「よつば」と自分の事を呼ぶ。
そして、その時のよつばは「本気」なのだ。
「彰人は…よつばと結婚するの…嫌なんだ…」
「はぁ…わかったよ」
現実逃避の為現状を冷静に分析していたが、
そんなこと考えても何の意味も無かった。
現実と向き合わないことには、
よつばを傷付けることになる。
考えろ、俺、東雲彰人!
「じゃあ結婚してくれるのか?」
「あの…だな…。…なんで俺なんだ?」
「………」
一番疑問に思っていることをストレートに聞いたが、
よつばは、唇を尖らせるだけで何も答えなかった。
「なんで、俺なんだ?他にも、男なんているだろ?」
「私が、彰人のことが好きで嫌いで、何が悪い?」
「まぁ…そうだけど……」
「彰人は…よつばのこと嫌いか?」
「ま、待てっ?!な、泣くな!き、嫌いじゃないぞ?!」
「じゃあ…好きか?」
あれ?好き嫌いの話しだっけ?
そうだ。こうなりゃやけだ。認めてしまおう。
あっさり認めてしまおう。あぁ好きだ。おまえの事が好きだよ。
「す、好きだ」
「女の子として?」
「あぁ。女の子として好きだ」
「へへっ…嬉しい」
よつばは、彰人の言葉を聞いて、
歳相応に照れた少女の表情を見せた。それはとても幸せそうだった。
その表情を見た俺は、自分の心の中にとてつもない衝動が生まれるのを感じた。
「よつば」
「なんだ?」
「冷静に聞いてくれ。なんで俺と結婚しようと思ったんだ?」
「まったく、彰人は…。一から説明しないとやっぱり駄目だな」
そういって、よつば立ち上がった。
「約束しただろ?」
「約束?」
「彰人…まさか覚えていないのか?」
「えっ?!」
よつばの表情が途端に曇る。
焦った俺は必死に「約束」を思い出そうとした。
だけど思い出せなかった。
よつばと結婚するなんて約束したか?おい!俺!何とか言え!
「はぁ…」
また溜息を吐かれた。
「んな、約束…したかな?」
「うん」
「逆に俺も、ため息だわ…」
「でも、それくらい、彰人の事、好き」
「おいおい、マジかよ…」
「あぁ、よつばは、いつだって、本気だ」
「はぁ…」
「彰人、放課後、デートに向かうぞ!」
「あのな!俺は、お前と違って、暇じゃねぇし!
だいたい、俺は歌の活動で忙しい」
「歌を歌っているのか?」
「あーそうだ。中学の時からだ。
それに、素人が遠足気分で行くような世界じゃない。
あそこは、ガチの歌の世界だ」
「観に行きたい!」
「そんじゃ、連れてってやるよ」
「よつばも行けるのか?」
「あぁ、当日チケット買えば、どうにかなるだろ」
よつばは彰人の歌が聴きたいと思った。