ライザのアトリエ~たった一つの魔法の言葉~ 作:自給自足すらできなかった敗北者
今度こそライザを出せます…!
―――カイルがアガーテに師事してから、幾日か過ぎた
その間の主な出来事と言えば、例の錆びた剣は危ないからアガーテがカイルから取り上げ、ちゃんとした木剣を代わりに渡した、カイルは不満そうだったがアガーテ曰く、この木剣すらまともに振れずに、金属製の剣が振れる訳ないだろうと―――見事な正論である、事実この木剣ですらカイルはまともに振れなかった、剣を振るというのはこんなに大変なのかと再認識したカイルであった…
―――実はこの木剣、こっそり鉄芯が仕込んであり普通の兵士ですら長時間振り続けるのは至難の業であるというオチがつくが、そこはアガーテの策略が見事にハマったのである
そうしてまた数日後、教えられた通りの型を、拙いながらも剣で振れているカイルにアガーテは関心をする
「(基礎は全く出来ていないはずだったが、教える型が今までのカイルの独学と見事に近く、ハマっている…まぁ、不思議だが習熟が早いに越した事はない)」
こうして順調に来ていた剣の指導だが「技」と言う段階にきて壁にぶつかる事になる―――そう、技の発動は魔法の発動と同意義なのである、魔力を用いて望んだ現象を起こす事が技、魔法を用いなければそれはただの振り下ろしや薙ぎ払いに過ぎない―――ここにきてカイルはまたも自身が最も否定したい力にぶち当たったのである
カイルも色々と工夫をしたが魔力と魔法は紙一重ながらも全く別物であり、解決しなかった…例えば魔力を剣に纏わせれば切れ味が上がったりするのではないかと思うがそんな事はない―――魔力を剣に纏わせ、そこに切れ味を上げる、剣を硬くすると言った術理を落とし込まないと、ただ魔力の光を放ってピカピカしてるだけの剣になってしまうのである、夜道を照らすカンテラと同じレベルである
なんの解決も無いまま型と素振りの反復練習、アガーテもカイルが魔法を使えないと言う理由は聞いていなかったのが誤解に拍車を掛けた―――そう、カイルもカイルでアガーテに魔法が使えない事を説明してなかったのである
こうした誤解がありながらも今日の指導を終え、帰宅がてら街を練り歩くアガーテはふと呟いてしまう―――
「(―――それにしても、あそこまで上手く魔力を錬成、纏わせる事は出来るのに、魔法に変換できないのは不思議だ…しかしカイル…?この名どこかで聞いた気がするが…)」
「まさか…魔法院始まって以来の魔法の大天才、「雷光のカイル」…か?」
―――ここで今一度時系列を確認してみよう、アガーテが首都から出たのが約1年半前、カイルが魔法院を卒業し便利屋を始めたのが約1年前…つまりアガーテが首都から出た時期、カイルは魔法院卒業間近であった、仮にも騎士団養成学校の主席、魔法院の噂の一つ二つは知っている、つまりこの2人、首都でニアピンしていた訳である
さらなる疑問を持ちつつアガーテは帰宅の道に着くのだった
―――――そのアガーテの呟きを1人の好奇心旺盛な少女が聞いていなければカイルは今でも魔法を全く使えなかったであろう
「魔法…?未知の予感…っ!これは確かめなくちゃ…!」
翌日、カイルはアガーテが護り手の仕事で暫く面倒を見れないと言われており、いつもの魔石の森でひたすら反復練習をしていた、こうして今日もなんの変哲もなく終わら―――なかった
「あぁー!いたー!あんたがカイルね!!」
突然声が響いたと思ったらそこに居たのはカイルとほぼ同年代の可愛らしい少女であった
「―――…なんなんだよ…君は…ボクは剣の練習で忙しいんだけど…」
「あたし?あたしはライザリン・シュタウト!ライザでいいわよ!―――それよりあんた魔法が使えるんだって!?面白そうじゃない!あたしに教えなさいよ!」
―――なんだこいつ、カイルの第一印象はそれにつきた、いきなり現れたかと思ったら、カイルの急所である魔法に関する事をズケズケと聞いてくる…極端に言ってその楽観的な態度にカイルは嫌悪すら覚えた、しかし、相手は年下であろう女の子、仮にも魔法院を卒業したカイルがめくじらを立てて憤慨するには大人気なさすぎると、なんとか自制心を働かせて律儀に応える
「―――…魔法はそんなに良いものじゃないよ…」
「そう?なんか剣をピカピカしてたのとか便利そうじゃない!お父さんの畑仕事を抜け出す絶好の囮になりそう!」
―――見られてた、正直言ってアレ(ピカピカ光る剣)はカイルとって羞恥の的だったりする
「それにお母さんに聞いたわよ?魔法って色んなことができるとーっても便利なモノなんだって―――勿体ぶってないで教えなさいよー」
「とりあえずボクは絶対に教えないからな、帰ってくれ…」
その後、何度か問答しても埒があかなかったが、門限に近づいたのか少女は帰っていった、これでようやくまた日々の安寧が訪れ―――
「今日も来たわよっ!!」
―――なかった
その後も何日も何日も少女に付き纏われた、場所や時間を変えても少女は必ずカイルを見つけ付き纏う―――少女も少女で会話のタイミングがうまく、初っ端から魔法に関する事を聞くのでなく、最初は当たり障りのない世間話やら噂話を一方的にしていくものだから、数日後にはカイルも少女の話を捌きながらも剣の稽古を行えるようになった
しかし、ある日、いつもの魔石の森にて剣の進捗が全く進まなかったり、少女に付き纏わられたりと少しイライラしていた日
「あんたも、飽きないわねー…毎日毎日剣の素振りばかり…」
「―――カイルだ…カイル・シュナイダー、ボクの名前だ」
「あっ、やっと自己紹介したわね、あたしはライザでいいわよカイル」
「―――ライザはなんでそんなに魔法にこだわるの?」
「だってなんでも出来るって素敵な事じゃない!あたしね、将来冒険をしたくて!村の連中が行ったことないとこに行ったり、未知の生物を見つけたり!その時に色々出来ることが多かったりしたら―――」
「―――魔法はそんなキレイでステキなモノじゃないッッ!―――誰かを傷つける事しかできない危ない力なんだっ!!」
一度堰を切って吐き出した言葉は止まらなかった
「ライザ!お前にわかるのか!ボクの力が大切なモノを傷つけた瞬間の感触っ…!今でも夢にでてくる!ボクを散々スゴイと言ってくれた人たちが憎悪の目で見てくるこの力…っ!こんなモノ…こんなモノ無い方が…!」
「―――でも、それもカイル自身の力なんでしょう?そりゃあ否定したら、力にだってカイルを否定されちゃうわよ」
「―――…ッッ!お前に何がっ!」
ここでいくつかの不幸が重なった、魔石の森と言う場所であったこと、その場所の名の通り、魔石があちこちに生えている、また何時ぞや話したみたいに魔法は精神の状態に強く影響を受けると、そしてカイルが魔法を使えなくなったとは言え保有する魔力量は常人のソレと異なり、かなりの量を有すると言うこと…
結果、ライザの頭上にあった魔石がカイルの強く荒んだ感情に共鳴して小さな爆発を起こし、落ちてくる―――つまり大きな魔石の塊がライザに襲い掛かったのである
―――ライザを対面で見ていたカイルはその光景がスローでよく見えた、また自分がこの現象を起こしたという事をなんとなく理解した
―――また…またボクの魔法で人を傷つけるのか…また、ボクの暴走が原因で…!
カイルの目にはあの時、自身の魔法で傷付けた父であるピーターとライザが重なる―――今から駆け出してももう間に合わない、ライザと魔石の距離は50㎝も離れていない
―――ダメだ…っ!それだけはダメだ!何のために剣を取ってアガーテさんに師事したと…!もう
―――ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!ダメだ!―――――――――
―――魔法は精神に強く影響を受ける…故にカイルの原初の願い、誰かを助けたい、役に立ちたいという想いは本能に刻まれた嫌悪感を超えソレは遂に成る
―――木剣に宿る眩い光を携え、カイルが目に追えない程の速度でライザに迫っていた魔石を切り裂く、その後に響く轟音―――まさに「雷光」
―――その技はアガーテより教えられていた最初の技であった―――「スラッシュ」自身の魔力特性を剣と体に乗せ対象を切り裂くという至極単純ながらも個性が出る技である
―――カイルの魔力特性は「雷」その特性が乗ったスラッシュの効果は超加速であった
「―――…ハァ…ハァ…だから言っただろう…ボクの魔法は人を傷つける事しか出来ないって…」
「―――すごい…すごいよカイル!」
「―――っ、人の話を聞いてたか?ボクの魔法は傷つけることしか―――」
「―――でも、あたしを助けてくれたのもカイルの魔法でしょう?」
「―――っ!!!―――でも…」
「男なのにみみっちいわね!」
「みみっ!?」
「じゃあ、あたしがあんたを責めるわ!―――申し訳ないと思うんなら、カイル!あんたあたしの冒険に付き合いなさい!そこで存分にこき使ってあげる!約束よっ!!!」
―――ある意味それは幼さがなせる傲慢な、人の弱みに漬け込んでの物言いでもあったかもしれない、しかし、カイルにとってその言葉は心の奥底で待ち望んでいた言葉であった
―――カイルは短いと言え人生の約半分を魔法に費やしてきた―――この言葉は正確ではない、正確に言うのであれば、カイルは魔法のみに捧げた時間が数年もあった…そんな中、家族は魔法が使えなくなったカイルを責めない―――逆に言えば魔法が使えたカイルを不要と言っているのではないか、勿論そんなことはあり得ない、ただのカイルの被害妄想だ
―――しかし当時のカイルにとっては違う、責めて欲しかった…カイルの原初の願い、それは人を助けたい、人の役に立ちたい、それは言い換えれば
―――そして、目の前の少女にその願望を、カイルを救うに必要であった単語全てを内包する言葉を言ってもらえた
「じゃあ、あたしが
―――――その日を境にカイルの一人称は「ボク」から「オレ」へと変わった、これはカイルなりの心のケジメであった、未だに一部の魔法は使えないままだ、完全に心の整理が出来たわけではない、しかし幼き少女との約束を守る為、カイルは日々努力を重ねる―――
―――――そうして時間はライザがナナシ草を採取してカイルが顔を真っ赤にして俯かせてる場面へ戻る
「(―――まぁ、ライザはあの時の約束を忘れているかもしれないが…だが、オレは覚えている、だから改めてありがとうライザ「ボク」は君に救われた)」
―――――番外編―――在りし日の記憶 完
○カイル・シュナイダー
・原作主人公に救われた男―――「ボク」は「オレ」は忘れない、君に救われたという事実を
○ライザリン・シュタウト
・無自覚にオリ主を救う本家本元の主人公
○アガーテ・ハーマン
・実はカイルの独学の動きが型に馴染むのはカイルが遠目で見ていた騎士というのはアガーテだったからという裏設定、当時カイルもアガーテもどっちもお互いを意識してなかった為に今後も気付くことがない事実
○スラッシュ
・簡単に言えば自身の魔力特性を乗せて相手に斬りつけるだけの簡単な技、乗せる特性によって名前が変化する、カイルの特性は雷の為、「イナズマ・スラッシュ」か「ジグ・スラッシュ」というのが妥当な所
○雷光のカイル(笑)
・魔法院時代、自身の特性である雷で色々と蹂躙しまくったことからついた渾名、あまり掘り下げると下手なな○うよりひどい話が出来そうなので突っ込まないで
○蛇足
・店の爆発の原因は宮廷錬金術士が簡単な調合でミスをしたことによるもの、キャリアに傷が付く事を恐れた錬金術士が事実隠蔽を計ったために警邏は何も調査しなかった
同時に根も葉もない記事が書かれた理由はピーターの同僚が自分より人気の記事を書くピーターを常日頃から疎んで所、爆発に巻き込まれるカイルを目撃、これ幸にとピーターを蹴落とす為、編集長を買収し、カイルが全て悪いという記事を速報で載せた
上記の原因が重なり町中からカイルは悪意を喰らう羽目になった
○魔法の師匠
・のじゃロリ、カイルが町から追い出されたのを知るのは全てが終わった後であった―――その事実に激怒した師匠はありとあらゆるコネを使い上記の悪行全てを裁き数年後、カイルに経緯全てを記した手紙を送っている、故にカイルは全ての真実を原作開始時には知っていたがもう過去の事と割り切っている
○作者
・ルビ芸を覚えた、何これ便利
ようやく、いくつかの伏線を回収出来ました、カイルが照れて俯いた時どんな思いをしてたかを書きました、カイルにとっての魔法の言葉というタイトル回収の伏線でもありました!ライザのアトリエには無い完全なオリジナルストーリーでしたが、楽しめたでしょうか?ライザの原作主人公としての魅力を少しでも引き出せましたか?少しでも楽しめたなら幸いです!
作者にオリジナルストーリー(番外編)を今後どの頻度で書いて欲しいか、また誰々との絡みも見たいって方は個別に感想欄へお願いします
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常日頃から書いて毎秒投稿しろ
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1幕毎に2.3話ペースを守って本編を書け
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1幕毎に1話ペースを守って本編を書け
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偶に思い立ったらでいいから書いて
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番外編はいいから本編だけを更新して欲しい