小岩井よつばの友人、富樫夢葉は宮益坂女子学園の高等部の一年生。
あるきっかけで、神山高校の夜間定時制の二年生、宍戸真二と出会い、
いわば、一目惚れで、宍戸真二にメロメロ状態だったが、
しかし、宍戸真二には東雲絵名がいるため、クリスマスの直前に、
夢葉がアタックするが、真二にフラれてしまうのだった…
そんな、1月のある日の夕方、夢葉とえむは、神山高校の正門前に来ていた。
「おーい!えむ!ゆめはー!」
「あっ!よつばちゃん!」
「よつばちゃん…」
夢葉は相変わらず、浮かない顔をしていた。
夢葉の手が震えていた。宍戸真二に対する手紙を渡そうとしているが、
今一つ、手が自由に動かせれる状態じゃなかった。
宍戸真二には、東雲絵名という相手がいるとはいえ…
「もうすぐ、夜間定時制の子が来るぞ?」
「真二くん、ここに来るかな?」
「よつば!探してくる!」
よつばが探し出すが、しかし、何故かやって来たのは、
東雲絵名だった…
「夢葉ちゃん。真二くんに会いに来たの?」
「は、はい…」
絵名は夢葉が手紙を持っているところを見ていた。
「気持ちは解るけど、真二くんは私の真二くんだからね」
「…」
「真二くんなら、こっちにいるけど」
と、絵名が指を指したところに、夢葉のお目当てである、
真二くんがいた。
「じゃあ、私はこの辺で」
「絵名さん…」
と、えむも、どこかで浮かない顔をしていた。
「よう。会いに来てくれたのか?」
「だって、好きだから…」
「気持ちは解るけど、俺は絵名ちゃんがいるから」
「…」
「手紙は受け取っておくよ」
「読んで」
「おう…」
なお、夢葉の手書き。
(宍戸真二さんへ。
この手紙を書こうか、何度も迷いました。
真二くんには、相手がいるのをわかっていて…
でも、真二くんと一緒に過ごす時間が、とても楽しくて、
自然と笑顔になってしまう自分に気づいたとき、気持ちを伝えたいと思いました。
魂が共鳴して、まるで、私の兄の様な人で、どこかで惹かれました。
私は真二くんのことをたくさん知りたいし、
もっと話したいと思っています。突然の手紙でびっくりさせてしまったら。
ごめんなさい。
ただ、この気持ちを伝えたかったんです。
富樫夢葉より)
「だから…その、私はえっと…えっと…これ!」
と、夢葉は真二に対して、連絡先を渡すのだった。
夢葉のスマートフォンの電話番号とメールアドレスが書かれていた。
「真二くんのこと、私はもっと知りたい。
真二くんは、瞳を持つ者だから!」
「瞳を持つ者…か。俺もそうだったな…
あっ、そろそろ、授業だから!」
と、真二は校舎に入るのだった。
公園にて。夢葉はえむとよつばに慰められつつ、泣いていた。
「真二くんと一緒に話せて嬉しかった…けど…」
「どうかしたの?」
「本当は…真二くんと、もっと話がしたい…」
と、夢葉は顔に手で隠して、泣いていた。
だが、そんな時、えむが夢葉に抱き着いた。
「きっと、大丈夫だよ。夢葉ちゃんの気持ちは、
真二さんに伝わっている。必ず絶対に」
「えむ…ちゃん…」
「えむ…」
その時の、えむは、どこかで不思議と慈愛に満ち溢れていた声で、
まるで、いつものえむと比べると、包容力があるような感じだった。
えむの包容力で、夢葉を慰めるのだった。
よつばは、夢葉の手を握った。
「よつばちゃん…」
「よつばもいる。これからも、ずっとだ!」
と、よつばとえむは、しばらく、夢葉の傍にいた。