予防接種に行ったハズなのになんでVtuberになってるの?? ~地味女子JKは変態猫や先輩V達にセンシティブにイジられるそうです~   作:ビーサイド・D・アンビシャス

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第14話 鼓膜は処女膜!!(好きな推しに破いてもらいたいものなんですか?)

「三波くん、ASMRってなぁに?」

 

 ごんぶと眉毛の三波くんに、私は尋ねる。

 派出所勤務の警官みたくなった三波くんはニチャアと答えた。

 

「色んなところがびくびく気持ちよくなる音だよ」

 

 ほんっっっっとにコイツさぁ~~~~~~~~~~~???

 クラスできゃーきゃー言ってる女子達に見せたい、この笑顔。

 駄目だ、もう昨日の私には戻れない。

 

 というか少しでも彼にドキドキしてた自分を無かったことにしたかった。

 

「姫宮さん? どうしたの、そんな見下げ果てた目をして。俺ドキドキするよ?」

「はぁ~~~(クソでかため息)いいからもうASMRってどんなのか教え……て」

 

 目の前にかざされた三波くんのスマホ画面。

 映っているのは、彼がお気に入りリストに入れたYUTUBEのASMR集だった。

 

『お姉ちゃんが包み込んであげる♡トクトク心音で子守歌』

『おにいさまの耳はむはむして良い? ブラコン妹がお耳舐め』

『好き好きこれ好き♡♥健康器具オンでとろけるメイド』

 

「ひぎゃぁぁああああーーーーーーっ!!」  

「姫宮さん⁉」

 

 私は飛び上がって三波くんから全力で離れる。

 ギュッと目をつむって全力で顔を逸らす。

 

「やめて、このド変態!」

「え、今更?」

「どっ! どーせまた無理矢理イヤホン突っ込むんでしょ⁉ 

 それで恥ずかしがってる私の顔見てニマニマする気なんでしょお! もうパターン分かってるんだからぁ!」

 

「その通りだとも。熟練者はいつだってビギナーの反応で愉悦するものなのだ。ほら、耳を貸してごらん?」

「やだぁあ‼‼」

 

「脳みそ溶けちゃお?」

「やめてあああああああああーーーー‼ ああああああああああーーーーー‼‼」

 

 私の両耳に、三波くんのイヤホンがずっぽしハマる。

 そうして――――強制ASMR体験が始まった。

 

「最初はじゃがりこ」

「あっ、あっ、あっ、すごい。すごいしゃぐしゃぐ食べてる」

 

「みたらし団子」

「ヘ……ッ! ちょっ、こ、こんな音……えっうそ」

 

「ブラシ」

「ふぁっ! ヤッ⁉ え? え⁉ 耳入ッ~~~~~~!」

 

「オイルマッサージ」

「ぃや、やっ、ん⁉ お、おく、ふぁっ! やだ、だめだめだッ……め」

 

「甘噛み」

「はっ……あ……ふ、ぅあ」

 

 あむあむと可愛い声が遠ざかる。

 イヤホンが外されてすぐに、私はころんと倒れた。肩をひくつかせながら。

 私の耳から抜き取ったイヤホンを手にしながら、三波くんは純粋無垢に顔を輝かせた。

 

「すごいでしょ? これがASMR。俺が現代に生まれて良かった思える理由の一つさ。技術は偉大ハッキリわかんだね」

「ぅぅぅうるさぁぁ~~~~いぃぃぃぃ……」

 

 ホントッ、コイツ! 

 マジコイツゥウウーーーーーッ!

 耳の中まだふわふわする。

 目がうるうるしてきて恥ずかしくて顔を伏せる。

 

 すくめた肩越しにジトッと睨むと、三波くんの顔がぱぁっと華やいだ。コイツっ! 私は無理矢理イヤホンを嵌められた耳を手で押さえる。直接動いてくる分キャスパーより厄介だ‼

 

 キッと睨む私だけど、三波くんは照れ臭そうに指で頬を掻いた。

 

「それにしても……俺の(お気に入りASMR)で良かったの、姫宮さん? 初めてだったんでしょ(ASMR)? やっぱり処女(はじめて)はレヴィアたんの配信まで、取っておくべきだったんじゃ」

 

「勘違いされる絶妙なラインを攻めるなぁ‼」

 

 二度と言わないで⁉

 

 彼はやたらもじもじしながら「だって!」と涙をキラキラさせて、私の肩を掴んだ。

 

「鼓膜は処女膜なんだよ⁉ 一度しか破れないんだから、それだったら大好きな相手に……推しに破られたいと思うのが乙女心じゃない‼」

「そんなもん乙女心って呼ばないよ! 

 例え好きな人でも鼓膜破られたくないよぉ‼」

 

「いやいやいや! 乙女は好きな男に処女膜を破られる。Vオタ(おれら)は推しのVtuberに鼓膜を破られる。

 そこに何の違いもありゃしねぇだろうが!」

 

 もぉ~~~~やだぁ~~~~~~~~~~~。

 私はさめざめと顔を覆った。

 なんなの? Vtuber好きな人って皆こうなの? 鼓膜破いても良いの? 

 分かんない、もう分かんないよ私。Vtuber分かんないよぉ……っ!(デビュー済み)

 

 私が途方に暮れてると、三波くんはハッと我に返った。

 

「ごめんごめん姫宮さん、ちょっと熱くなり過ぎた。姫宮さんはまだビギナー、ライトなVオタだ。【鼓膜の境地】は早すぎたね」

「境地ってなに? そんな武闘家みたいなシステムなの、Vオタって?」

 

 分からない。もうわたし何にも分かんないよ、みんなの需要が分からないよ……

 バイトに忙殺されてきたからか、お客様が求めてるものを供給する精神は育ってる姫宮であった……(遠い目)

 

 そんな風に黄昏れてる私を置いて、三波くんはウキウキと語り出す。

 

「ようし、ならまだまだライトなVオタの姫宮さんに解説してやろう! 旭日リエルの敗北伝説を!」

「ん?」

 私は首を傾げた。

 流れ的にてっきり【宵月レヴィア】について語るのかと思ってた。

 そう言うと、三波くんは「いやいやいや」と断りを入れる。

 

「推しとコラボする相手のことは知っておかなきゃ! 

 姫宮さんだって、自分の娘を学校に行かせる時、担任の先生の人となり位は調べておくだろう? それと一緒さ!」

「待って、私その例えには頷けないよ?」

 

 堕天使《わたし》は、眷属《あなた達》の娘ではない。

 でも、それはさておいて。私自身、すごく気になってはいた。

 

「旭日リエルさんって……どんな配信をするVtuberなの?」

 

「フハハハハ、ならば教えてしんぜよう。空前絶後! 超絶怒涛の天使メイド! 

勝利の女神にフラれ続け、敗北の女神に監禁されてる女! 

可哀そうは可愛いを地で行く雑魚Vの伝説を!」 

 

「そんなボロカスに言わなくても良いんじゃないの、三波くん⁉」

 

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