ライザのアトリエ~たった一つの魔法の言葉~   作:自給自足すらできなかった敗北者

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筆がやたらと乗ったので、投稿。
本編には直接関係しない番外編第二弾
前提条件として、番外編―――在りし日の記憶1を読んでいただくと、より物語が分かると思われます。
時系列としては赤トカゲをシバいた後…現時点(第3幕序盤)では未来の話になります。


番外編―――とある記者の娘の独白

―――――ザプッ…ザプッ…ザプッ…

 

小舟が波を掻き分けクーケン島の近くを遊泳する…

 

船の上には2つの人影があり、1人は本作の主人公であるカイル…

もう1人はそのカイルの妹であるジェナだ

 

 

今日はカイルが以前約束した通り、小舟でジェナと遊泳をする日だ

 

 

「―――悪かったなジェナ、中々約束を果たせなくて」

 

そう、カイルの言った通り、ジェナと以前約束してから大分日が経ってしまっていた

 

 

「ううん、大丈夫だよ、兄さん…兄さんも忙しそうなのに」

 

 

「大事な妹との約束だ、果たさないわけにはいかないだろう」

 

 

「ありがとう、兄さん―――じゃあ、冒険のお話を聞かせてくれる?この前凄いのの相手したんでしょ?」

 

 

「あぁ、あれは凄かった…真紅の体躯に翼を広げれば―――」

 

 

「(―――やっぱり兄さんは昔から(・・・)凄くて、やさしい…)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――私には1つ…島の人にも家族にも…大好きな兄さんにすら言ってない秘密がある…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――私が私を自覚したのは母のお腹より産まれたその瞬間である…

 

 

 

 

他の子が言うような、ぼんやりとした記憶じゃない、はっきりとした…今でも思い出せる記憶である…最初は他の子と同じように言葉がわからなかったし、物事の善悪すら判断はついてなかった、ただ両親はすごく優しい人なんだなと、漠然と感じていた

 

 

産まれてから1月位経った頃、この頃になると言葉もなんとなくわかってきた…そんなある日、家に黒い服を纏った見慣れないヤツが居るのに気がつく、当時の私にとって、見たことある相手というのは、同年代の赤ん坊と両親の友達の大人だけであった、しかしソイツは大人というには小さくて、赤ん坊というにはデカかった…結果を言えばソイツを目にした途端私は何をされるかわからない恐怖から泣きじゃくった

 

しかし、泣きじゃくったのがいけなかったのか、ソイツは妙に困った顔をしながら近づき、私を両手で持ち上げる…

 

まだ首は座ってない頃なのに、ソイツは私を雑に持ち上げて、あやそうとする

 

―――痛い、痛い!やめて!そんな抱き方しないで!

 

私は必死に泣いて訴えるが、一向にソイツは理解する気がない(今にして思えば、赤ん坊が泣いてるだけで意思を汲み取れって方が無理だが…)

 

 

そんな私の泣き声に母が慌てて駆けつけて来てくれて、ソイツから私を救ってくれた…そして、雑に抱いたことを母に叱られている

 

 

―――ふふっ!ざまーみろ!!

 

 

しかし、そんな思いの中母は再び私をソイツに抱っこさせようとしてくる

 

 

―――なんでっ!?どうしてっ!!―――いやっ!!!

 

 

しかし、今度は母に教えられながら私に負担のない抱き方で抱っこし、ソイツは困ったような恐る恐ると言ったような顔で私を覗き込んで来る

 

 

―――見るなよぅ!!

 

 

視線を逸らしたら負けなような気がして、ずっとソイツを眺める…気が付いたら私は泣き止んでずっとソイツと睨めっこする…両親と同じ深い深い藍色の綺麗な瞳がやけに印象的だった…しばらくそうしてると、ソイツは何が面白いのか急に笑みを浮かべ私を優しく揺する

 

 

―――な、なんなんだよぉコイツはぁ…!!

 

 

しかし、私もまだ赤ん坊、心地よい揺れを感じると眠気に襲われるままに夢の中へと旅立ってしまった…

 

 

 

 

 

―――次気がついた時、家の中からソイツは居なくなっていた、母と父の話を聞くにソイツはどうも『おにいちゃん』と呼ばれる存在らしい…あんな真っ黒な服着て迫り来るソイツはまさに私の恐怖の対象だった

 

 

―――今日は酷い目にあった…もう、アイツが来ませんように!

 

 

しかし、その願いも虚しく、アイツは週に1、2日間隔で私に会いに来ては私に構ってくる

 

 

―――やめろ!頭を撫でるな!私の頭を撫でていいのは母だけだぞ!!(父のは痛いからやだ)

 

 

一々アイツに会うたび泣いていたら疲れる事に気が付き、いつからか会っても泣かなくなった―――結果、余計にアイツが絡んで来る、解せぬ

 

 

そんな生活が半年程続いただろうか、ある日両親が矢鱈と浮き足立って、夕飯をいつもよりかなり豪勢に用意してるのが目に入る…

 

 

―――今日は何かあるのかな?楽しみっ!

 

 

そう思っていられたのはアイツが来るまでだった

 

 

―――なんだ、また来たのか…シッシッ!今日は楽しい事がありそうなのに来るんじゃないよ!

 

 

しかし、その豪勢な用意はどうやら、ソイツの為になされたものらしい…なんでも『そつぎょうがー』とか『すごいせいせきだー』とかよく分からないことを言ってる

 

 

―――まぁ、どうせ、またすぐ居なくなるだろうし、そしたら母に甘えよう…

 

 

しかし、その日アイツは家から出て行かなかった…それだけではなくあまつさえ、私と両親の至福な睡眠の間に挟まってきやがった、まだ言葉は話せないので腹いせに耳元で泣き叫んでやった―――そしたら慌てて飛び起きて右往左往してる、ハハッ、ざまーみろ―――母に嗜められた、解せぬ、母よ、アイツのせいなのだ!!

 

 

その日を境にアイツはほぼ毎日、朝と夜、家に姿を表すようになった

 

 

朝はまだいい、何やらアイツはいつも慌ただしそうに家から飛び出してどこかに行っているから…しかし、夜、これが困る、私の姿を見ては私に毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日構い倒すのだ!最近少しだけ喋れるようになったから意思表示をしてみる

 

 

―――ぃあ〜!(いやー!)

 

 

何故か両親共々余計に騒がれた、解せぬ

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――そんな日がさらに半年程過ぎ、私の首も座って、少しならハイハイもできるようになった頃、いつもならアイツが家から出て行った後、父が家を出て、母と2人で過ごすのが今日は母に抱えられアイツと一緒に家を出る、なんでも『おしごとのちょうしをみさせてー』とか母は言っている、はて、おしごととはなんぞや?そういえば父も家を出るのはおしごとの為とかなんとか言っていた

 

 

そうして母とアイツと私が今まで見たことない町並みを進み、見たことない家に入っていった、そしてアイツがその家の主と何か会話している、特に興味もないので聞いていなかったが、母はアイツに興味津々な眼差しを向けるのが気に食わない

 

 

そうしているとアイツが主に招かれ奥の『だいどころ』なるものに案内された―――そこには私にもわかる『ひ』なる熱くてアイツ以上に怖いものを扱う『かまど』なるものが崩壊してるのがわかった

 

 

そして、アイツがそのかまどにむかって何やら手をフリフリしてるしなんならブツブツ言っている、大丈夫か、こいつ?

 

 

それをちょっと眺めていたら、急にかまどが震えだし、みるみるうちに崩壊してたのが治っていった―――なんだあれ、すごい…いや、まてまて、アイツがやったとは限らない…あ、アイツがやったのね、ちょ、ちょっとだけ、すごいって認めてやってもいいかしら…

 

 

それからだ、たまに母が忙しかったり体調が悪くなると、私をアイツ…いや『おにいちゃん』なるものに預けられ、色んなところに連れ出された、毎回共通してるのはおにいちゃんは色々な人の所に顔を出しては不思議な力でなんかしている、でもその何かが終わるとみんなが笑顔になっている、子供も大人も、おにいちゃんはみんなを笑顔にしていた…きっとこれが母の言うおにいちゃんの『おしごと』とやらなのだろう、気に食わないが、笑顔がいいことなのはわかる…だから特別にアイツじゃなくておにいちゃんって呼ぶ事にした

 

 

―――ぉいーちゃ(おにいちゃん)

 

 

両親の前で初めてそう呼んだのがいけなかったのか嬉しそうにはしゃぐおにいちゃんと対照的に絶望した顔の両親が印象的だった…なんか、すまぬ

 

 

 

 

 

 

 

そんな日が半年程続いただろうか、ある日唐突におにいちゃんが家に帰って来なくなった、しかも両親の顔色も日に日に悪くなっていく、おいおい、私の両親を悲しませるなんて、おにいちゃんは本当にダメだな!でも、また暫くしたら帰ってくるだろう…

 

 

しかし、1日…1週間…2週間…3週間…待てども待てどもおにいちゃんは帰って来なかった、父は顔色が悪いのに忙しそうに家を出入りしてるし、母はおにいちゃんを見なくなってから体調をよく崩すようになってしまった…なんだよ、早く帰ってこいよ…お兄ちゃんが居ないと…さ、寂しい…じゃないか…

 

 

そうして見なくなってから1ヶ月が経過した頃、ここ最近では珍しくお父さんが喜色の笑みを浮かべ、みんなである建物に向かった『ちりょういん』とか言うらしい

 

 

そこには、多少痩せたものの、元気なおにいちゃんの姿があった、なんだ、元気なんじゃないか…さぁ、早く帰ろうよ

 

 

そうして建物を出たら、何やら人混みに不穏な空気を感じとる…そして人混みから何か大きな声でおにいちゃんに向かって叫んでいると、視界の隅におにいちゃんに向かって何か飛んで来るのが見えた

 

 

危ないっ!…そう言えればもしかしたら避けれたかもしれない、しかし意味はわかってもまだ赤ん坊の体、言葉は出ずに小さくあぅ!と言うだけに終わる…そして、飛んできた何かがおにいちゃんにあたる―――視界に入る赤いナニか(・・・・・)それが何なのかは分からないが、きっと溢してはいけないナニかなのは漠然とわかった、やめて!おにいちゃんに酷いことしないで!…そう、言葉が紡げたらどれほど良かっただろうか

 

 

おにいちゃんはただただ投げられてるそれに耐えている、いつも見たいに笑顔が無く、俯いて、悲しげに震える…多分、そんなに時間は経ってない筈なのに、永遠にも感じられる残酷な時間…

 

 

そんな時間に終止符を打たれたのは、私に向かってナニかが飛んできて当たった瞬間である、この時のキズは未だ額に薄く残ってたりする…よーく目を凝らさないと見えない程度だが…

 

 

―――痛い!…なにすんのさっ!?

 

 

そう、叫ぼうとした瞬間である…いつも…いつも笑顔で誰に対しても優しかったおにいちゃんが憤怒の顔を浮かべて絶叫する…

 

 

そしておにいちゃんから、いつも人々を笑顔にしていた謎の力が強烈に吹き出す―――それこそ初めて私の目に見えるくらいのが

 

 

その衝撃波は私を抱えていた母ごと軽く吹き飛ばし、母は尻餅をつく

 

 

強烈な力の濁流、本能でわかる危険…―――普通なら恐怖を覚えてもいいだろう、実際に先程までおにいちゃんにちょっかいをかけていた有象無象はもう居なくなっている、そんな中、私は一つの心で埋め尽くされていた

 

 

―――キレイ…

 

 

おにいちゃんより吹き出す薄紫色の力も当然だけども、その荒々しさすらもキレイだった…―――そして何よりおにいちゃんの心の色が私には見えたような気がする…普段から笑顔が絶えないおにいちゃん…私がイヤと言っても困ったような笑顔であの手この手で構ってくる憎たらしいひと…そんなおにいちゃんが、私の為に…私の為だけに(・・・・・・)怒っている…

 

 

怒られた事がないわけじゃない、私がダメな事をすればダメと両親もおにいちゃんも怒る…だが、それは嗜める程度のものである、私も自意識があり、ちゃんと理解して、同じことをやらなかったってのもある、だから本当に怒るって言うのは初めて見た

 

 

衝撃だった、吃驚だった、驚愕だった…私の為だけに本当に怒ってくれるその姿に感動し、私の目にも心にも灼き付いた―――率直に言えば一目惚れだった

 

 

島に来てから私が拙くも喋れるようになり、寂しい時も、まだ同年代の友達も出来なかった頃遊んでもらったから好きになったんじゃない…これが、私がおにいちゃん…ううん、兄さんを好きになった原初の瞬間である―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――そして時は、小舟に揺られカイルの冒険の話が終わった頃になる

 

 

「―――てな感じだ、どうだ、面白かったか?」

 

 

「うんっ!ありがとう兄さん!」

 

 

その時、海風が私の髪を揺らし、兄さんに額の薄いキズが見える…そうすると、毎回何を言うわけでも無く少し悲痛な顔をした後、私を優しく抱きしめてくれるのである

 

 

「―――どうかしたの、兄さん?」

 

 

「―――いいや、なんでもないさ…少し寒くなったからジェナの温もりを感じたくなっただけだよ」

 

 

「―――変な兄さん…(正直言えば私を抱きしめてくれる理由もわかる…きっと優しい兄さんの事だ、あの時の原因を自分のせいと責めているのだろう…ただ、正直兄さんがここまでスキンシップをしてくれるのは稀であるし、役得だから黙っておこう)」

 

 

なんだかんだで図太いシュナイダー性の血をしっかりと引き継いでいるのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、いつものようにカイルは何処かに行く…最近のジェナの趣味は島に居る間のカイルのスト…監s…見守る事である、よって今日もカイルにバレないようについていく…ここら辺のやり方は父のピーターにさり気無く教わった、記者の娘としても血を感じさせるとこである

 

 

「(…あんな事があったんだし、私が兄さんを気にかけるのはしょうがないよね、うん)」

 

 

ちなみにこの尾k…スト…監s…見守りはカイルと両親以外にはバレてたりする、そらこんな狭い島だし、バレると言えばバレるに決まっている、今日もライザに見られていた

 

 

「―――…ジェナちゃんって普段しっかししてるし、会話すればまるで同年代のような印象を受けるけど…ちょっと、ブラコンが過ぎるような…ちょっとアレなような…」

 

 

なんとか言葉を濁すライザ、傍目から見て正直変態の所業である…そしてふと視線を逸らした次の瞬間にはジェナの姿が見えなかった

 

 

「あれ?…」

 

 

「―――ライザさん」

 

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

 

唐突に後ろから声をかけられるライザ…びっくりして後ろを向くと先程までに前に居たジェナが何故か後ろに回り込んでいた…

 

 

「な、なにかなー?ジェ、ジェナちゃん…」

 

 

「―――ふふっ」

 

 

幼いのに妖艶な微笑み…真っ黒な雰囲気を醸し出すその笑顔にライザは見覚えがある…あっ、これ、怒った時のクラウディアとおんなじ滅茶苦茶ヤバいやつだ…と

 

 

「―――言わなくても分かりますよね…?でも一応言っておきます…―――ひ  み  つ   ですよ?もし、兄さんに言ったら今度こそ言わなくてもどうなるか…ふふっ…」

 

 

「ひぃぁ…ひゃ、ひゃい!不肖ライザリン・シュタウト!なにも!何も!見ておりません!―――そ、それじゃあ失礼させていただきます!!!」

 

 

こうして少女は目撃者の口止めも忘れない…きっと将来、記者の道に行ったらとんでもない大物になるのは間違いないのであった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

番外編―――とある記者の娘の独白 完

 




○カイル・シュナイダー
・何時ぞやの約束をしっかりと果たした…妹がいい子すぎてこうやって甘えてくれる事にすごく感動している―――騙されるなカイル、その子はカイルが思っているより色々図太いぞ…でも、世の中には知らない方が幸せな事など山ほどあるのである

○ライザリン・シュタウト
・今回の犠牲者、色々な意味で怖いものを前にするとどもるし、逃げ出す―――正解である

○ジェナ・シュナイダー
・幼い頃から、それこそ赤ん坊の時の記憶もしっかりとある特異体質、幼さの割にかなり賢そうだし、礼儀正しいなって思ったから、それの理由付けに作者の妄想で生まれた子、例によって独自設定
カイルの衝動による光により「光の亡者」よろしく目にも心にも灼き付いてしまったある意味での犠牲者…だから、私が兄さんを陰ながら見守るのは正しい―――ジェナの気持ちがlikeなのかloveなのかは読者の解釈次第

○蛇足
・父と母でジェナはどっちの事を先に呼んでくれるかで競ってた所、兄であるカイルに先を越され絶望した―――なおちゃんとぉいーちゃと呼んだ後にぉかーさとも呼んでいるので、家庭崩壊は免れた…ピーターは呼ばれなかったので1人ベットでザメザメと泣いた、哀れ

○作者
・普段見やすいかなと三人称で物語を進めるようにしてるけど、初めて一人称視点にチャレンジしてみた、ジェナの心のうちのセリフやら言葉使いが安定しないのは赤ん坊である事を考慮に入れあえてごちゃ混ぜにして書いたけど、ちょっと見づらい…ごめんなさい
なお、やたらと筆が乗ってしまい、後書き含めると6500文字突破してしまった…一人称は感情移入しやすくていいけど、これやり過ぎると地の文が疎かになりそうだし、使い分けに苦労しそう…

今投稿時間結構手探りで色々な時間でやってますが、実際いつ頃投稿すると読者が見やすいか…よければ回答お願いいたします。

  • 0時ちょうど
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  • 午後なら
  • 深夜時間帯なら(22~26時くらい)
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