ボーダー唯一の男性オペレーターは今日も忙しい   作:マサフ

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お久しぶりです


昴と二宮隊⑤

「ふう…」

 

 自動販売機で購入したコーヒー片手に一息ついているのは風間だ。ランク戦を終え、チームでの反省会も済ませて解散し、ひと段落ついたところだ。

 

「おー風間、お疲れさん」

「お疲れ様です」

 

 そんな風間に同じくコーヒー片手に話しかけてきたのは東であった

 

「お互い二宮隊にやられたな」

「そうですね」

 

話の話題となったのはラウンド5、ラウンド6、共に破竹の勢いで勝ち進んでいる二宮隊のことであった。東隊はラウンド5で、風間隊は数時間前のラウンド6にて二宮隊に敗北したのだ。

 

「正直ラウンド4が終わった時は今シーズンの二宮隊にもう勝ちの目はないと思ってました。」

 

 ラウンド4にて部下の歌川を誤って狙撃したことで鳩原が調子を崩していたことを聞いていた風間はそう話す

 

「まさかこんなに早く調子を取り戻すとは…」

「そうだな」

 

 コーヒーを啜りながら東も話を続ける

 

「俺も二宮と桐山の二人に軽くアドバイスはしたが、鳩原が調子を取り戻すのは早くてもラウンド7か8くらいだと思ってたんだがなぁ」

 

 久々に読み外したよと苦笑しながら東はつぶやいた

 

「鳩原が想像より早く再起したのも驚きましたが、俺は鳩原の戦い方に驚かされました」

「ほう?」

 

 東は話を続けるよう促す

 

「人が撃てないから武器を撃つ。発想としては悪くないですが正直俺は実戦で使えるようなものではないと思ってました。」

 

 しかしと風間は続ける

 

「機能することであそこまで脅威となる。恐ろしいものです」

 

 そう話す風間の表情は非常に悔しげなものだった

 

「そうか…それで次に向けての対策は考えたか?」

 

 そんな風間に東はこう尋ねる

 

「ええいくつか既に考えました」

「ならいいじゃないか、次の試合では逆に目にもの見せてやれ」

「…ええもちろんそのつもりですよ」

 

 東の激励に風間も好戦的な笑みで返した。

 

「ただ、」

「ん?」

「おそらく今シーズンはもう二宮隊と当たることはないかと」

「ああ……そうだな」

 

 ラウンド6でぶつかってる以上、残り2試合で風間隊と二宮隊がぶつかる可能性は極めて低い。そのことに気づいた東は申し訳なさそうな神妙そうな何とも言えない表情を浮かべるしかなかった

 

 

 

 ところ変わってここは二宮隊の作戦室。ちょうどラウンド6の試合を終えたばかりだ

 

「皆さんお疲れ様です!本日も大勝利!」

 

 オペレーターの昴は勝利で試合を終えたチームメイトを称えながら迎え入れた

 

「あ、鳩原さん調子はどう?大丈夫…?」

「うん大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

 

 鳩原は軽い笑みを浮かべてそう返した。

 ラウンド5以降、二宮隊は絶好調だった。特に鳩原の活躍は凄まじいものだった。

武器を撃つスナイパーという今まで存在しなかったスナイパーの存在を前にB級上位のチームたちも苦戦を強いられ、武器が壊れたところを二宮、犬飼、辻の三人による攻撃の前になすすべなく負けていくのだった。

 

「あまり浮かれるなよお前たち」

 

 勝利を喜ぶチームメイトに二宮はそう釘を刺す

 

「そろそろほかのチームも鳩原に対する対策を講じてくるだろう。まだ2試合残っているんだ、はしゃぐにはまだ早い」

 

 そんな二宮にえ~と言いながら話したのは昴だ

 

「二宮さん、そうは言っても鳩原さんの頑張り見てましたよね。あれを見せられたら少しははしゃぎたくなりますって。なあ辻ちゃん」

 

 突然の呼びかけに思わず「俺?」という表情を見せつつも辻は返答する

 

「確かにそうですね。鳩原さんのおかげで俺たちも戦いやすくなりました」

「だね。ほんと助かるよ。ありがとね鳩原ちゃん」

 

 辻に続いて犬飼もまた言葉を続けた

 

「うん、役に立ててるならよかったよ」

 

 鳩原もはにかみつつ返答した

 

「ほら二宮さんも何か言ってくださいよ~」

「…ちっ」

 

 二宮の舌打ちを聞いて思わず昴は調子に乗りすぎたかと身構えるも

 

「おい鳩原」

「は、はい」

「よくやった。次も頼んだぞ」

 

 非常に短いながらも二宮もまた鳩原に対して賛辞の言葉を口にした

 

「はい、頑張ります」

 

 鳩原もまた簡潔ながらも満足げな表情でそう返すのだった。

 昴たちも思わず微笑ましい表情で二人の様子を眺めていると「あ、そうだ」と犬飼が話だした。

 

「桐くん、そんなに褒めてくれるなら何かおごってよ」

「へ?」

 

 犬飼はにやけ顔でそう口にする

 

「俺ぶどうジュースね」

「お前な…貧乏人にたかるな」

「じゃあ俺はコーンスープでお願いします」

「辻ちゃん?」

「えっと、シジミ汁で…」

「鳩原さん?」

「ジンジャーエール」

「二宮さん!?」

 

 ものの見事に全員にたかられた昴だった。

 

「とほほ…」

「ほら持ち運びくらいなら私も手伝いますから」

 

 結局おごることになった昴と手伝いについてきた氷見の二人が自動販売機を目指していた

 

「それにしても鳩原先輩が元気になって本当によかったです。」

「うん、それは本当に嬉しかったよ」

 

 氷見も安心した表情でそう告げた。チームでの話し合いが始まるまで鳩原のことを度々励ましに行ってた氷見からしても鳩原の活躍は嬉しいものだった。

 

「ところで氷見さん、次のラウンド7のこと覚えてる?」

「覚えてるにきまってるじゃないですか。はぁ…」

 

 氷見は途端に不安げな表情となって思わずため息をついてしまう。この少しおバカだけどオペレーターとしては頼りになる先輩から突き付けられた難題は最近の氷見の悩みの種だ

 

「やっぱり不安なのは収まらないか」

「当たり前ですよ…」

「まあそんなこともあろうかと」

 

 昴はそう言うと懐からとある紙包みを取り出して氷見に渡した。氷見は訝し気な表情をしながらもそれを受け取る

 

「…何ですかこれ?」

「まあお守りみたいなものだと思ってよ。本番中にどうしても不安になったらそれ開いてみて」

「はあ…わかりました。正直このお守り自体が不安ですけど」

「もう少しオブラートに包んでくれてもよくない?」

 

 そんな会話をダラダラ続けながら二人は自動販売機の前にたどり着くのだった

 

「あ、私は飲むヨーグルトでお願いします」

「氷見さん?」

 

 

 

 

 そして数日後、ラウンド7当日

 

「大丈夫…いつも通りやればいい。大丈夫…」

 

 本番を控えた氷見はモニターの前で苦悶していた

 

『ひゃみちゃん、そう気張らなくてもいいんだよ』

 

 それを察した犬飼はすぐさま無線でフォローを入れた

 

『仮に失敗しても桐くんだって怒らないし、俺たちだって……誰も怒らないよ』

 

 自身の隊長が思い浮かんだ犬飼は一瞬言葉を詰まらせたもののすぐさま励ましの言葉を加える。ちなみに当の隊長はどこ吹く風という様だ

 

「はい…ありがとうございます犬飼先輩」

 

 とはいえそう簡単に緊張が収まれば氷見も苦労はしない。どうしようかと思い悩んでると氷見はあるものが思い浮かんだ

 

(…!そうだ、あれがあった)

 

 氷見はポケットにしまっていた昴からのお守りを取り出した。何が入ってるのかは全く見当がつかないが緊張が紛れるならばなんでもいい。そう思って氷見は封を開けた。

 

「これは…」

 

 中に入っていたのは一枚の写真。その写真を見た氷見は呆けた表情をしてしまう

 

「…は?」

 

 それもそのはず。そこに写っていたのは二宮隊の隊服、つまりスーツを着た烏丸の姿であった

 

「え?は…え?」

『おいどうした氷見』

 

 動揺が止まらない氷見に二宮も思わず疑問を投げかけた

 

「い、いえ!何でもありませんので!!」

「…そうか」

 

 語気を強めて発言する氷見に二宮も黙り込むしかなかった

 

「あのアホめ…!!」

 

 昴からの思わぬ贈り物に顔を赤くしながら氷見はつぶやいた。そんな中ふと封の中を見るともう一枚の紙が入っていた

 

「こっちは…」

 

 そこには短めの文章が書かれていた

 

【この手紙を見てるってことは氷見さんが本番前でとても緊張してるってことだと思うので、気を紛らわすためにも京介のスーツ姿ブロマイドを入れときました!さらにもしこの試合でうまくオペをやり通せたらご褒美に俺が氷見さんと京介の食事会をセッティングしてあげます!あ、もしその食事会が緊張するようなら俺も同席するので。というわけで氷見さん、頑張ってください!俺も教えられることは全部教えたし、氷見さんもそれに全部応えてくれたから心配することは何もないよ!ファイト!!】

 

「……はぁ~~……」

 

 手紙を読み終えた氷見は思わず大きなため息を吐いてしまう

 

「あのアホ先輩は私を応援したいのか緊張させたいのかどっちなんです…」

 

 昴への文句を口にしながらも気が付けば氷見から緊張は消えていた

 

『ふふ…ひゃみちゃんもう大丈夫そうだね』

 

 無線越しでそれを聞いた鳩原はそう口にした

 

「あ、鳩原先輩。すいません…もう大丈夫です」

 

 氷見の言葉を聞いた二宮と犬飼も言葉を発した

 

「ならさっさと始めるぞ氷見」

「ええ、さくっと終わらせましょ」

 

 二人の言葉を受け氷見も気合を入れてモニターに向かい合った

 

「はい、よろしくお願いします」

 

「「「了解」」」「りょ、了解っ!!」

 

「「「「……」」」」

 

「あー、まだ一人緊張してるのがいたね…」

「す、すいません!」

 

 初めての女性オペレーターとの試合を前に辻は上ずった声でそう謝罪したのだった

 

 

 とはいえ、いざ試合が始まると氷見の的確なオペレートとチームの巧みな連携により二宮隊はラウンド7でも無事勝利を収めたのだった。

 

 そして試合を観戦していた昴は拍手をしながら言葉を送るのだった

 

「うん全く問題なかったな。初勝利おめでとう氷見さん。」

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで頼むな京介」

「何がというわけでなんすか」

 

 そしてなんの話も通していなかった烏丸に対しても必死に説得するのだった

 

 

 

 

 

 

そしてさらに数日後、いよいよ昴の二宮隊としての最後の試合であるラウンド8当日

 

「いよいよこの日が来たか…」

 

 昴はモニターの前でそう呟く

 

「はは、感傷にでも浸ってるの?桐君」

「そりゃ少しは浸りたくもなるさ。何せ最後の試合なんだからさ」

 

 犬飼の軽いからかいに昴はそう返す。そんな昴に対して二宮はこう言った

 

「感傷に浸るのも、最後を悲しむのも全部後だ。今は目の前の試合のことだけ考えろ」

「二宮さんは最後まで手厳しいな…」

「当然だ。適当なオペをされても困る」

 

 二宮からの叱咤に昴は笑顔で言い放った

 

「そんなことするわけないですよ。A級がかかった最後の試合。俺も全力でオペレートしてチームを勝利に導きます!」

 

 昴の言葉にチームメイトも続いた

 

「頼りにしてるよ桐君」

「頼みます桐山先輩」

「最後の試合、よろしくね」

 

 そして二宮も続く

 

「わかってるならいい。時間だ、いくぞ」

 

 二宮の号令に犬飼、辻、鳩原、昴の四人は答える

 

「「「「「了解」」」」」

 

 二宮隊最後の試合が幕を開けた

 




おそらく次で二宮隊編は終わり。多分短めだと思う
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