彼らから見たらお前たちは給料泥棒のままだしな」

 

 ────第一部隊に来い

 

 アルマの瞳はそう伝えてくる。十八部隊にいる間は永遠に評価されることは無い。ライバルがそんな場所にいる事がアルマには許せなかった。

 でも、シャニーは静かに瞳を閉じてふっと笑った。それは半年前の自分へ向けてのもの。そしてそのまま、ゆっくりと首を横に振った。

 

「最初は上の部隊に行くことばかり考えてた。色々陰口を言われてるのも知ってたから。だけど結局、それは自分の事しか考えてなかった。何のために第一部隊を目指すのか、ろくに考えもしないでさ」

 

 昇任だけを考えてめちゃくちゃを通したこともあった。その結果得られたものはなんだ? 

 十八部隊がくれた考える時間は、半年前の自分が抱いた道と全く反対の事を行くべき道と示してきた。そして、その道を共に行くと誓いを立てて背を守ってくれる仲間もできた。

 目の前に心から進みたいと思える道ができた今、もう団長の一番隊への未練など欠片も無い。自分達の手でイリアに未来を切り拓く、その舞台を掴み取ったのだから。

 

「あたしはアルマとは違う。あたし達の誓いはみんなとは違う。だけど、それでいいと思ってるよ」

 

 戦場での名誉でも、剣の腕でも、騎士団の中での序列でもない。求めているものはひとつだけ。

 決して騎士団の中では評価されないかもしれない。だが、自分たちで見つけ、自分たちで拓く道。『護りたいもの』が喜んでくれるその道を行くことをためらう理由にはならなかった。彼女の瞳は剣に映る光のように決意を湛えている。

 

「行く道は違うかもしれない。けどさ、一緒に頑張ろうよ。あたしだけじゃ、きっと出来ない事もあるだろうしさ」

 

 さっと差し出された手。同じ夢を抱く者同士、背を向けていても、居る場所が違っても、見つめる先はきっと一つ。そう伝えて来る様な青い瞳にしっかりと見つめられて、アルマは柱から身を起こして親友の手を取った。

 

「ふっ、一緒にか。そんな時が来るといいな。私は同じ道を共に歩いて欲しかったがな」

 

 十八部隊に明確な任務ができた以上、これから顔を合わせる機会は更に減るだろう。ライバルとは毎日顔を合わせて切磋琢磨したかった。

 それでも、シャニーは静かに首を振ると握っていた手を解く。自身の居るべき場所を確かとした目は柔らかくも強く、鮮やかに澄んでいた。

 

「イリアの礎たれ。あたしは、前だけ向いて信じる道を進むよ。大事な家族が支えてくれるから」

 

 『三誓』でライバルにはっきりと己の道を示すと、シャニーは仲間の待つ光の先を目指して歩き出す。力強く歩いて小さくなっていくライバルの背中を、見えなくなるまでアルマはじっと見つめていた。

 

(私も、彼女に示さなければならない)

 

 少々、後れを取ったが負けるわけにはいかない。そう誓う彼女もまた新たな一歩を踏み出す。

 違う道を歩みだし遠くなる背中は、己の理想を追求し続ける決意を互いに示すかのように力強かった。




これにてⅠ部は完結です。
ご愛読いただきましてありがとうございました。

引き続きⅡ部へ進んでいきたいと思います。
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