予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第12話 勝者の特権じゃあ!(カミソリ用意)

スマブラで吹っ飛ばされる時のパターンは三つ。

 

1.ゲーム画面にへばりつくように吹き飛ぶ

2.その場で消し飛ぶ

3.すごい勢いで画面外へ飛んでいく

 

 その中で3だけが、試合時間を過ぎたらスローモーションになって、吹っ飛びが無効にされる時がある。

 無効になれば、私とキャスパーのスコアはイーブン。

 サドンデスに持ち込める。

 

 だから私は試合時間を確認してから、わざと先に攻撃した。

 全てはキャスパーに『勝った』と油断させるため。

 でも、吹っ飛び方がどれになるかは完全に運……完全に賭けだった。

 

「ノーカンです」

「えぇ……」

「ノーカン! ノーカン! ノーカン‼」

 

 子猫V、ご立腹だった。

 せっかくトイレから戻ってきたのに、うんざりだった。

 私の表情を読み込んで、レヴィアもうんざり顔になっている。

 

[ コメント ]

・ジト目助かる

・ガチで見下げ果ててるやん

・興奮します

・ノーカン! ノーカン!

 

「頼むよォ……先に僕の毛刈るからぁ。差分も用意するし、もれなく剃った毛は郵送するからぁ」

「もれなく要らない。普通に、もう、キモい」

「アッ! 軽蔑の眼差しも良いね!」

「無敵か、この猫」

 

 はぁーーー、なんだろうね。

 私の中で、この人への遠慮ってものが全然無くなってる。

 自分がこんな刺々しい声出せるなんて知らなかったよ……それで喜ぶ人達がいることも。

 

「あの、一応聞きますけど……なんでもう一回したいんですか?」

「朝チュンASMRと放尿プレ」

「それ見たことかぁ! やりますと言うとでも⁉」

「そこをなんとか‼ ワンチャンス! ワンモア!」

 

[ コメント ]

・ASMR咀嚼音をおくれーーー!

・わいのみたらし団子を食べておくれーーーー!

・しまえよ、その二玉しか付いてない団子串

 

 頼み込むキャスパーとコメント欄を交互に見やる。

 ぐぬぬぬ、と私は唇を噛んだ。

 

 どうしよう……水飲まずにだったら別にいいかな? でも勝ったの私だし。なんでお願い聞いてあげなきゃいけないの…………。

 

【って思いきれないのが、お姉ちゃんだよね】

 

 そう書かれたカンペが、横からスッと目に入った。

 伽夜ちゃんの字だ。

 振り返ると、私以上に私のこと分かってる妹が、にこっと笑ってマジックペンを走らせた。

 次に書かれたカンペを見て、私もこの線が妥当だなと納得できた。

 

【あと、さっきから素に戻ってるから。直して】

 

 はい、すみません。

 私は咳ばらいを挟んでから、

 

「本来なら貴様らの頼み事なぞ聞いてやる義理は無いが……堕ちたと云えど、妾も天使の一柱。堕天使の慈悲を貴様らにくれてやろう!」

「おぉお⁉ 60字くらい喋って何一つ新情報が無い! あの~、もっと端的に仰ってくれません? トーク下手?」

「断罪《ギルティ》すんぞあんたぁ‼」

 

 んんぅ、もうっ! 

 もう一回咳払いして、調子を合わせる。

 

「良いか、先に言うがもう一試合はせん! 一気飲み苦しいし、我慢するのキュウッてなるし、お茶で服びちゃびちゃだし、もうィヤッ! ヤなの!」 

「えぇえええ濡れてんのぉ⁉ そのうっすい布濡れたら、もうドスケベ」

 

「もぉーーー黙っててよぉおおおーーーーーー‼」

「だって! 言葉遣いがそこはかとなくエッッなんだもん! お股がキュウッとか服で透け透けとかぁ!」

「あんたの頭がピンクなだけだよぉ! そんなこと私言ってないよぉ!」 

 

[ コメント ]

・ぐっだぐだやないかww

・猫の誤変換が過ぎる

・そこはかとなくセンシティブなのは分かる

・天然でそれやってるんだよ、この子

・そこがマジでエチエチなんだよなぁ

 

「それ見たことかぁ!」

「うそぉーーーー⁉ え、私そんな変な言い方してt」

 

 言いかけたところで、ガツンと後ろから妹に蹴られた。

 すみません! また一人称、素に戻ってました! ちがうもん……私エッチじゃないもん……エッチなのはみんなだもん……っ!

 

 しょぼくれながらも、私は話を元に戻す。

 

「うぅぅ……えっとな? だからな? 勝ったのは紛れもなく妾だけどな? それだとみんなが楽しんでくれないのも、妾ちょっとは分かるんだ。だから……再戦はしないけど、代わりに――――次回はASMR配信しようと思う」

 

[ コメント ]

・キチャーーーーーーー‼

・猫ォ! お前の戦いは無駄じゃなかったぞぉ!

 

「言っとくけど、朝チュンじゃないからな⁉ 普通のASMRだからな⁉ そんなえ……エッチなことはしないから‼」

「ん? エッチなことはしない? じゃあ具体的にどんな行為までが、レヴィアたんから見てエッチなの?」

「ど、どこまで……?」

 

 何を言ってるの、このゲス猫は?

 いまいち質問の意味がピンと来てない私に、キャスパーが畳みかける。

 

「キッスはエッチですか?」

「そんなの……す、好きな人となら、そのっ~~~!」

「じゃあ深い方は?」

「それは駄目だよぉ‼」

「お? 深いチューの意味は理解できるんですねぇ! なるほどですねぇ!」

「こいつぅうううううーーーーーー‼‼」

 

[コメント]

・何の質問してんだよwww

・深い方って聞き方えぐっ

・おいら分かったぞ! これAVのインタビューだ!

・好きな人とならエッチじゃないって発言自体がエッチだ

・逆に好きな人とでもディープは駄目なのか……この堕天使、乙女か?

 

 ねぇえええナニコレぇええええ⁉

 私は涙ながらにコメント欄を睨む。

 別に変なこと言ってない(はず)なのに! なんで私がエッチなこと言ってるみたいな空気なんだよぉーーー⁉

 

「フレンチキスOKなら唇以外の場所でも構わない? 手の甲は? 頬は? 首筋は? 鎖骨はどう? いやぁ~~~~どこまでが堕天使にとってのエッチラインなのか気になりますなぁ‼」

「はいっ! もう終わり! 配信終わり! 眷属のみんな、視聴大儀であった! 貴様は約束通り、毛ぇ剃れ! 眉毛剃れ!」 

 

「なぜに眉毛⁉」

「うるさいうるさい、さっさと眉毛剃れクソ猫ぉ‼」

 

「あっー堕天使様! 困ります困ります堕天使様! PCブチ切りはおやめください堕天使様! アッー‼ 堕天使様ァー! レヴィアたんの貞操観念が明らかになるASMR、みんな絶対見てくれよな‼」

 

 ブチンと、配信は終了した。

 

 ********

 

通話アプリ『ビィスコード』のサーバーにて

 

キャスパー「はい、おつかれサマンサタバサ!」

レヴィア「おつかれさまです」

 

キャスパー「最後の世紀末ボイス良かったわー断罪咆哮《ギルティロア》www」

レヴィア「うっっっっさいですよ‼‼ もっと手を抜いてくれるって言ったじゃない

ですか! 全力で漏らそうとさせないでくださいよぉ!」

 

キャスパー「だぁいじょうぶだよ~、マジ漏らし0.1秒前で配信ブチ切るさ。後輩をBANから救い、僕だけ放尿音を聞く。先輩らしい完璧な対応だろぉう」

レヴィア「スクショしました。Bwitterでつぶやきますね?」

 

キャスパー「申し訳ございませんでした堕天使様。眷属の軍隊(ハルマゲドン)呼ばないでください。最終炎上(ラグナロク)やめてくださいお願いします」

 

レヴィア「そんなことより、剃ってください」

キャスパー「? なにを?」

 

レヴィア「 毛 」

 

キャスパー「承知、脇毛で良いかな……剃ったら郵送するね♡ 住所と郵便番号教えてもらえるかな?」

 

レヴィア「ねぇどうして猫は死なないの?」

 

キャスパー「幼児みたいな無垢な質問なのに、含みを感じずにいられない。ハッ……! チ〇毛をご所望なんだね?」

 

レヴィア「ねぇ死?」

 

キャスパー「こ。これは……っ! 殺意が昂り過ぎて、もう文字打つのも面倒になったと見た!」

 

レヴィア「なんで分かるんですか腹立つなぁ……剃るのは眉毛にしてください。それで剃った毛はBwitterで晒してください」

 

キャスパー「じゅ、住所と郵便番号……」

レヴィア「ねぇ死?」

キャスパー「受け取ってよォ! キャスパー(毛)を身近に感じてよォ!」

 

 ぽこん、とビィスコードの通知音。

 堕天使と淫乱猫のチャットに――――天使が降臨した。 

 

リエル「ASMRやるんだって? 僕、詳しいから色々教えてあげるよ!」

 

 後日、ヘブンズライブの先輩【旭日リエル】と【宵月レヴィア】のASMRコラボ枠が立てられた。

 

 そしてBwitter上でキャスパーが、剃られた眉毛を乗せたティッシュの写真を流した。

 リプ欄には「白猫じゃなかった?」「毛、黒いやん」「おまえ黒猫なんか」「身代わり立てたな」と散々なつぶやかれようだった。

 

 




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